[CML 011377] 転送:TUP速報 923号 30年前の今日、中産階級は死んだ──マイケル・ムーアからの手紙

藤谷英男 fujithid at yahoo.co.jp
2011年 8月 17日 (水) 23:50:39 JST


相模原の藤谷です。

昨今は原発・放射能問題で手一杯の方も多いでしょう。その間も、安定雇用の崩壊、
極端な格差の出現、福祉の縮小等々、「一億総中流」と言われた経済構造を瓦解させ
た新自由主義が益々猛威をふるっています。日本社会のこの変化を先導した米国の
病理をマイケル・ムーアが明快に描き出して、中流層の復権のために行動を始めよと
呼び掛ける文章の翻訳がTUP速報として配信され、TUPのウェブサイトで誰でも読む
ことが出来ます。関心のある方はご一読下さい。出所を明記して全文を用いる限り、
転送、転載等、非営利的な使用は自由ですのでご利用下さい。

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TUP速報 923号 30年前の今日、中産階級は死んだ──マイケル・ムーアからの手紙

熱血の映画監督マイケル・ムーアが、苦節30年の中産階級に復権のための
 行動を呼び掛ける。
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 1980年代、人気俳優ロナルド・レーガンが米国大統領として登場し、市
 場原理主義を掲げて国を、民衆を、疲弊の極みに落とし込む新自由主義路
 線が走り出しました。

 日本でも「ロン・ヤスの間柄」とはしゃいだ中曽根首相がその受け売りし
 て、わが国を米国の新路線に組み込むプロセスが始まりました。国鉄民営
 化を始めとする「中曽根民活」は「小泉改革」を経て今に続き、民衆の生
 活を根底から破壊しています。

 米国の変質が「レーガン改革」に始まって今も続いていることと、民衆
 が有意な抵抗を示さずむしろ容認してきたことを指摘して、これでいいの
 か?声を挙げるべきだ、と「華氏911」や「シッコ」の監督ムーアが再
 び呼び掛けています。

 ムーアは2008年9月の「リーマンショック」の直後に、金融救済の法案が
 米下院で否決されるという歴史的な事態の後、上院での採決に当たって議
 員への呼びかけを民衆に促す声明を出して大きな反響を呼びました(下記、
 TUP速報787号)。

 (参考)速報787号 マイケル・ムーア : ウォール街の騒動を収拾する方法
http://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=811

 今回の文書は謂わば第2弾です。

 [前書・翻訳: 藤谷英男]

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 2011年8月5日金曜日

 皆さん

 30歳より若い人に「一体いつからなのですか、アメリのこの転落は」と訊かれることがある。勤労者が片親の収入で家庭を持ち、子供を大学にやる(しかもカリフォルニアやニューヨークのような州では大学の学費はほとんど無料で)ことができた時代があったと聞いたが、という。望めば誰でも給料のよい職を得ることができた。1日8時間、週5日の労働だけで週末はまるまる休みの上、毎年夏の有給休暇もあった。スーパーのレジ係から家を塗るペンキ屋まで職種の多くに労働組合があって、組合員であれば、どんな「低級」な仕事に就いていても、年金、時折の昇給、健康保険が保証され、また不当な待遇を受けた時に一緒に起ち上がって支援してくれる人もいた。こんな神話的時代のことを若者たちは耳にして
いる……しかしこれは神話ではなく事実だったのだ。「これはいつ終わったのですか」と聞かれたら私は「1981年8月5日、この日だ」と答える。

 30年前のこの日を境に、大企業と右派勢力は、自分たちがどんどん豊かになるために中産階級を潰すことが本当にできるかどうか「やって見よう」と決めたのだ。

 そして彼らはやり遂げた。

 1981年8月5日、ロナルド・レーガン大統領は職場復帰命令を無視した航空管制官組合(PATCO)の全組合員を解雇して、組合を非合法と宣言した。組合はたった2日間ストライキをしていただけだった。

 大胆不敵な処分だった。それまで誰もしようとしなかったことだ。しかもPATCOは大統領選挙でレーガンを支持したたった三つの労組の一つ(!)だったから、なおさら大胆なことだった。これで全国の労働者に衝撃が走った。自らの支持母体にさえこの仕打ちなら、我々にはどうするだろう、と。

 レーガンは大統領選挙でウォール街[訳注:金融業界]の支持を受けていたが、彼らは右派キリスト教勢力と共に米国を造り変えて、フランクリン・D・ローズベルト(ルーズベルト)大統領が始めた、平均的勤労者の生活改善を意図した潮流を逆転させることを望んでいた。富裕層は賃金の増額や福利厚生費の負担を嫌っていた。税金を払うことは、それ以上に嫌悪していた。労働組合を毛嫌いしていた。右派キリスト教徒たちは社会主義のにおいのするものや、少数者や女性に手を差し延べるものは何でも憎んでいた。

 レーガンはこれら全ての始末を請け負った。そこで、航空管制官らがストライキに入った機会を逃さなかった。組合員の最後の一人まで片付け、組合を非合法化することで、彼は明確で強力なメッセージを発したのだ。「みんなが中流の快適な生活を送る日々は終わった。アメリカは、これからこうなる」

 *大金持ちはもっと、さらにもっと、肥え太り、あとのお前たちは残りくずを奪い合う。

 *みんな働け。母ちゃんも父ちゃんも、十代の子も、家のみんなだ。父さんは副業をしろ。子供たち、ほら、家の鍵をお持ち。寝る時間までに親が帰って来ればいいね。

 *5,000万人の者は健康保険無しだ。健康保険会社さん、誰を助けたいか助けたくないか、好きにしなさい。

 *労働組合は悪だ!組合に加入させないぞ!弁護士はつけない!黙って仕事に戻れ!駄目だ、まだ帰るな、仕事が終わっていない。子供は自分の夕食くらい自分で作れる。

 *大学に行きたい?結構、サインしろ。それで20年間銀行に借金を背負い込め!

 *「昇給」だって?仕事に戻って黙ってろ!

 こんな風に続いた。しかしレーガンが1981年に独力でこれをやり遂げることができたのではない。強い味方があった。

 AFL-CIO(米国労働総同盟産別会議)だ。

 この、全米最大の労働組合組織が、航空管制官のピケットラインを破って職場に戻るよう組合員に指示したのだ。組合員たちはまさにその通りにした。組合の操縦士、客室乗務員、荷物運搬車運転手、手荷物取扱員──みんながピケを破ってストライキ潰しに手を貸した。そしてあらゆる職種の組合員がピケラインを破って飛行機を飛ばし続けたのだ。

 レーガンとウォール街の面々は目を疑った!何十万人という労働者、労組員が仲間の組合員の解雇を良しとしたのだ。それはアメリカ株式会社にとって真夏のクリスマスだった。

 そしてそれは終わりの始まりだった。何でも勝手放題に出来ると分かったレーガンと共和党は、実際やりたい放題にした。金持ちの税を切り下げた。職場で組合を創設することを一層困難にした。勤務中の安全規制を撤廃した。独占禁止法を無視して、何千という会社が合併したり、買収されて廃業するのを許した。企業は賃金を凍結し、労働者が減給や福利手当の減額に応じなければ海外に移転するぞと脅した。そして労働者が賃下げに同意したところで、仕事をどのみち海外に移転させてしまった。

 そしてこの行程の一歩一歩に米国民の大多数は協調してきた。反対も反撃もほとんどなかった。大衆は起ち上がらず、自らの職を、家を、(かつて世界最良であった)学校を、守ることをしなかった。ただ運命を受け入れて叩きのめされるに任せた。

 1981年のあの時に、もしみんながきっぱりと飛行機の利用をやめていたらどういうことが起こっただろうかと、私はよく考える。もし全ての労働組合がレーガンに対して「あの管制官たちを全部復職させなければこの国を閉鎖するぞ」と言っていたら、どうなっていただろうか。分かりますね?企業エリートと御用聞きのレーガンは音(ね)を上げたことだろう。

 しかし我々はそうしなかった。そして、一歩一歩、じりじりと、営々30年、支配層はわが国の中流層を壊滅させた上、若者の未来までも破壊した。 賃金は30年の間足踏みしている。統計をちょっと見れば、今苦しんでいる凋落の全ての要素が1981年に端を発していることが分かる。(私の最新の映画から、その様子を描いた一部をどうぞ 。
  http://www.youtube.com/watch?v=vvVAPsn3Fpk
 説明:「銀行と企業には単純な計画があった。自分たちのためにアメリカを造り変えるというものだ。しかし、やり遂げるには広告塔を大統領にする必要があった。そして1980年11月4日、米国民はそうした。」──マイケル・ムーア)


 すべては30年前のこの日に始まった。米国史上最悪級の一日だった。我々が、そうなるのを許したのだ。

 確かに彼らは資金とメディアと警察を握っていた。しかし我々の仲間は2億人だ。もし2億人が本当に怒って、国と、生活と、仕事と、週末と、子供と過ご時間を取り戻したいと思ったらどうなるか、考えたことがあるだろうか?

 我々はみんな諦めてしまったのか?何を待っているのか?あの「茶会」(訳注1)支持者の20パーセントはどうでもよい。それ以外の80パーセントが我々だ!今の落ち目は我々が要求しない限り終わらない。ネット誓願やツイッターじゃ駄目だ。テレビもコンピューターもテレビゲームも消して街頭へ出よう(ウィスコンシンでやったように:訳注2)。来年の地方選挙に出る人も必要だ。民主党に、性根を据えて企業献金の受け取りを止めるように、───さもなくば降壇するようにと迫らなければならない。

 もう沢山だと、いつになったら思うのか?中産階級の夢は魔法のようには再来しない。ウォール街の思惑は明らかで、アメリカを持てる者と持たざる者の国にすることだ。それでいいのか?

 今日この日、一息入れて、近所で、職場で、学校で、この潮流を逆転させるための小さな一歩を踏み出すことを考えようではないか。思い立ったが吉日ではないか。

 マイケル・ムーアより。


 [訳注1:右派・保守系の「ティーパーティ−運動」]
 [訳注2:今年2月、ウィスコンシン州で、州職員労組の団体交渉権を剥奪する知事の予算案に抗議して公務員、教員ら民衆が連日起ち上がり、延べ10万人規模の行動となった。TUP速報900号 カイロのつぎはウィスコンシンだ!市民と連帯する「冬の兵士」
http://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=932
 参照]

 ウェブ版の原文:
 MIKE'S BLOG 2011年8月5日
 Michael Moore: 30 Years Ago Today: The Day the Middle Class Died
http://www.michaelmoore.com/words/mike-friends-blog/30-years-ago-today

 本速報は、TUPウェブサイト上の以下のURIに掲載されています。
http://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=955

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FUJITANI, Hideo
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