[CML 007825] 大阪都・中京都・新潟州構想は地方自治に逆行:林田力

Hayariki hedomura2 at hotmail.co.jp
2011年 2月 25日 (金) 21:34:22 JST


【PJニュース 2011年2月24日】大阪都、中京都、新潟州と基礎自治体と広域自治体の合併向上が浮上している。これは橋下徹・大阪府知事ら改革派と見られる自治体首長が唱えているものだが、地方自治の精神に逆行する。

大阪都などの構想は東京都の制度にならうものである。都道府県と一口に言っても都だけは他の広域自治体と制度的に異なる。都は広域自治体であると同時に23区については基礎自治体の事務も処理している。裏返せば世田谷区や中野区などの特別区は市町村のような基礎自治体と同一ではない。特別区は東京都の内部団体であり、日本国憲法上の地方公共団体ではないとする見解が主流である。最高裁昭和38年3月27日判決も特別区を憲法上の地方公共団体ではないとした。

憲法上の地方公共団体であるかないかは大きな相違がある。憲法では地方公共団体の首長や議員の公選を定めている。憲法上の地方公共団体でなければ首長や議員を任命制にしても憲法違反にはならない。現代では特別区の区長も議員も選挙で選ばれているため、市町村との相違は見えにくい。しかし、特別区の場合、たまたま公選制となっているだけで、憲法で保障しているものではない。特別区の自治は市町村に比べて不安定である。

東京都の場合は「人口が高度に集中する大都市地域における行政の一体性及び統一性の確保の観点から」都に基礎自治体の事務も処理させている(地方自治法第281条の2)。もし人口が集中する大都市地域で行政の一体性や必要性が求められるならば、大阪や名古屋でも同種の主張が正当化されることになる。
http://www.pjnews.net/news/794/20110224_1
しかし、この種の議論は住民を無視した上からの発想である。一般の国民は基礎自治体の住民であるとともに広域自治体の住民でもある。ところが、特別区の住民だけは広域自治体の住民でしかなく、自治の範囲が狭められてしまう。

大阪都構想などの主張者は広域自治体と基礎自治体の合併で二重行政が解消され、効率化するとのメリットが主張されている。しかし、そのような発想は地方自治の否定につながる。国とは別に地方が存在すること自体が二重行政だからである。非効率の解消を最優先にするならば民主主義も三権分立も廃止すべきとなる。三権分立が水平的な国家権力の分立ならば、地方自治は垂直的な権力分立である。

日本国憲法で初めて地方自治の章が登場したことが示すように日本人の地方自治の理解は浅い。連合国軍最高司令官・マッカーサー元帥は日本人を十二歳と述べたが、そこには日本人の地方自治への無理解も含まれているだろう。

日本人の地方自治の履き違えは、地方分権の掛け声の下で基礎自治体の合併が進められたことが示している。住民に最も身近な基礎自治体を統合することは住民から遠ざけることになる。大阪都などの構想も基礎自治体を遠ざける点で同じである。地方自治は基礎自治体の廃止や統合ではなく、そのままの領域での権限強化によって促進される。【了】
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『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』著者 林田力
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