[CML 007236] 朝日新聞連載「孤族の国」とNHKの「ジャパンシンドローム」の問題提起について (1)〜(13)

higashimoto takashi higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
2011年 1月 15日 (土) 18:23:01 JST


朝日新聞が昨年末から「孤族の国」という連載を始めています。1月6日にその第1部「男たち」が終了しまし
たが、担当記者のひとりひとりの記事にはそれぞれいまという時代の「現実」を反映した相当の重量があり、
私はひとりひとりの記者によって現前化されるその現実のつきつけられた否応もない重たさに圧倒される思
いで読了することがしばしばでした。たいへん読み応えのある連載企画となっているように思います。

朝日新聞の同連載スタートの弁は次のようなものです。

■孤族の国の私たち 朝日新聞紙面で連載スタート
http://www.asahi.com/special/kozoku/TKY201012250322.html

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 社会のかたちが変わっている。恐るべき勢いで。

 家族というとき、思い浮かべるのは、どんな姿だろう。父親、母親に子ども2人の「標準世帯」か、それとも
夫婦だけの世帯だろうか。今、それに迫るほど急増しているのが、たった1人の世帯だ。「普通の家族」とい
う表現が、成り立たない時代を私たちは生きている。

 外食産業、コンビニ業界、インターネットなどにより、昔と比べて一人暮らしは、はるかにたやすくなった。
個人を抑え込むような旧来の人間関係から自由になって、生き方を自由に選び、個を生かすことのできる
地平が広がる。

 だが、その一方で、単身生活には見えにくい落とし穴が待ち受ける。高齢になったら、病気になったら、
職を失ったら、という孤立のわなが。血縁や地縁という最後のセーフティーネット、安全網のない生活は、
時にもろい。

 単身世帯の急増と同時に、日本は超高齢化と多死の時代を迎える。それに格差、貧困が加わり、人々
の「生」のあり方は、かつてないほど揺れ動いている。たとえ、家族がいたとしても、孤立は忍び寄る。

 個を求め、孤に向き合う。そんな私たちのことを「孤族」と呼びたい。家族から、「孤族」へ、新しい生き方
と社会の仕組みを求めてさまよう、この国。

 「孤族」の時代が始まる。
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この朝日新聞の提起する「孤族」の問題は、今年の新年からNHK報道局がキャンペーンを張っている「ジ
ャパンシンドローム(日本症候群)」の問題提起とも相通じるものがあるように思います。この1月10日、N
HKのニュースウオッチ9では次のような問題提起を含むニュースを報道しました。

■世界が注目 ジャパン・シンドローム ( NHK ニュースウオッチ9 2011年1月10日(月)放送)
http://cgi2.nhk.or.jp/nw9/recommen2010/index.cgi

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日本はいま世界がまだ経験したことのない試練に直面しています。私たちはそれをジャパンシンドローム
と名づけました。少子高齢化などにともなう急激な人口の減少、毎年およそ30万人、地方都市ひとつ分の
人口が消えていきます。そしてそれは社会保護の不安定化や経済の縮小、地域の崩壊を引き起こしてい
るのです。私たちはジャパンシンドロームを克服できるのか? 世界が注目しています。

参考:■報道局キャンペーン「ジャパンシンドローム(日本症候群)をのりこえろ!」
http://www.nhk.or.jp/pr/keiei/shiryou/soukyoku/2010/12/004.pdf

世界が経験したことのない急速な少子高齢化と労働力人口の減少、グローバル化による国際競争の激化。
経済や社会の停滞で若者が内向き化するなど人々の価値観がゆらぎ、地域や家族の絆も薄れつつある日
本。「無縁社会」や「消えた高齢者」、「児童虐待」など社会の様々な場面にひずみが表れ多くの人たちが自
信を失い不安を感じています。NHKは報道局「明日の日本プロジェクト」を中心に、日本全体に広がるこう
した閉塞状況を「ジャパンシンドローム(日本症候群)」と名づけ、新年からその処方箋や克服の手がかりを
提言するキャンペーンを展開します。
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この朝日新聞のいうところの「孤族」の問題とNHKが提起するところの「ジャパンシンドローム」の問題、そし
てその解決は、現在日本の格差社会、その格差社会の根底にヘドロのように巣くっている逃げ場のないま
での閉塞状況、若者と老人の表現に絶するまでの「孤独」。そうした私たちの現代社会の悲況を克服して
いくためにも決して避けて通ることのできない“待ったなし”の緊急、喫緊の課題群であろうと私も思います。

以下、朝日新聞「孤族の国 第1部 男たち」特集記事のご紹介。いずれの記事も軽々に読み飛ばすことの
できない問題提起、重量感のある記事ばかりです。

■孤族の国(朝日新聞連載企画 12/26〜1/6)
http://www.asahi.com/special/kozoku/

孤族の国 第1部 男たち
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・孤族の国の私たち 朝日新聞紙面で連載スタート(12/26)
・55歳、軽自動車での最期 「孤族の国」男たち―1(12/26)
・家族に頼れる時代の終わり 「孤族の国」(12/26)
・孤独死、40代から高リスク 東京都監察医務院調査(12/26)
・高齢化と単身化が都市を襲う「2020/30年問題」(12/26)
・還暦、上海で婚活したが 「孤族の国」男たち―2(12/26)
・失職、生きる力も消えた 「孤族の国」男たち―3(12/27)
・39歳男性の餓死 「孤族の国」男たち―4(12/30)
・彼は無表情だった 「孤族の国」男たち―5(12/30)
・少女のような目の母と 「孤族の国」男たち―6(12/31)
・聞いてもらうだけで 「孤族の国」男たち―7(1/2)
・最後に人とつながった 「孤族の国」男たち―8(1/3)
・ひきこもり抜けたくて 「孤族の国」男たち―9(1/4)
・自殺中継 ネットに衝撃 「孤族の国」男たち―10(1/5)
・動かぬ体 細る指 外せぬ指輪「孤族の国」男たち―11(1/6)
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紹介したい記事は多いのですが、上記の「孤族の国」の連載記事の中から本MLでも話題になったこととも
関連して一昨年4月に北九州市門司区で起きた39歳男性の餓死事件の「孤族」を取材した記事と昨年12
月に「人生を終わりにしたかった」という理由で凶行を起こした27歳青年の取手駅通り魔事件、昨年8月に
あった在特会の京都朝鮮学校襲撃事件の一部始終を撮影した「bureno(ブレノ)」と呼ばれるネットにのめ
りこむ34歳青年の「孤族」などを取材した同連載の2本の記事の所在を下記にお知らせしておきます。

■39歳男性の餓死 「孤族の国」男たち―4(朝日新聞 2010年12月30日)
http://www.asahi.com/special/kozoku/TKY201012280412.html
■彼は無表情だった 「孤族の国」男たち―5(朝日新聞 2010年12月30日)
http://www.asahi.com/special/kozoku/TKY201012290338.html

*ある程度の期間を経れば朝日新聞記事のリンクは削除されるものと思われますので弊ブログに同特集
の記事全文(1〜11)を記録として保存しておきました。ご参考にしてください。

(1)朝日新聞連載「孤族の国」とNHKの「ジャパンシンドローム」の問題提起について
http://blogs.yahoo.co.jp/higashimototakashi/10533919.html
〜
(13止)朝日新聞連載「孤族の国」とNHKの「ジャパンシンドローム」の問題提起について
http://blogs.yahoo.co.jp/higashimototakashi/10538312.html


東本高志@大分
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