[CML 010931] 教科書問題で高嶋伸欣さんの声明

Maeda Akira maeda at zokei.ac.jp
2011年 7月 25日 (月) 14:06:25 JST


前田 朗で す。

7月25日

教科書問題 で高嶋伸欣さんの声明を転送します。

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全国の教科 書採択関係者の皆さんに 沖縄からの怒りの声をお届けします

                    琉球大学名誉教授 高嶋伸欣

 今回検定 に合格した育鵬社の教科書には、沖縄に対する重大な侮辱と背信の
内容が下記のように記載されています。

万が一にも 育鵬社の教科書を採択した場合には、沖縄からの激しい抗議と責任
追及の動きに晒される可能性があります。採択の際には十分に配慮されるよ う
要望いたします。

1.公民の 教科書の表紙にある宇宙から撮影した日本全国の写真では、このよ
うな場合に検定の絶対条件とされる北方領土4島が読み取れるものになって い
ますが、南の部分を見ると鹿児島県の種子島までで沖縄県の部分には別の写真が
はめ込まれていて沖縄県がありません。これでは尖閣諸島ど ころか沖縄県全体
が日本ではないかのような印象を生徒に与えかねません。念の為に文科省にも確
認しましたが、表紙も間違いなく検定の対象 になっていてこの表紙も検定で合
格と判定されたものだということです。従ってこの件は単なるケアレスミスでは
なく、検定官や検定審議会の 学者委員なども含めた旧態依然の沖縄軽視沖縄蔑
視の構造的な差別意識が今も厳然と同書執筆者と検定関係者の中に存続している
ことを証明し ていると、沖縄では受け止めています。ことは教育にかかわるも
のなのですから、これはたとえて言えば卒業アルバムのクラス写真で47人の
集合写真の中のある一人の顔の部分にだけ別の写真を張り込んで意地悪をしてい
るのと同然です。この屈辱感は

訂正されれ ば解消されるものではありません。まして採択はこの見本本によっ
て行うのが大前提なのですから、今後訂正されるはずという想定での採択は 不
当です。それに育鵬社自身がしきりに扶桑社の後継会社だとPRしていますが、杉
並区や大田原市の公立中学でこれまでの6年間使用させてきた扶桑社の歴史教科
書には今なお50箇所もの誤記があると判明しているにもかか わらず、その訂
正や謝罪の措置を一切していないのです。この件でも育鵬社が自主的に修正する
可能性は限りなく低いと思われます。採択に際 してはくれぐれもこうした差別
的な教科書を生徒たちに与えることにならないよう、適正な判断を期待します。

2.育鵬社の歴史教科書では 沖縄戦の記述で<集団自決>に触れてはいます
が、それは

<米軍の猛 攻で逃げ場を失い、集団自決をする人もいました>とあるだけで
す。これでは

全責任がア メリカ軍にあるかのようです。それに沖縄県民が勝手に自決してし
まったかのようにも読めます。今の中学生にしてみれば想像外の行動でしょ う
から何と愚かなことを沖縄の人たちはしてしまったものだなどと連想することに
もなりかねません。<集団自決>については4年前の高校日 本史の検定で、当
時の日本軍には責任がまるでない表現に書き換えさせたことをめぐり、沖縄県民
総ぐるみの抗議行動が展開されたことが全国 にも報道されたはずです。沖縄の
抗議を受け入れた文科省は、日本軍の深い関与があったことを認め、<日本軍に
よって集団自決に追い込まれ た人々もいた>という記述がすでに教科書に登場
しています。それなのに4年前のものよりもはるかに事実を歪めた記述を育鵬社
は最初から載 せたのです。このこと自体、沖縄県民の4年前の行動を知らない
はずはないのですから、意図的な歴史改竄であり、県民へのいやがらせと同時
に露骨な背信行為であると沖縄では受け止めています。百歩譲って仮に育鵬社の
説明に該当するような事例があったとしても、検定ではその様 な場合には両論
併記が規則で定められていますからこの記述はその規則に違反しています。その
規則違反を指摘しなかった検定官たちの責任も 重大です。でもこの不当な記述
のある育鵬社の教科書が採択されなければ、生徒たちに実害が及ぶことはともか
く回避できるのです。また、沖 縄の人々の怒りも、この教科書が生徒の手に渡
らないで済むのであれば随分と違ってくると思われます。採択に際してはこの点
にも留意され慎 重な判断をされるよう望みます。

3.さらにもう一点、上記の件に関連して育鵬社のこれらの内容がある教科書を
万一採択した場 合、その教育委員会は、最高裁判所大法廷の判例で例示されて
いる通りの違憲行為をしたとして法的責任を追及される可能性が濃厚にあること
を指摘しておきます。

ここでいう 判例は、<旭川学力テスト事件最高裁判所大法廷判決。1976年
5月21日>のことで、そこでは大綱的な内容に限って教育内容を政府が最 低
限の基準を決める権限を持つことを認める代わりに、行過ぎた権限行使をしては
ならないとの念押しをした上で、

さらに<例 えば、誤った知識や一方的な観念を子どもに植えつけるような内容
の教育を施すことを強制するようなことは、憲法36条、13条の規定上か ら
も許されない>

と具体的に 示して釘を刺しているのです。もうお分かりと思いますが、上記の
1.と2.の事例は、この判例が例示した<誤った知識や一方的な観念>に

相当すると 解釈できます。

従って育鵬 社の教科書を採択するとこの点での違法、違憲の責任をその教育委
員会は追及されることになります。そうした手順はすでに各地の教育委員会 に
対して実行されています。方法はこうです。まず中学の教科書は生徒の分に限っ
て国が無償制により負担しますが教師用の分は各自治体の公 費で購入します。
それに教科書が新しくなると教師用の指導書も公費で購入するのが普通ですが、
これは1冊1万円ぐらいしますから、合計で はかなりの額になります。そこで
まず各地の住民がこの公費の支出は違憲違法な教科書に対するものだから不当だ
として支出停止の監査請求を 各自治体の監査委員会にします。その段階で請求
が認められれば、そこでそれぞれの責任を追及することが可能になります。これ
までのケース では監査委員会が請求をそのまま認めることはほとんどありませ
ん。そこで次には、その監査委員会の決定は納得できないとして裁判所に提訴
することがげんざいの行政訴訟法では可能になっているのです。以前このような場合

生徒自身か その保護者でないと原告の資格がないとされていたのですが、今で
はこうした教育委員会の採択について

納税者であ れば裁判を起こせるし、すでに実行している人たちがいるのです。

 こうした 現実を前にしてもなお、育鵬社の教科書を採択するのか熟慮される
ことを各教育委員会関係者にはお勧めします。

ちなみに、 上記の最高裁判決にある問題の<教育を施すことを強制する>こと
になるのは

採択をする 教育委員会によってであって、文科省は育鵬社を必ず採択せよとは
言っていないのですから、採択以後の違憲違法の責任は専らその教育委員会 に
あるとされかねません。教育委員会の皆さん、これでもなお育鵬社を採択しますか?

                                    
          以上



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