[CML 007724] Re: ヒジャーブとフェミニズム。そして、エジプト革命とC BS女性記者襲撃事件について

higashimoto takashi higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
2011年 2月 20日 (日) 12:21:46 JST


中島さん、ご応答ありがとうございました。

私が先のメール(CML 007714)でCBS女性記者襲撃事件についての冷泉彰彦さんの論攷をご紹介したの
は「メディア側の商業上の理由」でフェミニズムが歪曲される、あるいは演出されることがある、という冷泉さ
んの着眼に一定の説得力を感じたからです。彼のフェミニズム観を全面的に肯定してでのことではありませ
ん。彼の提起している問題は考えるに値することではないか、そう思っての転載でした。

また、私は、アメリカの情報に詳しくなく、CBS女性記者襲撃事件の真相についても自身の見解を持ちえる
に足る十分な情報を持っているわけでもありません。そういうしだいで先のメールは単に冷泉さんのような
見方、考え方がある、という紹介にとどまるものです。CBS女性記者襲撃事件に関する私の評価は含まれ
ていません。

ところで、アメリカ在住のある日本人フェミニストの方から私の紹介した冷泉さんの論攷について次のような
指摘をいただきました(私が「指摘をいただきました」というのも変な話ですが)。聞くべきご指摘だと思います。
下記に紹介させていただこうと思います。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
>  まず二番目の問題ですが、まずこの異常なニュースが報道された背景にあるのは、性的暴力の被害者
> は徹底的に救済・保護するという文化が確立しているということが挙げられます。(中略)この時期からは
> 女性をほぼ無条件で保護する権利が確定しています。判例というだけでなく、社会的な価値観としても明
> らかです。(東本注:左記は冷泉氏の論攷より)

そんな文化が確立していれば良いのですが、それはないでしょう。ローガンさんは、そういう文化を確立する
のに貢献するため、問題提起するために、あえて普通なら公開されない被害の事実を勇気を出して公開し
たのであって、すでにそういう文化が確立しているからと気軽に公表したわけではありません。

そもそも、この件がそれだけ話題になり、ローガンさんの勇気がたたえられている(そして、ローガンさんに
対する中傷発言が激しく反発をされている)ということが、ローガンさんの行為が「社会的な価値観」を揺る
がすものであることを示しています。たとえば男性ニュースアンカーのアンダーソン・クーパーが暴行を受け
た件については、勇気を出して公表したと褒める人もいなければ、かれに対して失礼なジョークを言うのも
タブーではありません。

筆者は、

> 勿論、実名での告白を自動的に強制するとか、実名を晒すということは今でも厳格に否定されています
> が、本人の自由意志で過去の被害経験を告白することがメンタルな問題解決に役立つのであれば、周
> 囲はそれを受容しなくてはならないし、まして嘲笑したり、疎遠な感じを持ったりすることは近親者であっ
> ても厳しく禁じられる、そんな文化が確立しているのです。

と書いていますが、それが「厳しく禁じられる」のは、性暴力被害を公言することが、いまだにタブーだから
です。もしほかの犯罪被害と同じように、被害者の「落ち度」が責められるのでもなく、被害者の恥だとか
貞操の問題だとかして扱われるのでなければ、ほかの犯罪被害者と同じ程度には(アンダーソン・クーパ
ーに対して「話題作りになって良かったな」と揶揄する人がいて、それが悪趣味だと思われつつも特に反
発を浴びない程度には)許容されるはずです。そうでないのは、いまだに性暴力に関して、ほかの暴力や
犯罪行為とは別格の、なにか被害者本人の資質や人格にとって汚点となるようなものだとして見る「社会
的価値観」が温存されているからです。

すなわち、性暴力の被害者を嘲笑することがことさら咎められるのは、性暴力は特殊な犯罪だという価値
観と裏表です。もちろんいまの社会において性暴力が特殊な犯罪として扱われているのは事実なので、こ
とさら咎める(そうしたものからことさら被害者を保護しようとする)のは悪いことではないでしょう。しかしそ
れは、被害者保護が社会的価値観として定着しているからではなく、逆にそうした価値観が不十分だから
こそ、要請されるものです。もしほんとうに性暴力被害の告発がタブーではない世の中になったならば、ク
ーパーの被害の扱いとローガンさんの被害の扱いは、「程度の違い」程度の問題に落ち着くのではないで
しょうか。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━





東本高志@大分
higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
http://blogs.yahoo.co.jp/higashimototakashi

----- Original Message ----- 
From: "Nakajima Noriko" <nntexas2002 at yahoo.co.jp>
To: "市民の ML" <cml at list.jca.apc.org>
Sent: Sunday, February 20, 2011 11:03 AM
Subject: [CML 007721] Re: ヒジャーブとフェミニズム。そして、エジプト革命とC BS女性記者襲撃事件について


>  中島と申します。
>  東本様の投稿を拝読いたしました。
>  
>  私が、報道を読んだ、zakzakという記事では(媒体の良否に
> ついては、私は分かりません:「美人記者」などという表現を
> する媒体です)以下の箇所が、非常に私の心に深く刻み込まれ
> ました。
>
>  ****ここから、引用箇所******
>  米メディアは「女性リポーターが性的暴行を受けた場合、隠
> すケースが多いが、彼女がこれを公表したのは勇気ある決断だ
> 」としている。
> (元の記事は
>  http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20110216/frn1102161636003-n1.htm
>  *****ここまで********
>
>  東本さまが引用された、冷泉さんの文章は、なんともいえな
> いのもを感じました。「嘘かもしれないし、本当かもしれない
> し、フェミニズムの心意気で現地に行ったかもしれないし、真
> 実はいつかわかるかもしれないし、どうだかわからない」およ
> び米国文化その他。
>
>  今回取り上げられている「女性がレイプされた」という内容
> そのものが、真偽がわからなくても、非常に多くの女性を傷つ
> けることは間違いないということを考えれば、それが「真実で
> はなかった」ということになれば、なおさら、身が震えます。
>
>  また、私が引用しました「女性レポーターが性的暴行を受け
> た場合、隠すことが多い」についても(これすら、真偽はわか
> りませんが)、恐ろしさと、屈辱と、被害者に向けられる視線
> を考え、震え上がり、怒りで頭がいっぱいになります。
>  以上、感想です、つたないものですがご容赦下さいませ。
>
>
> --- higashimoto takashi
> <higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp> wrote:
>
>> 私は先にあるメーリングリストにエジプトのムバラク大統領
> 弾劾デモに参加している女性たちをポートレート
>> した写真集を紹介しました。
>>
>> ■PHOTOS: Women of Egypt
>>
> http://www.globalpost.com/gallery/egypt/110131/photos-women-egypt-protests
>>
>> 上記の写真集にポートレートされている女性たちはNO.1
> 0の子どもを両手で抱きかかえる女性を除いて
>> 全員ヒジャーブを被っていません(この写真集だけを見ると
> 現在のエジプトの女性たちはヒジャーブを被ら
>> ないのが通常のように錯覚してしまいます)。
>>
>> しかし、この点については、現代アラブ文学研究者の岡真理
> さんが「エジプト、タハリール広場と三代の独
>> 裁者――革命の最前線、タハリール広場を中心にエジプトの
> 近現代史をひもとく」(TUP通信 速報888号
>> 2011-2-13)で次のような指摘をしています。
>>
> http://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=920
>>>
>> 「30年前のエジプトで、ヒジャーブ(イスラーム式スカーフ
> )を被っている若い女性など、ほとんどいませんで
>> した。むしろ例外。ヒジャーブを被っている女子大生がいる
> と、「ねえ、あなたはどうしてヒジャーブ被ってい
>> るの?」とわざわざ訊ねたものです。
>>
>> ところが今、多くの高等教育を受けた若い女性たちがヒジャ
> ーブを被っています。かつて、マルキシズムが
>> 社会正義の実現を目指す社会変革のためのイデオロギーであ
> ったとしたら、今、それはイスラームなので
>> す。若い女性たちがヒジャーブを被る、その理由は一つでは
> ありませんが、でも、この不正な社会に対する
>> 一種のプロテストの意味もあるのです。
>>
>> 今回の革命で、ヒジャーブを被った若い女性たちもまた、前
> 面で反ムバーラク、ムバーラク退陣を訴えまし
>> た。ヒジャーブをイスラームによる女性抑圧の象徴と見なし
> 、ヒジャーブを被ったムスリム女性をイスラーム
>> の家父長制に虐げられる犠牲者であるかのように見なす者に
> は、彼女たちがアラビア語で、あるいは英語
>> で積極的に発言する、行動する、そのアクティヴィズムが、
> 不思議なものに映ったかもしれません。でも、
>> 「ヒジャーブを被った女性たち<さえもが>」ではないので
> す。ある意味、「ヒジャーブを被った女性たち<だ
>> からこそ>」、明確な政治的主張をしているのです。」
>>
>> フリージャーナリストの津山恵子さんは、ウォールストリー
> トジャーナル日本版のコラムで「実は、エジプトで
>> デモが始まった初期、報道写真やテレビ映像に、女性がほと
> んど映っていないのが気になっていた。写真
>> が多いニューヨーク・タイムズも2月3日朝刊まで、ほとん
> ど女性が映ったデモの写真がない」とレポートし
>> ていますが、あるいはヒジャーブを被った女性は被写体とし
> ては「絵(写真)になりにくい」というメディア側の
>> 商業上の理由がその大きな原因のひとつだったかもしれませ
> ん(そうだとすればなんとも馬鹿々々しいこと
>> です)。
>>
>> ■【津山恵子のアメリカ最新事情】エジプトでデモに女性が
> 参加するということ(ウォールストリートジャーナ
>> ル日本版 2011年2月9日)
>> http://jp.wsj.com/World/Europe/node_181344
>>
>> メディア側の商業上の理由といえば、1月25日革命(エジ
> プト革命)時のCBS女性記者襲撃事件について
>>
> 米国ニュージャージー州在住の作家の冷泉彰彦さんがJMM([Japan
>> Mail Media)に次のような記事を書い
>> ています。今日のフェミニズム問題の一端を考えるひとつの
> 参考としてご紹介させていただこうと思います。
>>
>> ■CBS女性記者襲撃事件とアメリカ的フェニミズム(JMM
>  2011年2月19日)
>>
>> ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
>>  エジプト革命のニュースは相変わらずアメリカでは関心が
> 高く、ムバラク辞任後の
>> 流動的な情勢も依然としてトップニュースになっています。
> その中で、一つ気になる
>> ニュースが全米を駆け巡り、消えていきました。それはCB
> Sの女性記者ララ・ロー
>> ガンへの襲撃事件についてです。襲撃といえば、反政府運動
> が拡大する中で、2月3
>> 日に突如「ムバラク派」と思われるグループが、反政府派へ
> の襲撃を試み、ラクダや
>> ら馬まで登場して軍隊が間に割って入るという事件がありま
> した。この混乱の中で、
>> CNNの「AC」ことアンダーソン・クーパーが襲われたり
> しています。
>>
>>  このローガン記者も同じ3日のタイミングで襲われている
> のですが、問題になった
>> 事件はそれとは別です。事件は、ムバラク辞任のニュースに
> 狂喜した群衆が街に押し
>> 出した11日に起きました。ローガン記者は大勢のエジプト
> 人男性に取り囲まれ、性
>> 的な暴力を受けた上に激しく殴打されたというのです。
>>
>>  この事件に至るまでの間にローガン記者には色々なことが
> 起こっています。事実関
>> 係としてはこうです。ローガン記者は2日の時点ではムスリ
> ム同胞団の拠点のひとつ
>> と言われているアレクサンドリアで取材をしています。その
> 時の映像を私は見ている
>> のですが、やや混乱状態の中デモ隊への直接取材を行ってい
> ますが、取材の内容とし
>> てはこの欄でもお伝えしたように、「自分たちは経済を破壊
> するようなことはしない。
>> ムバラクに出ていってもらって国を変えたいだけ」というも
> ので、文脈としては「ム
>> スリム同胞団の影響の強い地区でも宗教政治を志向するよう
> な声はない」という主旨、
>> 逆を言えば「同胞団を危険視する必要はない」という内容の
> レポートでした。
>>
>>  そのローガン記者は、翌日はカイロに戻って問題の「2月
> 3日」の混乱状態の中、
>> 殴打どころか拉致されてしまいます。直後に本人が語ったと
> ころでは銃を突きつけら
>> れて軍と思われるグループに連行されたが、やがて解放され
> たというのです。この時
>> 点ではCBSは事態を重く見て、他のNBCやCBSのメイ
> ンキャスター同様に「一
>> 時的にカイロからアメリカへ脱出」させる措置を取っていま
> す。ローガン記者は一躍
>> 「時の人」となり、翌週(2月7日の週)の前半にはニュー
> ヨークでTVの対談番組
>> に登場して「革命を遠くで指をくわえて見ているわけには行
> きません。一刻も早くカ
>> イロに戻らなくては」と述べていたそうです。
>>
>>  実際に程なくしてローガン記者はカイロに戻って取材を続
> けました。その結果とし
>> て、11日のムバラク辞任のドラマに「間に合ってしまい」
> 事件に巻き込まれたとい
>> うわけです。報道によれば暴力を受け、殴打されているロー
> ガン記者は、10人ほど
>> のエジプト軍兵士と女性たちのグループによって救出され、
> そのまま翌朝の飛行機で
>> アメリカに急送されました。病院で治療を受けたところ、回
> 復は意外に早いというこ
>> とで、16日にニュースが発表になっています。
>>
>>  ここまでお話した「経緯」はどこまで本当かは分かりませ
> ん。受けた暴力の程度や
>> 事件後の記者の症状などは、プライバシーに属する問題です
> から、今後も100%明
>> らかにされることはないでしょうし、本稿でも関心を寄せる
> つもりはありません。ま
>> たムスリム同胞団の本拠と言われるアレクサンドリアでの取
> 材で、ローガン記者が何
>> らかのトラブルがあってその後も付け狙われたという可能性
> 、3日に一旦彼女を拉致
>> した兵士の素性、11日に今度は彼女を救った兵士の素性、
> 何故か事件現場にいて彼
>> 女の救出を助けた地元女性の正体なども良く分かりません。
> もしかしたら落ち着いた
>> ところで、ローガン記者本人が手記を出版するというような
> ことがあるかもしれませ
>> んが、仮にそうであっても内容が100%真実かどうかは分
> からないと思います。
>>
>>  今日お話ししたいのは、2点です。それはモデル出身とい
> う目立つ外見のローガン
>> 記者が、最終的には暴力事件に巻き込まれるような「危険」
> を冒してエジプト革命の
>> 取材を続けたのはどうしてか、という疑問、もう一つは詳細
> はともかく「特定の女性
>> が性的な暴力を受けた」というプライバシーに関わるニュー
> スがどうしてアメリカ社
>> 会で報道されたのかという点です。
>>
>>  まず二番目の問題ですが、まずこの異常なニュースが報道
> された背景にあるのは、
>> 性的暴力の被害者は徹底的に救済・保護するという文化が確
> 立しているということが
>> 挙げられます。アメリカでも80年代前半ぐらいまでは、ま
> だまだ被害者にも落ち度
>> があるとか、必死の抵抗がなければ何らかの合意に近いので
> はというような見解が残
>> っていました。ですが、ジョディ・フォスターとケリー・マ
> クギリスの熱演で話題に
>> なった映画 "The
>> Accused"(邦題は「告発の行方」)などに見られるように、
> この時
>> 期からは女性をほぼ無条件で保護する権利が確定しています
> 。判例というだけでなく、
>> 社会的な価値観としても明らかです。
>>
>>  更に、90年代になると女性シンガーソングライター・ブ
> ームの中で例えばトーリ
>> ・エイモスとかフィオナ・アップルといったメジャーな歌手
> たちが、過去の性的暴力
>> 被害を告白するという中で、被害者が名乗り出る文化が浸透
> して行ったように思いま
>> す。勿論、実名での告白を自動的に強制するとか、実名を晒
> すということは今でも厳
>> 格に否定されていますが、本人の自由意志で過去の被害経験
> を告白することがメンタ
>> ルな問題解決に役立つのであれば、周囲はそれを受容しなく
> てはならないし、まして
>> 嘲笑したり、疎遠な感じを持ったりすることは近親者であっ
> ても厳しく禁じられる、
>> そんな文化が確立しているのです。
>>
>>  この事件が実名で報道されたのは勿論異例なのですが、一
> 旦このニュースが出回っ
>> た後は、メジャーなTVニュースも取り上げて行ったわけで
> 、その背景には「アメリ
>> カ社会は被害女性を公的にも私的にも守り切る文化が確立し
> ている」からという点が
>> あったと言って構わないと思います。ちなみに、この報道に
> は妙なリアクションがあ
>> りました。NYU(ニューヨーク大学)司法安保研究センタ
> ーのフェロー(研究員)
>> であったニール・ローセンという人物がツイッターでの暴言
> 事件を起こして大学を解
>> 雇されています。
>>
>>  ローセンのツイートは「聖女に祭りあげるのもいいけど、
> アイツは戦争屋だからな」
>> 「アイツみたいにヘンなことされた女がゴマンといるんだろ
> う」(筆者意訳)という
>> ものです。勿論、これはこうした「被害者を守り切る」文化
> から見れば完全にアウト
>> で、特に二番目のものは即レッドカードものですが、このロ
> ーセンの屈折したツイー
>> トの背景にあるのは、先に申し上げた第一の点に関係してく
> るように思います。それ
>> は、どうしてアメリカのメディアは「戦争報道」にわざわざ
> 目立つ女性記者を送るの
>> かという問題です。
>>
>>  勿論ローセンのツイートはとても擁護できるものではあり
> ませんが、確かにここ数
>> 年、アメリカのメディアは戦争報道に目立つ女性を使いたが
> る傾向があります。TV
>> の女性記者で戦争報道のプロといえば、CNNで長年活躍し
> たクリスチャン・アマン
>> ポーラ(現ABC)がいますが、彼女の場合はイラン系英国
> 人として生まれた中で中
>> 東問題などに深い理解をしているユニークな存在として活躍
> したわけで、女性の目立
>> つ特性を使ってということではないと思います。911の直
> 後には、何人か女性戦争
>> 記者が登場していますが、その多くも事件への個人的な思い
> からアフガンやイラクで
>> 何が起きているかを伝えようという個人的情熱に駆られたも
> のでした。
>>
>>  ですが、ここ数年、確かに「目立つから」という特性を使
> って女性記者に戦争報道
>> をさせる傾向があるようです。ローガン記者はその代表例と
> 言えなくもありません。
>> 勿論、彼女の場合もイラク戦争ではブッシュ路線に不利な報
> 道をし過ぎるとして「偏
>> 向報道」という非難を浴びた「武勇伝」もあり、モデル出身
> だからといって容姿だけ
>> を売り物にしているわけではありません。ですが、ローセン
> のように「斜め」に見れ
>> ばその政治的ポジションも「出世のためのウケ狙い」という
> イメージにもなるわけで、
>> とにかく何らかの知的な関心と正義への情熱はあるにしても
> 「女性の目立つ特性を使
>> って活躍しよう」という「勢い」そのものが不自然なものに
> 見えるのだと思います。
>>
>>  では、TV局サイドとしてはどうして「女性戦争記者」を
> 使うのかというと、何と
>> いっても視聴率のためだと思います。アマンポーラなどの場
> 合はともかく、現在では
>> ホンネとして、女性記者の方が「受ける」という心理が漠然
> と社会的に存在するから
>> です。これもかなり複雑で、女性視聴者にしてみれば「責任
> 重大で困難な仕事を女性
>> が担っている姿」への好感ということがあり、男性視聴者も
> 基本的に同じですが一部
>> の男性心理にしてみると、「戦場や混乱状態」から女性がレ
> ポートすることの「健気
>> さ」を好むとか、「勝気な行動をしている女性が時折見せる
> パーソナルな表情が好き
>> だ」などの心理があるわけです。そんな複雑なものではなく
> 、無粋な男より女性のほ
>> うがスマートで格好良いという印象を男女ともに持っている
> とも言えるでしょう。
>>
>>  確かにローガン記者はそうした「ニーズ」をうまく使って
> キャリアを積んできたと
>> いう印象はあります。南アメリカ人として英国にわたり、最
> 初はモデルをしていたの
>> が戦争報道で有名になり、離婚や再婚を報じられる中で芸能
> 人扱いされる一方で、ア
>> メリカのCBSに職を得てからは、かなり積極的な取材姿勢
> が評価されて「ファンサ
>> イト」なども出来ているのです。
>>
>>  単にアメリカの視聴者受けというだけでなく、政治的な背
> 景もあるように思います。
>> ローガン記者を「突撃の急先鋒」として、エジプト革命のプ
> ロセスではアメリカから
>> 多くの女性記者が現地入りしていますが、そのほとんどはエ
> ジプトということもあっ
>> て、ベールを使わずに、金髪や長い髪を振り乱してデモ隊の
> 中に飛び込んでいます。
>> 各局共にどうしてそうした演出になっているかというと、恐
> らく「この革命は市民の
>> 自由化を求める革命であって、イスラムの復権を目指すもの
> ではない」という性格付
>> けをアメリカ世論へのメッセージとして送りたい、そのひと
> つの象徴として多くの女
>> 性記者をデモ隊の渦中に送り込んだということは言えると思
> います。
>>
>>  つまり「派手な白人の女性記者がデモの群衆の中に入って
> も、宗教的にそして文化
>> 的に排除されない」ということが「これは宗教革命ではなく
> 市民革命だ」ということ
>> を正にテレビ的に視覚で表現できるというわけです。この辺
> りが、冒頭の二つの疑問
>> のうちの一つ目に関わってくるのですが、こうした報道姿勢
> はアメリカ側としては終
>> 始一貫していたように思います。
>>
>>  先々週のこの欄でもお伝えしたように、アメリカの報道姿
> 勢は「大変だ。エジプト
>> までが反米の原理主義になるかもしれない」というリアクシ
> ョンを排除して冷静さを
>> 確保するということで一貫しています。例えば、ムバラク前
> 大統領が「辞任しない」
>> と頑張っていたときには、サラ・ペイリンが「エジプト情勢
> に関してオバマがいちい
>> ち記者会見すると、みんなでその見解に従うのは異常」だと
> 吠え立てて、「原理主義
>> 拡大の動きに警戒を」と呼びかけていたのですが、これに対
> しては保守本流の大物政
>> 治家であるリンゼイ・グラハム上院議員(共和)が「呆れた
> 発言だ」と大統領を擁護
>> するなど、政界も超党派で冷静さを保っていたぐらいです。
>>
>>  ちなみに、下手をすると反米センチメントの拡大もありそ
> うな、イエメン、ヨルダ
>> ンのデモに関してはアメリカの報道は抑制気味、一方でリビ
> アのデモは長年の仇敵カ
>> ダフィ政権の動揺への期待から扱いが大きくなっています。
> イランの民主化デモに関
>> しては、アメリカの世論も政界もデモ隊側を応援しています
> が、彼等を支援するがゆ
>>
> === 以下のメッセージは省略されました ===
>
>
>
> 



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