[CML 007135] 長周期地震動で超高層マンションの資産価値下落も:林田力
Hayariki
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2011年 1月 5日 (水) 21:55:24 JST
【PJニュース 2011年1月5日】国土交通省は2010年12月21日に「超高層建築物等における長周期地震動への対策試案について」を発表した。超高層ビルに長周期地震動の対策を求める内容で、既存の超高層ビルの長周期地震動対策が不十分であることを公式に認めたことになり、人気があるとされる超高層マンションの資産価値下落の可能性もある。
長周期地震動とは、揺れの周期が長い波を含む地震動である。周期とは地震で建物が揺れた時、左に動いて元に戻り、右に動いて元に戻る、という一往復にかかる時間を指す。長周期とは数秒から十数秒程度のゆっくりした揺れである。超高層ビルのような巨大な建築物は長周期の地震波と共振を起こしやすい。
長周期地震動では船が揺れるような大きな揺れが長時間続き、被害が深刻化する。揺れ幅が数メートルにも及ぶ可能性のある長周期地震動が発生した場合、超高層ビルの室内ではまず立っていることは困難である。家具も大きく移動し、倒れるなどと予測される。
これまで超高層ビルは短周期の直下型大地震には強いとされていた。実際、阪神大震災では他のビルや住宅と比べて相対的に被害は小さかった。しかし、超高層ビルは長周期地震動には脆い。特に関東平野のように堆積層の厚い平野部では、地表から地下深くまでの堆積層の影響によって長周期地震動は増幅される。
長周期地震動の被害は既に現実化している。2003年9月の十勝沖地震では、震央から約250kmも離れた北海道苫小牧市の石油タンクで火災が発生した。2004年の新潟中越地震では東京都港区は震度3に過ぎなかった。しかし、六本木ヒルズ森タワーでは、エレベータ6基が損傷する事故が起きた。そのうちの1基はロープが切断された。
土木学会と日本建築学会は2006年11月20日の時点で、超高層ビルが長周期地震動で想定以上の負荷がかかるとして、耐震性向上を提言した。それから4年後に、ようやく対策試案が発表されるに至った。その間にも雨後の筍のように超高層ビルが建設されたことを考えれば恐ろしくもある。
対策私案では新たに超高層ビルを建設する場合、長周期地震動を考慮した設計用地震動による構造計算や、家具等の転倒防止対策に対する設計上の措置を必要とする。一方で既存の超高層ビルについては長周期地震動による影響が大きいものを再検証し、必要な補強を行うように要請するにとどめた。
今回の対策が実行されれば、その後に建設される超高層ビルについては、それが十分か否かは議論があるとしても、一応の長周期地震動対策がなされる。この結果、長周期地震動を考慮せずに建設された既存の超高層マンションは見劣りすることになる。新耐震基準以前のマンションのような扱いとされ、資産価値が大きく下落する可能性がある。
http://news.livedoor.com/article/detail/5248723/
http://www.pjnews.net/news/794/20101228_4
対策では既存の超高層ビルも再検証するとしているが、これが分譲の超高層マンションでは機能しにくい。行政が検証主体であっても、建物所有者の協力が不可欠である。しかし、マンション管理組合では意思統一がしにくい。多数の区分所有者が存在する大規模マンションでは一層である。そして問題発覚による資産価値低下を恐れて行政の調査を拒否する区分所有者も少なくない。これは耐震強度偽装事件での調査でも見られたことである。
結果として既存の超高層マンションへの検証は不十分に終わり、長周期地震動に対する安全性は不透明さが残る。超高層マンションの中古市場は経済学で言うところのレモン市場化する可能性がある。【了】
『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』著者 林田力
http://sky.geocities.jp/hayariki4/h/
http://hayariki.seesaa.net/
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