[CML 015172] 第 5 回 CS 東京懇話会(テーマ:被災地復興の在り方)のご報告

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2012年 2月 23日 (木) 12:11:07 JST


  紅林進です。
   
  大きな被害をもたらした東日本大震災の発生から、間もなく
  一年になろうとしていますが、いまだに多くの被災者は苦しみ   を抱えており、復興の在り方が問われています。
 
   私の関わっています市民団体、「政治の変革をめざす市民
  連帯」(略称:市民連帯、CS)の東京のグループでは、被災地
  復興の在り方をテーマに、昨日2月22日(水)、東京・飯田橋
  の東京ボランティア・市民活動センターで、第5回CS東京懇話
  会を開催しました。参加者は22名でした。
   
  丸山茂樹さん(参加型システム研究所客員研究員)を講師に、
  「被災地復興:大資本主導の復興か、地元住民主体の協同
  による復興か〜岩手県宮古市重茂漁協の『漁船シェアリング』
  の取り組みなどを通して〜」と題して、話していただきました。
   
  この重茂(おもえ)漁協の協同による復興の取り組みは、朝日
  新聞の紙面(2011年5月15日夕刊「漁船シェアリング」の
  記事)やNHKのドキュメンタリー番組「豊饒の海よ蘇れ〜宮古
  重茂漁協の挑戦」(2011年9月6日放送)でも紹介されまし
  たが、昨日の懇話会では、先ずその番組の一部を流しながら、
  丸山さんが、重茂漁協の取り組みについて詳しくご紹介され
  ました。
   
  丸山さんは、今回の東日本大震災の被災した福島、宮城、
  岩手三県の各地を廻られ、詳しい聞き取り調査等をされて
  きましたが、岩手県宮古市の重茂漁協には、震災以前から
  何度も訪れ、調査、交流を行ってきたとのことです。
   
  重茂漁協の漁民たちも今回の震災・津波で、大きな被害を
  受け、漁民たちが所有していた814隻の漁船の内、16隻
  を残して、798隻が失われたそうですが、その残った数少ない
  漁船を個人所有から漁協の所有に移し、共同利用することを
  組合員全員一致で決め、組合員が地区別に小グループを組
  んで漁船を共同利用する漁を続けるとともに、組合員を他県
  に派遣して、中古船を買い集め、また国などの支援を待つこと
  なく、新造船の発注もいち早く行ったとのことです。ただし全組
  合員が1隻づつ持てるようになった段階で、個人所有に戻す
  とのことです。
   
  この漁船の共同所有、共同利用を可能にしたのは、これまでも
  多くの漁獲がある定置網を漁協の所有にして、また水産物の
  加工・貯蔵・販売を漁協の事業として、協同労働で行ってきた
  ことやそれらによってこれまで培われてきた組合員の協同組合
  精神そして、収入をすべて個人に分配してしまうのではなく、
  共済金や漁協の内部留保として蓄積してきたことも大きかった
  とのことです。
   
  しかし同時に漁業は、漁でも養殖の仕事でも、個人の努力と
  技量で、同じ時間働いても、収入は倍ほども違うこともあるとの
  ことで、「協同」だけでなく、「競争」も同時に必要であり、重茂
  漁協の場合、漁船の組合所有だといっても、「悪平等」になら
  ないように、共同利用するグループごとの水揚げに応じて利益
  を配分するようにしているとのことです。カール・ポランニーが
  「悪魔の石臼」と呼んだ、「ファシズム」や「ソ連型社会主義」
  そして「新自由主義型の格差社会」ではない、協同も競争も
  ある「共生社会」が必要だと丸山さんは述べられています。
   
  また重茂漁協では、漁業(第1次産業)だけでなく、加工
  (第2次産業)、流通・販売(第3次産業)を含めた、漁村
  のいわゆる「6次産業化」(1次×2次×3次=6次産業)
  をこれまで、この「6次産業」という言葉ができるはるか前から
  実践してきたとのことです。
   
  重茂漁協ではこれらの活動により、高収入を確保し、都市の
  サラリーマンより多くの年収を稼ぐ人々も少なくないとのことです。
  そのため、若い漁師も、村を離れることなく、定着しているとの
  ことです。
   
  そして重茂漁協では、海の環境保全のために、河川の浄化・
  保全活動や、山林の植林も行い、合成洗剤追放・石鹸利用
  推進運動にも取り組み、昨年5月末には、その運動に取り組ん
  でいる人々を全国から集めて、重茂で、「シャボン玉フォーラムin
  重茂」というイベントも開催したそうです。
   
  また重茂漁協は早くから、青森県六ケ所村の核燃料再処理施設
  への反対運動を続け、「漁協がそこまでしなくてもよいのではないか」
  という批判もあったが、福島第一原発事故によって、不幸にもその
  主張の正しさが証明されてしまったとのことです。
   
  また教育者であった初代組合長の影響もあり、重茂漁協では教育
  を重視し、地元の自治体に、通学バスや学生寮建設のための資金
  や奨学資金を数千万円単位で寄付してきたとのことです。
   
  達増拓也岩手県知事は、重茂漁協の試みなども参考に、地元住民、
  現場重視の復興計画を立て、復興に取り組んでいる(雑誌『世界』
  2011年9月号に、達増知事へのインタビュー記事「答えは現場にある
  〜岩手のめざす人間と故郷の復興〜」)が、一方、村井嘉浩宮城県
  知事は、「選択と集中」によって、中小漁港の切り捨てを行い、大水産
  会社の参入による大規模漁業の展開・水産加工工場の操業など、
  大資本、官僚主導、野村総研などを使った中央主導の復興を行おう
  としており、TPP路線とも通じるその村井嘉浩宮城県知事の復興路線
  なのか、重茂漁協などのような地元漁協主体の協同による復興や達増
  拓也岩手県知事のめざす地元住民重視、現場重視の復興路線を採る
  べきなのかが問われていると今回の丸山さんのお話を伺って思いました。
   
  なお丸山さんは、生活クラブ生協連合会の国際担当をされたこともあり、
  また韓国のソウル大学に留学されたこともあり、日韓の農漁村の対比や
  韓国の農村の置かれている深刻な現状も紹介されました。
   
  後半は質疑応答に充てられ、実際に重茂を訪れたことのある方も参加
  され、また在日の方や東北の被災地にボランティアに行った外国人の方
  も含めて、活発な質疑応答がなされました。
   
  なおIWJのスタッフも取材・撮影に見えられ、編集したうえ、後日、インター
  ネットTVにアップするとのことです。
   

   
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      <第5回CS東京懇話会>  
                                       
被災地復興:大資本主導の復興か、地元住民主体の協同に
  よる復興か〜岩手県宮古市重茂漁協の「漁船シェアリング」の
  取り組みなどを通して〜
 
講師:丸山茂樹さん(参加型システム研究所客員研究員)
日時:2012年2月22日(水)午後6時30分〜8時45分
   (開場6時15分)
会場:東京ボランティア・市民活動センター会議室A
   (JR飯田橋駅隣・セントラルプラザ10階)
地図 http://www.tvac.or.jp/images/infomap_large.gif
参加費:500円
主催:政治の変革をめざす市民連帯・東京
   URL: http://www.siminrentai.com/  
   Eメール:ctstky at yahoo.co.jp 
   
     大きな被害をもたらした東日本大震災の発生から、間もなく
  一年になろうとしていますが、いまだに多くの被災者は苦しみ
  を抱えており、復興の在り方が問われています。
 被災地の農業や漁業は大きな被害を受け、漁民たちは漁船
  や漁具を失い、困難に直面しています。そういう中で、漁協の
  漁業権を侵害し、大手水産会社の参入によって、漁業の復興
  をはかろうとする動きがあります。村井嘉浩宮城県知事は、大
  手水産会社の参入を図ると共に、「選択と集中」を行い漁港を
  五分の一にまで統廃合し競争力の強化を図ろうと「水産業復
  興特区」構想を打ち上げています。それに対して地元漁協は
  反対しています。
   農業においても、農地の集約・大規模化が叫ばれています。
  それにTPP問題が追い打ちをかけています。また大手ゼネ
  コンは、復興需要を狙っています。そういう中で、岩手県宮古
  市重茂(おもえ)漁協は、残った漁船を漁協の所有に移して、
  漁船を漁協組合員でシェアして、助け合いながら、協同による
  復興をはかろうとしています。その取り組みはNHKのドキュ
  メンタリー番組や朝日新聞の紙面でも取り上げられました。
 これらの動きを宮古市重茂漁協をはじめ、岩手、宮城等の
  被災地の詳細な調査をされた丸山茂樹さんを講師にお迎え
  して、具体的な事例を紹介していただくとともに、皆さんと一緒
  に被災地復興の在り方について考えます。





   
  丸山茂樹さん
1937年愛知県生まれ。参加型システム研究所客員研究員。
生活クラブ生協連合会国際担当を経て、1999年〜2001年、
ソウル大学に留学。韓国聖公會大学大学院非常勤講師(協同
組合論・社会運動史)。韓国農漁村社会研究所理事。エントロ
ピー学会元共同代表。東京グラムシ会運営委員会代表。
『運動史論』全17巻(三一書房)の編集執筆に参加。
〔主な共著・訳書〕『協同組合の基本的価値』(家の光協会)、
『協同組合論の新地平』(日本経済評論社)、『生きているグラムシ』
(社会評論社)、 P.エキンズ『生命系の経済学』(訳書・御茶ノ水書房)、
 P.デリック『協同社会の復権(訳書・日本経済評論社)など多数。
   
 


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