[CML 008788] 「国難」ナショナリズムをつうじて正当化される朝鮮人差別・抑圧への反対を!(ヘイトスピーチに反対する会声明)

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2011年 4月 4日 (月) 18:57:45 JST


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声明)

「国難」ナショナリズムをつうじて正当化される朝鮮人差別・抑圧への反対を!

               2011.4.3  ヘイトスピーチに反対する会


 3月の震災がもたらしたものは、何であって、何ではないか。

 それはたしかに大災害ではあるが、ただの天災では決してない。進行中の福 
島原発のメルトダウン。放射能漏れと不確かな情報による農業への被害。軍事 
先導による救援活動がもたらしている、被災者への厳格な統制。これらはまご 
うことなき人災であり、その責任者は大資本と国家機関??東京電力、政府、経 
済産業省、防衛省、等々??にある。事態を「国難」として受け入れさせようと 
する論調は、この責任を覆い隠すものでしかない。この「国難」ムードに支配 
されそうな状況だからこそ、これらの責任者はなおさら厳しく糾弾されるべき 
であって、それを「非常事態」を口実に免責するなどもってのほかだ。

 だがさらにつけ加えれば、それをたんに人災と呼ぶだけでもじゅうぶんでは 
ない。被災地の統制、政府・東電の責任逃れのキャンペーンに並行して、日本 
国民でないものへの差別と抑圧が進行しているからだ。このレベルにおいて 
「国難」ムードは、この国の根深い排外性??政府や企業だけではなく民衆層に 
も共有されている??の反映であって、しかもこの排外性じたいを覆い隠してく 
れるナショナルな自己欺瞞である。このきわめて排外的なナショナリズムの蔓 
延を、わたしたちはとくに強く批判し、それへの拒否を呼びかけたい。

 *

 4月1日が訪れ、年度が改まった。これは、在日朝鮮人に対する二種類の差別 
措置が確定した日付でもある。

 第一の差別。民主党政権は、ちょうど一年前に施行された「高校無償化」法 
の適用範囲にふくまれていた専修学校(外国人学校など)から、朝鮮学校だけ 
を「一時」排除した。これに対する抗議運動(わたしたちも参加している)と 
政権内や日本社会内の排外分子との綱引きのすえ、昨年11月にようやく適用へ 
の手続きがはじまった。ところがそれもつかの間、こんどは同月末の韓国と朝 
鮮の軍事衝突を口実に、政府は適用手続きを(実質上、超法規的に)停止する 
(過去記事参照 1 2)。この停止措置は解除されていない。したがって 
4月1日への日付変更は、すくなくとも2010年度における朝鮮学校の排除が確定 
したことを意味する。

 高木文科相は3月末に、震災の影響で適用手続きは進められないなどと発言 
していた(毎日 
http://mainichi.jp/life/edu/news/20110325dde041040051000c.html)。かれ 
は同時に「年度をさかのぼっての支給」が可能かどうか検討するとも言ってい 
るが、遡及適用されようがされまいが(されるべきだが)、この公然たる差別 
措置が2010年度において確定したことは取り消し不可能だ。そのうえ卑劣きわ 
まりないことに、ここでもまた天災あるいは「国難」を口実に、政府による差 
別の作為が正当化されているのである。

 第二の差別。政府による無償化手続き停止に足並みをそろえて、都道府県で 
の朝鮮学校への(もともと他の学校とくらべてごくわずかな)補助金さえもが 
相次いで??東京都、大阪府、埼玉県、千葉県などで??支給停止されていった。 
しかもこの場合は、初中級学校までもがターゲットにされている。

 そしてこの4月1日、地震と津波の爪あと深い宮城県ですら、2011年度の朝鮮 
学校への支給を予算から排除した(産経 
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110331/edc11033115020002-n1.htm)。 
この措置自体が許しがたいうえに、どうやらここでも卑劣な論理のすりかえが 
行われている。2010年度の補助金については、震災をふまえた「人道的な見 
地」から支給したとされている(ソースは産経だが)。この場合では震災を口 
実に、2010年度の適用があたかも特別なはからいであるかのように装われる。 
だが実際に「特別」なのは、2010年11月以降に宮城や他の自治体が補助金支給 
の凍結を決定したこと、そして、もともと2011年度の県予算にも計上されてい 
た補助金を今回はずしたことだ。したがって、宮城県がとったこの措置は、 
「人道的な見地」といううわっつらな言葉とは裏腹に、朝鮮学校が排除される 
ことがさも通常、普通、当然であるかのようなメッセージを発するものであ 
る。

 ところで、朝鮮民主主義人民共和国は、今回の震災についても(中越地震や 
阪神・淡路大震災のときと同様に)赤十字社をつうじて日本に支援金を送った 
(聯合ニュース 
http://news.goo.ne.jp/topstories/world/616/5c47c3e9c1485611fe6b66f1cc90ac9e.html)。年度の変更による無償化排除や補助金停止の確定は、それへの「返礼」にもなったわけだ。しかもこのかん、いわゆる「対北朝鮮制裁措置」(4月13日で期限切れ)も、当然のことであるかのように延長が決定されている(時事http://news.goo.ne.jp/topstories/world/616/5c47c3e9c1485611fe6b66f1cc90ac9e.html)。

 そもそも、この排除や停止の口実とされた11月の延坪島衝突にかんして、日 
本は無関係の第三者ではありえない。植民地支配の責任の未清算、朝鮮戦争に 
おけるアメリカへの後方支援、昨今の国をあげた反「北」プロパガンダや米韓 
との共同軍事演習。こうしたすべてが、朝鮮半島の南北分断への加担であり、 
その助長ですらある。そしてこの南北分断への加担・助長は、上述のとおり、 
震災をめぐる諸政策においても再生産されている。

 いまあらためて確認しよう。問題は差別だけではないし、教育の政治介入だ 
けではない。教育への介入をつうじて行われ、震災を口実に正当化されている 
のは、朝鮮なるもの(共和国および在日朝鮮人)への蔑視と敵視である。近代 
日本の侵略と植民地支配をつうじて形成され、いまもなお朝鮮半島の南北分断 
に加担している、根深い抑圧者の観念/実践である。この観念/実践をこそ、 
拒否しなければならない。

 *

 約90年前の関東大震災の直後には、朝鮮人虐殺が起こった??たんなる震災後 
のパニックの帰結ではなく、公権力によっても積極的に助長・推進され、そし 
ていまだにその責任の国による調査・究明がなされていない大虐殺が。たしか 
にこの1923年の惨劇が1995年や2004年の震災時に再演されることはなかった 
し、今回についてもそう予想するのは難しいだろう。とはいえ他方では、ウェ 
ブ上では差別主義者たちが、90年前そのままの流言蜚語をたれ流しているのだ 
が(「ベリタ 」 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201103210018081 「日刊イオ」 
http://blog.goo.ne.jp/gekkan-io/e/c6b523a2966a82413562e65d0a67f6eb)。

 だが重要なのは、「できごと」それ自体が再現されているかどうかよりも、 
むしろ差別を生む「土壌」がいかに変わったのか、あるいは変わっていないの 
かという点であろう。90年前の虐殺の基盤となったのは、大日本帝国という政 
治・社会体制であった。この体制は、アジアの諸人民を天皇の臣民に変えると 
いう教義をかかげ、植民地拡張政策を進めていった。この教義と政策はやがて 
放棄せざるをえなくなったが、しかしそれはもっぱら外的要因からであって、 
内的な反省はまったくともなわなかった。天皇制も生き残った。公式上の植民 
地放棄と、植民地的な政治・社会体制の実質的な温存。

 だから、この体制の変わらぬ地金が今回の震災でむき出しになったとして 
も、不思議ではない。なぜ現政権は戒厳令を敷かないのかと叫ぶ権威主義者も 
散見されるが、そんなことをするまでもなく、戒厳状態は自主的に作り出され 
ている。「日本がんばれ」「日本は強い国」「災害時にも日本人のマナーはす 
ごい」などといったナルシシズムとともに、ここぞとばかりに「日本国民」は 
臣民性を発揮している。だがそのかたわらにあるのは、次のような状況だ。 
??冷たい「一時避難」施設に押し込められたままの、多くの避難者たち。かれ 
らに食料や物資や人的サポートを届けようとする民間支援者をシャットアウト 
する関係当局。平時ではとてもできない日米共同軍事運用を、被災地で思うぞ 
んぶん実験している日本軍・米軍。そして、震災を口実に「しかたないこと」 
と正当化された差別をあらためて押しつけられる在日朝鮮人。詳述はできない 
が、この震災でも真っ先に潜在的「暴徒」として不当に扱われる、ほかの在日 
外国人のこともつけ加えるべきだろう(「仮放免者の会」 
http://praj-praj.blogspot.com/2011/03/blog-post_1193.html 「SYI」 
http://pinkydra.exblog.jp/14456288)。こうして、いまさかんにあおり立て 
られている「国難」ムードは、この政治・社会体制の根本における植民地的な 
性格の反映であり、その増幅である。わたしたちはいまだに「大日本帝国」に 
住んでいる。

 この意味において、「国難」ナショナリズムをつうじて正当化される在日朝 
鮮人差別に反対することは、この差別と抑圧につらぬかれた実質上の戒厳令状 
態それ全体にたいする抵抗でもあるはずだ。そのことを強く確信しつつ、この 
「国難」ムードを拒否し、在日朝鮮人への差別・抑圧に反対することを、わた 
したちは呼びかける。



※ 当局への抗議は以下から。

首相官邸 意見募集フォーム http://www.kantei.go.jp/jp/iken.html

文科省 高校無償化にかんする問い合わせフォーム  
https://www.inquiry.mext.go.jp/inquiry38/

「宮城県は朝鮮学校への補助金を止める--震災に乗じた在日朝鮮人敵視・差別 
の扇動 人としての感性を疑われる」片山貴夫のブログ(抗議先あり)  
http://katayamatakao.blog100.fc2.com/blog-entry-101.html






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