[CML 009555] 福島第一原発事故以後 〈反原発〉の国民的怒りの波に便乗しようとする「研究者」なる者と著名人なる者の正味の正体(5) 五百旗頭真氏について

higashimoto takashi higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
2011年 5月 12日 (木) 20:22:40 JST


第5回目の今回は先月の4月11日にその創設が閣議決定され、同月14日に第1回会議が開催され
た東日本大震災復興構想会議の議長に就任した神戸大学名誉教授(政治学)で現防衛大学校長の
五百旗頭真氏を取り上げます。実のところ五百旗頭氏を「〈反原発〉の国民的怒りの波に便乗しようと
する研究者」群の一員に数えることは適切ではありません。五百旗頭氏はそもそもこの問題について
いまだに彼自身の明確なメッセージを発していません。したがって、彼を便乗学者の一員と呼んでよい
のかどうか、現段階では明確なところは判断のしようがないからです。

しかし、上記構想会議の第1回会議で示した五百旗頭氏の態度は批判に値します。下記の毎日新聞
の報道によれば菅首相は同構想会議の開催に先立って「(同構想会議の)議論の対象から原発問題
を外すよう指示した」模様です。同記事によればこの菅首相の指示に対して哲学者の梅原猛氏(同会
議特別顧問)は「原発問題を考えずには、この復興会議は意味がない」(同会議終了後の記者会見で
の発言)と明確な反対論を述べました。かつ、この梅原発言には賛同者も少なくなかった模様です。

■東日本大震災:復興構想会議 原発除外に異論が噴出(毎日新聞 2011年4月14日)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110415k0000m010149000c.html

が、同記事を読む限り、「五百旗頭氏は会議後の記者会見で『(検討)部会で専門的な議論をするとき
には官僚機構から知恵を出してもらいたい』と強調」しただけで、上記の菅首相指示に対して「原発問
題を復興会議の議題にせよ」と「異論が噴出」したという同会議参加者の問題提起については議長と
してなんらのコメントも発せず、かつ、なんらのリーダーシップも発揮しようとはしていません。すなわち、
五百旗頭氏には政府の意図に与する姿勢は感じられても、今回の福島第1原発事故によってその重
大な問題性が露わになった原発問題を解決しようとするなんらの熱意も感じとることはできません。五
百旗頭氏のこの姿勢は、今回の〈反原発〉の国民的怒りの波に便乗しようとする意図ありやなしやの
問題を超えて十分に批判に値する態度といえます。私はいまのところそうした五百旗頭氏の姿勢を批
判する論攷にこれも管見のかぎりにおいて接しえていません。〈反原発〉の国民的怒りの波に便乗しよ
うとする「研究者」及び著名人批判のついでに彼を批判しておく必要性を感じるしだいです。

そうはいっても五百旗頭氏批判の材料を私はそう持っているわけではありません。以前、法政大学の
五十嵐仁さんが五百旗頭氏の防衛大学校校長就任にあたってご自身のブログに「晩節を汚すことに
なるのでは?」という広い意味でのかつての同僚である五百旗頭氏批判の一文を草していましたが、
五十嵐さんのその一文での五百旗頭氏批判の表明は私が同氏の防衛大学校校長就任にあたって
抱いていた危惧及び疑問の念とほぼ同質のものでした(私ごときの「危惧及び疑問」の念と五十嵐さ
んの「危惧及び疑問」の念を同様に扱うのは五十嵐さんに対して失礼この上ないことではありますが)。
そして、五十嵐さんの同一文は、今回の五百旗頭氏の東日本大震災復興構想会議議長就任にあた
っての批判としてもそのまま当てはまる性質のもののように思えます。そういうしだいで五十嵐さんの
かつての五百旗頭氏批判の一文を今回の五百旗頭氏の挙動の批判としてもそのまま引用・転載させ
ていただこうと思います。

同一文で五十嵐さんは五百旗頭さんも被災した阪神・淡路大震災の話にふれて、「(五百旗頭さんは)
災害救助で自衛隊が大きな役割を果たしている」と言うが、「(五百旗頭さんは)大震災などの災害救
助が重要だというのであれば、そのための専門部隊を充実させるべきだと、なぜ言わないのでしょう
か。そのための専門組織が十分でないから、その代わりに自衛隊という軍事組織を用いなければな
らないという現実を、どうして真正面から批判しないのでしょうか」と五百旗頭氏を批判していますが、
その五十嵐さんの五百旗頭氏批判は今日の五百旗頭氏批判としても当たっているように思えます。

以下、「五十嵐仁の転成仁語」ブログの「晩節を汚すことになるのでは?」(2006年7月23日付)からの
転載(同記事はもともと五十嵐さんの上記ブログに掲載されていましたが、同ブログには2006年以
前の記事は掲載されていませんので、下記ブログからの転載になります)。

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 晩節を汚すことになるのではないかと心配しています。防衛大学校の校長に就任することが決まっ
た、五百旗頭真神戸大学教授のことです。
 どのような理由で、就任を受諾されたか分かりません。でも、あの五百旗頭先生も時代の流れに
竿を差すことになったのかと、いささかガッカリしました。

 五百旗頭さんからすれば、「安全保障と防衛力の懇談会」の一員になっていましたから、それほど
違和感はないのかもしれません。いつか、私と一緒に掲載された共同通信のインタビューでも、軍事
的安全保障を評価していましたし……。
 しかし、それでも、基本的にはリベラルな立場であると思っていました。これまでの研究や発言は、
基本的にはそのような立場に立つものだったのではないでしょうか。
 五百旗頭さん自身、今日の『毎日新聞』の「時代の風」で、「中には『なぜ、あなたのような人が』と
いぶかる知人もいる。私が軍事関係者のようでなく、リベラルに見えるので意外に感じるという」と、
書いています。

 しかし、「私は安全保障をとても大事に思っている。安全保障とは、さまざまな脅威から国民の存
在を守ることである」というのが、五百旗頭さんの説明です。だから、防衛大学校の校長を引き受け
たのだ、と仰りたいのでしょうが、それは直接には結びつきません。
 五百旗頭さんは、「国民の生存を守る」ための「最後の手段であるのが自衛隊」だとも仰っていま
す。しかし、その自衛隊については憲法上の位置づけが問われ、「国民の生存を守る」どころか戦
争に巻き込む恐れはないのか、米軍との一体化によって侵略の手先にされてしまうのではないか
など、さまざまな議論があることは、よくご存知のはずです。
 そのような「新しい事態」の下で防衛大学校の校長になるということは、どのような意味を持つの
でしょうか。この点に対する自覚や警戒感が、五百旗頭さんにはあるのでしょうか。

 今日の『毎日新聞』の五百旗頭さんの記事を読んで、驚いたことが2つあります。一つは、記事の
ほとんどが、五百旗頭さんも被災した阪神・淡路大震災の話で占められていることです。災害救助
で自衛隊が大きな役割を果たしていることは認めますが、それはそのための専門部隊が存在して
いないための代替にすぎません。
 大震災などの災害救助が重要だというのであれば、そのための専門部隊を充実させるべきだと、
なぜ言わないのでしょうか。そのための専門組織が十分でないから、その代わりに自衛隊という軍
事組織を用いなければならないという現実を、どうして真正面から批判しないのでしょうか。
 大震災だけでなく、現に今進行している大雨被害や洪水、地滑り災害などは、毎年のように繰り
返され、「国民の生存」や「国民の生命」が脅威にさらされ、あるいは失われています。それなのに、
そのような脅威に対して「国民の生存」を守るための集団が、自衛隊という軍事組織の形でしか存
在していないというのは、どう考えてもおかしなことではないでしょうか。

 五百旗頭さんには、このような問題意識は全くありません。それどころか、自衛隊のあり方につ
いては、牧歌的と言えるほど楽観的な見方をしてます。
 この点も、私が驚いたことの一つです。この間の事態をきちんと見ていたのか、と訝しく思われる
ほどの楽観論が、五百旗頭さんの記述からはうかがえます。
 五百旗頭さんは、「国の防衛という本来の任務に、ミサイル防衛という新たな分野が加わった。
国内、国外の災害派遣は地球異変の下で増える一方である。そして狭くなる地球の安全のために、
国際平和協力活動も忙しい」と書いていますが、これらは全て必要かつ有益であると考えているよ
うです。そこからは、「多くの仕事に関わるようになった」自衛隊の変貌に対する危惧も懸念もうか
がうことはできません。

 とはいえ、すでに防衛大学校の校長への就任は決まったことです。このうえは、五百旗頭さんが
今日進行しつつある日本の軍事化の促進に利用され、晩節を汚すことのないようにと望むばかり
です。
 その点で、五百旗頭さんには、校長として防衛大学校でぜひ行って欲しいことがあります。その
一つは、「ミサイル防衛」の実効性についての研究です。
 どれほどの命中精度があるのか、距離の近さや時間的制約はネックにならないのか、そして何
よりも、配備されたミサイルの数よりも多くのミサイルが発射されるような事態があり得る場合、
それでもなお、ミサイル防衛は有効に機能するのか、などの点について研究していただきたいと
いうことです。

 第2には、「国内、国外の災害派遣」についての研究です。本来は軍事組織である自衛隊が「災
害派遣」されることの是非を、真正面から検討する必要があるのではないでしょうか。
 自衛隊を改組・再編して「災害派遣」のための専門部隊を充実するべきではないか、訓練の内
容や装備についても、「災害派遣」を前提にしたものに変える必要があるのではないか、特に、
「国外」への派遣ということであれば、軍事組織ではない方が好ましいのではないかなど、「災害
派遣」体制充実のための研究を進めていただきたいものです。

 第3には、「国際平和協力活動」についてです。これまでの活動実績についての総括が必要で
しょう。それが、どの程度、現地の役に立ち、どのような評価を受けているのか、費用対効果に
ついてのバランスシートを作成していただきたいと思います。
 もっと重要なのは、国連の下にはない「有志連合」としての自衛隊派遣についての総括でしょう。
「テロとの戦い」ということで、インド洋では米英の艦船への給油を行い、イラクのサマーワでは地
上部隊が「復興支援活動」に従事し、航空自衛隊は今も米軍物資などを空輸しています。
 それが、政府の説明通りの状況の下で、説明通りの効果を上げたのかどうか。とりわけ、現地
の人々にどう評価されているのか、防衛大学校としての独自の調査でもやったらいかがでしょう
か。

 日本の防衛政策は大きく転換し、五百旗頭さんの仰るとおり、自衛隊は「新しい事態を迎え」て
います。とりわけ、イラク戦争への加担と在日米軍再編による一体化の進展は自衛隊に化学変
化を起こし、これまでとは全く異なった「怪物」にしてしまう危険性があります。
 そのような「化学変化」を拒み、「国民の生存」を守るという方向で、大きな役割を果たしていた
だきたいものです。五百旗頭さんは「リベラルに見える」だけではなく、本当にリベラルだったの
だという評価が退任に当たってなされることを、私としては願うばかりです。
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以上、問題提起として。


東本高志@大分
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