[CML 009194] Fwd: 日弁連「福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について」に関する会長声明

M.Shimakawa mshmkw at tama.or.jp
2011年 4月 23日 (土) 19:39:14 JST


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<http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/statement/110422_2.html>

 「福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について」
  に関する会長声明

4月19日、政府は「福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的
考え方について」を発表し、これを踏まえて、文部科学省は、福島県教育委員会等
に同名の通知を発出した。これによると「児童生徒等が学校等に通える地域におい
ては、非常事態収束後の参考レベルの1〜20mSv/年を学校等の校舎・校庭等の利
用判断における暫定的な目安と」するとされており、従前の一般公衆の被ばく基準
量(年間1mSv)を最大20倍まで許容するというものとなっている。その根拠につ
いて、文部科学省は「安全と学業継続という社会的便益の両立を考えて判断した」
と説明している。

しかしながら、この考え方には以下に述べるような問題点がある。

第1に、低線量被ばくであっても将来病気を発症する可能性があることから、放射
線被ばくはできるだけ避けるべきであることは当然のことである。とりわけ、政府
が根拠とする国際放射線防護委員会(ICRP)のPublication109(緊急時被ばく
の状況における公衆の防護のための助言)は成人から子どもまでを含んだ被ばく線
量を前提としているが、多くの研究者により成人よりも子どもの方が放射線の影響
を受けやすいとの報告がなされていることや放射線の長期的(確率的)影響をより
大きく受けるのが子どもであることにかんがみると、子どもが被ばくすることはで
きる限り避けるべきである。

第2に、文部科学省は、電離放射線障害防止規則3条1項1号において、「外部放
射線による実効線量と空気中の放射性物質による実効線量との合計が3月間につき
1.3 ミリシーベルトを超えるおそれのある区域」を管理区域とし、同条3項で必要
のある者以外の者の管理区域への立ち入りを禁じている。3月あたり1.3mSvは1
年当たり5.2mSv であり、今回の基準は、これをはるかに超える被ばくを許容す
ることを意味する。しかも、同規則が前提にしているのは事業において放射線を利
用する場合であって、ある程度の被ばく管理が可能な場面を想定しているところ、
現在のような災害時においては天候条件等によって予期しない被ばくの可能性があ
ることを十分に考慮しなければならない。

第3に、そもそも、従前の基準(公衆については年間1mSv)は、様々な社会的・経
済的要因を勘案して、まさに「安全」と「社会的便益の両立を考えて判断」されて
いたものである。他の場所で教育を受けることが可能であるのに「汚染された学校
で教育を受ける便益」と被ばくの危険を衡量することは適切ではない。この基準が、
事故時にあたって、このように緩められることは、基準の策定の趣旨に照らして国
民の安全を軽視するものであると言わざるを得ない。

第4に、この基準によれば、学校の校庭で体育など屋外活動をしたり、砂場で遊ん
だりすることも禁止されたり大きく制限されたりすることになる。しかしながら、
そのような制限を受ける学校における教育は、そもそも、子どもたちの教育環境と
して適切なものといえるか根本的な疑問がある。

以上にかんがみ、当連合会は、文部科学省に対し、以下の対策を求める。

1 かかる通知を速やかに撤回し、福島県内の教育現場において速やかに複数の専門
的機関による適切なモニタリング及び速やかな結果の開示を行うこと。

2 子どもについてはより低い基準値を定め、基準値を超える放射線量が検知された
学校について、汚染された土壌の除去、除染、客土などを早期に行うこと、あるい
は速やかに基準値以下の地域の学校における教育を受けられるようにすること。

3 基準値を超える放射線量が検知された学校の子どもたちが他地域において教育を
受けざるを得なくなった際には、可能な限り親やコミュニティと切り離されないよ
うに配慮し、近隣の学校への受け入れ、スクールバス等による通学手段の確保、仮
設校舎の建設などの対策を講じること。

4 やむを得ず親やコミュニティと離れて暮らさざるを得ない子どもについては、受
け入れ場所の確保はもちろんのこと、被災によるショックと親元を離れて暮らす不
安等を受けとめるだけの体制や人材の確保を行うこと。

5 他の地域で子どもたちがいわれなき差別を受けず、適切な教育を受けることがで
きる体制を整備すること。


2011年(平成23年)4月22日

日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児

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