[CML 007593] いまの都知事選のために2007年都知事選をふりかえる

higashimoto takashi higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
2011年 2月 13日 (日) 15:23:50 JST


前回の東京都知事選では市民の動きは結構すばやいものがありました。私は2006年11月13日付でいくつ
かのメーリングリスト媒体に東京都民の「都知事候補の統一問題」をテーマにした次のような大胆シンポジウム
が開かれることを伝えるメールを発信しています(東京都知事選の投票日は2007年4月8日)。

■ 統一都知事テーマの「大胆シンポ」に吉田候補から民主まで来る!!(AML 2006年11月13日)
http://list.jca.apc.org/public/aml/2006-November/010057.html

それに比して今回の都知事選では市民のレベルで「都知事候補の統一問題」を考えようとする動きは、東京を
考えるシンポジウム実行委員会(呼びかけ人:宇都宮健児、上原公子、鈴木邦男、土肥信雄)が主催した「もう、
ごめん!石原コンクリート都政」シンポジウムや「新東京政策研究会」(代表、渡辺治一橋大教授)主催のシン
ポジウム、マガジン9や東京“待ったなし!”アクションの都知事選候補者推薦募集キャンペーンなどないことは
なかったのですが、いずれも候補者擁立について抽象的なレベルの域を超えるものではありませんでした。

その原因は、前回都知事選では比較的早い段階に革新都政をつくる会(共産党系)が吉田万三氏を都知事選
候補者として擁立することを決めており、また民主党もそうした動きに呼応して二転三転しましたが比較的早い
段階から候補者選定作業を進めていましたが、今回はそうした政党の早い段階での候補者選定の動きが見ら
れなかったことなどが挙げられるでしょう。市民運動の側には自ら自発的に動いて独自に統一候補者を擁立し
ようとする力量に乏しいものがあります。結局、政党(系)推薦の候補者が名乗りを上げてから、その上で調整
役として動く、というこれまでの市民運動の限界を今回も超えることができなかったというところに都知事選候補
者擁立について抽象的なレベルの域を超えることができなかった原因の一端を見出すことができるように思い
ます。

しかし、その市民運動は、いったん火がつくと燎原の火のように急激になだれうって燃え上がるという性質をも
あわせ持っているように思います。石原反動都政をストップさせるためには、また東国原前宮崎県知事のよう
なポピュリズム政治の東京都での跳梁を許さないためには、すなわち私たちの革新統一候補を勝利に導くた
めにはをこの市民の燎原の火のような熱情と勢い、そして力が必要です。

その市民の熱情と勢いと力はどのようにして生まれるのか。前回の都知事選挙時の「浅野コール」がその市
民の熱情と勢いと力の威力を垣間見せてくれた一コマであったように私は思います。

前回と今回とでは条件が違います。文中に「浅野」とあるところは「小池」と読み替えていただければおおかた
意は通じるものと思います。そういうことを念頭において前回都知事選挙時にSさんという人と交わしたメール
のやりとりを会話風にアレンジして再掲することにしました。意のあるところをお汲み取りいただければ幸いで
す。

私たちの念願しているのは石原反動都政ストップです。そのための統一です。

以下、前回都知事選挙時の私のメールのアレンジ版です。

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Sさん:都知事選が近づいていますが、まだ反石原の側がまとまらないことにすごく危機感を感じます。

東本:都知事選の告示までもう1か月を切っているというのに「まだ反石原の側がまとまらない」。この「危機感」
は、革新統一候補を望む者なら誰もが持つ共通の「危機感」といってよいと思います。私もその「危機感」を共
有しています。ただ、一般論としてはSさんのおっしゃるとおりですが、「浅野さんのハートに火をつける会」の第
2回目の集会が開かれてから“まだ”1日も日は経っていないのです(*1)。そのときに「まだ反石原の側がま
とまらない」と言ってしまうのはどうでしょう? もう少し事態の推移を見極めてから「まだ」かどうかを判断する
べきであろう、と私は思います。

*1:「浅野さんのハートに火をつける会」の第2回目の集会が開かれたのは2007年2月25日のこと。また、
浅野氏にとっては2回目にして初めての集会参加。Sさんから上記の問題提起があったのは翌日の26日のこ
とです。同集会で浅野氏は次のように語ったようです。「ちょっとお話を聞いてみたいという気持ちもありました
が、びっくりしました。こんな会とは思わなかった」(TBSニュース、25日22:57)。この浅野氏の言葉は、25日と
いうこの日が、市民から「都知事選出馬」を熱烈に求められていることを【初めて認識した日】ということになる
のではないでしょうか。

ちなみに「浅野氏擁立」が《革新統一候補》の問題として浮上したのはこの15日からのことです。それまでは
共産党サイド、または民主党サイドからの、すなわち政党サイドからの出馬宣言、立候補者の模索であり、
私たちの側に《革新統一候補を実現しよう》という機運はあっても、田中康夫はどうか、吉永小百合はどうか、
という願望のレベルを超えるものではなく、とても《革新統一候補実現》の模索と呼べるべきものではありませ
んでした。

それが15日を境に一気に「浅野氏擁立」運動に火がついたのです(*2参照)。「1日のうちにメールが飛び
交い、150人の部屋に250人が集まった」(朝日新聞コラムニスト、早野透。*3参照)。それが16日の第
1回目の「浅野さんのハートに火をつける会」の集会でした。その15日から数えても“まだ”10日しか経って
いないのです。

*2:私は第1回目の「浅野さんのハートに火をつける会」集会の翌日の17日に「(メディア記事は)すべて
浅野氏の出馬に否定的ですが、記事をよく読めば、「民主党からは立候補しない」と言明したということであ
って、市民からの出馬要請に対しては含みを残しています。」「浅野氏に嵐のような出馬要請を!」という次
のようなメールを発信しました。そして事態は「浅野氏出馬」に大きく動き出しました。
http://list.jca.apc.org/public/aml/2007-February/011528.html

*3:「資料:朝日新聞コラムニスト早野透さんの浅野氏へのラブレター(2007年2月20日付)」
http://blogs.yahoo.co.jp/higashimototakashi/10996498.html

Sさん:リベラル派と評判の高い浅野さん(あるいは菅さんやその他の候補でもいいのですが)で、 共産党か
ら民主党まで共同で推せる統一候補が立ち上がることが理想的であるのはもちろんです。ただ、現在すで
に選挙まで2ヶ月を切りましたが、果たして現在浅野さんが立候補表明をしたところで、吉田万三さんが降り
てくれるという保証はあるのでしょうか。

東本:もちろん、「吉田万三さんが降りてくれるという保証」などありません。しかし一方で、民主党、共産党、
社民党(あるいは共産党、民主党・社民党)の分裂の選挙では「石原3選阻止」は為し難いのです。そのこと
は私も何度も言っていますが、「民主党から、社民党、共産党まで各党とも認識は一致しています(*4)」。

*4:「都知事選11・26大胆シンポジウム報告」をご一読いただければすぐにわかることですが、左記のシ
ンポジウムで吉田氏は次のように述べていました。

吉田万三氏:(シンポジウム参加者の質問に答えて)「私は現実論に立っている。勝てそうになるとだれでも
出る人がいると思う。本当にやる気があるなら、諸手をあげるしかない」
http://kaze.fm/wordpress/?p=68

上記の吉田氏の発言中の「諸手をあげるしかない」の意は「統一候補(民主、共産、社民の)が実現すれば
自分は降りてもよい」という意味に同シンポジウム参加者に受けとめられました。辞書によれば諸手をあげ
る」とは「無条件に、また積極的に歓迎する」の意であるからです。しかし、現実には吉田氏の意向よりも政
党の理念、あるいは党利が優先され、「統一」は実現しませんでした。前回都知事選敗退の最大の要因は
この「統一」の不実現にあったのは誰の目から見ても明らかなことといわなければならないでしょう。

であるならば、「統一」の可能性をあくまで追求する以外ありえません。「吉田万三さんが降りてくれるという
保証」がないから「浅野氏擁立」運動をやめよう、という話にはなりません。何度も何度も繰り返しますが、
吉田万三さんだけでは「石原3選阻止」は為し難いのです。同じように共産党抜きの「浅野氏擁立」でも、「石
原3選阻止」は為し難いのです。何度も何度も同じことを言いますが、であるならば、「統一」の可能性をあ
くまで追求する以外ないのです。「石原3選阻止」のために。

Sさん:しかし今からでは政策協定も難しいし、こうした市民の動きが逆に反石原勢力の分裂を促すのでは
という懸念もあります。

東本:革新統一の候補者が決まらなければ「政策協定」も結べません。「今からでは政策協定も難しい」の
ではなく、浅野さんが立候補の意志を明確に示さない限り「政策協定」を結ぶ段取りにもならないのです。
いまは「浅野ラブコール」が先決です。段取りとしては、浅野さんが出馬の意志を示して、それから各党と
の「政策協定」の締結ということになるでしょう。「政策協定」の締結は、浅野さんが出馬の意志を明確に示
してからでも決して遅くないと思います。吉田さんがすでに示している「3つの協定」は、浅野さんのこれま
での実績から見ても、浅野さんご自身の政策でもあるはずだからです。何度も言いますが、いまは、浅野
さんに出馬の決意をしていただくこと、その取り組みが先決だと私は思います。

なお、「浅野氏擁立」の「動きが逆に反石原勢力の分裂を促すのでは」という見方は、「浅野氏擁立」の動
きが「民主党支持」の動き、ひいては「共産党排除」の動きに連動していくのではないか、という懸念でしょ
うが、そうした見方は、「浅野さんのハートに火をつける会」の運動が“民主党的なもの”の主導によるもの、
という誤解からきているところが少なくないのではないか、と思われます。

たしかに、同会の呼びかけ人のおひとりの五十嵐敬喜・法政大教授は民主党サイドの人です。しかし、彼
が独自の民主党観を持っていることはすでに述べたことです。五十嵐氏は一面において革新の人、民主
党と共産党との“共闘”を支持する人でもあります。五十嵐さんはいま、民主党と共産党との“共闘”を真
剣に模索しているはずです(*5)。

*5:前回都知事選で浅野陣営と吉田陣営がそれぞれ惨敗(石原の大量得票に比して)した最大の原因
はやはり共産党サイドと民主党サイドの“共闘”が実現しなかったこと、を挙げるべきだと思いますが、浅
野陣営の惨敗の原因のひとつに同選挙戦の後半で民主党の支援を前面に出して戦った選挙戦術上の
失敗を挙げておく必要があるようにも思います。同戦術は民主党支持層を完全に固めることができなか
ったばかりか、逆に無党派層(とりわけ革新無党派層)の離反を生じさせる結果となりました。こうした戦
術上の失敗は、五十嵐氏が(だけではありませんが)「民主党と共産党との“共闘”を真剣に模索」してい
たとしても、その模索は、民主党サイドに立った、すなわちわかりやすく言ってえこひいき型の「民主党と
共産党との“共闘”」の「真剣な模索」でしかなかったこと、そうした「調停」人の限界性を示しているでしょ
う。改めて私たちはこのことも“共闘”のあり方の大切な教訓として記憶しておくべきことのようにも思いま
す。

また、この日の「浅野さんのハートに火をつける会」には、ジェンダー学関係者(「護憲」を志向する者も少
なくありません)やAML(当時)参加者、「東京を。プロデュース」のメンバーなども多数参加していました。
卑近にいえば、私の見るところ共産党支持者も多かったのです。決して民主党サイドの「浅野氏擁立」の
動きに連動するものではない、というのが、私の判断です。

Sさん:せめて「革新都政をつくる会」や吉田さん本人との協議を十分に行った上で都知事選に向けた
候補者擁立運動に踏み出すべきだったのでは、と思うのですがどうなんでしょうか。

東本:この点についても上記で述べたとおりです。浅野さんが立候補の意志を明確に示さない限り、
「協議」する段取りにもならないのです。ここでも浅野さんが出馬の意志を明確に示すことが先決問題
だろう、と私は思っています。

Sさん:浅野さんでうまくいかない場合、市民・護憲派が一致して吉田万三さんを支援する、という選択
肢も考える必要があるのではないでしょうか。すでに都知事選直前なのに、中途半端に候補者選び
に時間を費やすより、思い切った決断を行うほうが有益な場合もあると思います。

東本:これも何度も言っていますが、吉田氏が出馬することになれば、必ず民主党、社民党も、連合
するか単独であるかはともかくとして独自の候補者を擁立することになるでしょう。すなわち、分裂選
挙になります。分裂選挙になれば「石原3選阻止」は為し難いのです。「吉田万三さんを支援する」と
いう選択は、分裂選挙やむなし、という状況になって、はじめて議題に上りうる議題であろう、と私は
思います。いまの段階で考えることではないだろう、と。最後の最後まで「統一」を志向しましょう。「石
原3選阻止」のために。

Sさん:社民や9条ネットや新社や民主党の有志も、幅広い市民団体も、今までのしがらみを捨てて
吉田さんを支援する、という決断はできないのでしょうか。

東本:分裂選挙やむなし、という状況になれば、「今までのしがらみを捨てて吉田さんを支援する」べ
きだと私も思います。しかし、それは最後の最後の手段だと私は思います。

Sさん:吉田さんでは勝てない、と言われますが、マスコミが悪意の無視をしているとしか思えません。
仮に石原知事と吉田さんが、都知事選関連報道で同じくらいの比重で扱われれば、知事選に対する
関心ももっと高まり、本当に「政策」で勝負する選挙になるはずなのにと思います。マスコミに対して、
このような「偏向報道」を今すぐにでも改めるよう求める必要があるのではないでしょうか? 読売や
産経ならともかく、朝日新聞やTBS、テレビ朝日でさえ吉田さんのことがほとんど取り上げられないの
は、比較的リベラルな層の間にも共産党への抵抗感や共産党系の運動を軽視・無視する態度が根
付いていることの現われではないでしょうか。

東本:この点についてのご指摘にはまったく同感です。私も先日この点について「東京都知事選の候
補者問題を報道するマスメディアのスタンスは、『石原・自民VS民主』というもの。私は、このマスメデ
ィアの報道スタンスに大きな疑問を抱いています」云々と書いて、いくつかの媒体に発信しておきまし
た。しかし、今回の市民レベルの浅野擁立の動きは「石原・自民VS民主」の構図ではありません。私
たちは「石原・自民VS市民・革新党派連携」の構図を作りたいと願っているのです。ただ、マスメディ
アがそういうことを理解せず相変わらず「石原・自民VS民主」の構図に収めようとしているにすぎませ
ん。
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東本高志@大分
higashimoto.takashi at khaki.plala.or.jp
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