[CML 007531] Re: 尖閣沖漁船衝突事件について(その10)
T. kazu
hamasa7491 at hotmail.com
2011年 2月 8日 (火) 21:17:29 JST
ni0516です
河内謙策兄へ
『尖閣その(10)』、ざっと読ませていただきました。
難解な香辛料がまぶせてあって消化不良なんですが、
おおづかみな印象は、1年半ぐらい前にNHKでの視聴者参加討論番組で、
櫻井よし子氏が、口角泡をとばしてお話していた内容と、
殆ど同じ印象をもちました。
(女史は兄が頻繁に引用なさる人物です)
兄は、
櫻井よし子さんたちと一緒に運動をなさったほうが、
そしてそのことをオープンにしたほうが、宜しいのではないでしょうか。
そのほうが、貴兄の意見や行動は、純粋に世の中に伝わると思いますよ。
貴兄が言うところの「惨憺たる状況」である、こんなところに燻っておらずに、
「正論」や「WiLL」で、健筆を振われたほうがよっぽどマシではありませんか。
>「九条をまもれ」と叫ぶことは九条の押し付けである、
この兄の言葉は、きっと本心だと脳髄に染みました。
兄は兄で本心を貫くことが大切です。
しかしそれを平和運動団体幹部というステータスを占めたまま、
「私たちを教化」するためのトロイの木馬となってよい、
ということでは決してありません。
たとえ「古色蒼然」たる平和運動であったとしても、
それを解体溶融して「領土ナショナリズム」の坩堝に投げ込め、
という兄の主張は、断じて許容できません。
兄は兄の拠るべき陣営で兄の任務を果たしてください。
くしくも、兄が言う大転期2008年とは、
差別排外主義団体「在日特権を許さない会」発会式の年であります。
ネットで培養された超右派がリアルな世界に跳び出した年です。
きっと兄はそうした動きに遅れてはならじと、
既に遂げつつあった思想的旋回の完了を急いだのでしょう。
> 世界史的に見れば、アジアで唯一近代化に成功した国、アジアで最も先進的で最
> も豊かな国としての日本という、明治以来の大前提が潰え去ったのだ。
兄の心のなかに持ちつづけた、
学生運動時代も密かに持ちつづけていたであろう、
兄に取って掛け買いのない、「大日本帝国」が、そこで消えたのですね。
相当な「消失感」だったと察します。
「頑張れ日本!全国行動委員会」の2000人デモに
兄が動揺したであろうことも充分理解できます。
私にとって憲法九条というものは、
物心つかない私に繰り返し「空襲体験」を語って聞かせた、
親達の「遺言」です。
守ってゆくべき人間としての素養です。
兄とは、彼岸と此岸であることが、これでハッキリしました。
最後に、
少数者に転落した「平和運動」は、兄がいうような惨めなものなのでしょうか?
貴兄までもが「領土ナショナリズム」を煽るようなご時勢では、
意識的な「平和の声」が少数になることは、当たり前のことです。
「領土ナショナリズム」は、麻薬であり甘い蜜なのですから。
でも、こんなときこそ、戦争をさせない!
「平和運動」の真価が問われるのではないでしょうか。
貴兄が、沖縄の基地撤去をもとめる「新宿ド真中デモ」に、
一度も参加することなく彼岸に行かれたのは、とても残念なことです。
そこには、困難と同時に、希望があり、
貴兄はそれを感じるチャンスを捨てたからです。
追って精読の上、精しく書きたいと思います。
まずは第一印象のみにて失礼致します。
ni0615拝
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> From: kenkawauchi at nifty.com
> To: tacotaco10 at hotmail.com
> Date: Tue, 8 Feb 2011 13:29:47 +0900
> Subject: [CML 007521] 尖閣沖漁船衝突事件について(その10)
>
> 河内謙策と申します。(この情報を重複して受け取られた方は、失礼をお許し下さ
> い。転送・転載は自由です。)
>
> 私は、最近、友人と以下のような会話をしました。(以下の会話は、私に寄せられ
> た疑問・質問にもとづき構成したフィクションです。)
>
> 友人:尖閣問題は、一服したようだね。
> 河内:尖閣沖漁船衝突事件の中国人船長と同事件のビデオを公開した元海上保安官が
> ともに起訴猶予となったことで、一件落着のムードがつくられているが、非常に危険
> な動きだと思うよ。元海上保安官が1月21日に語った「あのような形でビデオを公開
> したのは、事件の真相を知っていただき、尖閣諸島の問題、日本の領海を脅かす外国
> 船の問題など、どうすべきか考えてほしかったことが唯一の理由です」という言葉を
> 絶対に忘れてはいけない、日本人の熱しやすく冷めやすいという欠点を今度ばかりは
> 繰り返したくないね。
>
> 友人:君は、中国漁船は又来る、と言っている様だが、果たして中国漁船は又くるの
> かな。
> 河内:僕が昨年の秋から何回も言ってきたことは、昨年の9月7日の事件は、偶然の事
> 件ではないということだ。偶然の事件であれば、又来るかどうかは不確実だが、偶然
> の事件でないとすると、又来るのは、遅かれ早かれ確実だ、軍艦が来る可能性もあ
> る、と考えるのが常識だろう。今年の6月に1000隻以上の中国漁船がやってくるとい
> う噂があることは知っていると思うが、仮に結果的に今年の6月に来なくても、今か
> ら対策をとるのは当然じゃないだろうか。
> 僕は、尖閣諸島の問題は、「単なる」漁場の問題や、尖閣諸島の領有権の問題にとど
> まらない問題で、中国政府はそれを認識しているから昨年のような行動をとったんだ
> と思う。つまり、中国は、昔の中国とは異なり、帝国主義国になった、だからペル
> シャ湾級といわれる海底油田もほしいし、アジア覇権確立・東シナ海支配にとって必
> 要不可欠な尖閣諸島を自分のものにしたいと考えているんだと思うよ。
>
> 友人:君は、中国は昔の中国と違うというが、何時から中国は変わったと考えている
> のか教えてほしい。
> 河内:僕は、1949年から中国は帝国主義の国家だったという説はとらない。今の僕の
> 考えでは、明確な証拠はないが、1990年代の末に、中国の最高レベルで、新たな国家
> 戦略が確定されて、帝国主義へ舵が切られたのではないかと思っている。僕がそう思
> う根拠は、そのころから「平和的台頭論」や中国の「大国外交」が問題になってきた
> ことが挙げられる(小島朋之『21世紀の中国と東亜』一藝社、参照)。
> 個人的な話で恐縮だが、2002年秋に僕は中国に留学して北京にいた。テレビを見
> ていたら、中国共産党第16回大会のキャンペーンをやっていた。それを見てびっくり
> した。その冒頭の言葉は、「19世紀の初め、中国は世界の3分の1の生産力を占めて
> いたという経済学者の見解があります……」だった。
> その学者(アンガス・マディソン)の見解にびっくりしたのでなく、その大国主義
> 的自慢話にびっくりした次第だ。
> 最近、2009年から変わったという見解が「流行」しているようだが、僕は、2009
> 年に一種の「転換」はあったのかも知れないが、大きな「方向転換」はもっと早いの
> ではないかと考えている。いずれにしても、これについては今後の研究テーマだろ
> う。
> 2009年の「転換」については、以下のサイトを参照してほしい。
> http://yoshiko-sakurai.jp/index.php/2011/01
> (1月22日のブログ参照。ただし、櫻井よし子の胡錦濤発言の引用は不正確。以下の
> 高原の引用が正しい。)
> http://www.jnpc.or.jp/files/2010/10/b0cd1e08c67c4abc748c385415a10081.pdf
>
> 友人:君の見解は、いったい保守派や右翼の見解とどこが違うんだい。
> 河内:まず、僕は、保守派の見解や右翼の見解であっても、正しいものは正しい、と
> 考えていることを、念を押しておきたい。その上で、大きく3点違っていると考えて
> いる。
> 第一。保守派や右翼の多数は、1949年から中国は帝国主義国家だった、と考えて
> いるが、僕は、20世紀末から帝国主義国家だと考えている。チベット侵略のような誤
> りと、経済的軍事的に大国になったことにもとづく誤りとは質が違うと思う。
> 第二。保守派や右翼の多数は、中国は「理性的」な国家・「普通の」国家に変わ
> ることはできない、と考えている。僕も、現在時点においては、「単なる」話し合い
> によって中国の帝国主義的政策を変えるのは不可能と思っているが、将来は変わりう
> ると考えている。戦前、中国を熟知している人間が「中国革命」を予測できなかった
> 誤りを繰り返してはならない、と思うよ。
> 第三。保守派や右翼の多数は、中国の民衆は信頼できない、と考えている。
> 僕は、たしかに中国人一般について言えば、安易なヒューマニズムを寄せ付けない
> ところがある、嘘をついたり、約束を守らない、自己中心的人間が多いことは事実で
> あるが、そうでない人間も少しづつではあるが増えており、将来的には同じ人間であ
> る以上、変わりうると思う。
>
> 友人:君のいう、中国の国家戦略とはどんなものなのか。
> 河内:中国は、アジアの覇権を確立するために、陸においては「清王朝の最大の勢力
> 圏の回復」を狙っていると言われている。清王朝の最盛期の勢力圏は、朝鮮半島、台
> 湾、沖縄、ベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマーの一部、中央アジア5カ国、
> シベリア、カムチャッカ半島であった。
> 海においては伝統的な大陸国家から大陸国家・大洋国家への転換を図り、東シナ海・
> 南シナ海(西太平洋)においては、2010年までには第一列島線(カムチャッカ半島、
> 日本列島、台湾、フィリピン群島、ボルネオ島、インドネシア)までの制海権を確保
> し、2020年までに第二列島線(小笠原諸島、グアム、カロリン諸島、ニューギニア
> 島)までの制海権を確保するのが目標といわれている。
> インド洋・アラビア海においては、パキスタンの港から海南島にいたるシーレーンに
> 沿う要衝に戦略拠点が築きあげられつつある。これはインド洋の制海権の確保・イン
> ド包囲網が目的である。この中国の戦略を世界の人々が「真珠の首飾り戦略」といっ
> ている。これについては、以下のサイトを参照してほしい。
> http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/420
> http://geopoli.exblog.jp/13197548/
>
> 中国の目的は、アジアにおいて覇権を確立するだけではない。アジアの覇権を基礎
> に、世界中に確保した利権を守り抜き、世界の支配をめざしている、ということがで
> きる。世界に卓越した軍事力・経済力・人口力(!)を武器にしたモンスターが世界
> 中で動き出している、という印象だね。だから、アフリカで中国人排斥運動がおこる
> という、ちょっと前には考えられなかったような事件が起こっているんだよ。
>
> 友人:先日君は、アメリカが、太平洋インド洋地域において中国包囲網形成をめざす
> 新戦略を採用したようだと教えてくれたが、それはアジアの経済的な動きと関係があ
> るんだろうか。
> 河内:従来の「帝国主義論」の通俗的理解では、帝国主義的な動きは、背後に経済的
> 利益を求めての動機がある、という説明をするので、気になるところだが、直接的な
> 関係があるかどうかは僕には分からない。しかし、アジアは大きな変動期に入ってお
> り、アメリカがこの大きな変動に経済的にも介入することを目指しているので、間接
> 的に大きな関係があることは間違いないのではないだろうか。残念ながら、今は、こ
> れしか言うことができない。
> 最近僕が読んだ、後藤康浩著『アジア力』日本経済新聞出版社、という本はお勧
> めだ。これを読めば、自分が如何にアジアを知らないか痛感するね。彼は、「まさに
> いま、アジアは沸騰している」「21世紀に入ってアジアで大きな構造変化、地殻変動
> が起きている」と強調している。又彼は、「全体として『太平洋の時代』はまだ終わ
> らないが、『太平洋&インド洋』の時代に急速に移行していく」と述べている。この
> 先見性には感心する。
> なお、最近、日本の大企業の目が中国だけでなくインドに向いていることについ
> ては、以下のサイトを参照してほしい。
> http://yamashi3.livedoor.biz/archives/51336754.html
> http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/8827ac11a2a45fc7a23782aee8c20567
>
> 友人:日本の平和運動の今後の方向についての君の考えを聞かせてほしい。
> 河内:今回の尖閣沖漁船衝突事件をつうじて明らかになったことの一つは、日本の平
> 和運動が、このまま衰退していくのか、それとも弱点を克服して新たな再生(ルネッ
> サンス)をするのか、重大な岐路に立っているということだ。
> 日本の平和主義者で、日本の平和運動の危機や衰退を僕が口にすると猛然と批判
> する人は一杯いる。しかし、そのような人は、平和運動の現実をみてほしい。惨憺た
> る状況が展開されていることは明らかだと思う。尖閣沖漁船衝突事件について、尖閣
> 諸島が日本領であることを前提に声明を出したり、行動を起こした平和団体がほとん
> どないということ、尖閣諸島が日本領であることを前提に行動を起こした団体が“頑
> 張れ日本!全国行動委員会”等の従来平和運動とは無関係だと思われていた団体であ
> るということ、日本の民衆の圧倒的多数は尖閣諸島が日本領であり、中国はとんでも
> ない国だと考え始めているということ、これらは少なくとも、日本の平和運動が日本
> の民衆の感覚や意見とかけはなれていることを意味している。日本の民衆とはなれて
> 日本の平和運動の未来はない。私は、このままでは、「平和運動というのは特定のイ
> デオロギーにもとづく運動で、日本の平和や国民とは関係ない」と日本の民衆が考え
> て、日本の民衆に平和運動が見放される日は遠くないと考えている。
> 私は、平和運動とは、平和の敵=アメリカ帝国主義を弾劾することだと考えてい
> る人に、もっと事実にもとづいて自分の頭で平和ということを考えてほしい、と思っ
> ている。平和の敵=アメリカ帝国主義という考えは、冷戦時代にこそ合致したかも知
> れないが(当時はアメリカとソ連の最大の対決点はヨーロッパであり、中国は帝国主
> 義ではなかった)、現在では、現実と乖離し、中華帝国主義を免罪する議論になって
> いる。私の考えでは、沖縄問題だって、中国の一部の「沖縄回収」の動きを抜きにし
> て論じられない状況になっているのに、なぜアメリカ帝国主義だけを問題にするの
> か、単なる惰性で平和運動を考えている人がいるとしか言いようがない。時代が変わ
> れば、われわれの主張や行動は変わらなければならない。この単純な真理が分からな
> い人がいるから情けないよ。
> 「憲法9条を守れ」と叫ぶことが平和運動だと考えている人に言いたい。
> それでは、憲法9条の押し付けで、絶対に国民の多数にはなれない。国民の多数
> が、確かに憲法9条は日本の国民の利益を守るのに有効だし、「憲法9条を守れ」とい
> う人は私心がなく信頼できる人だ、ということを実感してもらうような運動をつくら
> なければならないのではないだろうか。そのためには尖閣問題は関係がない、という
> 憲法9条運動では、「憲法9条を守れ」という叫びは国民の心に届かないのではない
> だろうか。
> 「河内の言うことは分かるが、そのような少数意見を自分からいうのはどうも…
> …」と言う人に言いたい。貴方が平和運動に飛び込んだ時の勇気を思い起こしてくだ
> さい、劉暁波のように、勇気をもって信念を貫かなければならないのは今なのです、
> そうでないかぎり、後世の人から、貴方も腰抜けと評価されるでしょう。それは、貴
> 方の今までの人生を、自分でドブに捨てることなのではないでしょうか。
> 関岡英之氏は、『中国を拒否できない日本』(ちくま新書)9頁で次のように述
> べている。少し長いが引用させていただき、このメールを読まれる方の参考にしてい
> ただきたい。
>
> 「[2008年]を境にして、日本の内外で地殻変動ともいうべき巨大な変化が蠢動し
> 始めている。私たち日本人は、これまで想定していなかった新たな現象に次々と見舞
> われている。いままでの常識は通用しない。事態は風雲急を告げている。
> その根底にあるものは何か。端的に言えばそれは、日中の国力の逆転である。…
> …
> 日中の国力の逆転は、単に経済上の問題として考えて済むものではない。まして
> やプライドだとか嫉妬だといった感情の問題でもない。
> 世界史的に見れば、アジアで唯一近代化に成功した国、アジアで最も先進的で最
> も豊かな国としての日本という、明治以来の大前提が潰え去ったのだ。
> いま起きていることは、近代以降、私たち日本人が初めて直面する事態なのであ
> る。
> それに対して私たちはどう対処すべきか。この時代の当事者として、私たちは祖
> 国が存続するための方策を考える責任がある。そうしなくては、父祖たちに対して
> も、子孫たちに対しても、来世で顔向けできない。これは国家の浮沈、文明の盛衰に
> かかわる、勝れて戦略的な問題なのである。」
>
> 以 上
>
> ――――――――――――――――――――――――――――
> 河内謙策 〒112-0012 東京都文京区大塚5-6-15-401 保田・河内法律事務所
> (電話03-5978-3784 FAX03-5978-3706 Email:kenkawauchi at nifty.com)
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