[CML 015058] 第二十回 CS 神奈川懇話会「ベーシックインカムの思想史」報告(転載)

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2012年 2月 18日 (土) 03:08:31 JST


紅林進です。
   
  2月12日、川崎市の高津市民館において開催されました市民連帯・神奈川
  主催の第二十回CS神奈川懇話会「ベーシックインカムの思想史」の報告を
  「政治の変革をめざす市民連帯」(略称:市民連帯、CS)の会員MLより転載
  させていただきます。
   
   
  (以下、「政治の変革をめざす市民連帯」の会員MLより転載)
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2.12 第二十回CS神奈川懇話会
「ベーシックインカムの思想史」報告

2012年2月12日、川崎市の高津市民館において、市民連帯神奈川
  懇話会「ベーシックインカムの思想史」を開催しました。話題提供者は、
  生存権フォーラム事務局長の高橋聡さん。「寄せ場」寿町で支援活動
  をしている方や、韓国「ナヌムの家」のボランティア経験者など、参加者
  は全体で11人でした。
 
「ベーシックインカム」(以下、BI)とは、所得や就労状況にかかわりなく、
  すべての人を対象に一定水準の現金を給付する政策で、それにより
  最低限度の生活(所得)を保障するという構想です。その場合、完全な
  BIには次の条件があります。すなわち、,垢戮討凌佑傍詆佞気譴襦
  個人単位で給付される、L犠魴錣乃詆佞気譴襦↓じ酋發乃詆佞気譴襦
  ダ験兇砲錣燭蠶蟯的に給付される。また実践的には、ジェンダー運動
  や障碍者運動の中から、BIが要求されてきた経緯があります。さらにBI
  はリバタリアンも主張され、逆に社会福祉論からの批判もあります。

懇話会では最初に、高橋聡さんが「ベーシックインカムの思想史」と
  題して報告しました。その冒頭で、カール・ポラニー著『大転換』から、
  18世紀末から19世紀前半までイギリスに存在した「スピーナムランド制」
  を、初めて大規模に存在した事実上のBIとして詳しく紹介。これは、
  小作農の家族に対して、パンの価格を基準にした賃金扶助をする制度で、
  財源は救貧税です。ポラニーによると、人類史上、個人的な交換・交易・
  取引は普遍的でも必然的でもありません。市場は社会を破壊し、社会は
  破壊に抵抗します。つまり、市場イデオロギーはユートピアの夢を見続け
  ますが、市場規制は自然発生し続けます。こうした市場に対する「抵抗」
  「規制」の観点から、BIも捉え返す必要があるでしょう。

18世紀〜19世紀、BIの先駆的な提唱者としては、トマス・ペイン、トマス・
  スペンス、フーリエ主義者のジョセフ・シャルリエ、エドワード・ベラミー、
  そしてジョン・スチュアート・ミルがいます。彼らの主張の特徴は、土地と
  自然権によるBIの正当化と、「飢餓の恐怖による労働強制」への疑義
  です。また、初のBI要求の大衆運動は、1920〜30年代イギリスで展開
  された、C・H・ダグラスによる社会クレジット運動でした。その場合の
  国民配当の根拠は、「共同社会の共通文化遺産は万人に属する」という
  考え方にあります。それと同時期、社会主義ヒューマニズムの立場から、
  バートランド・ラッセルとエイリッヒ・フロムがBIを提唱します。

他方で第二次世界大戦中、ケインズ・ベヴァリッジ型の福祉国家論が
  登場します。これに対し、ジェームズ・E・ミードが「社会配当」を提案し、
  ジュリエット・リズ・ウィリアムズがBI型給付を主張。また1962年、ミルトン
  ・フリードマンは、負の所得税を提唱しました。そして現代思想の中では、
  フェミニズムの立場から、ダラ・コスタが「家事労働に賃金を」と主張します。
  また、「機械化と省力化のため、有給労働が不足する」と認識するのが、
  ダグラス、ガルブレイス、ゲッツ・ヴェルナーたちで、さらにアンドレ・ゴルツ
  は「稼得至上イデオロギー下では、BIで生きる人々が排除される」と警告
  しました。

報告の最後に高橋さんは、BI反対論者による主要な批判点を紹介しま
  した。それは、BIは社会サービス解体論である、∧〇磴慮酋皺修任△襦
  事業主の負担軽減になる、というものです。これに対し、小沢修司は
  現在、「車の両輪」論すなわちBIと社会サービスの両立を唱え、「労働力
  確保に必要な費用は事業主が負担すべき」と主張しているそうです。

後半の質疑応答では、まず生存権フォーラムからの参加者が、ポラニー
  の「生存権と賃労働は共存できない」という主張、ポラニーも加わった
  社会主義経済計算論争における「労働と分配の分離」という重要点、
  そして「土地公有化」の意義に関し、報告の補足としてコメントしました。
  次に、社会サービス(現物給付)と現金給付、「必要に応じた分配」と
  ミーンズテスト、小沢修司の財源論とBI月8万円という額をめぐって議論。
  さらに、格差社会と「スピーナムランド制」失敗の教訓、現代日本の高い
  生活コストと「生存権所得」の意義、学問の独立を保障するBIの必要性
  を、主張する参加者もいました。

終了後の交流会では、寿町・山谷・釜ヶ崎など「寄せ場」運動の現状や、
  明治学院大での社会福祉論・労働経済論・社会主義論などの研究に
  ついて、話題になりました。また、「派遣村」運動や震災復興支援、
  あるいはBIをめぐる韓国の情況まで話題になり、有意義な時間を過ごし
  ました。懇話会では今後、BIのような理論的なテーマも取り上げていき
  たいと思います。

佐藤和之(CS神奈川世話人)

 


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