[CML 009748] [20mm] 安全委員会「福島県内校庭等の利用判断に対する技術的助言」

M.Shimakawa mshmkw at tama.or.jp
2011年 5月 21日 (土) 05:44:14 JST


                                             [TO: CML, keystone, NoNuke, rml]

                                            (引用部は改行位置等若干変更)

 原子力安全委員会のホームページに、

 「福島県内の学校等の校舎、校庭等の利用判断における暫定的考え方」
 に対する技術的助言について
 日 時:平成23年4月19日(火)
 <http://www.nsc.go.jp/info/20110502.pdf>

 と、いう文書が掲載されています。
 以下のような枠囲みの記述を含む、4/19の経緯を記した文書に、「原子
 力災害対策本部」とのやりとりの文書が添付されています。既報の、福
 島みずほ事務所に安全委員会が持参した「メモ」の改訂版のようです。

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 本件については、文部科学省から事前相談があった4月9日以降、
文部科学省との数回にわたる打合せ、原子力安全委員等において逐次
行われた議論を踏まえてまとめた原子力安全委員会として重視すべき
点(※)について、コンセンサスが形成されていた。

 ※原子力安全委員会が重視すべき点
 ・非常事態収束後の参考レベル1〜20mSv/年を適用することは差し
   支えないが、さらに、ALARA(合理的に達成可能な限り低く)の
   観点から被ばくの低減化を求める。
 ・種々のモニタリングを確実に実施し、そのモニタリング結果につ
   いては、原子力安全委員会に定期的に報告を求める。
 ・モニタリング結果に基づき、減衰の効果(ヨウ素の物理的半減や
   ウェザリング)や子供の行動を考慮し、実際に被ばくすると考え
   られる被ばく線量を推定することが必要であり、その結果を基
   に、必要があれば、校舎・校庭の利用法などについて、さらに助
   言をする。
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 前回「メモ」にあった、「内部被ばくを考慮することが必要」という
 文言が消えて、「実際に被ばくすると考えられる被ばく線量」に言い
 換えられています。また、文科省からの「相談を踏まえ、原子力安全
 委員会関係者(安全委員、緊急技術調査委員など)が数回程度議論を
 行い、その結果を文部科学省へ累次口頭で伝達した。」という記述は
 「文部科学省との数回にわたる打合せ」と簡略になっています。

 ほか、
 「原子力安全委員会において3月11日以降に行った助言の活動について」
  <http://www.nsc.go.jp/ad/advice.html>
  には、「原子力安全委員会緊急技術助言組織」名による、

 「福島県内の小学校等の再開にあたっての安全性について(その1)」
 に対する助言(回答) 4/6
  「福島県内の小学校等の再開にあたっての安全性について(その2)」
 に対する助言(回答) 4/7
  「福島県内の小学校等の再開にあたっての安全性について(その3)」
 に対する助言(回答) 4/8

 などの文書もあります。助言要請も回答もいずれも短文で、(その1)で
 は、文科省が各学校の線量を一覧表にして「別添の小学校等を再開してよ
 いか」と聞いているのに対して、回答は、屋内退避地区では屋外活動は「
 好ましくありません」、その他の地域でも、「空間線量率の値が低くない
 地域」では再開について十分に検討すべきと言っています。しかし、基準
 や個々の学校の可否については示していません。

 (その2)では、文科省が(その1)の回答にある「空間線量率の値が低
 くない」の「具体的な線量率」について「教示」を求めているのに対して、
 「助言組織」は具体的に回答することなく、逆に文科省に「判断基準」の
 原案提示を求めています。そして、原案が提示されればそれについて意見
 を述べるとしています。また、どういう意味か、
 「4.なお、公衆の被ばくに関する線量限度は、1mSv/年とされています」
 という記述もあります。

 (その3)では、文科省はより詳細な個別学校の線量表を付けて、助言依
 頼は(その1)と同じ「別添の小学校等を再開してよいか、助言いただき
 たく伺います。」に戻り、回答は、(その2)「にて回答したとおりです」
 と、一言だけのにべもないものになります。

 そして、「4月9日以降」あったという「事前相談」を経て(その1〜そ
 の3は、8日までの文書)、19日の「20ミリ」文書になるわけです。
 さて、どういうことなのか。文科省が専門家にお伺いをたてたら、基準を
 作って来なさいと門前払いされたわけですね。唯一書かれている「具体的
 な線量率」の数値は1mSv/年です。下の記事に言う「誤解」というよりは、
 読み解き不可能、意図の背景説明が必要、というところです。

 Cf.「福島第1原発:『20ミリシーベルトの誤解生んだ』安全委」
   毎日新聞 5月19日
     <http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110520k0000m040086000c.html>
 

 以下、この記事の元になった、安全委員会の記者会見から関連の応答です。

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<http://www.nsc.go.jp/info/20110519.pdf>

原子力安全委員会記者ブリーフィング

○NHK春野記者  地元の方では、周辺の住民の皆さんの中に自主的に避難をしたい
という声も上がっています。伊達市は公営住宅を準備して、それを独自に支援しよう
という動きもあるようですが、そうした動きについて、安全委員会としてはどのよう
な見解を持っていらっしゃいますでしょうか。

○班目原子力安全委員長  安全委員会としては、持っている見解はあくまでも1mSv/y
から20mSv/yの中で、合理的に達成可能な限り下げるように努力してください。もうこ
れに尽きます。

その辺りで暮らしている方の実際の線量というのが、どういうふうになるのかという
ことの把握がまず第一だろうと思っていまして、できる限りそれはやっていただきた
いなと思っていますが、それ以上の行政判断等については、これは行政当局がなさる
ことですので、特段こちらから何か意見を申し上げるつもりはございません。
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○NHK春野記者  それと、別件でもう1点伺いたいんですけれども、今日の資料第
6号のこの基本的な考え方の件ですが、なぜこれを今このタイミングになって発表さ
れるのか、というのがちょっとにわかに理解できなくて、ホームページの方を拝見す
ると、これまでの緊急助言のようなものを徐々にアップされているようですが、この
意図を改めてご説明いただけますでしょうか。

○班目原子力安全委員長 実は我々、ICRPのPublication109だとか、111とか、い
ろいろなものを読んだり、あるいはチェルノブイリ等の経験みたいなものを勉強した
り、いろいろなことをしていまして、我々の中では、まさにここに書いたような考え
方ということで、意見が非常によく一致しています。しかしながら、現在、我々はこ
ういう考え方に基づいて助言をしているんですが、なかなかご理解いただけないとい
うところがございます。

例えば、1mSv/yから20mSv/yという値を示したときに、あたかも20mSv/yという値が
線量限度的な、そこまでは浴びても大丈夫というような数値か、ととられるかとかと
いうような話があったり、いろいろな誤解を生んでいるので、ぜひ我々が本当に何を
考えているのか、一番基本的な考え方というのをお示しした上で、ご理解いただきた
い、それに尽きます。

ちなみに、ここに書かれている内容は、実はICRPですとか、IAEAですとか、
そういうところで既に国際的に議論してきた内容がほとんどそのまま盛り込まれてい
るということでご理解いただきたいと思います。
 --------------

○テレビ朝日村田記者  テレビ朝日の村田と申します。代谷先生がこの席に1か月ぶ
りにお戻りになったので、やはり皆さん聞きたい20mSv/y問題といいますか、10mSv/y
問題についてお尋ねしたいと思います。今週に入っても国会では、例えば一昨日の文
部科学委員会でも参考人の聴取などがあって、そこでも専門家の皆さんが、例えば長
崎大の長瀧先生は100mSv以下では医学的に発がん性が高まるようなデータはないとい
うふうに言われながらも、一方で伊達市長は3.8μSv時間当たり以下でも校庭の土は独
自の判断ではぐと。

また、中部大学の武田先生は梅雨が来る前に、梅雨が来てしまうと土壌のセシウムは
5+#ぐらいにあるものが20+#ぐらいまで沈んでしまうから、今のうちにはいだ方がい
いというような、それぞれの立場でそのうちお2人は専門家でいらっしゃいますけれ
ども、ご意見が違っている状況がある議論が展開されています。

いわば1月前の20mSv/yなのか、10mSv/yなのかというご見解が専門家の中でも、さま
ざまなご意見があるということを、先駆的に我々にお示しいただいたことではなかっ
たかとも思っていますけれども、改めて今のこの20mSv/yが、先ほど班目先生もおっし
ゃったように、上限的にとらえられる誤解ではなくて、正しい理解をされて、さらに
これが1日も早く収束されるための何かご意見というのは、先ほどの安全に関する考
え方もそのひとつかもしれませんけれども、あるのでしょうか。あるいは梅雨が来る
前に何かしなければいけないという切迫したお考えはありますか。

○代谷原子力安全委員  ご指名ですので、私として梅雨の問題を先にお話ししたいと
思います。

チェルノブイリの事故の後のデータを見ていますと、先ほど武田先生でしたか、おっ
しゃいましたけれども、20+#ぐらいまで、はいじゃうという話がございましたけれど
も、必ずしもそういうことはないというデータが出ているというように思っておりま
す。

今現在もほとんど表層にとどまっている。深く潜っているのは、すき込んだ、要する
に耕したとか、そういう行為をやることによって中に埋めたというような状況にある
というように私は理解しております。それほどセシウムというのは余り動くものでは
ない。ただ、水で流れて表層なんかは流れていくということはあり得る、ということ
は十分に考えられるということです。

それから、もうひとつ私は先ほどの10mSv/yがいいと言った覚えはなくて、20mSv/y、
10mSv/yという話は、3.8μSv/hと言われたのが、ちゃんと計算してみると10mSv/y以下
になるはずですと、そういう了解を申し上げたところです。

10mSv/yでいいと私は申し上げたつもりは全くございません。もともと1から20mSv/y
の現存被ばく状況というのを適用するということは、将来的には1mSv/y以下にすると
いうのが大前提です。そちらの方向に向かって低減の方策をとっていくというのがな
ければ、何の意味もないわけです。目指すべきは1mSv/y以下なんです。ただ、それを
1年の間にやりなさいというのは全く無理な話なので、そういうことを目指してやる
ための現存被ばく状況だというように考えるべきだということです。

そういうことで、文部科学省さんもそれなりの努力をすべきだというように思ってい
たということです。そこのところは、まだ私は10mSv/yでやるべきだと言ったように思
われているとすると、それは大きな間違いですので、そこの部分はちょっと弁明させ
ていただきます。

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 毎日記事にある、また上記会見で触れられている「今日の資料第6号のこの
 基本的な考え方の件」とは、

 原子力安全委員会・会議資料(第33回臨時会議 2011.05.19)
 (6)放射線防護に関する助言に関する基本的考え方について(案)
 <http://www.nsc.go.jp/anzen/shidai/genan2011/genan033/siryo6.pdf>

 のことです。以下のような記述があります。
 
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3.異なる被ばく状況が併存する状況での最適化の努力
 周辺住民の生活支援、産業活動、土地利用等に向けた判断においては、避難を始め
とする生活や社会活動への制限と、健康に影響を及ぼすには至らないものの平常時を
上回る放射線被ばくの受容という、個々人にとっての異なる負担の間のトレードオフ
を扱うこととなる。生活や社会活動を過度に制限することなく、放射線防護における
最適化を達成すため、適切な管理や除染(decontamination)・改善措置(remediation)
等による線量の低減が考慮されるべきである。今後、施設の安定化や事故収束に伴っ
て、周辺住民にとって「通常」と考えられる生活状態が回復し、社会的・経済的活動
が再開される地域が拡大されていくためには、とくに除染・改善措置が果す役割が大
きいといえる。
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 まあ、安全委員会は、行政に対して、学校の場合は文科省に対して、「除染」
 や「改善措置」を求めている、ということを言いたいのでしょうが、そうで
 あるならそのように、理解可能な言葉で、適時に端的に、公文書に助言とし
 て書くべきだったでしょう。何も書かずに「誤解」とは「弁解」。校庭表土
 のはぎ取りや教室へのクーラー設置など、自治体のほうが先へ行ってしまっ
 て、安全委員会は後追い。文科省や官邸は、取り残されたことをもっと自覚
 すべきです。
 




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