[CML 005758] Re: 尖閣沖漁船衝突事件について
higashimoto takashi
taka.h77 at basil.ocn.ne.jp
2010年 9月 28日 (火) 20:43:51 JST
河内謙策さんの標題メールにいくつかコメントしてみます。
第1に尖閣諸島は日本の領土か、という問題についてですが、この問題について河内さんが紹介されて
おられる「尖閣諸島問題」のホームページ(注1)はたいへん参考になります。同ホームページの「中国の
文献」(注2)の項と中国サイト(注3)の主張とを比較考証してみるとその実証の正しさはより明瞭になる
ように思います。ただ、左記の「尖閣諸島問題」のホームページは事実関係を摘示しているにとどまって
いますので、その事実関係を論として展開している「日本の領有は正当 尖閣諸島問題解決の方向を考
える」(注4)という赤旗の論評をあわせて参考にされるとさらにことの本質が明瞭になるように思います。
これは赤旗が好きだとか嫌いだとかという問題ではなく、論の正当性の評価の問題だと思います。
注1:http://www.geocities.jp/tanaka_kunitaka/senkaku/1home.html
注2:http://www.geocities.jp/tanaka_kunitaka/senkaku/
注3:http://j.people.com.cn/94689/94696/7142418.html
注4:http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2010-09-20/2010092001_03_1.html
第2になぜ中国が大騒ぎをしたのか、という問題についてですが(そしてこれが解明すべき一番大きな問
題であろう、と私は考えるのですが)、河内さんはこの問題を(1)中国の帝国主義外交の問題、または中
国の北東アジアへの覇権確立の問題、(2)米中の経済面・軍事面での対立の激化の問題、(3)中国共
産党内の指導権争いの問題にその原因を求め、わが国の平和勢力の課題として「中国の横暴を抑える
国際的な連携・包囲網の形成、中国の自由と民主主義を求める勢力に対する支援こそが究極の中国問
題の解決である」と訴えられるわけですが、私は河内さんのこの原因の求め方にもわが国の平和勢力へ
の課題提起のどちらの認識にも賛成できません。
今回、中国がなぜ大騒ぎをしたのか、という問題については、私は浅井基文さんの下記の考究に大きな
説得力を感じます。
■日中関係への視点−中国漁船船長の釈放−(浅井基文 2010年9月25日付)
http://www.ne.jp/asahi/nd4m-asi/jiwen/thoughts/2010/index.html
浅井さんは「21世紀に入ってからの日中関係は、小泉首相(当時)の歴史認識も対アジア観もまったく欠
落した傍若無人な振る舞いによって大きく損なわれた状況から立ち直るきっかけがつかめないまま今日
に至っている」という基本認識に立って、現在の民主党政権の対中国外交についての中国側の懸念と
対応を次のように分析します。
民主党政権になってからこの1年間の「中国にとってもっとも大きな関心事は、自民党政権下において台
湾有事を明確に視野に入れることを公言するに至った日米軍事同盟の再編強化に対して民主党政権が
どういう対応を行うか、という点にあった。中国の目は2005年から6年にかけての日米安全保障協議委
員会(「2+2」)の三つの合意全体に注がれてきたことに違いない。そして、鳩山政権がこの日米合意遵守
を決定し、菅政権がこの決定をそのまま引き継ぐことを決定したとき、中国側は、民主党政権が自民党
政権と本質的に変わらない体質であると判断したのだと思う。つまり中国からすれば、『日米を基軸にす
る大前提のもとで対中関係のあり方を考える』という旧態依然とした場当たり的、その場しのぎ的な外交
しか日本には期待できないという判断があった」(要約)。
「今回の事件は、場当たり的、その場しのぎ的な対応しかできない民主党政権が、中国をどう位置づける
のかを判断する上での重要な材料と見なした可能性は十分ある。民主党政権が曖昧な対応で糊塗する
ことができないようにするため、中国政府はありとあらゆる外交手段を駆使して圧力をかけ、民主党政権
に『日中関係の重要性』『日本にとっての中国というファクターの死活的重要性』について本気で考えるし
かない状況に追い込む(退路をふさぐ)というアプローチを採用したのだと思う」(同上)。
そして浅井さんは今回の「大騒ぎ」で中国が日本に求めている真のねらいを次のように分析します。
「私は、中国が日本に求めている最大のものは、改革開放政策30年の成果を踏まえて急台頭する、い
まや国際関係にとって欠くべからざる存在となった、そして21世紀の国際関係においてますます重要性
を増すことが衆目の一致するところである中国を正確に認識し、日本が『日米を基軸にする大前提のも
とで対中関係のあり方を考える』という20世紀の遺物そのものである発想を根本的に改めることにある
と思う。21世紀国際関係における中国の位置を正当に認識する場合、『日米を基軸にする』という20
世紀的日本外交の大前提そのものを見直さなければならないはず。今回の中国の『強硬姿勢』は、正
に日本外交に対する根本的見直しを迫るものであった」(同上)。
こうした浅井さんの分析から導き出されるわが国の平和勢力の課題は、河内さんの提起される平和勢
力の課題とは異なり、「日本外交において、中国を独立した要素として(つまり『日米基軸』の枠組みの
中におくのではなく)位置づけること」、すなわち「日米基軸」の最たるものである日米安保条約体制を
打破しようとする世論を高めること。また、「私たちが『偏狭なナショナリズム』に身を委ねて、中国の『強
硬姿勢』に感情的に過剰反応」しない世論を高めること。さらに「今回の事件を招くべくして招いてしまっ
た民主党政権の無定見な外交政策のお粗末さにこそ、主権者としての批判の眼を向け」る世論を高め
ること。さらに「自民党はダメだから民主党」と安易な選択しかできない主権者である私たちの政治的未
熟性が(今回の「大騒ぎ」の)問題の根本にあることを学び取ること」などになるのだと思います。
私は浅井さんの提起される課題こそがわが国の平和勢力の課題というべきではないか。わが国の平和
勢力の課題とするべきことではないか。そう思うものです。
東本高志@大分
taka.h77 at basil.ocn.ne.jp
http://blogs.yahoo.co.jp/higashimototakashi
----- Original Message -----
From: "Ken Kawauchi" <kenkawauchi at nifty.com>
To: "Takuya Kawauchi" <tacotaco10 at hotmail.com>
Sent: Monday, September 27, 2010 11:49 PM
Subject: [CML 005756] 尖閣沖漁船衝突事件について
> 河内謙策と申します。私は、現在大きな問題になっている、尖閣沖漁船衝突事件に
> ついての私見を述べ、平和を愛する人々に問題を提起させていただきたいと思いま
> す。(この情報を重複して受け取られた方は失礼をお許し下さい。転送・転載は自由
> です。)
>
> 尖閣沖漁船衝突事件については、論じなければならない論点は多数ありますが、真
> 相はなにか、中国の意図は何か、菅内閣の態度をどうみるか、日本の平和活動家のと
> るべき態度はなにか、の4点にしぼって論じることにしたいと思います。
>
> 今回の事件の真相については、不明の点も多数ありますが、現在判明している点を
> 基礎に推論することが大事と思います。推論に推論を積み重ねることは面白いけれど
> 危険です。
> この見地からみると、尖閣諸島は日本の領土か、ということがまず問題になりま
> す。私は、日本の領土と思います。その根拠は、以下のサイトに掲載されている内容
> が基本的に正しいと私は信じるからです。
> http://www.geocities.jp/tanaka_kunitaka/senkaku/1home.html
> 最近の以下の論文も分かりやすいです。
> 高花豊「中・台の資料が示す「尖閣日本領」の証拠」『WiLL』2010年11月号
> 中国の主張は以下のサイトで分かりますが、極めて貧弱です。
> http://j.people.com.cn/94689/94696/7142418.html
> なお、日本の政府も、中国政府も、その声明において、領土・領海を問題にしていま
> す。一部の論者のいう「トウ小平以来の日中の了解」は問題になっていません。
> 次に、不法操業していた中国の漁船が日本の巡視船に衝突したのかどうかが
> 問題になります。これは、衝突時のビデオが公開されないとはっきりしない点があり
> ますが、現在公開されている写真をみるかぎり、中国の漁船が故意に日本の巡視船に
> 衝突した、というのが正しいと思います。以下のサイトに掲載されている写真を見て
> 下さい。
> http://dogma.at.webry.info/201009/article_7.html
> 以上より、日本の領海で不法操業した中国の漁船船長の公務執行妨害罪の成立は間違
> いないと思います。
>
> 次に、では、なぜ中国が大騒ぎをし、この事件を拡大し、日本に対し「力の外交」を
> 展開しているのかが問題になります。
> 中国が、はじめからこのような事件が発生することを予期して漁船を送り込んだのか
> どうかは分かりません。しかし、中国のやりかた・言動を見ていると、
> 明らかに中国はこの事件を利用して、アジアで一番偉いのは俺だ、という帝国
> 主義外交を展開し、一挙に北東アジアの覇権確立を意図しているとしか言いようがあ
> りません。
> 2010年9月28日付『夕刊フジ』は、9月8日に北京で「対日工作会議」が開催され、
> この中では軍事衝突は避けられないという発言も出た、とスクープしています。これ
> は十分に有りうる話だと思います。
> 中国がこのように強硬な態度にでる背景には、米中の経済面・軍事面での対立の激
> 化があります。私は、中国問題は日本と中国だけを見ていたのでは分からない、と言
> いたいのです。とくに上海バブルの崩壊が真近で、人民元の大幅切り上げ問題により
> 発生する中国民衆の不満を日本にぶつけるという狙いを、私は重視すべきと思いま
> す。
> http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/220918.htm
> もう1点は、中国共産党内の指導権争いが、背景にあるということです。
> これは、予想以上に深刻で、私たち日本人の想像を超えます。政権の中で、「比較
> 的」穏健な温家宝が嘆いているという以下の記事はその一端を示していると思いま
> す。日本に対し弱腰の態度をとれば、指導権争いから脱落することになるのです。
> http://www.epochtimes.jp/jp/2010/09/html/d90519.html
>
> このような中国の日本攻撃に対し、菅内閣の態度はまことに方向が定まらない情け
> ない態度であることは言うまでもありません。国技館では「売国奴」という野次が出
> たと報道されています。
> 私は、菅内閣の「弱腰」の原因には、中国という国が如何に力の外交を展開する国
> になったかということについての認識の不足と国際政治の論理に対する無理解がある
> と思います。中国は1990年代までの中国とは異なっているのです。特に今は、日本を
> GNPで追い越し、おごりたがぶっているのです。また、菅首相は「中国の謝罪と賠償
> の要求には応じられない」とは言いましたが、「中国の謝罪と賠償の要求は誠に不当
> な国際法にも違反したものであり抗議する」とは言いませんでした。今日も仙石官房
> 長官は「中国との戦略的互恵関係を、あらためて充実させ豊かにする作業に入る段階
> だ」と述べました。けんかの途中でけんかが終わった後の夢を語ると、外国では馬鹿
> にされるということが何故分からないのでしょうか。日本の物事をあいまいにし、対
> 立を避ける「政治文化」は国際政治では通用しないのです。
> もっとも、菅内閣を弱腰だと批判するだけでは不十分と思います。日本の支配勢力
> も馬鹿ではありませんから、今回の事態を利用して「だから中国に対する防衛力を強
> 化しなければ」とか「だから、日米同盟でアメリカの力を借りなければ」というキャ
> ンペーンが今後強まるでしょう。したがって平和勢力は、政府の弱腰を批判するだけ
> でなしに、どのような方向で事態を打開すべきか、積極策の提示が求められると思い
> ます。積極策の内容としては、中国の横暴を抑える国際的な連携・包囲網の形成、中
> 国の自由と民主主義を求める勢力に対する支援こそが究極の中国問題の解決であるこ
> とを訴えるべきだと私は考えています。
>
> 日本の平和活動家のとるべき態度について私の言いたいことは、今こそ過去の誤り
> を反省し、中国に対する幻想を捨て、アメリカにも中国にも毅然とした平和国家の創
> 造をめざすことを明確にすべきではないか、ということです。
> 日本の平和運動は中国にたいする軽視や甘い態度に基づき、中国の横暴や人権侵害
> に抗議の声を挙げてきませんでした。たとえば、最近では2008年のチベット問題に沈
> 黙を決め込み、心ある人の顰蹙を買いました。今回の事件は、このような日本の平和
> 運動のあり方は過去のものにしなければならないし、そうしなければ日本の平和運動
> は日本の国民に完全に見放されることになることを警告していると思います。
> 最近、酒井亨『「親日」台湾の幻想―現地で見聞きした真の日本観』(扶桑社新
> 書)が出版されました。酒井氏議論には賛成できない点もありますが、日本の平和が
> 世界でいかに評価されているか、世界の人が中国をどう見てみているか、という点に
> つき、極めて教えられる内容が豊富に書かれています。日本の平和活動家に一読をお
> 勧めします。そして、ぜひ皆で議論し、知恵をだしあい、日本の平和運動を新しい方
> 向に向けて前進させていきましょう。
> (2010/09/27 記)
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