[CML 014939] 土地への愛着は避難より除染の理由にならない

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2012年 2月 12日 (日) 12:32:37 JST


福島第一原発事故で拡散された放射能汚染への対処をめぐって避難を重視する立場と除染を重視する立場で激しい論争が繰り広げられている。ここでは除染を重視する立場を除染派、避難を重視する立場を避難派と呼ぶ。除染派の根拠として「土地への愛着」が挙げられるが、これは理由にならない。 

第一に「土地への愛着」の実態を検証する必要がある。放射能汚染によって避難すべき福島原発周辺地域住民に土地への愛着が強いか否かは社会学的な実証がなされた訳ではなく、直感や個人的体験で語られる傾向がある。震災前に福島県内の村が過疎で悩まされていなかったか、若者が仙台や関東地方に流出する傾向がなかったのかという点が問題になる。何もなければ出稼ぎに出るような住民が原発事故を境に愛郷心に目覚めることは奇妙である。愛着ではなく、コミュニティーによる束縛ではないかとの指摘もある。 

第二に福島原発周辺地域住民に土地への愛着が強いという分析がなされたとしても、それは放射能汚染下でも福島原発周辺地域を離れない人々の動機を説明するものに過ぎない。この種の傾向があるとしても、除染か避難かという政策の結論を決定付けるものにはならない。そこから「避難ではなく、除染を」という政策論を導き出すならば現状追認である。土地への愛着のために離れられないという事実があるならば、それが価値あることか、意味あることかを検討しなければならない。 

これは国民の半数以上が軍備を必要とし、日本国憲法第9条を改正すべきと考えているとしても、改憲を支持することにならないことと同じである。当然のことながら、呪文のように護憲、護憲と唱えることが正しい対策ではない。国民の多くが非武装であることに安全保障上の不安を覚えているという実態があるならば、その不安を払拭することが求められる。たとえば軍隊を廃止して平和を実現しているコスタリカの事例を紹介するなど取り組みなどは有益である。 

避難についても住民が自発的に避難しない理由があるならば、それを解消する方策を考えることになる。それが避難の権利の発想である。国が避難しようとする人々の生活を積極的に保障することを求めるものである。避難の権利は多数の人々が福島第一原発周辺地域にとどまっているという現実を踏まえたものである。福島の放射能汚染は強制移住させるレベルとの見解さえある中で、土地に留まりたいという人々にも配慮した概念が避難の権利である。避難派は避難の権利という概念を提示することで、福島の現実に対応している。 

第三に福島原発周辺地域に土地への愛着という共同体意識があって、それが避難しない動機になっているならば一層、「避難の権利」を保障する必要が高くなる。何故ならば土地への愛着は社会学的な分析であって、個々人のレベルに還元すれば「避難したい」という少数意見も存在するためである。 

コミュニティーとして土地への愛着が強ければ強いほど避難を希望する少数者が意見を言うことは難しくなる。誰もが避難の権利を有しており、その行使を妨げないようにすることが大切になる。避難を呼びかける主張は福島の現実を無視した空論ではなく、現実を踏まえた人権保障の試みである。 

最後に除染派の中にある奇妙な人権感覚を指摘する。除染派は避難派が避難の権利という独善的な天賦人権論に固執していると非難する。しかし、避難派への批判として人権が持ち出されることには違和感がある。その投稿姿勢が繰り返し辛辣に批判された人物がいる。その批判には学ぶべき内容が数多く含まれていた。ところが、被批判者は批判から学ぶどころか、批判者の問題意識に正面から答えようともしなかった。 

むしろ批判の中にある揶揄や嘲笑的な表現を取り出して、批判者の人権感覚を激しく糾弾した。この批判者と被批判者の論争は周囲からタオルを投げられるほど不毛なものになったが、その要因は相手の問題意識に応えずに相手の発言の問題点だけを指摘する被批判者側に多くを負っている。被批判者のように相手の発言の特定部分をクローズアップして人権を理由に糾弾する方が絶対不可侵の天賦人権論の錯覚である。 

このような姿勢は悪徳不動産業者と共通するものである。自社の悪徳商法は棚に上げ、消費者の姿勢の問題に責任転嫁する。それ故に東急不動産だまし売り裁判原告として悪徳不動産業者と闘ってきた立場として、管見は被批判者側に否定的な印象を抱く。 

第一に東急リバブル迷惑隣人事件についてである。東急リバブルは物件の仲介に際して迷惑隣人の存在を説明せず、説明義務違反で大阪高裁から損害賠償を命じられた。この判決は東急不動産だまし売り裁判提訴の直前に言い渡されたもので、東急不動産だまし売り裁判に際しても東急の不誠実な体質を示すものとして提示された。 

これに対して東急リバブルの住宅営業本部事業推進部契約管理課課長は2004年12月12日、林田力に東急リバブルの説明義務違反を棚に上げ、「買主は隣人をビデオカメラで撮影するようなことをしていた」と主張した。論点は東急リバブルが仲介時に説明義務を果たしたか、である。買主が購入後に何をしようと、その前の仲介時に東急リバブルが果たす説明義務には影響がない。事実かどうかも分からない顧客である筈の買主の行動を非難することは筋違いである。 

第二にゼロゼロ物件業者が東京都から宅建業法違反で業務停止処分を受けた事件がある。それを伝えたブログ記事には「借り主の実態も検証して下さい」と賃借人にも問題があるかのように誘導するコメントが執拗に描き込まれた(住まいの貧困に取り組むネットワーク ブログ「シンエイエステートとグリーンウッドに対して東京都が行政処分」)。 
http://housingpoor.blog53.fc2.com/blog-entry-106.html 
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林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』
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