[CML 015096] グランサコネ通信―120219

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2012年 2月 19日 (日) 20:59:38 JST


前田 朗です。
2月19日

グランサコネ通信―120219

1)	平和への権利キャンペーン一行

17日夜に、平和への権利キャンペーンの仲間がジュネーヴ入りしました。19
日午後に、NGO主催による国連人権理事会諮問委員会委員との協議ミーティン
グを行います。昨年8月に続く試みで、今回も主催はスペインと日本のNGOが
中心です。また、21日午後には、国連欧州本部の会議室を借りてNGOフォー
ラムも開催します。

2)	CERDメキシコ政府報告書

メキシコ政府報告書(CERD/C/MEX/16-17. 7 December 2010)は、95ページあ
ります。事前に委員会から出された質問項目に条約4条関連の項目が含まれてい
ません。

2条に関して、報告書によると、2001年8月14日に憲法1条が開催され、
民族、国民的出身、ジェンダー、年齢、障害、社会的地位、健康状態、宗教、意
見、志向、市民的地位その他の理由によるいかなる差別も禁止する条文が入りま
した。2002年11月26日、差別予防撤廃法草案が作成され、2003年6
月11日に採択されました。法律に基づいて、2004年3月27日、差別予防
国家委員会が設置されました。差別予防撤廃法は、29項目に及ぶ差別を列挙し
て、禁止しています。たとえば、

1.公私教育へのアクセスや、就学許可・奨学を妨げること。
2.平等原則に違反し、従属的地位を強化するような役割を果たす教育内容、教
材、方法をつくること。
3.自由な雇用(職業)選択を禁止し、雇用へのアクセス機会を制限すること。
4.賃金、給与、平等労働条件に関して差異を設けること。
5.職業訓練計画へのアクセスを制限すること。
6.リプロダクィヴ・ライツに関する情報へのアクセスを否定したり制限するこ
とや、子供の数や生む期間を決める権利行使を妨げること。
7.医療サービスへのアクセスを否定したり条件を課すこと、自己の医療措置に
関する決定に参加する権利行使をさまたげること。
8.市民的政治的その他の結社への平等条件での参加を妨げること。
9.政治参加の権利、特に宣教の投票や立候補の権利、政府の政策立案や履行に
おける地域や参加へのアクセスを否定したり条件を課すこと。
10.所有権や資産運用処分権の行使を妨げること。
11.司法運営へのアクセスを妨げること。
12.自己に影響を与える司法手続きや行政手続きにおける聴問権を否定するこ
とや、通訳の援助を否定すること。
13.人間の尊厳や統合への侮辱にあたる慣行を押し付けること。
14.配偶者やパートナーの自由な選択を妨げること。
15.4条によって規定された状況で、メディアにおけるメッセージや映像を通
じて、攻撃し、嘲笑し、暴力を促進すること。
16.表現の自由を制限し、思想や宗教に関する良心を妨げること。
17.宗教職務の自由を妨げること。
18.国内法や国際法の適用によるとき以外に、情報へのアクセスを制限するこ
と。
19.特に子どもが、健全に成長発達する最低条件を妨げること。
20.社会的安全や医療保障へのアクセスを否定すること。
21.食糧、家屋、レクリエーション、適切な医療の権利を制限すること。
22.公共サービスへのアクセスを否定すること。
23.個人を搾取することや、虐待すること。
24.スポーツ、レクリエーション、文化活動への参加を制限すること。
25.公的活動や私的活動における言語、慣習、文化の利用を制限すること。
26.自然資源の開発、経営、利用について利用権、許可、認可を制限したり否
定すること。
27.憎悪、暴力、侮辱、嘲笑、名誉棄損、中傷、迫害、排除を扇動すること。
28.個人の身体上の外観、衣装、会話、ジェスチャー、性的志向の公開を理由
として心身の虐待を行うこと。
29.一般に、4条のもとで差別的と考えられる行動。

つまり、かなり包括的な差別禁止法です。
2010年4月8日、憲法改正草案により、国際人権法の理解を国内法に取り入
れることで、人権保障を強化しようとしています。

4条に関して、差別予防撤廃法9条は、4条の状況で、伝達メディアにおけるメ
ッセージや映像を通じて、侵害、嘲笑、暴力扇動を引き起こす」ことは差別行為
であるとしています。2009年9月10日に改正された刑法138条は、一定
の条件のもとでの殺人等を重罪としています。その条件の一つは次のようなもの
です。「8.反抗者が被害者の社会的経済的地位に動機づけられた場合、ヘイト
(憎悪)があったものとする。特定の社会集団との関係、社会的民族的出身、国
籍または出生地、皮膚の色または遺伝的特徴、性別、言語、ジェンダー、宗教、
年齢、意見、障害、健康状態、身体的外観、性的志向、ジェンダー・アイデンテ
ィティ、市民的地位、職業。」

メキシコ政府報告書は5条関連の詳細な記述に続いて、前回審査における委員会
の勧告への回答も掲載していますが、4条関連は見当たりません。

3)	川端幹人『タブーの正体! マスコミが「あのこと」に触れない理由』
(ちくま書房、2012年)

類書はたくさんありますが、新書であるにもかかわらず、かなり幅広く事例を提
供して、わかりやすい1冊です。著者は『噂の真相』元編集長です。研究者と違
って、元編集長で、現在もジャーナリストとして活躍しているだけあって、さま
ざまな具体例が、既存の著作に出ていない裏話も含めて紹介されています。しか
し、何より本書の特徴は、自分の経験を「暴露」していることです。右翼による
『噂の真相』襲撃事件の経過、そしてその後の著者自身の「転向」を具体的に書
いています。「口では「圧力には屈しない」「言論の自由を死守する」と強気の
言葉を並べていても、内心はトラブルがこわくてこわくてたまらない。だから、
『噂の真相』が休刊した時、私は心の底から安堵し、二度とタブーなんてものに
関わるまいと心に誓った」といいます。自らを「へっぴり腰」とまで言います。
しかし、著者は逃げているのではありません。「へっぴり腰」であっても闘いつ
づけること、そのために本書を書いています。へっぴり腰でもかっこ悪くても、
じたばたしながら、それでも闘うとの宣言です。

そのために著者は、メディアにおけるタブーがなぜ、どのように成立しているの
か。その実態とメカニズムを問い続けます。「暴力の恐怖」「権力の恐怖」「経
済の恐怖」という3つの視点で整理しています。暴力の恐怖は言うまでもなく右
翼団体や宗教団体による実力行使による被害、それを心配しての自粛という問題
です。最たるものが皇室タブーです。権力の恐怖は、警察、検察、財務省による
権力的介入への恐怖。国策捜査もここに入ります。そして、経済の恐怖とは、ス
ポンサーからの圧力、広告引き上げなどです。東電、電通、芸能プロダクション
によるメディア操作の実態が描かれます。こうした事実を踏まえたうえで、ジャ
ーナリストはいかにあるべきかという問題になりますが、著者はジャーナリスト
論を高々と掲げて論じることはしません。へっぴり腰でも、なんとか頑張るには
どうしたらいいのかが問題だからです。インターネットの普及により、ますます
ジャーナリズムが低落し、利益至上主義という企業の論理が支配している中で、
どこに活路を見出すのか。メディアの未来はとても暗いが、ただ一つ、可能性は
「破る」ことだといいます。タブーを破って例外状態を作り出すことは、たった
ひとりのジャーナリストでもできるからです。もちろん、たった一人の反乱はす
ぐに鎮圧されてしまい、またタブーが支配することになります。マスメディアか
らは無視されてしまいます。「だとしてもそれは無駄ではないはずだ」。タブー
を破ろうとすれば、必ず軋轢や圧力が生じ、「そのことによってタブーの正体が
あぶりだされるからだ」と。

「とにかくギリギリまでタブーに近づくこと、そしてタブーの正体を常にあらわ
にし続けること。最後にもう一度いうが、タブーの肥大化・増殖を食い止めるた
めには、まず、そこから始めるしかない。」

「無様な敗北を繰り返してもなお、タブーに迫ろうとする」人にはお勧めの1冊
です。





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