[CML 016417] Re: 死刑囚との対話

higashimoto takashi higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
2012年 4月 15日 (日) 09:31:46 JST


萩谷さん

辺見はたしかにテレビの取材に対しては「われわれの言語表現のやすっぽさが暴かれた」と語ったのでしょうが、その辺見
の言う「やすっぽさ」とは、「マスメディアをふくむ世情」、「とくに二〇一一年三月一一日以後の世情」、「言語状況がなにやら
牋国統一戦線瓩澆燭い砲覆蝓∪鏤のような怪しい世情」、「不埒な個の内面を排除する」かのような世情、「当局やマス
コミ、政党は言うにおよばず、文芸の言葉、市民運動の言語もまたなにか空々しくインチキっぽく聞こえる」言葉、「わたしに
とって受け容れがたいもの」、「その(世情と言葉への)齟齬」のことの謂いであろう、と私は思います。

「それらに対する自分なりの抵抗」の言葉として辺見はたとえば次のように綴ります。 


「この社会は頼まれもしないのに、権力的な抑圧とか強制があるわけでもないのに、おのずとファッショ化していくのです。
メディアも市民運動もそこに巻き込まれてゆく。/全体として震災ファッショのような状況があるわけで、しかもそれらは主
観的な善意によって構成されてゆく。/震災と原発メルトダウンによって死者・行方不明者おおよそ二万人/しかし、振り
返ると、関東大震災の犠牲者数は一〇万五〇〇〇人/広島の原爆では一〇万人以上、最終的には二〇万人以上/長
崎では一四万人/このことを誰も奥行きある言葉として提示しようとしない。わたしが『眼の海』を書いていたときの怒りの
底には、そのことがあります。」

「  それはなぜだか似ていた。
   ヒロシマの小学校に。・・・・・
   それはなぜだか似ていた。
   すべての大量殺戮の現場に。・・・・・
           (「それは似ていた」より抜粋)

わたしが通っていた小学校の、震災直後の写真を見ましたが、言葉を失いました。三階建ての校舎が全部焼けただれて
いて、校庭にはまだ死体があるのです。黒こげの車が何十台も校庭に山積みになっていて、窓から教室に突っこんだのも
ある。アブストラクトアート(抽象芸術)のようであり、地獄のようでもありました。車の中には焼けただれた人もいたのです。
こんなことは報じられないでしょう。しかし、三月一一日の現実は、まさに超現実だったのです。

被災地ではまた、燃料が足りず、死者を火葬できなかった。臭くなるので、身元確認もできていない死体を埋めてしまうわ
けです。埋めざるをえない。手、耳、片足だけの部位を埋める。死者は陸だけではありません。どれだけの人間が今、海
底で暮らしているのか。

   断たれた死者は断たれたことばとして
   ちらばり ゆらゆら泳いだ
   首も手も足も 舫(もや)いあうことなく
   てんでにただよって
   ことばではなくただ藻としてよりそい
   槐の葉叢のように
   ことばなき部位たちが海の底にしげった
   (「水のなかから水のなかへ」より抜粋) 」

例えばとして例示したその辺見の言葉を、私は、「なみのコピーライターのような水準の文体」とも、「見るからに文体に
凝ったことを見せつけるような文章」だとも、「言葉で箱庭をこしらえて、眼前に広がる自然に太刀打ちできだろうと自負
しているかのよう」な言葉とも思いません。 萩谷さんの感性は感性として尊重するとしても。

■辺見庸インタビュー「むき出しにされた この国の真景 詩集『眼の海』をめぐる思索と想念」(「週刊金曜日」2012年1月
13日号)を少し抜粋してみました。(弊ブログ 2012年1月24日)
http://mizukith.blog91.fc2.com/blog-entry-386.html

人の感受性はさまざまですが、たとえば詩人の河津聖恵さん(第53回H氏賞受賞)は辺見庸の言葉について次のような
うけとめ方をしています。

■3月16日北日本新聞 辺見庸「震災緊急特別寄稿」(詩空間 2011年3月19日)
http://reliance.blog.eonet.jp/default/2011/03/post-be4f.html
■6月6日付北海道新聞夕刊 辺見庸「幻燈のファシズム ──震災後のなにげない異様」(詩空間 2011年6月10日)
http://reliance.blog.eonet.jp/default/2011/06/post-d5f0.html
■辺見庸『眼の海』(一)(詩空間 2011年12月13日)
http://reliance.blog.eonet.jp/default/2011/12/post-f0b6.html
■辺見庸『眼の海』(二)(詩空間 2011年12月16日)
http://reliance.blog.eonet.jp/default/2011/12/post-5c77.html
■辺見庸『瓦礫の中から言葉をわたしの〈死者〉へ』(一)(詩空間 2012年1月5日) 

http://reliance.blog.eonet.jp/default/2012/01/post-d7b9.html
■辺見庸『瓦礫の中から言葉を─わたしの〈死者〉へ』(二)(詩空間 2012年1月7日) 

http://reliance.blog.eonet.jp/default/2012/01/post-c3be.html
■辺見庸『瓦礫の中から言葉を─わたしの〈死者〉へ』(三)(詩空間 2012年1月8日) 

http://reliance.blog.eonet.jp/default/2012/01/post-3526.html
■辺見庸『瓦礫の中から言葉を─わたしの〈死者〉へ』(四)(詩空間 2012年1月11日)
http://reliance.blog.eonet.jp/default/2012/01/post-8b57.html


東本高志@大分
higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
http://mizukith.blog91.fc2.com/

━━━━━━━━━━━━Original Message Started━━━━━━━━━━━━
From: 萩谷 良
Sent: Sunday, April 15, 2012 1:23 AM
To: 市民のML
Subject: [CML 016407] Re: 死刑囚との対話
我々の言葉の安っぽさが暴かれた、という言葉も、安っぽいと思います。
私は、311からまもなく、辺見氏の書いた文章を読んで、言葉の限界に至る以前に、物書きの文体としてグレードが低いのに驚き、それをこの場で指摘した記憶があります。
べつに同氏に恨みがあるのでもないし、さして読書家でない私は同氏の著作に目を通してもいません。思想的には近い部分のある人ではないかとも思います。
が、なみのコピーライターのような水準の文体には驚きました。
それを「われわれの言語表現のやすっぽさ」とは、あまりにもおこがましい。

ただひとつ言えるのは、辺見氏はいつ頃からか、見るからに文体に凝ったことを見せつけるような文章ばかり書くようになったようです。
何を言いたいのか一読してわかるというものではなく、いわば、言葉で箱庭をこしらえて、眼前に広がる自然に太刀打ちできだろうと自負しているかのようでした。
それが、311を目の前にして、行き詰まるのは、同氏自身の責任ではありませんか。 

しかも「海に向かって問いかけた・・海は答えてくれない」などと言った、こちらが赤面するような言葉遣い。

もちろん、こんなことは、辺見氏のこれからの営為しだいで、数年もたてば笑い話にすぎないものになるでしょうし、私もそれを期待します。


On 2012/04/14, at 22:20, donko at ac.csf.ne.jp wrote:

> 坂井貴司です。
> 転送・転載歓迎。
>
> ジャーナリストとして活動したあと、現在は小説家・エッセイストとして活躍
> している辺見庸さんの故郷は宮城県石巻市でした。その石巻市は3.11東日本
> 大震災の地震と津波で壊滅的被害を受けました。犠牲者の中には辺見さんの親戚
> や友人がいました。
>
> 3.11のあと、辺見さんは昨年の夏から文章が書けなくなりました。
>
> 「言葉は3.11を表現できなかった。われわれの言語表現のやすっぽさが暴
> かれた」
>
> と辺見さんは言います。
>
> 執筆ができなくなった辺見さんは、1974年8月30日、8人の死者と300人
> 以上にのぼる負傷者を出した「三菱重工爆破事件」の犯人の一人で、「東アジア
> 反日武装戦線「狼」のメンバーだった大道寺将司死刑囚の俳句集の出版に力を入
> れています。
>
> 爆弾テロ事件の犯人として死刑執行の日を待つ大道寺死刑囚は、東京拘置所で
> 俳句を数多く作りました。その出版のために辺見さんは奔走しています。
>
> 拘置所という閉ざされた空間の中で、ひたすら自己と向き合って俳句を作る大
> 道寺死刑囚の「言葉」に、辺見さんは注目しています。
>
> 辺見庸さんと大道寺将司死刑囚の対話を、4月15日、ETV特集が放送します。
>
> NHK教育
>
> ETV特集
> 「失われた言葉をさがして 辺見庸 ある死刑囚との対話」
> http://www.nhk.or.jp/etv21c/file/2012/0415.html
>
> 放送日:4月15日
> 放送時間:22時から
>
> 坂井貴司
> 福岡県
> E-Mail:donko at ac.csf.ne.jp
> ======================================
> 「郵政民営化は構造改革の本丸」(小泉純一郎前首相)
> その現実がここに書かれています・
> 『伝送便』
> http://densobin.ubin-net.jp/
> 私も編集委員をしています(^^;)
> 定期購読をお願いします!
> 購読料は送料込みで1年間4320円です。
━━━━━━━━━━━━Original Message The end━━━━━━━━━━━━



CML メーリングリストの案内