[CML 007524] Fwd: [TUP-Bulletin:0023] 速報882号 エジプト民衆蜂起ウォッチング @ ロンドン (その7)

TERAO Terumi teraoter at mint.ocn.ne.jp
2011年 2月 8日 (火) 16:46:40 JST


寺尾です。

転送です。

重複して受信された方には大変申し訳ありません。
御手数をお掛けしますが削除してくださることでお許しください。

転送・転載歓迎。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 以下転送 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

件名: [TUP-Bulletin:0023] 速報882号  エジプト民衆蜂起ウォッチング @
ロンドン (その7)
差出人: noreply at tup-bulletin.org
送信日時: 2011/02/06 10:04
宛先: tup-bulletin at freeml.com

◎メガリークの衝撃:ロンドンで聞くエジプトの声 (その7)
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刻々と変化するエジプト情勢から目が離せず、家にいる限りはテレビつ
けっぱなしにしてウォッチングしています。
それらの一部をタイプして自分のブログ
http://newsfromsw19.seesaa.net/
に掲載し、TUPのMLにも流したところ、メンバーからTUP速報の読者
とも共有しようとの提案があってシリーズで速報することになりまし
た。今回は第七弾を速報します。


[注| 今号は全体の半分ぐらいがイギリスに関する内容で、その部分は
エジプトには直接関係ありません。興味のないかたは飛ばしてくださ
い。文末に先週末、イングリッシュ・アルジャジーラで放映したドキュ
メンタリー『エジプトが燃えている』(英語・字幕なし)へのリンクが
あります。民衆蜂起が始まった1月25日から5日間の記録で、この蜂起に
自発的に加わったエジプトの人たちの姿が見られます。この蜂起の最
中、アルジャジーラのカイロ・オフィスは何者かに火を点けられ、何人
ものジャーナリストが拘束されました。死体置き場の映像が一カ所あり
ます。ご注意ください。


第一弾〜第五弾(速報875号〜880号)はTUP速報のホームページでお読
み下さい。
http://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=907
http://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=908
http://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=909
http://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=910
http://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=911
http://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=912


藤澤みどり/TUP
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<第11信>


2011年02月06日
革命なう@エジプト第12日+多文化主義ファンとして


あらかじめ白状しておくと、わたしはこの<革命なう@エジプト 第12
日(土曜日)>の記録を、日曜日の朝(第13日)に書いている。メモは
とっていたものの、どうしてもまとめることができなかった。あまり心
穏やかでない要素がいくつも重なっていたので、ともかく一日が平穏に
終わって欲しいと願っていた。

そして、真夜中(GMT)をだいぶ過ぎ、ムスリム同胞団がスレイマン副
大統領の呼びかけに応じて話し合いのテーブルにつくことを了承したと
のニュースを聞いてから寝た。

というわけで、すでに速報ではないので俯瞰的に。

*

第8日(火)に、エジプト全土で百万人以上が路上に出るという巨大な
示威行動があった。しかし、その成果は、行動の大きさにまったく見合
わない「ムバラク大統領の時期大統領選不出馬」という貧弱な果実しか
もたらさなかった一方で、ムバラク支持派の予想もしない勃興というネ
ガティブなかたちで表れた。まったく自発的でないその集団は、自発的
でないからこそ行動で忠誠を示そうとするかのように残虐で、プロテス
ター側に新たな死者と大量の負傷者をつくるだけでなく、海外のメディ
ア関係者やNGOスタッフにも容赦なく襲いかかった。目撃者の組織的な
排除を見て、ジャーナリストたちが「天安門」という言葉を口にするよ
うになった。

そして第11日(金)、プロテスター側はこの日をこの<革命>のD-Day
(大規模攻撃開始)と位置づけ、再び巨大な群衆で広場を埋め、金曜礼
拝のあとに路上に繰り出した。しかし、それをもってしても得られた成
果は与党NDPの執行部辞任(ムバラクの息子のガマル含む)だけで、目
標とする大統領の辞任はならなかった。じゃあ、次は何をすればいいん
だという閉塞感がジャーナリストのあいだにさえ漂い始めた。抗議行動
が始まって以来、ずっとカイロに張り付いているBBCの女性レポーター
は、「どうしてこんなにちょっとずつしか譲歩しないのか。これがエジ
プト流なのか」と苦笑いしていた。

第12日(土)の夜中を回ってから、ムスリム同胞団が政府との話し合い
に応ずることに決めたのは、<革命>を前進させるには次の一手をプロ
テスト側が出すしかなかったからでもあるだろう。4月6日ユースムーブ
メントはあくまでも大統領の辞任が先であるとして、ネゴシエーション
には応じない方針だとアルジャジーラが報じた。

*

土曜日は、まず天気が悪かった。広場でのプロテストは屋外であるから
天候の影響を受けやすい。最初からテントを張っている人もいたが(子
連れで泊まり込んでいる家族などはそうだ)、広場を俯瞰した映像を見
るとテントの数はそう多くなく、ほとんどは寝袋や物陰に潜り込んで寝
ているようだった。まだ数千人が広場で夜を明かしているという。

午前中はくもりで風が強く、午後になって細かい雨が降り出した。エジ
プト・スタンダードでいうとけっこうなお湿りだとBBCのレポーターが
言うのを聞きながら、つまり、イギリス・スタンダードだと雨のうちに
は入らない程度ということかと思ったりした。めったに降られないエジ
プト人と日常的に降られているイギリス人の行動が同じというのがおも
しろかった。だれも傘を差していない。

*

金曜日の巨大示威行動でガス抜きはすんだと政府は判断したのか、広場
のプロテスターに対して帰宅するようにとのウォーニングが改めて出さ
れた。同時に、ムバラク支持派の進入を阻んでいたバリケードを軍が撤
去し始め、また戦車や軍用車の移動が始まった。

これに対し、プロテスター側は文字通り、体をはっての阻止行動で応
じ、バリケードや戦車の前に座り込み、横になり、その移動を封じた。
戦車の前にテントを張る者や戦車のキャタピラーの間に陣取る人までい
る。軍は丸腰の市民に銃を向けないという絶大な信頼があればこその行
動だということは頭では理解できるが、キャタピラーの間で眠る子ども
の映像などみると、頭の隅に天安門がちらつく。

*

広場で夜を明かすハードコアなプロテスターとは別に、夜は家に帰り、
朝になると通ってくるプロテスターも多い。広場への入場にはあいかわ
らず厳しいチェックが必要でいつも長蛇の列ができる。人々は辛抱強く
並んで待っていて、これはエジプト・スタンダードだと珍しい現象らし
い。プロテストへの参加がエジプト人の素行を良くしてる?

泊まり込んでいる者もずっとそうしてしるわけではなく、食べ物を調達
したりシャワーを使ったりするために時々家に帰るという。でも、広場
の外でムバラク支持派によるプロテスターの拉致が始まっているので、
広場から出るのが怖いと若い女性がインタビューに答えていた。

どうして広場に居続けるのかとの質問に対して、ある男性は秘密警察に
捕まって拷問を受けたことがあると言い、家族にも友達にも捕まって拷
問を受け、なかには死んだ者もいると続けた。いまのいま、拷問されて
いる者もいるんだと涙声で訴えるこの男性は、カメラに顔が映らないよ
うにしていた。過去1週間ぐらいのあいだで、直接レポーターにインタ
ビューされて顔を見せないプロテスターを初めて見た。この人が特例な
のか、ムバラクが政権を去らないまま、運動が崩壊した場合を恐れてか
わからないが、話を聞いているうちに不安が伝染してきた。

*

1番下にアルジャジーラ・イングリッシュが5日土曜日夜7.30(再放送は
翌6日日曜日同時刻)で放映された<エジプト革命(仮)>のドキュメ
ンタリー『Egypt Burning』のリンクが貼ってあります。イギリスの話
に興味のないかたは途中飛ばして終わり近くまで進んでください。

*

イギリスなう>

ミュンヘンで開催中の国際防衛会議で、デイヴィッド・キャメロン首相
が「イギリスの多文化主義は失敗した」と演説した。ドイツのメルケル
首相が去年、似たような演説をしているので、「なんだよ、サッチャー
の次はメルケルのまねかよ〜」とげんなりしつつ、ものすごく気分が悪い。

スピーチの一部を聞くと、移民が移民だけで固まって暮らしていてイギ
リスの文化になじまず、元からの住人とのあいだに溝ができているなど
と言うが、それをもって「多文化主義の失敗」とは話が大き過ぎない
か。確かに、同じ地域の出身者ばかりで暮らしていると言葉を覚えない
し、言葉を覚えないと役所の書類ひとつ読めず、例えばバングラディッ
シュなどからアレンジマリッジで渡英した女性たちが夫の支配(時には
DVを含む)に縛り付けられているといった事例はある。

それなら、まず言葉ね、で、そういう移民難民のための英語教室(福祉
の対象者は無料)があっちこっちのカレッジに用意されていて、供給が
需要に追いつかないぐらい人気があった。が、現政権の大幅予算カット
でクラスの維持さえ難しくなっている現実に、キャメロンはどう答える
つもりだろう。

さらに、多文化主義によって甘やかされているせいで、移民がブリ
ティッシュネス(英国人らしさ)を身につけることができないという。
なによ、ブリティッシュネスって。キャメロンに言わせれば平等とデモ
クラシーと調和なんだそうだけど、イギリス人のあいだでさえ価値観は
ばらばらだ。新聞と言えば『サン』(イギリスで最大発行部数を誇るタ
ブロイド紙、毎日女性のヌードが掲載されているので有名)しか読まな
いオヤジの頭の中に、男女平等の概念がどのぐらい入っているか。

わたしに言わせれば、このばらばらさ加減こそがブリティッシュネス
だ。人の頭の中は本人に聞くまでわからないってことが多くの人に了解
されていて、ばらばらだから常に議論がおき、議論を重ねて妥協点を見
つけていく。めんどくさいけどおもしろい。多文化であるからこそこの
国はいつまでもおもしろい。(ただし、これはロンドンなどの大都市だ
けかもしれない)

結局このスピーチでキャメロンが言いたかったのは、まあ、防衛につい
ての会議だから最初からそれが目的なんだろうけど、イギリスで生まれ
育ったイスラム過激主義者が増加していて、イギリス国内のムスリム社
会がそれを押さえ込めていない。だからもうイスラム社会に税金を使わ
ないってことだった。これが事実かどうかはとりあえず置いておく。も
し事実であったとして、その原因を「多文化主義の失敗」に押しつける
のはいかにも話が違う。

ムスリムの移民二世三世の一部が過激化したのはなぜか。イギリス兵が
イスラム国家に行って市民を殺しているからじゃないのか。ムスリムの
尊厳を奪っているからじゃないのか。IRAが増加したから「血の日曜日」
が起きたんじない、「血の日曜日」があったからIRA志願者が増えたん
だってことを、まさか首相が知らないわけでもあるまい。

そんなわけで、キャメロンの「イギリスの多文化主義は失敗した」だの
「ブリティシュネス」礼賛だのは無責任なバズワードに過ぎないのだ
が、間が悪いことにそれが肉体化してしまったのがこの土曜日だった。

この日、わずか20ヶ月前にスタートして以来ぐんぐん勢力を伸ばしてい
る極右のレイシストグループのイギリス防衛同盟(EDL)が、いままで
で最大の示威行動を行った。舞台になったのはロンドンの北方にある
ルートンで、EDLが生まれた地でもある。イギリス各地から集まった約
3000名のメンバーに、大陸のレイシストグループからのハードコアなゲ
ストを加え、おもにムスリムをターゲットにした人種差別的なチャン
ティングを叫びながら町を練り歩いたらしい。

そして、口々に、「キャメロンはわれわれの側にいる」「われわれこそ
真の愛国者」とお祭り騒ぎ。

*

ムスリムが大多数を占める国、エジプトで、平等とデモクラシーと言論
の自由を求める若者たちの<革命>が起きつつあるいま、自国の若いム
スリムをレイシズムの犠牲にしかねない内容のスピーチを国際会議でし
たこと。

前もって予定されていたレイシストグループの示威行動の日に、かれら
を活気づけるだけのムスリム批判をしたこと。

ムバラク後のエジプトには、イスラム国家ではなく「多文化」を許容す
る寛容な国家になってほしいとみなが望んでいるときに多文化主義を批
判したこと。

キャメロンは驚くほど狭い視野の世界に生きている。それとも、キャメ
ロンの耳目の代わりを果たしていたスピンドクターが、前の仕事(タブ
ロイド紙編集長)時代の盗聴事件絡みで首相官邸から去ったばかりだか
らか。

*

エジプトのことよりキャメロンのスピーチが原因でとても気分の悪い一
日だった。わたしはたぶんイギリスの多文化主義というなんだかよくわ
からないものがすごく好きなんだろう。

*

夜中過ぎ、BBCのスタジオインタビューにムスリム同胞団のスポークスマ
ンが登場。たぶん、これはロンドンで録画されたものだ。まだムスリム
同胞団がスレイマンとの協議に応じると決める前だったような気がする
が、そのあたりは曖昧。

インタビュアーに「ムスリム同胞団はこのプロテストには最初から関
わっていたんですか」と質問され、ムスリム同胞団のかれ(名前忘れた
けどいつも出て来る人)が言うに、「いえ、違います。最初に始めたの
は若い人たち。わたしたちは後から加わりました」

これを聞いてどう受け取っていいかわからなくて困った。なにしろブ
ルーだったので。

手柄を横取りせずに謙虚に事実を伝えた、というのがポジティブな解
読。ユースのグループと距離を置いて現実路線をとった(=若者たちを
捨てた)、というのがネガティブな解読。答えは遠からずわかるだろ
う。

*

Egypt Burning --- English Algazeela
記者の氏名は安全上の理由により伏せられています。
http://www.youtube.com/watch?v=w3FQXYdyHCg

本速報は、TUPウェブサイト上の以下のURIに掲載されています。
http://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=914

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TUP速報 http://www.tup-bulletin.org/
配信責任者:坂野正明

TUPへの問い合わせ:
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過去の TUP速報:
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■『冬の兵士──イラク・アフガン帰還米兵が語る戦場の真実』
(TUP翻訳、岩波書店、2009年8月発売)
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■『ガザ通信』
(岡 真理、TUP翻訳、青土社、2009年3月発売)
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