[CML 008006] 【石弘之さん/アラブ民主化闘争とTPPと世界飢餓の脅威】 「近づく飢饉の足音 再び始まった食料高騰 」

uchitomi makoto muchitomi at hotmail.com
2011年 3月 8日 (火) 08:52:18 JST


石弘之さんがアラブ民主化闘争と投機資金とTPPと世界飢餓の脅威について語っています。現在目の前で起こりつつある中東・北アフリカでの激動やTPPの問題などについて「地球の容量の限界」というと地球環境的な側面から考えることの重要性を教えられます。


[編集部から]

 またも世界は食料や資源の高騰に襲われています。理由や背景が前回とは異なる部分もありますが、短期間にこれだけ続けば、地球の容量がいよいよ限界に近づいてきたと感じている人も多いでしょう。物価上昇だけでなく、世界の不安定さの増大は様々な形で日本にも影響してきそうです。備えと覚悟を石弘之さんが説いています。


▼石弘之:「地球危機」発 人類の未来

近づく飢饉の足音 再び始まった食料高騰
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/column/20110307/106040/?P=1


 ふたたび世界的に穀物価格が高騰しはじめた。石油危機とほぼ同時に発生した1974年の高騰以降、今回は7回目だが、その間隔はしだいに短くなっている。このまま上昇すれば、この春には世界各地で食料暴動が発生するのでは、といった不安も高まっている。食料問題の長期予測では、価格変動がしだいに激しくなっていって、ついには決定的な需給ギャップ、そして価格暴騰、飢饉へというシナリオが考えられている。世界的飢餓の足跡が聞こえはじめた。

食料高騰ふたたび

 このところの食料価格の急騰は凄まじい。世界の食料品価格は昨年10月から今年1月までの間に15%上昇した。とくに、トウモロコシ価格は2倍になって2年半ぶりの高値となり、大豆も半年前より5割ほど高くなった。コーヒー豆も、ここ4〜5年で約2倍に上昇している。

 国連食糧農業機関(FAO)によると、これまでの主要食料価格指数のピークは2008年6月だったが、今年2月には90年に統計を取りはじめて以来最高値を更新した。FAOは輸出国で「悪天候などによって状況がさらに悪化すれば、食料価格の上昇は加速して3年前のような政治混乱も起こりうる」と警告している。

 世界的な小麦の備蓄が先月には、1年前の1億9670万tから1億7520万tに減ったのをはじめ、穀物の備蓄量も約40年ぶりの低水準になった。FAOが定める「消費量の18%」という在庫量の安全水準を下回った。オバマ米大統領は、春までには食料暴動が起きる可能性を指摘して、暴動に備えるよう軍に命じた。フランスのフィヨン首相も「穀物価格の前例のない高騰がつづけば、4月には食料暴動を含む社会的混乱が発生するかもしれない」と警告した。

 世界銀行は先月、食料価格の高騰の影響が貧困層におよんで、発展途上国の貧困人口が昨年6月以来約4400万人増えたとする報告書を発表した。ロバート・ゼーリック世銀総裁は「食料価格の高騰で収入の半分以上を食料費に回している貧困層に深刻な影響をおよぼしている」と懸念を表明した。

食料とアラブ民主化闘争

 北アフリカや中東のアラブ諸国で連鎖的に発生している民主化の動きにも、食料価格が影響している。この動きは、強圧的な長期政権などへの積もった不満が爆発したものだが、引き金は食料高騰に対する庶民の不安だった。

 エジプトの人口は8300万人。アラブ諸国の中で最大だ。所得が1日1ドル以下の貧困層が4割近いと推定される。貧困層へ無償でパンを支給することもあって、毎年880万tの小麦を輸入する世界最大の輸入国である。昨年以来、食料価格は20%近くも上昇し、トマトは300%、鶏肉は40%も上昇した。

 さらに、運動の発火点になったチュニジア、反政府運動が高まっているアルジェリア、ヨルダン、モロッコ、スーダン、ソマリアなどでも食料価格の急上昇が反政府運動を過激化させている。

 中東にかぎらず世界的に食料が高騰している。日本でも、昨年以来、食用油が15%、砂糖が7%値上がりし、「物価の優等生」といわれた卵が1前年に比べて13%値上がりし、5年半ぶりの高値水準になった。この4月からは輸入小麦の政府売り渡し価格を平均18%引き上げることが決まっている。今年は「怒涛の値上げラッシュに見舞われる」と予想するエコノミストは多い。

流れ込む投機資金

 第2に生産国の異常気象による収穫量の減少だ。オーストラリア東部は建国以来という洪水に、小麦輸出国のロシアとウクライナではそれぞれ猛暑に見舞われた。オーストラリアでは小麦生産量が予想収穫量の5割にとどまるといわれる。ロシアは作付け面積の約2割にあたる1000万haが壊滅状態となり、今年7月まで穀物の輸出禁止措置をとった。ウクライナも禁輸に同調した。

 さらに、エネルギーと食料のからみも複雑になっている。中東・北アフリカの産油国を巻き込んだ民主化運動で原油価格が急上昇して食料価格に跳ね返っている。一方で、米国ではトウモロコシを原料とするバイオエタノールの需要が拡大し、ガソリンに混ぜる量の上限を10%から15%に引き上げた。米農務省が昨年末に公表したトウモロコシの期末在庫量(今年8月末)は、消費量のわずか0.7ヵ月分となり史上2番目の低水準にまで落ち込むと予想している。

 そして、価格の短期的な大きな変動は、投機マネーのかっこうのターゲットになった。日銀は2月の「金融市場レポート」で、食料などの国際相場の高騰について「先進国の金融緩和を背景に、投機資金の流入が拡大していることが市況の押し上げ要因になっている」と指摘した。とくに、景気回復が難航する日米欧は超低金利政策をつづけているため、世界的なカネ余りに拍車がかかり投機マネーが商品市場に流れ込んでいる。

 クォンタム・ファンドの共同創設者で、世界的な米国の投資家、ジム・ロジャースは最近の講演会でこんな食料危機のシナリオを語っている。「世界の穀物在庫は歴史的な低水準で、中国などの需要の増加に供給が追いつかない。主要な穀物産地で悪天候がつづけば、世界は数年のうちに惨憺たる食料危機に見舞われることは間違いない。今後、穀物価格は、まさに未体験の高値圏に突入する恐れがある。今後2〜3年で、食料危機をきっかけにいくつかの政府が崩壊するかもしれない」

 農林水産省は2月、「世界の食料需給見通し」を発表した。それによると、20年には穀物価格が08年に比べて名目で24〜35%、肉類が32〜46%値上がりする。価格上昇の原因は、新興国の経済成長に伴う需要増やバイオ燃料の拡大などだ。生産量は増加する見通しだが、それを上回る消費量の伸びが予想され、世界の期末穀物在庫率は08年の20%から 20年には15%まで低下すると見込んでいる。バイオ燃料用の需要も54%増大するという。

増えない農地
 長らく安定していた食料品の価格が07年から08年にかけて高騰し、戦後最悪の食料危機といわれた70年代初頭以来、30数年ぶりの食料不安を引き起こした。食料価格が過去最高になり、ハイチ、フィリピン、シエラレオネなど世界各地で約60件もの食料暴動が発生した。とくにエジプトでは、食料値上げに抗議するデモが暴動に発展して10人以上の死者を出した。

 こうした危機的状況を受けてFAOは09年9月に、各国から専門家を招集して緊急の「ハイレベル専門家会合」をローマで開き、「2050年の世界をいかに養うか」という緊急レポートを発表した。レポートによると、00年をベースにして50年までに、世界の穀物生産は約21億tからさらに10億t以上、食肉生産は2億7000万tから2億t以上増産する必要があるという。

 とくに、人口増加の激しい発展途上地域では、この間に90%も食料生産を増やさなければならない。人口の伸びが止まった先進地域でも、食肉消費の増大やバイオ燃料生産のために、36%も増やさなくてはならない見通しだ。

 世界人口は毎年約8000万人増えつづけ、今年後半には70億人になると国連は予測する。単純に計算すると、増える人口を養うだけで毎年、北海道2つ以上に相当する約18万haの農地を増やす必要がある。だが現実には、人口増加によって都市化などで農地の転用が進み、農地の大幅な拡大は難しい。先進国でも、バイオ燃料のための燃料用作物の作付け面積が増加し、食料生産を圧迫している。50年には91億5000万人に達すると国連が予測する人口を養うのは、どう考えても困難だ。

 自給率わずか40%の日本の農業政策は相変わらず混迷をつづけている。「世界の孤児になる」と環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を急かす声がある一方で、市場開放がもたらす農業への影響に対する不安感も依然根強い。

 穀物が不足すれば自国の食を守るため、生産国が輸出規制に踏み切るのは間違いない。それは、08年の危機のときに20カ国近い国々が食料禁輸に踏み切ったことでもわかる。今回もロシアをはじめ、すでにそうした動きがでている。どうする日本。政治が政争に明け暮れているうちに、とんでもない怪物が忍び寄っている。

 世界人口は毎年約8000万人増えつづけ、今年後半には70億人になると国連は予測する。単純に計算すると、増える人口を養うだけで毎年、北海道2つ以上に相当する約18万haの農地を増やす必要がある。だが現実には、人口増加によって都市化などで農地の転用が進み、農地の大幅な拡大は難しい。先進国でも、バイオ燃料のための燃料用作物の作付け面積が増加し、食料生産を圧迫している。50年には91億5000万人に達すると国連が予測する人口を養うのは、どう考えても困難だ。

 自給率わずか40%の日本の農業政策は相変わらず混迷をつづけている。「世界の孤児になる」と環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を急かす声がある一方で、市場開放がもたらす農業への影響に対する不安感も依然根強い。

 穀物が不足すれば自国の食を守るため、生産国が輸出規制に踏み切るのは間違いない。それは、08年の危機のときに20カ国近い国々が食料禁輸に踏み切ったことでもわかる。今回もロシアをはじめ、すでにそうした動きがでている。どうする日本。政治が政争に明け暮れているうちに、とんでもない怪物が忍び寄っている。

 ボリビアでは激しい価格の上昇が起きており、インゲンマメは昨年に比べて179%、小麦は44%、コメは33%上昇した。中央アジアのキルギスでは、小麦価格が昨年はじめから40%も上昇して、暴動一歩手前の危機的な状況だ。

 インドのニューデリーの市場では、今年に入ってタマネギの価格が1カ月で2倍になった。買い占めた業者を政府が摘発したところ業者がストで対抗したため、価格は逆に1日で3割も上がった。タマネギはインド料理に欠かせないため、隣国パキスタンから大量に輸入した。すると今度はパキスタンで高騰がはじまり、対インド輸出を禁止した。インドはこの報復でトマトの対パキスタン輸出を禁止したため、地元紙は「タマネギ・トマト戦争」と報じている。

 食料高騰には4つの理由が考えられる。第1にインドや中国など経済成長の著しい国々の消費量の拡大。中間所得層の人口が増えて食の欧米化が進み、肉の消費量の増加とともに飼料の需要が伸びた。たとえば、中国の大豆需要は15年前の5倍になった。
 		 	   		  


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