[CML 009113] 小出先生の語りに学ぶ

Yasuaki Matsumoto y_matsu29 at ybb.ne.jp
2011年 4月 20日 (水) 01:09:22 JST


みなさまへ  (BCCにて)松元@パレスチナ連帯・札幌
きのう「小出先生の生の声」を送りましたら、
トランセンド研究会の藤田明史さんから励ましのことばをいただきました。この機会に私が小出先生に学んだことを書いてみました。

《小出先生の語りに学ぶ》

ひとの語り口は、その人の知の全貌を現わすものです。

おそらく多くの方と同様、私が小出先生に関心をもつのはその専門的な知識による指摘ばかりではありません。なによりもその飾りのない的確な語り口が、いつも私たち民衆の方を向いておりその視座が一向にぶれないからです。

この間の、政府、東電、保安院をはじめマスコミに登場してくる「専門家、学者」などの断片的で情報操作的な語り口に較べると、その語りの指示方向あるいは語っている主体の視座のコントラストがあまりにもきわだっているのに驚いたのは私だけではないはずです。

彼らは、政治家、企業人、官僚、あるいは放射線医学や原子力工学等々の学者ないしは東大教授などの肩書きでその「専門的・中立的立場」に徹した語り口でメディアに登場してきます。彼らは断片情報を「専門的」に提示する一方で、巧妙な(ときにあからさまな)隠蔽を同時にやってのけては、その視線と語りは「安全、安心」のようにつねに人心操作に向かっています。

加えて飾りのように、司会者、タレント、有名人等々がそれぞれの「専門的・中立的立場」を精一杯演じては、その人心操作をいっそう浸透させようとします。ちょうど「専門的」という「中立的立場」がカネと地位になびいていくように。

これに対して小出先生の語りは専門的であっても断じて中立的ではありません。終始一貫、民衆の命と生活を守ることに最大関心がはらわれています。事故状況の推移に関連して、避難を余儀なくされている人々、農業や漁業の困惑している生産者、原発現場で働く作業員、これから被曝の恐れある数百万の人々、これらの民衆を心配する上で成り立っている小出先生の反原発の知には、「専門的・中立的立場」などありえようもないのです。

歴史と人間世界の脈絡を欠いた「中立的」知などありえません。どんなに微細な研究であっても「人間にとっての意味」を欠いた知などありえないことは、アインシュタインがルーズベルトに原子爆弾製造を進言した件をはじめ20世紀の大きな知的イシューからさんざんに学ばされたことです。

しかし専門分化した今日の「仕事」の多くは、受付嬢からウェイトレス、役所の窓口から各種教員、ヒエラルヒー会社員から省庁役人まで、あらゆる職場が「専門家」にあふれています。そこではしばしば、「中立」あるいは「専門」の名のもとに人間という脈絡を欠いた仕事が繰り返されている日常を私たちもさんざん経験してきました。

そのコンテキスト(脈絡)は、旧いことばでいえばヒューマニズムであり人間の生活世界であり子どもたちの未来であるほかありません。数千人もの被曝作業員を出しておきながら社会から隠蔽したり、都会ではなく田舎につくったり、常時死の灰を撒き散らし数千年数万年もの管理が必要な核廃棄物を出すような原発は、もはや言語道断であることは明白です。

この人間という視座にしっかり根ざした小出先生の語り口は、これからの科学者のあるべき知の在り方、これからの専門家の知の在り方を私たちに示しているのではないかと私は考えます。そして同時にその姿勢は、企業人や技術者や官僚やの私たち民衆のこれからの知の在り方、生き方さえも示唆しているようでなりません。


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パレスチナ連帯・札幌 代表 松元保昭
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