[CML 010046] 福島第一原発事故報道での報道の担い手拡大:林田力

Hayariki hedomura2 at hotmail.co.jp
2011年 6月 6日 (月) 20:20:33 JST


【PJニュース 2011年6月6日】福島第一原発事故報道は報道の担い手という点で質的な転換期にある。マスメディアが報道しない反原発団体の記者会見やデモなどが動画サイトで報道され、ネット市民の関心を集めている。ここに至るまでにはフリーのジャーナリストらによる記者クラブ批判の活動が大きい。

記者クラブは日本の報道の閉鎖性を象徴する制度である。その弱体化を象徴化した出来事が、民主党の小沢一郎代表(当時)の2009年3月4日の記者会見であった。公設第一秘書が政治規正法違反容疑で逮捕された問題についての記者会見で、小沢氏は違法性を全面的に否定した。小沢氏は「政治的、法律的にも不公正な検察権力の行使」と検察を非難し、大きな話題になっている。

この記者会見ではフリージャーナリストの上杉隆氏が鋭い質問を浴びせ、それがマスメディアでも報道された。上杉氏の質問「政治団体の献金や金額をチェックする機能はあるのですか」が不意打ちであったためか、小沢氏が「チェックというのはどういう意味ですか」と聞き返す一幕もあった。マスメディアに混じってフリージャーナリストが質問し、その質問内容がニュースとして報道された。

小沢氏は新生党代表幹事の頃から、会見の記者クラブ以外のメディアへの開放を志向していた。その後も政権構想の中で「記者クラブを廃止して、内外に開かれた姿にすべきだ」と主張した(「麻生捨て身の「給付金解散」シナリオ」文藝春秋2009年3月特別号)。民主党でも岡田克也幹事長(当時)が記者会見のオープン化を進めた。小沢氏の会見へのフリーのジャーナリストの参加も、この流れに沿ったものである。

記者クラブは会員である報道機関にとっては独占体制、報道される側にとっては情報操作や癒着という既得権益のある制度である。それに風穴を開けようとする小沢氏や民主党の試みは勇気のあるものである。しかし、それ故に記者クラブという特権を維持したい大手メディアからは黙殺されがちで、民主党の試みが取り上げられることは少なかった。 
http://www.pjnews.net/news/794/20110605_2
ところが、上記の記者会見では上杉氏が「フリージャーナリストの上杉隆です」と名乗って質問し、そのやり取りがテレビのニュース番組などでも利用された。これは大手メディアも会見でのフリージャーナリストの質問を無視できなくなったことを意味する。記者クラブ制度に風穴を開ける小沢氏や民主党の地道な取り組みが浸透しつつある証拠である。

「4年間で2100万円という大きな金額の背景を小沢事務所では調べないのか」と厳しく追及する上杉氏は小沢氏にとっては歓迎できない相手である。そのようなジャーナリストも会見に参加させる小沢氏の姿勢は評価できる。小沢氏にはさまざまな評価を下すことができるが、この一事だけでもプラス評価できる。

フリーのジャーナリストたちが開けた風穴は福島第一原発事故報道で大きく広がっている。フリーのジャーナリストもジャーナリストという点では既存のジャーナリズムの一角を占める存在である。これに対して東京電力の記者会見などではネイビー通信や平等党報道部という既存のジャーナリズムとは異なるバックグラウンドを有する存在が参入した。ネイビー通信は報道とは別の分野の事業経営者が2011年3月に始めたばかりのブログである。平等党は天皇制廃止などを掲げた政党を志向していた(林田力「草の根革新派市民の対立軸」PJニュース2010年9月3日)。
http://www.pjnews.net/news/794/20100902_16

彼らは会見場でマスメディアの記者が行わないような大胆な質問を繰り返している。平等党報道部の田中昭氏は地震直後のプラント・パラメータや対策工事に要する人工(にんく)数の公表を要求した。また、ネイビー通信の田代氏は具体的な組織名を挙げて、福島第一原発の作業を請け負う下請け企業と暴力団の関わりを追及した(林田力「福島第一原発5号機の海水ポンプが故障」PJニュース2011年5月30日)。
http://www.pjnews.net/news/794/20110530_1

小沢会見での上杉氏の質問とは異なり、彼らの質問は会見を取材するマスメディアからは無視されがちである。しかし、ニコニコ動画などでは会見が生中継されることで、ネット上で注目を集めている。【了】


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