[CML 010362] 再論:小出先生の「大人が食べなければならない」、レスポンス

Yasuaki Matsumoto y_matsu29 at ybb.ne.jp
2011年 6月 23日 (木) 21:39:07 JST


みなさまへ    (BCCにて)松元

《再論:小出先生の「大人が食べなければならない」、レスポンス掘

3回目は、バルセロナの童子丸開さんからの私信を紹介します。 


童子丸さんは、今回の事故後逸早く米国の原子力事故専門家ガンダーソン氏のインタビュー記事を翻訳紹介し、啓発の発言もいただきました。また、9・11 事件の物理 
的な検証、「対テロ戦争」批判などでも多くの発言をしてきた方で、イズラエル・シャミールの翻訳などイスラエル批判の論考も多数あります。

●どうじまるHP バルセロナより愛をこめて(下記文章の、より推敲されたものが掲載されています。)
http://doujibar.ganriki.net/

長文ですから、字詰まり文字化けを避けるためにすこし改行を多くしました。

配信者(松元)の意図については、「レスポンス機廚鬚翰ください。

======以下転載=======

《放射能と日本人》

 スペイン国バルセロナに在住しております者です。小出裕章博士の「年よりは福島産の農産物を引き受けてほしい」という主張を巡る議論について、いくつか、思いつくままに書いて松元さんに伝えてきました。それをややまとまった形に綴りなおしてみたいと思います。長文ですが、あしからず。

ということで書き始めようとしたところ、もう皆様ご存知でしょうが、次のような新聞記事が目を引きました。ここに、東京電力が小出博士と同様に「地下ダム」を計画しているにもかかわらず、株価下落を嫌ってまだそれを公表していないことが書かれています。
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110620k0000e040050000c.html
福島第1原発:東電、遮蔽壁費用公表せず 債務超過懸念で


また次もすでにご存知でしょうが、上記の記事に関連して、毎日新聞の山田孝男記者がこの東電の姿勢を厳しく批判しています。政府の上層部が「地下ダム」計画について知っていることも明らかにされています。
http://mainichi.jp/select/seiji/fuchisou/news/20110620ddm002070081000c.htl
風知草:株価より汚染防止だ=山田孝男


山田記者は次のように書きます。
『福島原発の崩壊は続き、放射性物質による周辺の環境汚染が不気味に広がっている。株価の維持と汚染防止のどちらが大切か。その判断もつかない日本政財界の現状である。』

株価が維持できなければ、もちろん東電は破産の危機にさらされます。しかし放射能汚染の拡大は、日本という国と社会を根底から覆します。会社の内部にいる者たちが自分の会社を潰さないようにするのは、ある意味でやむをえないことで、それを押し返して国と社会のために動くのが行政当局の仕事だと思うのですが、そうならない日本という国の不幸なあり方が、ここに集約されているように思われます。

山田氏はこの後、これと太平洋戦争末期の出来事とを比較しています。今回の原発事故は、単なる事故ではなく、太平洋・大東亜戦争敗戦に匹敵する敗北です。突っ走る軍部を止めることができずに巨大な犠牲と破壊を被った歴史が、軍部を電力会社に置き換えた形で繰り返されています。しかも、何十年、何百年かけても、もはや取り返しの付かない巨大な破壊を残した形で。


本題に入ります。下は、皆様すでにご存知と思います。
http://hiroakikoide.wordpress.com/2011/06/19/hokkaido-jun19/
6月19日 小出裕章氏の札幌での講演会

 これはUSTREAMで中継されビデオもあるのですが、関係者の貴重な努力にもかかわらず、残念ながら音と画面がいまいちです。ただ、この講演会に出席された方からの次のようなツイートがありました。引用します。

  * * * * * * * * * * * * * * * * * *
【引用開始】
小出さんの講演会に行ってきました。講演は動画や本で聞いているお話が大半でしたが、質疑応答で現実をつきつけられた感じ。自分の中で消化するのにちょっと時間が必要です。世界は変わってしまったのだな…と改めて重く感じました。小出さんは「子どもを守っていきましょう」と何度も言っていました。

小出先生@講演会「福島や近県の農漁業の壊滅を防ぐため、放射線感受性の低い大人が福島の食品を食べるべき。汚染度に応じて60歳以下は食べない60禁、50禁、40禁、20禁、15禁、10禁という仕分けをすればよい。そうした表示がない食品を子ども用とすれば、産地も子どもも守れる。」

小出先生は「50歳以上は放射線の感受性が低くなる。年寄りは放射線に汚染されたものを食べても大丈夫(会場爆笑)。子どもたちはそういうわけにはいかないので、子どもたちには食べさせずに年寄りで食べて日本の農業、漁業、酪農を守りましょう」と今日の講演会でお話されました。

そうすると会場から「大人は食べろというのか。東電や政府への追及はどうなるのだ」との質問が。それに対し、小出先生のお答えは次のようなものでした。「チェルノブイリ原発事故が起きた時、日本国内で”ロシアやヨーロッパからの食料の輸入を制限しろ”との意見が出、政府も規制をかけた。(続

「僕はそれには反対でした。日本が引き受けなかった食料はどこへ行くか。アフリカなどの発展途上国です。原発のない国の人々にそれを食べさせることになる。原発のある日本は、責任を持ってその食料を食べるべきだと僕は言いました。」原発問題をこれまで見ないできた私たちの責任を考えさせられました。

もちろん、小出先生は「東電や政府は責任を持って汚染状況を公表すべき」と言いました。そして「年齢に応じて、福島や近隣の農産物、海産物を食べて、日本の第一次産業が崩壊しないように助けるべき」とお話されました。

もちろん、小出先生のお話は「皆がそうすべき」と言ったわけではありません。食べたくない人はもちろん食べる必要はないと思います。

私は今日の小出先生のお話を聴いて、「もう本当に今までの世界には戻れないのだな」と思い、ちょっと沈みました。でも、小出先生はもうとっくに覚悟をしている。この絶望的な現実を、来る日も来る日もお話している小出先生を目の前で見て、私もある種の覚悟ができました。いや、しなければならない。

自分たちの問題として、しっかり向き合わなければと。もちろん若い世代には今まで以上に自分たちを守ってもらいたい。でも、私はもういいかな。子どもには食べさせられないけど、原発を止められなかった責任を、私自身も自分の問題として受け止めていかなければ。とても考えさせられた講演会でした。
【引用、ここまで】
  * * * * * * * * * * * * * * * * * *

ここに書かれている、会場からの質問「大人は食べろというのか。東電や政府への追及はどうなるのだ」というのが、松元さんが知らせてくれたものと、ほぼ同じだと思います。それに対する小出博士の返答も書かれていますが、それは博士の胸にあるもののごく一部分でしかないと思います。

小出博士の言葉は、時間スケールを抜きには考えることができません。いままでにすでにばら撒かれてしまい国土を汚染した放射性物質はもちろん、これから出てくる想像を絶するほどの量の汚染は何十年、何百年たっても消えることは無いでしょう。その間、そこに住んでいた人は戻ることができないのです。

たとえもう大気中への爆発的な拡散が起こらないにしても、いま作られている汚染は長い時間をかけて海の中に広がります。そして相当の部分が海の底に沈着し、海藻に吸収され、海藻が死ねば再び海水に戻り、プランクトンに、小魚に、そしてあらゆる生物に拡散するでしょう。たとえ「制限未満」であっても、低濃度放射能汚染から自由になることは、少なくとも数十年間、たぶん百年以上は、ありえない話です。

それはいかなる技術を使っても、いかなる財力や権力を使っても、消すことができません。もはや人間の力の及ぶ範囲ではないのです。

また、福島第一が何とか「地下ダム」と「石棺」で、莫大な人的犠牲を払って、一応の安定を実現できたとしても、それまでに出てくる膨大な高濃度放射性の水や廃棄物を、いったいどうするのか。一時的にどこかに貯蔵するにしても、どこに? また、それを最終的にどこに持っていくのか? もちろんですが、もうこれ以上の原発事故を起こさせないことと同時に原発をすべて廃止させることが同時並行で行われなければなりません。しかし、今後日本の原発が次々と廃棄されたとして、そこから出てくる放射性廃棄物と使用済み燃料をどうするのか?

これはもう、例の「地層処分」のように、深い地下にでも埋める以外に方法のないものでしょうが、日本のように地殻変動の激しい国で、いったいどこで処分するのか? 原発技術と引き換えにモンゴルに処分をさせようという動きもあるようですが、他国民に自分が作った猛毒を引き受けさせようというのか。(そうなったら日本人やめます。)では、日本国内のどこに埋めるのか。誰かが引き受けなければなりません。

いったい誰なのか。北海道ですか? 青森県ですか? 福島県ですか? それとも東京ですか? 大阪ですか?

否が応でも、その答を出さなければならないときが近づいています。10年、20年なんてすぐですよ。いくら今考えないようにして先送りしても、その時がすぐにやってきます。何百年、何千年も、超高額の費用と多くの人の犠牲を払い続け放射能が漏れ出す恐怖と戦い続けなければならない、そんな未来が、唯一残されています。これが現実です。


実を言えば、私の住むスペインでも9基の原子炉が運転中で、その放射性廃棄物・使用済み燃料の処分地を巡ってスッタモンダが続いています。またつい今年の4月末に、バルセロナに程近いタラゴナのアスコ原発から大量の汚染水が漏れる事故がありました。世界中が同じ問題を抱えています。どこでも「明日はわが身」なのです。(もしタラゴナで原発事故が起こったら、お世話になっているカタルーニャの農業のために、低濃度汚染の野菜くらいなら引き受けてやろうと待ち構えています。)

そして、パンドラの箱は福島で開けられました。日本と世界は、何百年、何千年もこの放射能に付き合って生きていかねばならないのです。いやであろうがなかろうが、誰でもが背負わされてしまった運命です。もちろん、自分たちの強欲のためにそれを今まで推し進めた者たちの罪の深さは無間地獄にふさわしいものでしょう。そして、それを無自覚に受け入れ、大量生産大量消費の日本で、無駄の上に無駄を重ねることを「発展・進歩」と思い、形ばかりのこの世の繁栄を享受してきた我々には、どんな未来が待ち構えているのでしょうか。パンドラの箱の底には、希望は残っていないのでしょうか。


事故の処理が数年で済むことなら東電と日本政府に全ての責任を取らせればよい。いずれにしても、東電は破産させられ解体され、経産省と文科省は改編させられ、原発のデータ改ざんや事実隠しの責任者は刑務所に行くべきです。それにかかわった政治家たちは糾弾されある者たちは刑務所に行くべきです。あらゆる隠し資産と不当な個人資産は全て明らかにされて、被災地に送られるべきです。(そのような者たちが「刑務所に行くべきだ」とは、小出博士が折に触れて語っていることです。博士が東電や政府の責任を追及していないかのような言い方は大変な誤解だと思います。)

しかし問題はそれでは済まないのです。今から延々と続く未来の問題なのです。百年後に東電はおろか日本国も存在しているかどうかすら分かりません。まして千年後には。
しかし生命は続きます。人間の社会と文化は続きます。


アフリカのサハラ砂漠南部地帯には気候の変化と急激な人口増加、国際的な経済不均衡や政治的な理由などで、大量の難民が発生しています。彼らは国連や先進国からのボランティアたちの援助によって、難民キャンプの中で何とか命をつないでいます。しかし、何百年、何千年かけて自然条件と人間の努力によって作られ維持されてきた自分たちの風土から根扱ぎにされ、文化も誇りも失い、他人にすがってしか生きていけません。

「人間はパンのみによって生きるにあらず」という言葉がありますが、自分たちの土地と歴史と文化を失った悲惨さは、いかにパンがあっても、人間としてとうてい耐え難いものでしょう。


放射能に汚染された地域の人たちが農業と漁業と林業を失い、それによって営々と築いてきた自分たちの風土から根扱ぎにされ、これから何十年も百年以上も政府や企業のまかないで生きていくことなど、人間にとってこれほどに不幸なことはないでしょう。子から孫へと命をつなぎ、産業をつなぎ、文化をつなぎ、そこに住む人間としての誇りをつないで、初めて一つの人間社会といえるのだと思います。

福島という人間の社会をつぶしてはならない、そして、福島と日本中の子供たちに壊れた遺伝子を持たせてはならない。そのためには、日本中の、もう放射能の影響をさほど受けない年齢の者たちが、自ら進んで福島の産物にある低線量の被爆を引き受けるべきだ。そうしてでも福島の産業と風土と人間社会を守るべきだ。自分たちの過去と現在と未来の現実を見つめることなく、自分たちの業を汚染地帯に押し付けてその人間社会をつぶすようなことをしてはならない…。

小出博士は、単なる「贖罪意識」であのようなことをおっしゃっているのではないと思います。40年にわたる研究と反原発闘争の経験と、そして何よりも、反原発闘争を通して知った多くの地域で現実に生きる多くの人々とのふれあいに裏打ちされ、そこから自然ににじみ出た言葉を発しておられるわけです。単なる知識だけではなく、蓄積され洗練された人間観、社会観、文明観、世界観の全てがあの発言に含まれています。一日二日の思い付きではありません。


こんな現実に生きることになった人間としての、新しい生き様を作らなければならない、ということだと思います。たとえ、責任ある者たちを全員刑務所に放り込み、東電を破産させ、国の財産を使い果たしたとしても、何世代、何十世代と続く放射能と戦いながらの生活が終わることはありません。日本人は子々孫々にいたるまで、放射能と付き合わざるを得なくなってしまったのです。これが現実です。高齢者はほどほどに放射能と付き合いながらも、子供たちと若い女性たちにだけは良いものを食べさせる、そういう新しい習慣と伝統を作り維持していかざるを得ないのです。これは将来、日本だけではなく、世界中でそうなるのかもしれません。

博士がおっしゃるように、2011年3月11日を境に、日本と世界は変わりました。そしてもう二度と元には戻りません。小出博士はその現実を、自分の長年の闘いと共に故郷を愛して生きる無数の人々を背中に負って、万感の無念の思いをかみ締めながら、あのようにおっしゃっているのではないでしょうか。

博士と同世代の者として、いま言えることはここまでです。あまりにも重過ぎる現実かもしれません。しかしそれはもう真正面から見つめるしかないでしょう。

                                  童子丸開



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