[CML 007344] 日本針路研究所創立記念講演討論会「ベーシックインカムをどう見るか」のご報告

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2011年 1月 25日 (火) 19:32:39 JST


  紅林進です。
   
  先日ご案内させていただきました、日本針路研究所創立記念講演討論会
  「ベーシックインカムをどう見るか」が1月22日(土)に開催されましたが、
  そのご報告を転載させていただきます。
   
  なお下記報告は同研究所の村岡到さんが書いたものですが、私自身は
  原田泰さんのベーシックインカム論には批判を持っていますし、村岡到さん
  とも異なった意見を持っています。
     
   


   
  日本針路研究所創立記念講演討論会の簡単な報告:村岡到

 一月二二日、東京・文京区民センターで、日本針路研究所創立記念講演討論会が開かれ「ベーシックインカムをどう見るか」をテーマに原田泰さん(大和総研チーフエ
コノミスト)が講演した。参加者は三九人。司会は同研究所監事の西川伸一さん(明治大学教授)。『プランB』編集長の村岡到、生存権フォーラム事務局長(仮)の高
橋聡さんがコメントとした。質疑も活発におこなわれ、つづいて懇親会も行なわれた。
  
 原田さんは、まず、日本の現実から出発することを強調した。これまでの日本の安心は、会社が中心だったが、現在は会社はそのような重みに耐えかね、正社員を採用しなくなった。だから、会社ではなくて、国家が直接、人々の安心を保証すべきで、そのもっとも単純で効果的な方策がベーシックインカムだ、と明らかにした。
 会社と社会保険を安心の起点とすることは、ドイツの鉄血宰相ビスマルクが始めたことその目的は一部の労働者の篭絡であった。いいかげんにビスマルクの亡霊から自由になるべきである。
 原田講演でもっとも核心的なことは、二〇歳から六五歳までの約七五〇〇万人に月七万円のベーシックインカムなら六二兆円必要だが、雇用者所得二六二兆円(二〇〇八年)に三割の税金を課せば七八兆円だから実現可能であると明確にしたことである。
 こうすることによって、憲法第二五条の生存権を保障できる。
  
 質疑討論では、長野県中川村の曽我逸郎村長、吉田万三さん(元足立区長)などからさまざまな意見が出された。ベーシックインカムの支給によって、他の社会保障が
削減されては困ること、月七万円では低すぎるのではないか、三割のフラット税では累進制が考慮されていない、「前提とされている『会社が社会の安心を支えられなく
なった』という認識は、別に言えば資本家がその役割を果たせなくなった、つまり資本制経済の限界として捉えるべきではないか、などの意見が出された。
 原田さんは、ベーシックインカム導入によって不要となる社会保障もあるが、医療保障などは削減する必要はないこと、フラット税ではなく累進税にしてもよい、などと答えた。(この講演はなんらかの形で発表する予定です)。
 参加者は少なかったが、岡山、大阪、石川、長野、群馬からも参加者があり、一定の拡がりを得ることができました。

 以上、簡単な報告です。
 私と原田さんとは政治的立場の相違は明確ですが、もっとも大切なことは、ベーシックインカム=生存権所得に関して、具体的に対話することです。
 私が『中央公論』6月号の原田論文を一読して反省したことは、現実を数値を明らかにして認識すること、その認識に立脚して論じるという姿勢が不可欠に必要だ、と
いう点です。原田さんが憲法第二五条の生存権を明確にしていることは共通の土台です。
 中谷巌さんや波頭亮さんも憲法第二五条の生存権を引いてベーシックインカムに言及しています。邪悪な狙いを云々するのではなく、どうしてそういう変化が起きてい
るのか、その変化を格差と貧困の打破にどうしたら結びつけられるのかを考えたほうが意味があるでしょう。仮に邪悪な狙いを内包させた主張があったとしても、生存権所得の実現はその狙いを超える力を発揮するはずです。

 

 
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