[CML 010148] 「見えないものが人々を分断している」:伊藤夏子の福島報告

Yasuaki Matsumoto y_matsu29 at ybb.ne.jp
2011年 6月 12日 (日) 20:44:21 JST


みなさまへ   (BCCにて)松元
Peace Philosophy Centreから、伊藤夏子さんによる5月31日の福島市のリポート全文の転送です。

すでに高濃度で汚染されている福島市。国や県や市という行政が子どもや市民をどのように扱っているか修羅の現実が写しだされています。

======以下全文転送======

《「見えないものが人々を分断している」:伊藤夏子の福島報告》
A Fukushima Report by Natsuko Ito
http://peacephilosophy.blogspot.com/2011/06/fukushima-report-by-journalist-natsuko.html

「子ども20ミリシーベルト」問題で、福島の保護者たちが文科省前で抗議した5月23日、院内集会における福島の人たちの訴えを詳細にレポートしてくれた伊藤夏子さんは、一週間後の5月31日、福島市におもむきました。保育所の計測、市民と自治体の交渉の様子を映像、写真とともに紹介します。6月9日、グリーンピースジャパンが、外国特派員協会で記者会見し、福島市内の公園、通学路、中学校、家庭菜園等で高い放射線量が計測されていることを指摘し、「妊婦や子どもたちを避難させる必要がある」と訴えました。ジャパン・タイムズ、AFPといった外国語メディアは報道していますが、日本語のメディアではまだ見かけません。

この調査結果は、伊藤さんが同行した保育所の計測を裏付けるものでもあり、また、日米の航空調査、フランスのIRSNの報告などからもわかるように、福島第一原発から飯館村等北西方向へ、そして、弧を描くように、高汚染地帯(セシウム30−60万Bq/m2、あるいはそれ以上)が伊達市、福島市、二本松市、郡山市等人口密集地帯に広がっている調査結果とも一致します。伊藤さんやグリーンピースが結論づけるように、これ以上子どもたちが被曝しないように、早急に避難、除染対策を講ずる必要があります。
(転載等希望はこちらに連絡を 
info at peacephilosophy.com )


《福島市を訪ねて》   伊藤夏子

目に見えない放射能を知る唯一の方法は測定である。

その測定も、何を信じればいいか分らない。自分で調べ判断するしかない。
が、相手は見えないのである。

見えないものに怯える人。見えないものは気にしない人。

見えないものを忘れようとする人。

見えないものを見ようとし、格闘する人。
外遊びを再開した福島市の幼稚園では、外に出ない子どもとその親が苦しんでいる。

見えないものが人々を分断している。


★ 保育所の砂場は「放射性廃棄物」
5月31日、日帰りで福島市を訪ねた。23日に福島から上京し、文科省前に座り込んだ父母たちの訴えを聞き、現地の様子を自分の目で確認したいと思ったからである。31日は16時から、そのときの父母が県の対策責任者と会う予定であった。

福島市公表のデータによると5月下旬、市役所横高さ1mの空間線量が毎時1.5マイクロシーベルト(μSv)前後である。肌の露出を避け、0.1ミクロンの粒子を99%カットする使い捨てマスクを着用した。県と父母たちの面会に参加する他は市内を歩き、公園や八百屋、スーパーの食品売り場を見て回ろうと考えていた。ガイガーカウンターを持っていないため、目に見えない放射能を認知する術がないのが最大の問題であった。

福島駅で新幹線を降り、ホームを見渡すとゴーグルにマスク姿で計測する作業員風の男性(Tさん)がいた。線量を教えてもらおうと話しかけたら、何やら立派な測定器をお持ちであった。機種はベータ線とガンマ線の両方を測定できる「Aloka サーベイメーターTGS-133」であ 
る。東京の室内のバックグラウンドは65cpmだったが、新幹線の車内は郡山付近から線量がぐっと上がったとのこと。福島駅ホームは大人の腰の高さで250cpm前後である。ようやくシーベルトに慣れてきた私はcpmと聞き、困惑した。cpmとはカウント・パー・ミニッツ、1分間に飛んでくる放射線の数だという。何を測定しているか尋ねると、ほぼセシウムからのガンマ線のはず、との答えであった。

PHOT: Aloka サーベイメーターTGS-133 レンジは最大100k 
(10万)単位はcpm

今回の東京電力福島第一原発の事故では、半減期30年の放射性セシウム137と、半減期約2年の放射性セシウム134がほぼ1対1の割合で検出されている。(以下強調太字)《長きにわたり問題となるであろうセシウム137は最初、ガンマ線ではなくベータ線を放出する。今回初めて知ったのだが、文科省や県が発表している校庭などの空間線量はガンマ線しか計測していない。すでにセシウムの多くは地表に降りている。今の時点でセシウム137を正確に計測するには、ベータ線を検出できる測定器で地表近くを調べなければならないのだ。》

Tさんは作業環境測定士である。以前、放射線管理区域である大学の研究室で放射性廃棄物の処理を行っていたという。福島市在住の母親(Oさん)の依頼で市内の認可外の保育所と個人宅を測定しに行くと聞き、急遽同行させてもらうことにした。

ロータリーに迎えに来てくれたOさんの車の中は子どもの玩具でいっぱいだ。Oさんは4歳の女の子と1歳の男の子の母親である。使い捨てマスクを着用している。市内でも特に線量が高い、山を背に広がる地区に向かった。

「川があるから線量が高いのでしょうか?」Tさんに尋ねると「おそらく大量の放射性物質が山にぶつかって落ちたのでしょう」との答え。

PHOT:JR福島駅 女子高生もマスクをつけていない。

到着したのは住宅地の中の小さな保育所である。早速、玄関の子どもの靴の裏を測定した。レンジを一番下の300に合わせると、針が降り切れた。裏がざらざらした靴が一番高く、700cpmであった。 (以下強調太字)《 小さな砂場は2000cpm。絶対に遊ば 
せないで下さいとTさんは言った。セシウム137換算で1000cpmは、放射線管理区域から持ち出し禁止レベルである。(注1)  2000cpmとは、1分間に2000 
個の放射線の粒が測定器の表面めがけて飛んできているということだ。》

砂場のセシウムは雨で浸透してしまったようで、20センチ以上掘り、粘土層が出たところでも600cpmであった。

PHOT:保育所玄関先にて

● 映像:砂場をスコップで掘り、計測(同サイトでご覧ください。)
「ピ」という音は測定器がとらえた「放射線の粒」である レベルが高いと音が連続し、ビービー鳴り響く

その後6月3日、保育所の園長先生から連絡があった。

「先ほど関西電力の人が来て砂場を測定して行きました。高さ50センチでした」

―関西電力、ですか?
「県から頼まれたそうです」

―ガンマ線ですか?どんな測定器でしたか?
「さあ・・・ 大きくてマイクのようなのが着いていました」 


―数値は教えてもらえましたか?
「1.78と言われました。マイクロシーベルト、ですね。砂を5センチ取れば遊んでいいって・・・」

―5センチ取り除いた状態も測定したのですか?
「地上50センチだけです」

6月1日には保育所の責任者が集められ、積算量を調べるためにポケット線量計を常時携帯するよう指示が出ている。6月13日から8月ごろまで測定するという。その間も放射能に晒されるのである。

間もなく事故発生から3か月だ。外部放射線の実効線量が3か月につき1.3ミリシーベルトならば放射線管理区域のはずである。(注2)福島市の積算量はこれをはるかに超えている。なぜ空間線量を測定するだけの“モニタリング”を続けるのだろうか。

私は同行できなかったが、Oさん一家が住むマンションは、玄関入口前の苔が約10,000cpmを記録している。セシウム137換算で10,000cpmも「放射線管理区域」だ。(注3)

● 映像:Oさんマンション玄関前の苔

3階建て鉄筋コンクリートマンションの2階の室内は、線量が低かったとのこと。3月11日から数日間、洗濯物を外に干すためベランダに出入りしたが、その後、一切窓を開けなかったという。

後日、Oさんと電話で話した。窓からの放射性物質の侵入による大気の汚染はもう大丈夫だろうと告げられ、時々窓を開けるようになったという。しかし、玄関前の苔はどうにもできずにいるとの事であった。不動産屋に説明しなければならないが、「シーベルト」が定着したため、cpmだと通じない。(注4)

玄関を出入りするには苔の上を通らなければならない。見た目はただの苔である。強い放射線を放っていることをどうすれば理解してもらえるか分らないという。苔を除去してもどこに捨てるかが問題だ。保育所の砂場も放射性廃棄物である。そもそも、なぜ、放射性廃棄物の中に子どもたちが置かれているのか。

私はOさんに、子どもと避難してほしいと伝えた。しかし、彼女には仕事もある。生活も楽ではない。両親も兄弟も近くに住んでいる。Oさんは、子どものためには避難すべきだと分っているが、なぜ自分たちに非はないのに避難しなければならないのか、なぜこんな目に遭わないといけないのか、どうしても納得できないと言う。

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★「一緒に福島の子どもたちを守って下さい」〜親たち、県に訴える〜
3月11日以前、福島に知り合いはなかった。私は、30キロ圏外でも線量が高い地域は、放射能の影響を受けやすい子どもや妊婦を優先して一刻も早く避難させるべきだと思っていた。やがて県内に知人がいる複数の友人から、地元住民の間では「避難」を口にすることさえ憚られる空気があることや、差別を恐れ県外に出られずにいる人たちがいると聞いた。しかし、福島県民が声を上げない限り事態は変わらないと思い、インターネットで情報収集を続けた。そして5月初旬、「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」が立ち上がったことを知った。それ以来、自分が住む埼玉も放射能汚染地帯であるとの認識を持ちつつ、この会の活動に注目してきた。

5月11日、「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」は福島県に対し、以下の要請を行った。

1、あらゆる被ばく低減策を、県自らが主導し行ってください。 

2、そのために、授業停止やいわゆる学童疎開・避難が必要であれば、躊躇なく行ってください。また、自主的に避難や疎開を行う者への経済支援を行ってください。
3、校庭削土をはじめとする除染作業、高放射線区域の隔離等を急いで行ってください。(東京電力への放射能の引き取り要求も求めます)
4、これらの対策にかかった費用は、福島県民を代表し、堂々と国・東京電力に要求してください。
5、知事が任命した現在の放射線健康リスク管理アドバイザーを即刻交代させ、内部被ばくも含めた防護策や継続的モニタリングの指導が出来る真のアドバイザーを招聘してください。

5月31日16時、県庁隣の自治会館にて県職員3名が父母たちに回答した。
以下は、その時のやり取りである。

PHOT:右が「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」の父母たち

「県独自の低減策はないんですか」
―明日からモニタリングします。

「モニタリングは低減策じゃないですよね」「4月からモニタリングしているんですよ」
―モニタリングの結果を見て・・・

「いつまでモニタリングするんですか」「ずっと放射能を浴び続けているんですよ」
―・・・・・。

「福島市は物凄い積算量なんですよ」
「保護者たちは切羽詰ってますよ、追い詰められて。感じて下さい。目の前に小学校あるでしょう」
―・・・・・。

「国の原子力安全委員会は誰も年間20ミリシーベルトを容認していないんですよ」
「低ければ低いほどいいと言ってるから、文科省も1ミリシーベルトと言ったんですよ」
―県災害対策本部原子力班主管:安全委員会は20でいいと言ったんじゃないの?

「なぜ地表をモニタリングしないんですか」
「ホットスポットが沢山あるんですよ」「すごい値が出てるんですよ」
「ガンマ線しか測定してないんじゃないですか」
―原子力班主管:50センチでやりますので、それ以外の方法はやりません。

「うちの高校はグラウンドで1センチが4と5でした。それでも部活やってるんですよ。側溝が60出ました」
「50センチで測るモニタリングを私は信用しません。なぜ50センチなのか。小さい子が下で土いじったりする可能性の方が大きいじゃないですか」
―・・・・・。

「現在、何人県外に出てるんですか。県は把握してないんですか」
―8000人以上は・・・

「校庭での活動は親の承諾書を取っているんですよ」「幼稚園でも外遊びさせてるんですよ。数値が高いとお伝えしたら『承諾書もらっています』って」
―・・・・・。

「中学校で体育を休むと評定はできない、だから1ですと言われるんですよ。中学3年生にもなれば、これがどういう事かご存じですね」
―小中学校については市町村の判断です。

「4月13日、原子力安全委員の一人が記者会見で言ってますね。土埃に注意した方がいいって」
「もう一か月以上もそのままですよ。その間、ずっと吸い込み続けてるんですよ」
「これが本当の放射能リスクですよ」「それについて適切なアドバイスをしてくれないのであればきちんとしたアドバイザーを出して下さい」
―・・・・・。

「県のリスクアドバイザーはどういう基準で選んだのですか」 

―広島、長崎、チェルノブイリの研究実績があるからです。

「どんな研究実績ですか」
―・・・・・。

「誰が選んだんですか」「国ですか」
―県です。

「県の誰ですか。知事ですか」
―県です。

「年間100ミリシーベルト以下の健康被害について専門家の見解が分かれているなら、
なぜ一番被曝しても問題ないという立場の3人を選んだのですか」 

「分らないことについては安全側に立つのが大原則じゃないですか」
「何のためのアドバイザーですか」
―・・・・・。

「一番最近の講演会では職員が動員されたことも知ってるんだ。質問もさせなかったって話じゃないか」
「なぜ山下さん(注5) を守るのですか」「なぜ県民を守らないのですか」
―・・・・・。

「アドバイザーの交代について、知事に検討してもらったんですか?」
―・・・・・。

「知事に伝わっているんですか」「批判があることは山下さん本人に伝わっているんですか」
―・・・・・。

「知事に、アドバイザーのこれまでの発言と原子力安全委員会の発言を報告して下さい」
―・・・・・。

「福島県民は棄てられたんですよ」
「福島の子どもたちは棄てられたんですよ」
―・・・・・。

「県民同士がいがみ合う事はしたくないんだ」「放射能で仲違いしたくないんだ」
「一緒に福島の子どもたちを守って下さい」「守って下さい」 

「一緒に守りましょうよ」「一緒にやりましょうよ」
―・・・・・。

県職員3人は、俯(うつむ)くだけであった。

−☆−☆−☆−☆−☆−☆−

★「土はどうするのですか」
5月31日19時 福島市飯坂町平野中学校体育館にて

夜、校庭の土の汚染除去について地区住民向け説明会が行われると聞き、町はずれの中学校に向かった。市中心部で拾ったタクシーの運転手は、実家がリンゴ農家だと話してくれた。果樹園は手入れをしないと荒れてしまうため、出荷できるか不安を抱えながらも栽培を続けているという。約20分走り到着した中学校は、水田の真ん中にあった。

PHOT:平野中学校体育館

体育館では地区住民と教育委員会の質疑応答が始まっていた。 


「高圧洗浄で汚水が流れてくるでしょう。下流に吸着剤は入れてもらえるんですか。
うちは下流なんで。側溝はすでに高いんで・・・」

「植栽についてお尋ねします。私は何十年も学校の緑化に取り組んできました。表土をとれば枯れると思うんです。誰が責任をとってくれるんですか」

「学校の周りで米作ってる者です。高圧洗浄の日は教えてもらえますか。田んぼに水を引かないようにするので」
―JAさんにお伝えすればいいですね? では、そうします。

「(土の下に敷く)遮水シートの耐用年数は何年ですか」
―年数は示されておりません。最終処分場でも使われているシートだということで国の指針に基づいて使用します。30年間、中に置くとは申し上げておりません。国の対応方針が示されれば、対応していく考えです。

「土はどうするんですか」
―東電に持っていってくれと要求しています。
―東電の敷地持っていくのも、双葉、大熊は一日も早く戻りたいから持っていけないことを理解して下さい。

近くに座っていた農家と思われる男性たちの私語。皆、60代、70代だろう。“東京湾さ持って行って埋め立てすればいい”“東電本社の敷地だな”“ロケットさ積んで火星さ持ってくべ”・・・

PHOT:地区住民への説明にあたる福島市教育委員会関係者

母親が必死に質問している。
「一度埋め立てたあと、方法が見つかったらちゃんと掘り出して管理してもらえるんでしょうか」
「通学路は調べてもらえないんでしょうか」

母親は引き下がらない。
「モニタリングは空間線量でなくて、側溝とか雨どいの下なども調べていただきたいのですが」
―計測方法は決められておりまして、中学校ですとその中の何点かの平均で(高さ)1メートルです。

この時の男性たちの私語。
“今日は学校の話し合いじゃないって” “ああいうのカミさんに貰うと苦労するべ”

私の左隣の男性は、最後まで黙って聞いていた。
私が明らかによそ者と分るからだろう。集会が終わると話しかけてきた。
「本当に参ってますよ。息子の嫁が四国だから孫と避難させてますけど、向こうに転校させようかどうか・・・」

体育館に残った住民数名が心配を口にしている。
一人がポケットから線量計を取り出すと、皆、次々と取り出した。
「これ買ったんですけど、きちんと測れるでしょうか」
「孫が心配で、秋葉原まで買いに行きましたよ」

福島では放射能を測定できるものは滅多に店頭に並ばないという。
現地では様々な噂を耳にした。国が買い上げたと言う人もいれば、輸入品が船ごと行方不明になったらしいと話す人もいた。

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★ 付記 
6月6日、福島県災害対策本部にようやく電話が繋がった。関西電力の測定員が訪れたという保育所の一件を伝えた。15分後、折り返し返答があった。

6月1日に開始したモニタリングは1μSvを超えた学校等について国の財政的支援により表土除去または天地返しによる線量低減を図るためのものであり、測定者がコメントや指導をしないよう委託業者の一つである電気事業連合会(電事連)に申し入れたとのことであった。測定器が足りないため電事連の協力も得ているのだという。

今回のモニタリングは国の原子力災害現地対策本部に県災害対策本部が協力する形で実施しているとのことである。なお、文科省に対しては学校や幼稚園だけでなく、認可外の保育所を含め子どもを預かる施設への財政的支援を要請しているとのことであった。

モニタリング方法については、高さ50cmでのガンマ線の測定は子どもへの外部被曝の影響を調べるためであり、ホットスポットの存在は認識しているが、学校生活において屋外で子どもが多くの時間を過ごす校庭を最優先にしているとのことである。校庭、園庭の目途がついたら地域の草むら、側溝といったホットスポットの除染に市町村と取り組む予定で、除染についての知見は国に協力を求めているとのことであった。

内部被ばくについてはホールボディーカウンターが県立医大に一台しかないため確保に動いており、県としては県民の健康を維持するため県民の要望を聞きながら柔軟に対応したいと考えているとのこと。全県民の健康管理調査検討委員会座長が山下俊一氏であることについては、氏に対する様々な意見は把握しているが、実際の調査にあたるのは山下氏ではなく研究機関であるとの返答であった。避難については、子どもも含め年間20ミリシーベルトを基準とした国に決める権限があるとのことであった。

応対した県災害対策本部職員の口ぶりから誠実さは伝わってきた。しかし、私は、職員たちにはもっと勉強してもらい、国の指針や専門家の見解に対抗できるだけの見識を持ち合わせてほしいと思った。放射能の影響をめぐる専門家の見解は割れている。土壌汚染や飲食物の汚染、除染、大量の放射性廃棄物の処理といった難題に対する解答を持ち合わせている「専門家」などいないはずだ。

また、県知事と市町村長は、何があっても住民を守るという姿勢を示すべきであろう。ホットスポットだらけの町に子どもたちを放置しておいていいはずがない。モニタリングを続けるとは、その間、さらに被曝させることに他ならない。

なお、連絡をくれた保育所では砂場をビニールシートで被い、外遊びを控えている。「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」にも測定に来てもらい、保育士たちの勉強会を持ったとのことである。避難も考え始めているが、少しでも放射能を減らすため同ネットワークの助言をもらいながら自分たちで除染するとのことである。

この保育所は4月上旬、県の調査で毎時2.5μSv (地上1m) が計測されていた。測定結果は後日ホームページで発表すると告げられただけで、その後、何の報告も指導もなく、ホームページを調べても見つけることができなかったという。

福島の親たちは放射性物質が大量に降り注いだ3月11日からの約1週間、我が子がどれだけ被曝したか心配している。断水の中、水、食料、ガソリンを求め、人々は屋外で長蛇の列をなしていたという。Oさんも二人の子どもの手を引き、並んでいた。彼女は、子どもをこれ以上被曝させないため、せめて食べ物だけは放射能のないものを与えたいと言う。

−☆−☆−☆−☆−☆−☆−
国会は菅退陣で騒いでいる。

これ以上、福島の子どもたち、そして日本に暮らす子どもたちが被曝しないよう、避難、疎開、内部被曝への対策を含むあらゆる手立てを尽くすこと。

今後大量に発生する放射性廃棄物の処分場を早期に確保すること。今こそ、政治決断が求められているはずだ。


伊藤夏子(いとう・なつこ):1972年生、埼玉県在住。アルバイトや派遣社員として職を転々とした後、フリーランスのテレビドキュメンタリー番組リサーチャー。

作業環境測定士(Tさん)のブログhttp://madamada-korekarasa.cocolog-nifty.com/

この記事のPDF版はこちらをクリックしてください。

注1:放射線を放出する同位元素の数量等を定める件(平成十二年科技庁告示第五号)第四条別表第4他http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/anzenkakuho/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2009/04/22/h121023_05.pdf 
およびhttp://www.aist.go.jp/aist_j/rad-accur/pdf/case_study_1.pdf

注2:同 平成十二年科技庁告示第五号 第四条

注3:前掲iに同じ

注4:cpmをシーベルトに換算するには複数の条件を考慮しなければならない。なお、シーベルトとcpm、両方の測定値が示されるガイガーカウンターも販売されている。「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」は、α、β、γすべての線量を計測し、両方の単位で表示できる測定器も使用している。

注5:福島県放射線健康リスクアドバイザーの長崎大学山下俊一氏 氏の3月21日の講演は
http://wwwcms.pref.fukushima.jp/pcp_portal/PortalServlet;jsessionid=6A027FEA894454F939E0C850C22D8C62?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=23695 で視聴可

投稿者 Peace Philosopher 時刻: 1:18 PM
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