[CML 007763] 老醜の大佐
donko at ac.csf.ne.jp
donko at ac.csf.ne.jp
2011年 2月 22日 (火) 16:57:21 JST
坂井貴司です。
転送・転載歓迎。
事実かどうかわかりませんけれど、このような話があります。
1966年頃、イギリスの高級ホテルにあるカジノに、北アフリカのリビアの若い
二人の将校がやってきました。彼はイギリスの陸軍士官学校に留学していました。
カジノがどんなところか見に来た彼らは、チップを山積みにしたリビアの高級
軍人と、アメリカ人の富豪の姿を見つけました。そのアメリカ人富豪は、リビア
に多くの油田を持つオクシデンタル石油の経営者、アーマンド・ハマーでした。
レーニンから信頼され、アメリカと旧ソビエトとの貿易を一手に担い、莫大な富
を築いた資本家です。またオクシデンタル石油を経営して、リビアやパーレビ王
朝下のイランの多くの油田を所有しました。
二人は数百万ポンドをかけて賭博を楽しんでいました。
「ああ、また負けた!」
「ははは、また油田を掘ればいいじゃありませんか」
「見ろよ、あいつらリビアの石油で豪遊していやがる。あのチップ一枚で飢え
た子供が何人救えることか」
と二人の青年将校は忌々しげにつぶやきました。
リビアは産油国でありながら、その富のほとんどは、オクシデンタル石油やそ
れに結びついたイドリス国王とその一族、そして取り巻きの高級軍人や上流階級
たちが独り占めにしていました。国民のほとんどは貧困と飢えに苦しんでいまし
た。乳幼児死亡率は最高、識字率は最低という状況でした。富裕層の豪邸とスラ
ム、高級車に周りに群がる飢えた子供達という光景がありました。腐敗が蔓延し、
警察官などの役人は賄賂をせびるのが当たり前でした。
当時のリビアの別名は「ギブミーランド」でした。外国人と見ると、大人も子
供も「ギブミーマネー、ギブミーチョコレート、ギブミーフード」と寄ってくる
ことから軽蔑の意味を込めて命名されました。
そのリビアの高級軍人は二人の青年将校の姿を見ると、
「おい、貴様ら!ここへ来て、ミスター・ハマ−に挨拶しろ。リビアの発展に
尽力されてるお方だ」
と呼びつけました。
挨拶をすると、その高級軍人は「そらご褒美だ、ありがたく受け取れ」とチッ
プを投げつけました。ハマーはニヤニヤ笑っていました。
1961年9月1日、リビアで無血クーデターが起こり、イドリス国王は追放
され軍事政権が樹立されました。
その直後、ハマーは首都トリポリに行き、軍事政権の最高指導者と会見に臨み
ました。オクシデンタル石油の油田を国有化すると聞いていた彼は、「なあに、
賄賂を握らせばすむ話だ」と楽観していました。
その最高指導者は若い軍人でした。
彼は言いました。
「ミスター・ハマー、私を覚えていらっしゃいますか?」
「いえ、失礼ながらお会いした記憶はありませんが・・・」
「イギリスのカジノで、犬に餌を与えるようにチップを投げつけられた、あの
貧乏将校ですよ!」
ハマーは驚愕しました。
国有化交渉はリビア側のペースで進み、ハマーは石油利権を失いました。
リビア国民は、油田を取り戻したその最高指導者を熱狂的に支持しました。彼
は油田から得た富で、学校や病院、道路を建設し、国民の生活を豊かにしました。
乳幼児死亡率は劇的に減少し、識字率は向上しました。役人は賄賂を要求しなく
なりました。
それから41年間にわたって彼はリビアを支配し続けてきました。
その彼こそ、今、リビアの民衆から退陣を要求されているムアンマル・アル=
カッザーフィー、通称カダフィ大佐です。
チュニジアから始まった民主化要求デモの大波は今、リビアを揺り動かしていま
す。41年前、カダフィを熱狂的に支持した民衆は今、「独裁者は出ていけ!う
んざりだ」と叫んでいます。それに対してカダフィは、武力で押さえ込もうとし
ています。多くの死者が出ています。
久しぶりに見たカダフィ大佐の顔は、老醜という言葉がぴったりになっていま
した。権力にしがみつく醜い顔つきになっていました。
私が初めてカダフィを知ったのは1986年のアメリカによるトリポリ空爆で
した。当時にカダフィはアメリカと激しく対立し、多くの反米「テロリスト」入
国させ支援していました。また、隣国チャドの内戦にも介入していました。レー
ガン大統領はカダフィを「狂犬」とののしり、「除去」を叫びました。「除去」
とは殺すことです。レーガンは世界中の反発を押し切ってトリポリを空爆し、多
くの市民を殺害しました。
この事件で見たカダフィの顔は、狂気じみていましたけれど、精悍でした。目
をギラギラ光らせながら、「アメリカと戦う!」と叫ぶ姿は強烈なカリスマ性を
感じました。
その後、カダフィは一転してアメリカや西欧諸国と「和解」しました。パンナ
ム機爆破事件の容疑者をハーグ国際法廷に引き渡し、遺族に総額27億ドルの補償
金を支払いました。これにより、リビアはテロ国家指定から外されました。また
かつては追放したオクシデンタル石油に、石油・ガス田開発権益の入札を許可し
ました。同社は今、リビアで活動しています。
派手なパフォーマンスと過激な発言で話題を振りまいてきたカダフィは、今、
民衆の手で引きずりおろされようとしています。
しかし、老醜の独裁者は権力を離そうとはしません。
坂井貴司
福岡県
E-Mail:donko at ac.csf.ne.jp
======================================
「郵政民営化は構造改革の本丸」(小泉純一郎前首相)
その現実がここに書かれています・
『伝送便』
http://densobin.ubin-net.jp/
私も編集委員をしています(^^;)
定期購読をお願いします!
CML メーリングリストの案内