[CML 016617] 『ネットと愛国』ネット右翼の矛先は正しいか

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2012年 4月 23日 (月) 23:01:51 JST


安田浩一『ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて』(講談社)は在特会(在日特権を許さない会)のルポタージュである。在特会のメンバーに取材し、在特会に参加した動機や在特会の何に魅せられたのかを明らかにする。 

『ネットと愛国』では在特会のメンバーを黒塗りの街宣車で騒ぎ立てる従来型の右翼と区別する。「大人しい、ごく普通の、イマドキの若者」を中心とする新しい形の右翼運動と位置付ける。 

若年層中心という視点は正しいものの、「大人しい、ごく普通の、イマドキの若者」という形容については同意できない人もいるだろう。在特会の暴力的な抗議行動による被害者が存在する。その活動は日教組などの左派系団体の集会を妨害する伝統的な右翼と変わらない。 

人種差別主義者が家庭では良き父親、コミュニティでは良き隣人である例は別に珍しくない。普通そうに見えることは評価尺度として重要ではない。『ネットと愛国』も普通の若者であることを積極的に評価するのではなく、そこから日本社会の闇の深さを浮き彫りにする。 

若年層が右傾化した原因として、格差拡大など日本社会の矛盾がある。ネットカフェ難民や内定取り消し、ニート、派遣切り、ワーキングプアなど矛盾を背負わされた若年層が社会に疑問を抱き、政治意識を高めることは当然である。 

しかし、その怒りを在日コリアンや労働組合・左派市民運動に向けることが正しいかは疑問である。日本社会の矛盾は少数派の反日売国勢力が社会を歪めているために生まれたものだろうか。むしろ体制側が矛盾を構造的に作り出しているのではないだろうか。 

私は東急不動産(販売代理:東急リバブル)から不利益事実を隠して新築マンションをだまし売りされた経験がある(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社、2009年)。それ故に虐げられた人々の社会への怒りは大いに共感できる。 

一方で東急不動産だまし売り裁判では怒りの矛先を正しい相手に向けることの難しさも実感した。マンション住民同士の対立、管理会社に抱き込められた管理組合役員、地上げブローカーの暗躍など、だまし売り被害者を消耗させ、結果的に東急不動産への責任追及を鈍らせかねない出来事にも遭遇した。 

ネット右翼と呼ばれる人々も社会の矛盾によって傷つけられた自尊心を民族的自尊心で穴埋めすることが正しい解決策であるか、それこそが矛盾を作り出す体制の思う壺ではないか、考える必要があるだろう。 
http://www.honzuki.jp/book/status/no68551/index.html
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林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』
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