[CML 019304] 政府に対する、放射能汚染食品の摂取による内部被曝の回避に向けた七つの提言(後半)

Yasuaki Matsumoto y_matsu29 at ybb.ne.jp
2012年 8月 16日 (木) 23:59:43 JST


みなさまへ   (BCCにて)松元

海洋、湖沼、河川への放射能汚染の拡大や食品・がれきによる内部被曝の不安に
対しては、政府は意図的サボタージュといえるほど無策のままで政 争に明け暮
れ ていますが、「市民と科学者の内部被曝問題研究会」が緊急に「政府に対す
る、放射能汚染食品の摂取による内部被曝の回避に向けた七つの提言」 を公表
してい ますので許可を得て2回に分けて紹介させていただきます。

「提言」では、内部被曝を回避するために、海洋、湖沼、河川を含む国土全体の
汚染調査と食品の生産・流通のあらたなシステム構築が緊急に呼び かけられて
い ます。同時に、食品の「暫定規制値」、「新基準値」および「出荷制限の法
的根拠」の発表経過とともに「食品調査の杜撰な実態」が告発されてい ます。

とりわけ日本政府が依拠しているICRP勧告が、いかに核開発と原子力産業を
最優先に画策して人命を軽視する文言を「考案」してきたかが、時 系列で紹介
されていますので注目していただきたいと思います。

●出典:市民と科学者の内部被曝問題研究会
http://www.acsir.org/info.php?15

(前半につづく後半です)

======以下、(後半)全文転載=====

■政府に対する、放射能汚染食品の摂取による内部被曝の回避に向けた七つの提言
(市民と科学者の内部被曝問題研究会)


*◆提言の理由と背景*

*1.呼吸による内部被曝と飲食による内部被曝*

*(1)**呼吸による内部被曝*

空中に浮遊する放射性物質を吸気と共に吸い込むことによって生じ、放射能雲
(プルーム)からの降下物を直接的に吸い込む場合と、地面、家屋 などの諸 構
造物あるいは植物の葉や落葉などに吸着した放射性物質が乾燥して空中に巻き上
げられ、あるいは水面の波のしぶきによって空中に撒き散らさ れ、さらには
「除染」作業によって、再度浮遊した放射性物質を二次的に吸い込む場合とがあ
ります。

2011年3月11日の東日本大震災以後、福島原発の数度にわたる爆発で空中に放出
された放射性物質がプルーム(放射能雲)として風下に流 され、各 地で放射性
降下物として落下し地表の空間線量の著しい増加をもたらすことが予測されてい
たにもかかわらず、人びとの健康と安全を蔑ろにした政 府と東電は、 この過酷
事故の正しい情報を直ちには公表しませんでした。とくに政府が、文科省の緊急
時迅速放射能影響予測ネットワークシステム (SPEEDI)による予 測情報を米軍
には3月14日に知らせながら、国内の人びとには3月23日まで知らせなかったた
め、福島県内の飯館村などはもとより茨城県、栃 木県、群馬県 などの少なから
ぬ地域の人びとが、大量の放射性ヨウ素(I)や放射性セシウム(Cs)などを吸
い込んでしまいました。これは、国家的な未必の 故意により、 人びと、とくに
放射線感受性の高い子どもたちや胎児を宿す妊婦さんたちなどが呼吸によって放
射性物質を体内に取り込むことによる内部被曝の国 家的強要であ り、国家的犯
罪以外の何物でもありません。

*(2)**飲食による内部被曝*

飲食による内部被曝は、原発事故によって放出された放射性物質が、森林から河
口までの流域一帯に広く降下することによって飲料水が放射能に 汚染され た場
合にまず生じ得ます。また、放射性物質が流域一帯の田畑や牧草地などに降り注
ぎ、栽培・飼育動植物が直接・間接に放射性物質を吸収または 沈着すること に
よって農畜産物が放射能に汚染された場合、さらには放射能に汚染された内水面
の淡水魚などや海洋の水産物が生物濃縮によって高濃度の放射能 に汚染された
場合に生じえます。

 福島原発事故に起因する放射能汚染食品の飲食による内部被曝を回避するため
には、万全の放射能汚染検査体制によって、汚染飲食物の出荷制 限(視点を変
えれば、東電買取り)を確実にすすめ、人びとが飲食による内部被曝を回避でき
るようにすることが不可欠です。

*2.放射能汚染食品の「暫定規制値」と「新規格基準」(新基準値)*

 福島原発の過酷事故以降、4月上旬までの厚労省による暫定規制値に関連する
一連の決定を振り返ると、如何にもいわゆる泥縄式に対応してき たことが伺え
ます。

まず、3月17日の「放射能汚染された食品の取り扱いについて」(食安発
0317第3号。厚生労働省医薬食品局食品安全部長からの、都道府 県知事、
保健所設置市長、特別区長宛の、いわゆる「暫定規制値」通達)が出されまし
た。これには、(射性ヨウ素(混合核種の代表核種I-131)、 ∧射性セシ ウ
ム(Cs-134、Cs-137)、ウラン(U)、ぅ廛襯肇縫Ε燹Pu)と超ウラン元素の
アルファ核種の4種類について指標が示されて います。

その背景として、「飲食物摂取制限に関する指標について」(1988年3月6日、原
子力安全委員会原子力発電所等周辺防災対策専門部会 環境ワーキンググルー
プ)と「原子力施設等の防災について」(2003年7月、原子力安全委員会)の存
在があります。

以下、3月21日「食品の出荷制限について」(原子力災害対策本部長=菅直人首
相からの各知事宛の、いわゆる「出荷制限」通知。福島、茨 城、栃木、 群馬の
ホウレンソウとカキナなど)、4月4日「食品規制の二方針」(「食品についての
規制について」(枝野幸男官房長官記者発表。原子力災害 対策本部長 が、 ̄
染区域の設定、解除は、「市町村単位など、県を分割した区域毎」に行う、⊇
荷制限の解除は、「1週間毎に検査」し、「3回連続で暫 定規制値を下 回った
品目、区域」について行うことを決定、4月5日「魚介類中の放射性ヨウ素に関す
る暫定規制値の取扱いについて」(食安発0405第1 号。魚介類中の 放射性
ヨウ素は、当分の間、「飲料水及び牛乳・乳製品以外の食品として暫定規制値が
設定されている野菜類中の放射性ヨウ素と同一の暫定規制値 である 2000 Bq/kg
を準用」、4月88日「水稲の作付制限」(「イネの作付けに関する考え方」(原
子力災害対策本部。水田土壌から玄米への放射性セシウム(Cs) の 移行率10 %
の指標。「玄米中の放射性セシウム濃度が食品衛生法上の暫定規制値(500 Bq以
上は出荷制限) 以下となる土壌中の放射性セシウム濃度の上限値5000 Bq」を超
える水田で作付け制限)などです。

*(1)2011年3月17日の「暫定規制値」*

 「飲食物摂取制限に関する指標について」(1998年3月6日、原子力安全委員会
原子力発電所等周辺防災対策専門部会
環境ワーキンググループ)では、(射性ヨウ素(混合核種の代表核種I-131)、
∧射性セシウム(Cs-134、Cs-137)、プル トニウム(Pu)及び超ウラン元素
のアルファ核種の3種類について指標が示されています。

 放射性ヨウ素:甲状腺等価線量として年間50 mSvを上限目標とし、飲料水、牛
乳・乳製品、野菜類(根菜、芋類を除く)の3食品に50 mSvの2/3をあて、残り1
/3は保留することにして、3食品の各々に50mSv×2/3の1/3ずつを割り当て、飲料
水と牛乳・乳製品の摂取制限指標 は1kg当たり300 Bq、野菜類のそれは2000 Bq
と定めています。

なお、これ以前の防災指針では、ヨウ素131は単一核種として扱われ、それぞれ1
kg当たり、飲料水100 Bq、牛乳・乳製品200 Bq、葉菜6000 Bqでした。

 放射性セシウム:実効線量5 mSv/年を上限目標とし、かつストロンチウム
90(Sr-90)/セシウム137(Cs-137)比が0.1の場合のストロンチウム90の寄与
も含めて 5 mSvとし、飲料水、牛乳・乳製品、野菜類、穀類、肉・卵・魚その他
の5食品に5 mSvの1/5ずつを割り当て、1 kg当たりの摂取制限指標は、飲料水、
牛乳・乳製品では200 Bq、野菜類、穀類、肉・卵・魚その他では500 Bqと定めて
います。

なお、ストロンチ90/セシウム137比0.1を超える場合、及びその他の核種の複合
汚染の場合は、これらの寄与を考慮して指標を低減して 運用するとしています。

 プルトニウム及び超ウラン元素のアルファ核種:年当たり実効線量5 mSvを上
限目標とし、アメリシウム(Am-241)、プルトニウム(Pu-238、Pu-239、Pu-
240、Pu-242 )等のα核種の放射能濃度の合計に適用して、1kg当たりの摂取制
限指標は、飲料水、牛乳・乳製品では1Bq、野菜類、穀類、肉・卵・魚その他で
は10 Bqと定めています。

  なお、調理された食事に供される乳児用市販食品には、1Bqを適用しています。

 2003年7月、原子力安全委員会は、1999年に茨城県東海村で起きたJCO臨界事故
を受けて、1998年3月の上記「飲食物の摂取制 限に関す る指標について」の原
形(放射性ヨウ素・放射性セシウム、プルトニウム及び超ウラン元素のアルファ
核種の指標)に、ウラン(U)を加えた指標 を決定しまし た。すなわち、ウラ
ンについては、飲料水、牛乳・乳製品の摂取制限指標は1kg当たり20 Bq、野菜
類(根菜、芋類を除く)、穀類、肉・卵・魚その他のそれは100 Bqと定めまし
た。なお、放射性ヨウ素のみ、乳児用調製粉乳と乳の指標を300 Bqはなく100 Bq
と低くしています(ただし、いずれも調理して供されるものに適用)。

 したがって、昨年3月17日の通達による「暫定規制値」は、2003年7月の原子力
安全委員会決定「原子力施設等の防災について」の指標 値をその まま援用した
もので、(射性ヨウ素(混合核種の代表核種I-131)、∧射性セシウム(Cs-
134、Cs-137)、ウラン(U)、 ぅ廛襯肇縫 ム及び超ウラン元素のアルファ核
種の4種類について指標が示されています。なお、(射性ヨウ素は、崩壊過程で
ベータ線を放出(ベータ崩壊) して放射性キ セノンとなり、続いてこれがガン
マ線を放出(ガンマ崩壊)して安定なキセノンになり、∧射性セシウムは、
ベータ崩壊して放射性バリウムにな り、続いてこ れがガンマ崩壊して安定なバ
リウムになるので、一連の崩壊過程でベータ線とガンマ線を放出します。ウラ
ンは、長年月にわたる一連の崩壊系列 の過程で、 10回以上もアルファ崩壊また
はベータ崩壊を繰り返しながら新たな放射性核種となり、最終的に安定な鉛にな
りますので、体内に取り込めば被曝 量は甚大で す。い皚に似て、一連の崩壊系
列の過程でアルファ線崩壊やベータ崩壊を繰り返しますので内部被曝量は甚大に
なります。

*(2)2012年4月1日からの「新規格基準」(新基準値)*

 前提として、物理学的半減期の長い放射性セシウム(Cs-134、Cs-137)、スト
ロンチウム(Sr-90)、ルテニウム(Ru- 106)、 プルトニウム(Pu-238、Pu-
239、Pu-240、Pu-241)の合計が年間1 mSv以下とすることとしています。しかし
実際には、セシウム以外については検査に時間がかかるため、セシウムのみを対
象とし、各核種の検出比(Cs- 137を1.0としたときの比)を固定的にPu-
238:Sr-90:Ru-106:Cs-134:Cs-137 =0.000002:0.003:0.02:0.29:1.0であ
るとして、これらを含めて基準値を定めたことになっています。しかし、この割
合がいつで もどこでも普遍的で正しいかという問題があります。また、米、牛
肉や大豆など一部の加工食品については、今年(2012年)12月31日まで に製
造・加 工・輸入された食品は賞味期限までは従来の暫定規制値がそのまま適用
されるなどの問題もあります。

それはそれとして、放射性セシウムについての新基準値は、食品を4分類して1
kg当たり飲料水10 Bq、牛乳50 Bq、一般食品100 Bq、乳児用食品50 Bqと定めら
れました。

*(3)原発事故後は低レベル放射性廃棄物並みかそれ以上の汚染食品が流通し得る*

 ここで示した1998年3月の「飲食物の摂取制限に関する指標について」や2003
年の「原子力施設等の防災について」、さらに今年度か らの「新 基準値」をみ
ると、さまざまな要因を考慮した計算に基づいて得られた値を指標値としており
一見科学的な根拠があるように見えます。しかし、そ もそも原子炉 等規制法に
よれば、原発から通常排出される廃棄物のうちセシウム137が1kg当たり100 Bq
以下のものは、低レベル放射性廃棄物として同法に基づき処理・保管されること
になっています。

ですから、昨年3月17日から今年3月31日までは緊急時だからという理由で、低レ
ベル放射性廃棄物の放射能汚染度を大幅に超える500 Bqを超えない野菜・穀類や
肉・魚貝類等は食べても安全とし、4月1日からも一般食品は低レベル放射性廃
棄物と同じ100 Bq以下なら安全としているわけです。さらに、一連の食品の規制
値に関する歴史をひもとくと、後述のとおり、その欺瞞性が鮮明に見えてきます。

**

*3.放射能汚染食品の「出荷制限」の法的根拠と公的な食品調査の実態*

*(1)放射能汚染食品の「出荷制限」の法的根拠*

 「食品衛生法」には放射能汚染食品に対応する条項がまったくありません。原
発の「安全神話」により、食品の放射能汚染については想定すら しなかっ たの
でしょう。そこで、厚労省は、もしも規制値を超える放射能汚染食品が見つかっ
た場合には、第6条の2「有毒な、若しくは有害な物質が含ま れ、若しくは 付
着し、又はこれらの疑いがあるもの」に相当するものとして、出荷制限すること
にしました。

 食品添加物のリスク評価においては、「安全な混入量が実験動物に悪影響を示
さない投与量÷100」 として安全基準が求められ、曲がりなりにも表面上はゼロ
リスクが基本です。しかし、放射性物質については、後述のとおりICRP(国際放
射線防護委員会) の諸勧告が基礎となっているため、ある程度の人の死を大前
提としており問題です。

*(2)食品の放射能汚染の公的調査の杜撰な実態*

 国の指示に従って地方自治体が行っている公的検査の実態についてみると、暫
定規制値については、(射性ヨウ素(混合核種の代表核種I- 131)、∧射性セ
シウム(Cs-134、Cs-137)、ウラン(U)、ぅ廛襯肇縫Ε(Pu)及び超ウラン元
素のアルファ核種の4種 類について指 標が示されていますが、実際には(射
性ヨウ素(I-131、I-134)と∧射性セシウム(Cs-134、Cs-137)由来のガンマ
線 しか調べてい ません。ですから、内部被曝でもっとも問題となるアルファ線
やベータ線は埒外に置かれています。しかも、調査件数があまりにも少なすぎま
す。 なお、学校給 食の食材調査では、全食材の一括調査などの方法に、保護者
から疑問の声があがっています。

*全国の調査実績*:昨年3月17日から本年3月16日までの1年間にわたる食品調査
実績は、山野草や淡水魚、海産物を含めた全 国の調査総数は126821件ですか
ら、1日平均347.5件、都道府県単位でみれば1日平均10件にも及びません。

このうち、全都道府県のうち放射能汚染の深刻な総理指示対象自治体4県(福
島・茨城・栃木・群馬)と、それらの隣接自治体等1都12県(青 森・岩 手・宮
城・秋田・山形・新潟・長野・埼玉・千葉・東京・神奈川・静岡・山梨)の計1
都16県中、青森、新潟、山梨以外の1都13県から、放射 性ヨウ素また は放射性
セシウムの規制値を超えた食品が、110598件中1183件見つかり、出荷制限措置が
とられました。

*福島・茨城両県の調査実績*:最も深刻な福島県でさえ一年間の調査総数は
20672件で、700件が規制値を超えていました。 1日平均 では57件中2件が超過
食品(たけのこ、露地・原木しいたけ、ほうれんそう、アブラナ科野菜、コモン
カスぺ、アユ、アイナメ。原乳、牛肉、猪 肉など)とい うことです。二番目に
深刻な茨城県では、一年間の調査総数は12430件で85件が規制値を超えていまし
た。1日平均では34件の検査で4、 5日に1件の 割合で規制値を超えた食品が見
つかるという状態です。福島県や茨城県でさえこのような状態ですから、ほとん
どが無調査のまま出荷されているこ とになりま す。

*水産物の調査実績*:2011年10月7日現在の水産物の放射能汚染調査実績は、調
査総数2579件で127件(福島県116 件、茨城 県7件、群馬県4件)が規制値を超え
ていました。内訳は、海産魚類1650件中66件が規制値越え(福島県59件、茨城県
7件)、無脊椎動物 (イカ、タコ 類)389件中12件(福島県)、海藻類55件中8
件(福島県)、加工品(魚介類)24件中0件、広域回遊性種(海産魚類中のカツ
オ、ビンナ ガ、イカ 等)23件中0件、淡水魚類(アユ、ヤマメ、ワカサギ、ウ
グイ、イワナ等)432件中41件(福島県37件、群馬県4件)、哺乳類(クジ
ラ)29件中0件 でした。1日平均13件ですから、調査数があまりにも少なすぎます。

なお、海洋の汚染は、事故直後に表層生物(浮魚)で始まり、5月中旬に海藻
類、下旬に底生生物(底魚。アイナメ等)に及びました。底生魚類 でも、ゴ カ
イやエビ、カニを食べるアイナメの汚染が、小魚を食べるヒラメよりも大きいと
いう特徴があります。また、淡水魚は、海水生物よりも生物濃縮 がいちじるし
いという特徴があります。河川流域の内水面は今後とも、山岳森林地帯に降り注
いだ放射性降下物(人工放射性物質)の流入が漸増し続けるため、 厳重な注意
が 欠かせません。

 *主食の米の調査実績*:2011年の作付制限は、土壌中の放射性セシウムの玄米
への移行係数0.1を基に乾物土壌1kg当た り 5000 Bq以上の水田が対象でした。
国の玄米調査法では、旧市町村ごとに1 〜5点の予備調査で200 Bqを超えれば概
ね集落ごとに1件ずつ本調査し、暫定規制値500 Bq以下なら出荷できます。

福島県知事は、栽培可能な水田から収穫した玄米に規制値を超えるものがありま
せんでしたから、当初すべての県産米が出荷可能であることを高 らかに宣 言し
ました。しかし、調査されず不安に思った山間の農家の要請を受けた地元JAなど
の自主調査で、山間などの水田から規制値を超える汚染玄米 が続出しまし た。
国の定める調査点数がいちじるしく少なすぎたのです。福島県は、急遽、調査地
点・農家数を大幅に増やして、「米の放射性物質緊急調査」を 進めました。 特
定避難勧奨地点のある地域や玄米のモニタリング調査でわずかでも放射性セシウ
ムが検出された地域については、出荷を当面見合わせることにし て、緊急に全
戸調査を実施したのです。

福島県は、緊急調査結果に基づき以下のことを決めました。100 Bq以下の地域の
米については、出荷見合わせを解除する。100 Bq以上で500 Bq以下の地域の米に
ついては、特別隔離対策の対象となるよう国に要請し、引き続き出荷を見合わせ
る。出荷できる地域において諸般の事情で未調査となった 農家の玄米も調査す
るとともに、国の特別隔離対策を活用して100 Bqを超える県産米が一般に流通し
ないように努める。また、2012年産米からは全袋調査することにしました。

 なお、2012年2月28日、農水省は、今年の稲作について、昨年産米の出荷規制
地域の作付制限と、玄米が100 Bq以上、500 Bq以下の地域の作付について、全袋
調査などを条件に認めることを決めました。しかし、作付け可能な全汚染田の玄
米の調査密度の飛躍的な濃密化までは言及 していません。玄米の放射能汚染が
新規制値を超えたために出荷できない生産農家への十分な補償はもちろんです
が、危険な汚染米が絶対に流通し ないように国 と県と東電はしっかりした対
応・対策が不可欠です。

現状では主食のお米でさえ、国の定める調査基準は調査件数が圧倒的に少なく、
ほとんどが無調査で出荷される状態です。

*(3)新基準値に基づく食品の放射能汚染の公的調査結果の姑息な公表方法*

2011年3月17日から始まった暫定規制値に基づく公的調査の結果は、3月19日から
集約して厚労省のホームページに公表され、2012 年3月 30日までは全都道府県
の日々の詳細な調査結果の多数の表と、それらを集約した積算値を鳥瞰できる1
枚の表「食品中の放射性物質検査の結果に ついて(概 略)」が掲載されていま
した。ですから、上述の(2)食品の放射能汚染の公的調査の杜撰な実態の項で
は、全国の調査実績や福島・茨城両県の調 査実績を難な く紹介することが出来
たのです。

2012年4月1日から始まった、新基準値に基づく公的な調査結果についても、4月6
日までは従前どおりの掲載方法で、「食品中の放射性物 質検査の 結果について
(平成24年4月1日以降検査実施分)(概略)」という表がありました。ところ
が、2日休んで4月9日からの公表では、この 「(概略)表」が 消えてしまいま
した。

4月6日の「(概略)表」をみると、福島県では、6日に農産物を78件調査して、8
件(フキノトウ、タケノコ)が新基準値100 Bqを超えていました。水産物は前日
までに44件調査して、15件(海水魚のアイナメ、シロメバル、ヒラメなど)が新
基準値を超えていました。茨城県で は、6日まで農産物を27件調査して、7件
(原木シイタケ、タケノコ)が規制値を超えていました。水産物では、6日に28
件調査して、2件 (淡水魚のイワ ナ、ヤマメ)が規制値を超えていました。そ
の他では、6日に4件調査して3件(乾シイタケ)が規制値を超えていました。

ですから、このホームページの作成担当官は、このまま従前どおりに「食品中の
放射性物質検査の結果について(平成24年4月1日以降検査実 施分) (概略)」
を編集していくと汚染食品の頻度が目立ちすぎると感じたのでしょうか。姑息に
も、同表の掲載を止めてしまったのです。こんな所に も、放射能汚染 を軽微に
見せたい政府の思惑が現れています。

姑息といえば、新基準値が適用された20日後、農水省は「食品中の放射性物質に
係る自主検査への対応に関する通知」なるものを食品産業事業 者向けに 発出し
ました。政府は、一片の局長通知で、「全国の住民が自分たちの食べる農林水産
物の安全性の自主検査をするな」と命令したのです。自主検 査をするな ら、国
の基準値を指標にしなさい、という命令です。主権在民の日本国憲法をいただく
我が国において、このような人権無視の横暴が許されて良い ものでしょう か。
本来、何人も、各自の意思に従って、いかなるものを飲食しようが、麻薬及び向
精神薬取締法や酒税法などに違反しない限り、政府からとやか く規制される い
われはありません。しかも、この新基準値の決定プロセスにおいても、パブリッ
クコメント募集期間中に、新基準値を審議する放射線審議会の前 会長(東北大
学名誉教授)中村尚司氏および現会長の丹羽太貫氏が、複数の関係学会会長に厳
しすぎるという「やらせ」意見書の提出を各学会会員に要請する文 書を出して
い たことが判明しています。

そもそもは、昨年3月11日から顕在化した、政府の情報隠しの「大本営発表」体
質と「御用学会・御用学者」等の「大政翼賛」体質のなせる業 です。野 田佳彦
首相による2011年12月16日の「事故収束宣言」と「避難区域見直し」発表から6
月16日の「大飯原発再稼働」の最終決定までの一 連の道理に背 く暴挙は、人び
との命と暮らしをまったく顧みず、基本的人権を踏みにじる現政府のこの間の国
政の異常さを如実に示すものです。

*4.放射能汚染食品の規制値の歴史*

*(1)チェルノブイリ原発事故直後*

 1986年4月のチェルノブイリ原発事故当時、一般人の年間の線量当量限度は
5mSv/年(ICRP 1977年勧告に基づく)でした。厚生省は、旧ソ連圏や欧州から
の放射能汚染食品の輸入を規制するため、一般人の線量当量限度5 mSv/年、汚
染輸入食品の割合、国民の食品摂取量、食品による被曝割合等による推計値を求
め、さらに米国やEC(欧州共同体)の規制値を参考にして、輸 入規制値を定め
ました。すなわち、全食品の放射性セシウム(セシウム134とセシウム137の合
計)について、1kg(またはlittle) 当たり370 Bq以上で輸入禁止としました。

*(2)**ICRP 1990**年勧告以後*

1990年、ICRPが一般人の年間の線量当量限度を5 mSv/年から1/5の1 mSv/年
(年間がん死リスクは10万人に1人)に下げる勧告を出しました。そこで1998
年、政府はこのICRP勧告を受け、一般人の年間被曝許容限度 を1 mSv/年に下げ
ました。しかし、ヨウ素やセシウムの輸入規制値を1/5に下げることはしません
でした。そして2011年3月17日の通達にみる野菜や穀 物のセシウムの暫定規制値
は1kg当たり500 Bqでした。

*(3)海外の事例*

ちなみに、ウクライナでは、一般人の年間被曝許容限度は同じく1mSv/年です
が、放射性セシウムの暫定規制値は、1kgまたは 1little当た り飲料水2 Bq
、牛乳100 Bq 、野菜40 Bq、肉類200 Bqとなっています。また、ドイツの放射線
防護令は、一般人の年間被曝許容限度を0.3 mSv/年としています。ドイツ放射
線防護協会は、この限度を基準にして、放射性セシウム汚染食品の摂取制限とし
て、乳児〜青少年は1kg当たり4 Bq以上、成人は8 Bq以上の食品を摂取しないよ
うに推奨しています。この推奨値でも、人口8000万人のドイツでは毎年
1200〜12000人の癌死の増加が予測されてい ます。この予測値を人口1.278億人
の日本に当てはめれば、癌死の増加はこの1.6倍です。

*(4)**ICRP**(国際放射線防護委員会)の身勝手なご都合主義*

 ICRPは、1928年のICR(国際放射線医学会議)総会で発足したIXRPC(国際X線
およびラジウム防護委員会)を1950年に改 称して発 足し、現在に及んでいま
す。そこで、現在までの主要な勧告を見てみましょう。年代が進むごとに、米国
を頂点とする国際的な「核開発利益共同 体」の身勝手な ご都合主意が台頭し、
彼らの意のままに勧告が成案化される様が、赤裸々に見て取れます。ICRPは、そ
の名称とはまったく裏腹に、核施設作業 従事者や一般 人の放射線防護を二の次
にして、彼らの意のままに安上りの核開発を進めるための道具でしかありません。

 1950*年勧告*:ICRPと改称後、初の勧告であり、核施設従事者にのみ、150
mSv/年(3 mSv/週)の許容線量を設定しました。一般人向けの具体的な許容線
量は示さず、「被曝を可能な最低レベルまで引き下げるあらゆる努力を払うべ
き」(to the lowest possible level)という文言だけに留まりました。言葉だ
けといえ厳しい表現になった背景には、遺伝学者によるショウジョウバエの突然
変異実験において「遺伝的 障害」が明らかになったことがあります。しかし、
具体的な許容線量を明記することは、米国の抵抗によって叶わなかったのです。

 1954*年勧告*:年間許容線量は、核施設作業従事者 150 mSv/年、一般人 前
者の10分の1(15mSv/年)であり、「実行可能な最低レベル」(the lowest
practicable level)という一段下がった表現になりました。

 1958*年勧告*:年間許容線量は、核施設作業従事者
50 mSv/年、一般人 5 mSv/年で、「実行可能な限り低く」(as
low as practicable)と、さらに一段下がった表現になりました。

 1965*年勧告*:「社会・経済的要因を考慮の上、容易に達成できる低さ」
(that all doses be kept as low as is readily achievable, economic and
social consequences being taken into account )と、いよいよICRPの本性を
露わにしたもので、「ALARA勧告」と称されます。一般人の5 mSv/年を「線量当
量限度」と称することにしました。

 1973*年勧告*:「合理的に達成できる低さ」(as low as reasonably
achievable)と本性を幾分見えにくくしましたが実態は変わらず、これも
「ALARA勧告」と称されます。

 1977*年勧告*:新システムとして、三原則「正当化」「最適化」「線量限度」
(justification,
optimisation = as low as reasonably achievable, application of dose
limits)を導入しました。「正当化」とは、原発などの核開発には代替不可能な
便益があるということです。「最適化」とは、1965年のALARA勧 告の「社会・経
済的要因を考慮の上、容易に達成できる低さ」のことです。「線量限度」とは、
人びとの被曝限度を定める際に「集団線量」概念を 導入し、「費 用」対「人命
救済効果」分析を行い、放射線障害による人びとのある程度の死を前提とする安
上りの費用で核開発を進めようとするものです。この 勧告では、核 施設作業従
事者の年間被曝限度についても、「線量等量限度」と称することにしました。

*1990**年勧告*:核施設作業従事者の従来からの線量当量限度50 mSv/年に、
「あるいは100 mSv/5年」という付帯事項が付きました。また、一般人の線量当
量限度5 mSv/年が1 mSv/年に下げられました。ただし、基本的な線量計測量で
ある人体の吸収線量に関する同勧告の定義は、「各組織・臓器内の平均線量を意
味する」というこ とで平均化してしまうなど、同勧告には内部被曝を無視・隠
蔽するためのさまざまな作為が感じられます。

本来、アルファ線やベータ線による内部被曝が微細なピンポイントで生じること
を念頭に置けば、ICRP勧告の如き「内部被曝隠し」ではな く、
ECRR(欧州放射線リスク委員会)の2003年勧告や2010年勧告の如く、内部被
曝を正当に評価する勧告になる筈です。結局、 IAEA(国際原子力機 関)も
WHO(世界保健機構)も、米国と国際的な「原子力ムラ」のエゴに牛耳られ、そ
の中心にICRPが鎮座していたのです。そして彼らは、 世界の放射線 科学全般
を、政治・経済的観点を重視する内部被曝隠しの似非科学に仕上げ、世界中の市
民に一方的な犠牲を強いる体系を構築していたのです。

ですから、このようなICRPの勧告に依拠する食品の放射能汚染の「基準値」が、
私たち住民の味方である筈はありません。

 私たち市民と科学者の内部被曝問題研究会が政府に対して七つの提言をした理
由と背景は、以上のとおりです。

以上

(以上、転載すべて終了)

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パレスチナ連帯・札幌 代表 松元保昭
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