[CML 013066] ソ連邦崩壊二〇年シンポジウムのご報告(転載)

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2011年 11月 10日 (木) 01:54:34 JST


紅林進です。
   
   11月6日(日)に明治大学のリバティタワーで開催されました
  「ソ連邦崩壊二〇年シンポジウム」の報告を、主催の社会主義
  理論学会の役員である村岡到氏(『プランB』編集長)執筆の
  報告を転載させていただきます。
   なおこの報告中、自主企画2「20年後のソ連東欧」の部分の
  執筆は佐藤和之氏(高校教師)です。
  
 
  (以下転載)
   
  ソ連邦崩壊二〇年シンポジウムの報告:村岡到
   
   一一月六日、明治大学リバティタワーで、社会主義理論学会主催の
  「ソ連邦崩壊二〇年シンポジウムが開催された。三つの自主企画と
  全体会・講演会で構成され、全体の参加者は八七人。協賛団体として
  NPO法人日本針路研究所と独占研究会が協力した。一一月七日は
  ――ピンと来る人はほとんどいなくなったが、一九一七年のロシア革命
  の記念日。集会は小さな規模で、時代の変化を痛感するが、全体として
  内容の濃いシンポジウムとなった。
   
   全体会 講演会
 講演は、塩川伸明氏(東京大学教授)でテーマは「ソ連はどうして解体
  /崩壊したか」。司会は西川伸一氏(明治大学教授/学会共同代表)。
  参加者は八三人。
 塩川氏は最初に、この学会での講演を引き受けたが会員ではないので
  と断り、理論家と歴史家との違いについて説明したうえで、歴史家としての
  話になると前置きした。豊富な知識に裏打ちされた講演で、ソ連邦の崩壊
  ・解体について、何かの教条や事実に一元化して原因を見つけたつもり
  になる単純な歴史理解――「必然論史観」が大きな誤りであることを明確
  にした。
 塩川講演については、アンケートでも、「抑制の利いた冷静な観察で貴重
  な示唆を頂きました」、「ソ連解体の歴史過程の複雑さがよくわかった」、
  「講演だけでなく、質疑討論が充実していて、全体像にアプローチする上で、
  とてもよかった」、「歴史家の立場というスタンスでの講演、わかりやすくとても
  興味深く聴きました」、「塩川先生の言う『大きな物語』によってソ連解体を
  理解していたので、先生のていねいなお話で、認識があらたまりました」、
  「質疑も含めて、きめ細かい事実分析と理論とのかかわりが興味深くきく
  ことができた」と極めて好評だった。
   
   自主企画1 社会主義像の探究
 報告は、森岡真史氏(立命館大学教授)が「社会主義の歴史と残された
  可能性」を、村岡到氏(『プランB』編集長)が「社会主義と官僚制」を。司会
  は藤岡惇氏(立命館大学教授)。参加者三三人(責任:NPO法人日本針路
  研究所)。
 森岡氏は、ユートピア社会主義思想まで射程を拡げて、社会主義思想
  には生存権を重視する考えと労働義務を重視する考えとが流れていて、
  ソ連邦で試みたような私的所有の廃絶ではなく、生存権を重視する市場を
  活かした社会主義が求められているとして、利潤追求への批判を軸とする
  資本主義批判には限界があると説いた。
 村岡は、従来のマルクス主義では法学的考察を欠如させ、「ブルジョアジー
  独裁」批判を強調し、「官僚(制)=悪、打倒」という単純な理解だったが、
  そこを根本から改めて官僚制の必然性を理解した上で、〈清廉な官僚制〉
  を創造することが課題だと主張した。
  
 自主企画2 20年後のソ連東欧
 報告は、加藤志津子氏(明治大学教授)が「ロシア企業の体制転換──
  国家・企業・労働者」を、岩田昌征氏(千葉大学名誉教授)が「自主管理
  社会主義の教訓」を。司会は佐藤和之氏(高校教師)。参加者は三〇人
  (責任:社会主義理論学会)。
 加藤報告では、ロシア企業の体制転換がゴルバチョフ改革期、エリツィン
  政権下、プーチン政権下、そしてメドヴェージェフ政権下に分けて考察され、
  同時に労働者の地位の変化も明らかにされた。そして、企業は徐々に国家
  の統制化におかれ、労働者は変化を消極的に受容してきたが、経済構造
  の多様化やディーセントワークのために「現代化」が必要だと結論づけた。
 岩田報告では、ユーゴスラヴィアの自主管理社会主義を、協議経済化の
  過剰と合理的官僚制建設志向の欠如という点から反省し、体制崩壊後の
  旧ユーゴ諸国における自主管理社会主義への評価と、崩壊と内戦の欧米
  的要因も指摘された。報告の隋所に、岩田氏の長年にわたる現地体験や、
  ユーゴ・コミュニストとの対話も紹介された。
 それぞれ、質疑応答も活発だった。また、社会主義における国家・企業
  ・労働者という点で、両報告は繋がりがよく、全体として踏み込んだ議論
  ができた。(この項は佐藤和之)
   
   自主企画3 ソ連崩壊後のアメリカとキューバ
 報告は、瀬戸岡紘氏(駒澤大学教授)が「アメリカ建国の理念にみる市民
  の共同体」を、鶴田満彦(中央大学名誉教授)が「キューバのめざす社会
  主義」を。司会は長島誠一氏(東京経済大学教授)。参加者一五人(責任:
  独占研究会)。
   
   懇親会
 シンポジウムの後の懇親会には二五人が参加して、歓談した。司会は
  田上孝一氏。岡本磐男氏(東洋大学名誉教授/学会共同代表)の乾杯で、
  塩川氏を初め報告者、司会に加えて、独占研の柴垣和夫氏などが発言した。
  柴垣氏は「労働力の商品化の止揚を追求することが依然として課題だ」と
  述べた。
  
 四年前に「ロシア革命九〇周年シンポジウム」が社会主義理論学会など
  による実行委員会主催で開かれたがその参加者は八〇人、今回は、独占
  研究会や基礎経済科学研究会などの会員にも拡がったので参加者が少し
  増えた。
 アンケートに「すばらしい企画でした。設営諸氏に感謝します。社会主義
  理論学会がまだ存続していることに敬意を表します」、「有益なシンポジウム
  だった。出席して良かった」とあったことを締めくくりとしたい。

 


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