[CML 007209] 尖閣沖漁船衝突事件について(その七)
河内謙策
kenkawauchi at nifty.com
2011年 1月 12日 (水) 23:24:43 JST
河内謙策と申します。(この情報を重複して受け取られた方は、失礼をお許しくださ
い。転送・転載は自由です。)
遅ればせではありますが、皆様に新年の挨拶をさせていただきます。
今年も、アメリカにも中国にも毅然とした平和な日本をめざして発信させていただき
たいと思います。よろしくお願い申し上げます。
昨年末から今年にかけて、尖閣問題についての本の出版が相次いでいます。
今回は、私が読んだ本の感想を述べさせていただきます(雑誌論文にも面白いものが
多いのですが、麻生幾「海民襲来」『文芸春秋』2月号はお勧めです。)
*リチャード・L・アーミテージ、ジョセフ・S・ナイ Jr、春原剛
『日米同盟VS中国・北朝鮮』文春新書
尖閣問題についてのアメリカの「公式見解」を知るには必読でしょう。ただ、著名
な二人が本当にアメリカを代表しているといえるのか、また、彼らの言はアメリカの
国力の衰退を考えたら本当に裏づけがあるのかETC昔とちがってよく吟味する必要が
あるでしょう。二人が明文改憲論に否定的なのも興味ぶかいところです。
なお、古森義久氏の最近のアメリカの動向の分析は一読に値します。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5178?page3
*西尾幹二・青木直人『尖閣戦争』祥伝社新書
この本の特徴は、中国とアメリカが手を組んで日本を攻撃する危険性を強く訴えて
いることです。これは、最近の動きから見ると違うようにもみえますが、その危険性
を常に念頭におくべきということは、間違いないでしょう。青木氏は「いまや国恥の
記憶は膨張する帝国主義を合理化するための論理となって、尖閣諸島『奪還』の衝動
に向かおうとしている。これが尖閣戦争の本質である」と主張しています。
*黄文雄『日本支配を狙って自滅する中国』徳間書店
黄氏の本を読むと、台湾人はそうかんがえるのか、とうなずくことによく出会いま
す。たとえば、尖閣諸島は日本の領土であるということは、日本人の書いたものより
よくわかります。また、彼は、昨年9月の事件は、「中国にとって周到な計画と用意
の中で実効支配を狙った『試し』なのだ。ようするにやってみて、日本の反応を見な
がら、それができれば次の一手と、戦略を一歩ずつ進めていこうとしているわけだ」
ということを強調しています。
これは、非常に説得的です。
*副島隆彦『中国バブル経済はアメリカに勝つ』ビジネス社
日本の論者の中では、熱烈な中国擁護論で知られた副島氏の近著です。彼は、「こ
の中国漁船船長の逮捕(拿捕)は初めから、アメリカの指図で行われた。日中の国境
紛争として、日本を中国にぶつける計画としてアメリカのリチャード・アーミテージ
が司令官となって行った」と断言します。副島のアメリカ分析は非常に鋭いものがあ
るのに、中国分析になると突然感情的分析が目立つのは不思議です。
*櫻井よしこ外『日中韓歴史大論争』文春新書
これは、櫻井よし子らと中国や韓国の論者との論争の記録ですが、中国や韓国の代
表的論者の議論が分かって楽しい。論争がここまで詰まってきているのか、と学ばさ
れることも多いし、中国や韓国の論者は、事実から離れてイデオロギーに逃げ込む傾
向があることも分かります。とにかく考えさせられる論点が一杯の本です。
*水間政憲『いまこそ日本人が知っておくべき『領土問題』の真実』PHP研究所
著者は、いわゆる学者ではありませんが、テレビや新聞報道の誤りを一次資料にも
とづいて分析する点で、他の追随を許さない。とくに尖閣問題についての中国の嘘を
中国で発行された地図を基に告発している点や、日本軍が毒ガス兵器を遺棄したとい
う中国の嘘を日本軍の兵器引継ぎ書を基に暴露しているのは圧巻です。著者のイデオ
ロギーに難色を示す人でも、彼の論争への貢献には頭が下がるはずです。
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