[CML 008214] 福島原発とレントゲンとの比較はナンセンス

Hayariki hedomura2 at hotmail.co.jp
2011年 3月 16日 (水) 21:00:15 JST


レントゲンやCTスキャンとの比較は御指摘の通り、欺瞞的な議論です。一回の放射線総量と、福島原発付近で恒常的に放射線発生していそうなシーベルト/時を同列に並べることはできません。また、内部被曝と外部被曝の相違も無視しています。
そもそも医療被曝のレベルだから安全という前提も当然視できません(林田力「エックス線検査乱用は再考を 『増補新版 受ける? 受けない? エックス線 CT検査 医療被ばくのリスク』を読んで」JANJAN 2008年10月15日)。
http://book.geocities.jp/hedomura/
本書『増補新版 受ける? 受けない? エックス線 CT検査 医療被ばくのリスク』はエックス線検査による医療被ばくの危険性を訴えた書籍である。本書の主張は明確である。医療被ばくにはリスクが伴う。たとえ一回一回は微量であっても、被ばくの障害は蓄積される。そして自覚症状のない健康な人にとって、エックス線検査を受けることで得られる利益がリスクを上回ることは証明されていないと主張する。
本書を読むと暗澹たる気持ちにさせられる。我々は健康になるために病院に行き、健康を維持するために検査を受ける。しかし、実はエックス線検査を受けることで健康を害している可能性がある。これほど馬鹿らしいことはない。
今日、エックス線を利用した検査は頻繁に行われている。それらに対しては一般に「微量だから人体に害はない」と説明される。それが科学的根拠に基づかないものであると本書は主張する。
「微量だから安全」という主張が成り立つためには、特定の値以上の放射線を浴びると有害であるが、それ以下ならば問題ないという閾値の存在が前提となる。しかし、本書では放射線の影響には閾値が存在しないことが国際的な常識であるとする(80頁)。たとえ微量であっても、全く浴びないことと比べれば、ガンになるリスクは高まる。従って検査の必要性とリスクを考量した上で、真に必要な場合にのみ限定すべきである。
私も子どもの頃にエックス線検査の安全性について質問したことがある。数ヶ月前に別の病院で検査を受けたばかりで、改めて受けることに懸念があったためである。それに対する医師の回答は「自然界に存在する放射線と同等だから問題ない」というものであった。問題ないと言いつつ、患者のみを残して扉を締め、隔離された状態で撮影することに不満があった。自然界にあるのと同等程度の線量ならば、そのように厳重に隔離して撮影することがおかしいのではないかと子ども心に思ったものである。
そもそも有害なものは少量でも、その分だけ有害と考える方が常識に適合する。一定量以上ならば有害であるが、一定量以下ならば無害という発想自体が本来は不自然である。不自然な主張が正当化されるためには、それなりの根拠が必要であるが、現実には閾値が一人歩きしている。
ここにはエックス線検査を推進したい側のニーズに適合させるための論理がある。本書が主張するとおり、「学問的な関心よりむしろ社会・経済的要素から」閾値は産み出されている(81頁)。本書には医療従事者自体がエックス線の危険性について十分な知識を有していないとの指摘もあり、問題の根は深い。
本書は医療被ばくのリスクが主題であるが、それ以外にも考えさせられる内容である。本記事では二点ほど指摘する。
第一に自覚症状のない健康な人を検査することの意義である。被ばくの問題以前に、そもそも健康な人を早期発見のために何時間も検査に費やすことに意味があるのか、再検討する必要がある。本書では健康診断には軽微な変化を見つけて治療する結果を招きやすく、不必要な手術や過剰な服薬となる可能性が主張される(53頁)。
一般論としては病状が進行してからよりも、早期に治療した方が治癒の可能性が高い。それが医療費削減にも結びつくとされ、早期発見が推進されている。しかし、中には治療する必要のない問題もある。早期発見による早期治療に効果があるのか、科学的な考察を深める必要がある。
第二に行政の役割である。本書では主張の根拠に欧米諸国の行政が発表した文書を引用することが多い。国民の健康を守ることを使命とする保健衛生当局が放射能の害を研究し、警告を発することは当然である。しかし、寂しいことに日本の行政の文書は引用されていない。日本の行政は国民の健康を守る役割を果たしていないことになる。
日本の行政は消費者行政をはじめ、あらゆる分野で業者の側を向き、国民のための行政となっていないと批判されている。その行政批判が、ここでも当てはまる。医療被ばくだけでも十分に重たい話題であるが、過剰な検診や行政のあり方など広く考えさせられる一冊である。



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