[CML 013242] 行き場を失うドイツのイスラーム教徒

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2011年 11月 20日 (日) 21:45:33 JST


 坂井貴司です。
 転送・転載歓迎。
 
 ドイツにはトルコ人を中心に多くのイスラーム教徒が住んでいます。ドイツの
都市では、キリスト教会の鐘の音に混じってアラビア語の祈りの声が響き、トル
コやアラブ料理の店が並び、トルコ語やアラビア語が当たり前に聞こえます。
 
 そのドイツで今までになく、ドイツ人とイスラーム教徒の軋轢が起こっていま
す。それをNHK教育のETV特集が11月20日に放送します。
 
 NHK教育
 
 ETV特集「シリーズ イスラム激動の10年 第3回
       ドイツ 移民社会“多文化主義”の敗北」
 http://www.nhk.or.jp/etv21c/file/2011/1120.html
 
 放送日:11月20日      
 放送時間:22時〜
  
 今となってはウソみたいなことですけれど、土地バブル景気に沸いていた19
80年代の日本は深刻な労働力不足にあえいでいました。「人手不足による企業
倒産が急増」と今では冗談にもならないことが起こっていました。その労働力不
足はいわゆる「3K」、きつい、汚い、危険と言われる建設や清掃、機械などの
肉体労働の分野に集中していました。そこで、フィリピンやタイ、中国、バング
ラデシュ、パキスタン、マレーシア、イラン、さらにアフリカ諸国などから多く
の労働者を高給で誘い、日本に入国させて働かせました。「1日で1ヶ月、1ヶ
月で1年の収入が得られる黄金の国ジャパン」と聞いて多くの労働者が日本で働
きました。単純作業の外国人労働者の存在を認めない日本政府は、その労働者た
ちを不法就労者として逮捕し、強制送還しました。20年経った今日本は「研修
生・実習生制度」の制定で、事実上外国人労働者を受け入れています。もちろん、
使い捨ての労働力としてです。
 
 さて、1980年代の日本では「外国人労働者を受け入れるか否か」と論争が
巻き起こりました。その時、外国人労働者を受け入れるべきではない、強く主張
して有名になったのがドイツ文学者の西尾幹二でした。「新しい歴史教科書を作
る会」の中心になった人物です。
 
 その西尾が例に引き出したのが、ドイツの外国人労働者問題でした。1950
年代から70年代にかけて、深刻な労働力不足に直面した旧西ドイツは、トルコ
を中心にヨルダン、シリア、イラク、イラン、旧ユーゴスラビア、ポルトガル、
スペイン、イタリア、ギリシャ、韓国などから数百万人の労働者を受け入れまし
た。日本も1960年代のエネルギー革命で失業した炭鉱労働者を、研修の名目
で西ドイツの炭鉱に送り出したことがありました。また、旧東ドイツもベトナム
やカンボジアから多くの労働者を入国させました。
 
 「駅に着いたら、ブラスバンドが賑やかに演奏して私達を盛大に歓迎してくれ
た」と、あるトルコ人労働者が証言したほど、旧西ドイツでは、外国人労働者は
人手不足の救世主として迎えられました。それが1980年代に入ると、2度の
オイルショックによる世界的な不況による失業者急増で、一転してドイツ人の仕
事を奪う厄介者として憎悪されるようになりました。特にトルコ人やアラブ人な
どのイスラーム教徒に敵意が集中しました。一方ドイツ人と同じキリスト教徒で
あり「白人」であるギリシャ人やイタリア人、スペイン人たちは比較的容易にド
イツに受け入れられましたので、あまり攻撃の対象にはなりませんでした。
 
 「ドイツ人のドイツを!外国人労働者は出て行け!」
 
と叫ぶデモ隊が練り歩き、イスラーム教徒に対する暴行や殺人、脅迫が相次ぎま
した。放火や爆破も頻発しました。それにネオナチ勢力が結びついて、禁止され
た鉤十字の旗が各地ではためき、「ハイル、ヒットラー!」の声がわき起こりま
した。東西ドイツ統一後、旧東ドイツ地域でも同じ事が起こりました。それを見
て、ヒトラーの時代の再来だ、ドイツ人はやっぱりナチだ、という不安の声が上
がりました。

 もちろん、そのような排外主義に対して、多くのドイツ人が立ち上がりました。
 
 「過去の過ちを繰り返すな。外国人労働者は私達の隣人だ。ネオナチを許す
な!」
 
と排外主義反対のデモが連日繰り返され、集会やシンポジウムが開催されました。
「私達は外国人労働者を本当に隣人として受け入れているのか」と自分自身に問
いかける真摯な議論も起こりました。

 それから20年がたちました。排外主義を克服したかのように見えたドイツで、
今「イスラーム教徒はドイツとは相容れない。彼らとは一緒にやっていけない。
どこまでも異質な存在だ」と、9.11同時多発テロをきっかけに起こりました。
「イスラーム教は女性を蔑視し、殺人を奨励する野蛮な宗教だ」という攻撃が公
然と巻き起こっています。それはイスラーム教徒との共存を目指した他文化主義
が失敗したからだ、という失望から生まれたのではないかという指摘があります。
 
 ドイツの例は、外国人労働者なしではもはや経済がなりたたない日本にも当て
はまる所があります。
 
坂井貴司
福岡県
E-Mail:donko at ac.csf.ne.jp
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「郵政民営化は構造改革の本丸」(小泉純一郎前首相)
その現実がここに書かれています・
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