[CML 010425] Re: 国鉄闘争の終結

久下格 kuge_on_cml at aoisora.org
2011年 6月 26日 (日) 22:53:26 JST


国労の久下です。

 メーリングリストで闘争の終結を知りました。関係者が皆、「雇用の解決なくして本当の解決はない」と強調してきただけに、JR各社が通り一遍の「拒否」声明を出したとたんに、「展望はない。闘争を終結する」という結論が急に決まったことに驚いています。しかし、私は闘争終結を決めた原告団と共闘会議を批判するつもりはありません。

 1986年、私は仲間たちとともに、いまや「シオサイト(日本テレビ)」とか呼ばれる場所にあった汐留貨物駅に作られた「人材活用センター」という名の収容所に居ました。私は30代になったばかり。40人ほどいた仲間たちの多くは20代の半ばで、他の人活に比べれば若い、ほとんど国労青年部員ばかりの収容所でした。
 職場での組合活動が次々と抑圧されるなかでも、私たちはできる限りの抵抗を続けました。状況が煮詰まっていく中、管理局から派遣された労務屋が他の職場で「新橋の人活でいまだに国労バッチつけて粋がっている連中。あんな連中は絶対首にしてやる」と言い放ったという話が伝わってきました。国鉄貨物の縮小で廃止になった汐留貨物駅の構内で、行き場のない散髪屋(大きな駅には散髪屋もあった)が地域の人目当ての営業を続けていたのが、「今度、700人を収容する清算事業団の建物を作るから、いよいよ出て行けと言われた」という話を、散髪に行った仲間が聞いてきたのは86年秋も深まったころだったと思います。
 私たちが700人の名簿に載っているのは確実でしたが、なぜか、87年の年が明けても清算事業団の収容施設をつくる工事ははじまりませんでした。そのうち、「どうも、本州では当局が希望退職募集に精を出しすぎて、採用枠が割れているらしい」という話が伝わってきて、2月16日、ほぼ全員がJRへの採用通知を受け取ったのです。採用されはしましたが、本来の駅の職場に配属された者は一人も居ませんでした。私は運転や保線の仲間と一緒に有楽町駅のキオスク(JRが借りた店舗)で7年半働き、その後、決まった職場を持たない応援の職場で4年間、国鉄時代を含めると13年間、本来の職場から排除された後、山手線の駅に戻りましたが、その後も昇進試験での差別などさまざまな差別を受けてきました。60才の定年まであと数年となる今、ようやく安定した仕事ができるようになりましたが、もちろん問題がなくなったわけではありません。
 このように、私たち本州の国労組合員の多くは、敵失によって辛うじてJRに採用されましたが、雇用情勢の厳しい北海道・九州では採用希望者が採用枠を超えたため、7400人が採用を拒否されました。採用された者と採用を拒否された者。偶然が分けた線引きによってその後の苦労はまったく違ったものになりました。差別はあっても、年功序列賃金体系の末端に引っかかった私たちの賃金は少しずつ上がってきましたが、解雇され、年収数百万円で25年間闘い続けねばならなかった者の苦労は比較にならなかったと思います。
 「JRに法的責任はない」というあきれかえった方針が押しつけられようとしたとき、ただ傍聴席から大声で抗議する以外の術を知らなかった私の悲観的な予測は土壇場で裏切られ、怒りを持って演壇を占拠した闘う闘争団によって敗北の方針は反古になり闘いが続きました。しかし、はじめられた闘いはいつか決着をつけねばなりません。人生は一度、人は一度しか生きられない。その人生を25年にわたって闘い続けた闘争団の仲間と家族にとって、唐突とも思える今回の決定を受け入れるにあたってさまざまな思いが交錯したことは想像に難くありません。最高裁判所で組合差別の事実が最終的に認定された。しかし、支払われる和解金額は1人あたり2200万円。雇用は0。これでいいのかという議論はもちろんあったと思います。しかし、議論の経過が公表されていないとはいえ、全国大会の演壇を占拠してまで闘争終結を阻止し、鉄建公団を訴えて自立した闘いを継続した人々とそれを支えて闘った共闘会議が、25年間の闘い、25年間の人生を背景として闘争の終結を決めた以上、私はその決定を尊重したいと思います。
 JRに採用された私は、分割・民営化反対闘争の敗北以降、本来ならば解雇されたはずの労働者として、北海道・九州の仲間を支援し続けようと思って生きてきました。今は、闘争の終結を決めた闘争団員と家族の皆さんすべてが、これからの人生を少しでもよりよく生きていかれるよう、心から祈るのみです。

【蛇足】 私のホームページで分割・民営化のころのことを書いた「見晴らし荘のころ」というお話を公開しています。よかったら遊びにきてください。

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久下格 http://aoisora.org



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