[CML 014713] 学習院大教授の田崎晴明さんのNHKへの怒りに、ひとこと

T. kazu hamasa7491 at hotmail.com
2012年 2月 2日 (木) 13:18:10 JST


ni0615です

一文をしたためましたので、お読みくだされば幸いです。

 

==========================

学習院大教授の田崎晴明さんのNHKへの怒りに、ひとこと

==========================

 

NHK『追跡!真相ファイル: 低線量被ばく 揺れる国際基準』

については、学習院大学理学部教授、田崎晴明さんの論評に

触れておかざるをえません。

 

※番組の映像は非公式にWEBにアップされています

http://www.iza.ne.jp/jump/http%253A%252F%252Fwww.dailymotion.com%252Fvideo%252Fxnbnjg_20111228-yyyyyy-yyyyyyy_news

(クリックして動画サイトへ)

 

田崎教授は、この番組に大変「怒って」いらっしゃる。そして

怒りを放送翌日のweb日記に書きました。

 

>これを本気で「驚くべき事実」だと認識したなら、番組制作

者は犯罪的なまでの知識不足・準備不足ということになる。< 

>ICRP の体質を批判するのは結構だが、嘘をもとにした批判

は無意味。 <

(いずれも)

http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/d/1112.html#29
 

人さまが日記に書いたことを、いちいちとやかく言う必要は本

来ありませんが、この「田崎日記」はひとり歩きして、いまや

原発推進派によるNHK攻撃の「月光仮面」か「白馬童子」にな

っています。

 

例えば、池田信夫氏は「この『追跡!真相ファイル:低線量被

ばく 揺らぐ国際基準』を強く批判したのは学習院大学の田崎

晴明氏である。」といって、田崎氏の日記を長々と引用し、

「BPO(放送倫理委員会のこと)はNHKの捏造を調査せよ」と

まで息巻いています。
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51765226.html

 

ここまで来ると、田崎教授自身も大いに迷惑なのではないかと

思います。私も、そのまま「原発推進派」による「飛び道具

(武器)」として「田崎日記」が使われるのは物騒ですから、

見過ごすわけには参りません。

 

そこで私は、年末に田崎さんの日記を読んだ時に感じたことを、

ここに思い切って書き記すことに致しました。1カ月のあいだ

遠慮していたのですが。

 


----------------------------------------------

 

まずはじめに、

NHK『追跡!真相ファイル: 低線量被ばく 揺れる国際基準』、

番組に対する私の受け止めを記します。

 

【番組内容について】

 

1、低線量被曝のリスク評価については、現在のICRP(国際放

射線防護委員会)でも、「放射線に甘いのではないか」という議

論になっている。
2、低線量被ばく地域の疫学調査がスウェーデンで行われたが

(トンデル博士ら)、そこではICRPが規定するリスク以上の発

がん率が有意に示された。 
3、スウェーデンではトナカイを放牧する人たちに高い癌発生が

起こった。 
4、カナダの原発周辺でも小児がんが2倍に増えた(脳腫瘍の少

女登場)。 
5、ICRPは1880後半に被曝リスクの見直しを行ったが、それは

広島長崎のそれまでのデータが間違っていたことがわかり

(専門的にはそれまで絶対的データだった「T65D」から「DS86」

への訂正)、それに基づく再検討だった。 
6、そのとき、高線量被曝ではリスクの係数を2倍に引き上げたが、

低線量被曝ではそのまま据え置いてしまった。低線量被曝は線量

当たりの効果が高線量被曝の半分だ、という理由からだった。

(専門的にはDDREFのこと) 

7、当時のICRP委員だった人たちの証言によれば、原子力産業界

からリスクの引き上げをしないようにという圧力があった。 
8、また証言によれば、低線量被曝の領域ではそもそも確かなデ

ータがないので、半分にする根拠もなければ、それを否定する根

拠もなかった。 


以上は私の受け止めです。

 

田崎教授は次のように受け止めました。誤解を防ぐために長い引

用としましたことをお許しください。

 

>>

ここでいう「驚くべき事実」というのは、

「ICRP が採用している低線量の被ばくによるガンのリスクは、

広島・長崎での被爆者(LSS 集団)の追跡調査の結果から得られ

たリスクの約半分だ」

ということ。でも、こんなのは、専門家だけが知っていた知識で

はないし、まして機密情報でもない。被ばくリスクについて真面

目に考えている人ならだいたいは知っている「常識」の一つなの

だ。

 

(一部では)かの有名な「わかりやすい解説」の

被ばくによってガンで死亡するリスクについて 
にも、書いてあるくらい(読んでね)。 
 

公式の理屈は、

低線量の放射線をゆっくりと浴びた場合は、強い放射線を一気に

浴びた場合よりも健康被害が少ないので、それを補正するために

 DDREF(線量・線量率効果係数)で割ることにする。 ICRP 

では DDREF を 2 に選ぶ
ということ。

 

一応、動物実験などの知見がもとになっているとされるが、

DDREF の概念がかなり曖昧であることは確か。「体制派」の報告

書を見るだけでも、米国 BEIR は(確か)DDREF を 1.5 くら

いに取ろうと言っているし、国連(UNSCEAR)はそもそも DDREF

の概念を認めていない。まあ、そのくらいのもの。「えいやっ」

と半分にしていると言って大きな誤りはないと思う。

 

くり返すけど、これは「関係者に取材して」はじめてわかるよう

な話じゃなくて、ぼくみたいな素人が(ほとんどは無料で公開さ

れている)文献を短期間に読んだだけでわかるようなこと。

 

これを本気で「驚くべき事実」だと認識したなら、番組制作者は

犯罪的なまでの知識不足・準備不足ということになる。そのよう

な準備のままこういった深刻な問題に関する番組を作ったとした

らまったく許し難い。おそらくは、さすがにこれくらいのことは

知っていたが、番組の中にスクープ的要素を取り入れて山場を作

らなくてはいけないということで、敢えて「驚いてみせた」とい

うのが事実だろうと推測(あるいは、邪推)する。しかし、そう

だとしたら、それはやっぱり欺瞞だ。 ICRP の体質を批判する

のは結構だが、嘘をもとにした批判は無意味。

 

いずれにせよ、番組制作者は批判されるべきだ。ぼくは、こうい

うのは大嫌いなので、強く批判します。 
http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/d/1112.html#29

 

 

 

そこで私は、田崎教授に2点申し上げたい。
(1)「驚き」は嘘か?
(2)「常識」はいつ作られたか? 


--------------------------------------------------------------------------------

 

(1)「驚き」は嘘か?

 

田崎教授は

「こんなのは、専門家だけが知っていた知識ではないし、まし

て機密情報でもない。 被ばくリスクについて真面目に考えて

いる人ならだいたいは知っている「常識」の一つなのだ。」

と仰いますが、それは間違いです。

 

進んでICRPの勧告書を読むような人ならば常識かもしれませ

んが、NHKの番組を見る人、特に子どもの被曝を心配する若い

母親たちにとっては、まったく初めての情報です。知っていた

人がいたとしたら、国民のおそらく0.1%にも満たなかったの

ではないでしょうか?

 

※ICRPの文書は、一部の学者や学会、そして日本アイソトー

プ協会によって、その解釈権、広報権、出版権が実質上独占さ

れています。国民の命を制し、国の法律を律している公共的知

識財でありながら、著作権法で商業的に守られ、公立図書館に

も殆ど備えられておりません。茨城県では昨年の5月現在、県

立、市立の図書館には1冊もありませんでした。法律と同じよ

うに、国民ならすべて無償で閲覧できるようにすべきです。

 

 

私は、新聞にこのこと(DDREFの解説)が書かれていたことを

しりません。TVでこのことが解説されたことを知りません。一

度でもあったでしょうか? 一般国民が聞いたのは、「少ない

線量は一度に大きな線量を浴びたのよりは影響が少ない」とい

う、TV御用学者の連呼だけで、科学的説明は一度だってありま

せん。

 

田崎教授が、国民に対して「 DDREF を 2 に選んだ」ことを

解説する努力をNHKがこれまでしてこなかったことに対して御

怒りになるのなら、私はその怒りに全面的に賛同します。

 

しかし、国民の殆どが知らないことを「常識」だといって、

NHKを非難することには全面的に反対します。
田崎教授という方は、けっして知識の「上意下達」がお似合い

になるお人柄ではないと思いますからよけいです。

 

番組のアシスタントとして登場した作家の室井佑月さんは、NHK

の主婦向き番組にも出ており、知識レベルとしても視聴者を代

表する方です。そうした方を起用して番組を造るということは、

番組自身が視聴者との対話だからなのです。

 

この内容が30分番組として作られたことに対して、私は番組制

作者に敬意を表明します。専門用語をできるだけ排する努力を

感じました。そうした努力があって初めて、総合テレビで放送

できたのだと思います。茶の間でみる番組になったのだと思い

ます。専門用語の解説を加えながら番組をつくったとしたら、

1時間をゆうに超える長さとなったでしょう。総合テレビでは

流されず、地味なETV番組として、人々の目に殆ど触れなかっ

たかと思います。

 

番組は、DDREF(線量・線量率効果係数)という専門用語を使わ

ないという手法によって、DDREFの成り立ちを説明したのです。

 

それは「大多数の国民にとって初めて知った驚き」だったでしょ

う。番組の使命は、「視聴者にとっての驚き」を伝えるのであっ

て、「番組制作者の驚き」を伝えるのではありません。

 

田崎先生は学者ですから、いつも「ご自分の驚き」のみを正直に

表明されているのでしょう。それはそれで、学者が御用学者にな

らない唯一の道ですから、わたしたち一般人にとっては、とても

ありがたい存在です。

 

ただ、マスコミュニケーションに携わるスタッフの場合は、大学

教授とは位相が幾分か異なるのです。どうか、その点は田崎先生

にも、弁えていただきたいと思います。

 

 

※インタビューの和訳の問題ですが、要約的なテロップを付けた

ことも私は適切だったと思います。番組の長さや分かりやすさを

キープするためです。それにはいつも際どさがともなうでしょう

が。

 

※付記として田崎教授は次のように書いています。しかし、田崎

先生の要求は30分番組ではとても叶えられないと思います。私は、

DDREFという言葉を使わずにそれを説明し、番組を進行したのは

正解だと思ってます。

 

>>

(付記:「そういうのは、田崎が放射線リスクの話に詳しすぎる

から出てくる感想で、普通の人は DDREF なんか知らないよ」と

いうご意見もあるみたい。いや、別に NHK の視聴者が DDREF 

を知ってるべきだとは思ってない。でも、こういう番組の作りを

すると、「こうやって専門的に放射線のことを追いかけているス

タッフにとっても『驚くべき事実』が取材で明らかになった!」

と受け取る人が多いだろう(というか、実際いらっしゃた)と思

うわけです。「半分にしていた」ことは、NHK の放射線関連番

組のスタッフなら絶対に知っているはずなので、そういう報道

の仕方は随分と誤解を与えるだろうということ。 DDREF につい

てはスタジオで基礎知識として説明すればよかったと思うよ

(で、盛り上げるのは、もっとあと)。)

<<


 

(2)「常識」はいつ作られた?

 

もう1点は田崎教授が「常識」という、その常識はいつ作られた

のかという問題です。

 

結論から申し上げれば、ICRPにおいては1990年勧告を書きあげ

るまでは「常識」ではなかった。1990年勧告の準備段階を考え

ても、1988年のUNSCEAR(国連科学委員会)の報告書が出るま

では「常識」ではなかったようです。
(中川保雄『増補 放射線被曝の歴史』参照)

 

つまり1988年までは「DDREF」という術語がなかったのですか

ら、現在のように高線量被曝と低線量被曝がグラフ上で2本の線

で描かれるのが「常識」だったのではなくて、高線量被曝と低線

量被曝とが繋がった1本の線で描かれるのが、「常識」だったと

いうことです。ICRPの文書もそれを裏づけています。

 

***

(70) 高線量・高線量率で決定されるがんリスクから低線量・

低線量率に適用されるリスクを予測するため,線量・線量率効果

係数(DDREF)がUNSCEARによって使用されてきた。一般的に,こ

れらの低線量・低線量率におけるがんリスクは,疫学,動物及び

細胞に関するデータの組合せから,DDREFに依るとされる係数の

値だけ低減されると判断される。委員会は1990年勧告で,放射線

防護の一般的な目的にはDDREF=2を適用すべきであるという大

まかな判断を下した。
(ICRP 2007勧告 P18)

***

 

田崎教授は、

>>

低線量の放射線をゆっくりと浴びた場合は、強い放射線を一気に

浴びた場合よりも健康被害が少ないので、それを補正するために 

DDREF(線量・線量率効果係数)で割ることにする。 ICRP では 

DDREF を 2 に選ぶ
ということ。

 

一応、動物実験などの知見がもとになっているとされるが、

DDREF の概念がかなり曖昧であることは確か。「体制派」の報

告書を見るだけでも、米国 BEIR は(確か)DDREF を 1.5 く

らいに取ろうと言っているし、国連(UNSCEAR)はそもそも 

DDREF の概念を認めていない。まあ、そのくらいのもの。

「えいやっ」と半分にしていると言って大きな誤りはないと思う。

<<

 

 

これは、田崎教授が2007年のICRP勧告を読んで仰ってること

です。つまり、「半分」に決定した時(ICRP 1990年)の

「常識」ではありません。NHKの番組は「半分」に決定した時

のことを振り返って、当時の委員に証言を求め、現在のICRP内

での審議紛糾を伝えているのです。

 

田崎教授が、「いまさら20年以上も前のことを問題にするな」

とおっしゃるなら、それはそれで筋が通っています。しかし、

20年前の事実を20年後の今の「常識」に基づいて「ありえない」

と判断を下されるのは、私としても合点が参りません。

「後出しじゃんけん」だからです。


(しかも「今」、その「常識」が揺らいでます)

 


--------------------------------------------------------------------------------

 

ICRP(国際放射線防護委員会)とは、純粋に科学の問題を扱って

いるのではなく、「科学という言葉をつかった政治的合意」の問

題を扱っていることは、田崎先生もよくご承知だと思います。

それならば是非、教授もICRPなどの歴史的経緯について、関心を

持っていただきたいと存じます。

 

私はこのエントリーの続編として、歴史的経緯を記した書である

故中川保雄さんの『増補 放射線被曝の歴史』を要約して、

DDREFの謎に迫りたいと思っています。 


--------------------------------------------------------------------------------


(付記)WEB上のDDREFの解説


インターネット上にDDREFの解説があるかどうか探ってみました。 

たしかにありました。しかし決してお茶の間向けのものではありま

せん。放射線防護に携わる専門家か学生向けのもののようです。
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=09-02-02-14

 

しかも(線量・線量率効果DDREF)を説明するグラフが、

<半致死線量>など確定的影響の出現を問題にしていますので、

筋違いではないないかと、奇異に感じました。

http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/09/09020214/01.gif 

 

100mSv以下の低線量の被曝リスクは、がんなどで、

細胞死に至らない確率的影響だというのがICRPの見解なのですから。

 

以上

 

ni0615田島 拝

安禅不必須山水

http://ni0615.iza.ne.jp/blog/list/

 

 

 

  		 	   		  


CML メーリングリストの案内