[CML 015133] グランサコネ通信―120221

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2012年 2月 21日 (火) 18:07:54 JST


前田 朗です。
2月21日

グランサコネ通信―120221

1)	平和への権利第2回協議

2月19日午後、宗教改革センター・ジョン・ノックスで、「平和への権利に関
する市民社会の専門家と諮問委員会委員との第2回協議会」が開催されました。
昨年8月の諮問委員会前日に行った第1回に続くものです。主催は、スペイン国
際人権法協会AEDIDH、世界キリスト教協議会WCC、平和への権利国際キ
ャンペーン日本実行委員会です。事務局は、ダヴィド・フェルナンデスAEDI
DH、笹本潤JALISA、塩川頼男JALISA、および私。日本からは、小
林さん、増田さん、宮坂さん、後藤さんなども参加。日弁連の東澤さんも。

冒頭にカルロス・ビヤンAEDIDH会長あいさつ、そして笹本潤さんあいさつ。
メインの報告は、ウォルフガング・ハインツ平和への権利宣言草案起草者(ドイ
ツ人権協会顧問、ベルリン自由大学講師、欧州拷問禁止委員会)の報告、クリス
ティナ・パパゾグロウWCC(ギリシア、弁護士)およびカルロス・ビヤン報告
です。テーマはもちろん、20日から始まる諮問委員会で検討対象となるハイン
ツ委員起草の第2次草案です。

2)	国連人権理事会諮問委員会第8会期

20日、国連欧州本部会議室で、諮問委員会第8会期が始まりました。午前中は
司会選出、議題確認など。それから審議が始まりました。平和への権利が最初の
議題で、まずハインツ委員が報告書と第2次草案のプレゼンテーション。

委員の発言に続いて、政府は、キューバ、チュニジア、ウルグアイ、コスタリカ、
スペイン、パキスタン、アルゼンチン、ロシアが賛成意見。この意味は、第1に、
カリブ・中米、アフリカ、アジアの各国が発言したことです。世界中が賛成とい
う形。第2に、これまで反対発言をしてきたEUを黙らせたことです。というの
も、スペインが反対から賛成に回りました。このため、EU全体として反対意見
を出すことが不可能になり、EUは今回沈黙するしかなかったのです。そして、
第3に、前回反対意見を述べたアメリカも発言しませんでした。私の推測では、
EUが分裂したので、アメリカもやりにくくなり、様子見をしたのだと思います。
日本政府はアメリカの猿真似しかできません。

NGOの発言は7つ。まず、国際平和メッセージのカルロス・ビヤン(スペイン
国際人権法協会)、次に私(国際人権活動日本委員会JWCHR)、笹本潤(I
ADL)、東澤靖(日弁連JFBA)、オリバー・カールソン(平和教育グロー
バル・キャンペーンGCPE)、そのあと、国際良心的納税(CPTI、軍事費
拒のグループ)、南アフリカ・インド人協議会(ICSA)でした。日本人が3
人続いたのは話題になりました。事務局も驚いたとのことです。平和への権利問
題に日本の市民社会が力を入れているということが世界に伝わったと思います。
(もっとも、10年以上前には、国連人権委員会や小委員会で、「従軍慰安婦」
問題や在日朝鮮人差別問題について日本人が3つくらい発言することは何度もあ
りました。)

平和への権利の決議は24日金曜日になります。ただ、担当のハインツ委員が金
曜日は欠席だそうで、委員会では、今後のスケジュールを相談していました。ハ
インツ委員が、委員会終了後に草案を手直しして、6月の人権理事会に提出しま
す。この問題は次回から、国連人権理事会の正式テーマとなります。

ちなみに、私の発言はピースゾーンです。日本でやっている無防備地域宣言運動
を紹介して、平和への権利に「ピースゾーンをつくる権利」を入れようというも
のです。国連人権機関で、ピースゾーンを取り上げてきたのは私だけです。「ピ
ースゾーンをつくる権利」という言葉は、昨年8月諮問委員会で発言する直前に
私が作った言葉です。でも、ハインツ委員作成の宣言草案にピースゾーン条項
(「ピースゾーンをつくり、促進すること」)が入りました。今回は、笹本潤さ
んも無防備地域の重要性について発言してくれました。日本では某自民党から某
共産党まで一致団結してピースゾーンに反対し、妨害をしてきますが、国際人権
フィールドで平和についてまじめに考えている人たちはまったく反応が違います。

3)	村山斉『宇宙は本当にひとつなのか—最新宇宙論入門』(ブルーバックス、
2011年)

このところ宇宙論の入門書では売れっ子の著者のブルーバックスです。バークレ
ーの教授ですが、いまは東京大学国際高等研究所数物連携宇宙研究機構というい
かめしい怪しい組織の責任者です。少しはかわいげのある名称にすればいいのに
と思いますが、東大の限界でしょう(笑)。本書は全くの素人向けにわかりやす
く書かれた宇宙論入門です。全くの素人向けにわかりやすいということは、たと
え話を多用するなど、厳密さを大いに犠牲にしているのですが、仕方ありません。
そうでないと素人は読めません。本書はわかりやすくて、楽しく勉強できます。
昔の入門書はビッグバンが中心でしたが、今や、銀河団、宇宙の大規模構造、暗
黒物質、暗黒エネルギー、多次元宇宙、多元宇宙といった話になります。宇宙論、
本当にどこまで行くのだろうと思います。とんでもない仮説が検証され、裏付け
られたり、常識が見事に覆されたり、ついていくのが大変。ブルーバックスには
同じテーマのものがすでに何冊もあるのですが、それぞれの語り口ということか、
次々と出版されています。おもしろかったのは宇宙交響曲の話。

4)	CERDポルトガル政府報告書

人種差別撤廃委員会CERDのポルトガル政府報告書(CERD/C/PRT/12-14)は、
20~21日に審査。1条の部分で、2003年の労働法改正により、EU指針
に従って直接差別と間接差別を区別したことが記されています。

2条について、憲法13条は、平等と非差別の原則を掲げています。行政手続法
15条が、市民に対する人種差別を禁止しています。労働改正、刑法改正などが
行われています。刑法240条には人種差別の禁止に加えて、ジェンダー差別の
禁止などが追加されました。刑法246条では、人種差別犯罪で有罪とされた者
に、一時的に選挙権を停止できることにしました。量刑に関する刑法71条が改
正されました。その他、移民法改正、移民統合計画、人身売買反対計画、ロマ、
被害者補償などの詳細な記述が続きます。

4条について、2007年9月4日の刑法改正があげられています。刑法240
条は、人種差別に同期を有する犯罪に、皮膚の色、民族、国民的出身、性別、性
的志向などの形態の犯罪を追加しました。ヘイト・クライムおよび「アウシュヴ
ィツの嘘」規定が含まれます。

下記の上部中、<>部分が追加された部分。

刑法240条 人種、宗教または性的差別
1 (a)人種、<皮膚の色、民族的または国民的出身>、宗教、<性別または
性的志向>に基づいて、人または集団に対して差別、憎悪または暴力を扇動また
は鼓舞する団体を設立し、または組織的宣伝活動を行った者、または
(b)前項a)で述べられた団体または活動に参加した者、または財政拠出などの
支援をした者は、1年以上8年以下の刑事施設収容とする。
2.公開集会、文書配布により、またはその他の形態のメディア・コミュニケー
ションにより、または公開されるべく設定されたコンピュータ・システムによっ
て、
(a)人種、皮膚の色、民族的または国民的出身、宗教、<性別または性的志向
>に基づいて、人または集団に対して、暴力行為を促進した者、
(b)人種、民族的または国民的出身、宗教、<性別または性的志向>に基づい
て、特に戦争犯罪または平和に対する罪および人道に対する罪の否定を通じて、
日地または集団お中傷または侮辱した者、または
(c)人種的、宗教的<または性的>差別を扇動または鼓舞する意図をもって、
<人種、皮膚の色、民族的または国民的出身、宗教、性別または性的志向に基づ
いて、人または集団を脅迫した者は、6月以上5年以下の刑事施設収容とする。

刑法246条は、240条で有罪とされた者につき一定期間選挙権を停止するこ
とができる規定です。人種主義団体の禁止については前回報告書(CERD/C/447/
Add.1)に書いたとのことです。

人種的動機による刑罰加重。刑法132条fの殺人罪、刑法132条2項の身体
の完全性に対する犯罪について、人種的動機は刑罰加重事由としています。その
他の犯罪についても、人種的動機は一般的な加重事由とされています。量刑は刑
法71条に規定されていますが、犯罪の目的及び動機が加重事由として考慮され
るとしています。

また、1996年7月6日の法律第20/96号は、外国人排斥、人種主義犯罪
事件の刑事手続きについて、NGOが補助として尋問すること(私訴)を認めて
います。

リスボンで人種主義リーフレットを配布した事件で、2005年7月6日に、リ
スボン刑事裁判所は刑法240条の人種主義犯罪で被告人に有罪を言い渡し、2
005年9月26日に確定しています。

2002年に、中北部のフンダオで皮膚の色に関連して下劣な理由で殺害された
アフリカ出身の労働者の事件で、2006年2月14日、フンダオ刑事裁判所は
人種主義犯罪であるとは認めず、19年の刑事施設収容としました。

ジスベルタ事件は、人種主義ではなく、ブラジル出身の女性トランスセクシュア
ルの人物に対する、若者による殺害または遺棄致死事件で、若者たちについて2
つの刑事裁判が進行中です。

2005年6月18日、リスボンで市民の不安を訴え安全を求める「国民戦線」
主催のデモが行われました。リスボン市長が、繰り返される恐れがあるので警察
規制が必要かどうか、検察庁に助言を求めました。刑法240条の犯罪が発生し
そうであり、予防が必要と考えたためです。検察庁諮問委員会は、当該デモには、
刑法240条の人種主義犯罪を発生させる具体的な可能性があると助言しました。
一般的意見ではなく、将来のための規制ガイドラインです(2005年11月2
4日検察庁法律意見832005号)。

ポルトガル検察庁は次のように述べました。――平穏なデモを実施するために警察
規制をするために、事前に警察に届け出るなどの条件があるが、デモ自体は警察
当局に依存しない。警察によるデモの予防は、デモが法律、道徳、他の市民の権
利を侵害する場合である。合法でもであっても、実際に市民の権利を侵害すれば、
警察はデモを規制しなければならない。ポルトガル憲法は、武器を持たない平穏
なデモをデモ主催者に義務付けている。デモは平穏に行われ、武器やいかなる形
態の暴力も排除しなければならない。デモを予防する可能性は、デモが事前に当
局に届け出ていない場合である。デモの間に犯罪が行われれば通常の刑事手続き
がとられる。



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