[CML 005640] 沖縄の米軍基地問題は歴史が重要

Hayariki hedomura2 at hotmail.co.jp
2010年 9月 15日 (水) 08:25:52 JST


【PJニュース 2010年9月15日】沖縄県名護市議会議員選挙は9月12日に投開票され、定数27議席のうち、稲嶺進市長を支持する与党勢力が16議席を占めて圧勝した。米軍普天間飛行場の辺野古移設が争点であり、移設反対が地元住民の民意であることが改めて示された。

沖縄の米軍基地問題を語る上で、在日米軍基地の75%が沖縄県に集中しているという事実を忘れてはならない。そして、この事実が沖縄の不幸な歴史を背景としていることも見落としてはならない。沖縄は太平洋戦争において大日本帝国の捨て石とされ、米軍に占領された。
米軍が血を流し、自らの力で占領した沖縄と、日本の無条件降伏後に連合国軍として占領した日本本土では米国にとって重みが異なる。その結果が沖縄の米軍基地集中である。無謀な戦争を続けた当時の日本政府の判断誤りが沖縄の苦しみをもたらした。
http://news.livedoor.com/article/detail/5010489/
http://www.pjnews.net/news/794/20100914_7
これに対し、沖縄の地政学的重要性から米軍基地集中を説明する議論がある。これは欺瞞的な説明である。この主張を本記事では地政学論と名付ける。地政学論は沖縄の立地上の特性から米軍基地集中の正当化を試みる。強大化する中国との関係、北朝鮮や台湾海峡という東アジアの緊張地帯への近接性、イラクやアフガニスタンなどテロ戦争の出撃拠点などである。

地政学論の欠陥は戦後一貫して沖縄に米軍基地が存在していた歴史的事実を無視する点にある。百歩譲って、沖縄の地政学的な位置付けから米軍基地を集中させることに軍事的合理性が存在すると仮定しても、沖縄に米軍基地が集中する現状の説明にはならない。

戦後の米国にとって第一の仮想敵はソ連であった。地政学的な重要性で米軍基地を配置するならば、沖縄ではなく北海道が重要になる。中国を仮想敵として沖縄の地政学重要性を持ち出すことは欺瞞的な後付け説明に過ぎない。日本に捨て石にされ、米軍に占領された沖縄の不幸な歴史を認識している沖縄県民に地政学論が響かないことは当然である。

普天間基地の代替施設を沖縄県内に移設する必要性がないことについては既に十分な指摘がある。中国は日本にとっても世界にとっても重要な国である。人口は世界最大であり、経済力でも日本を追い抜き、日本にとって重要な貿易相手国である。その中国を仮想敵とすることは危険かつ愚かで自滅的な行為である。また、沖縄の米軍基地はテロ戦争への派兵拠点として利用され、日本の防衛には直接関係しない(林田力「鳩山首相の米海兵隊抑止力論の意味」PJニュース2010年5月13日)。

これらの指摘は重要であるが、地政学論と米軍の要不要という点で同じ土俵に乗っかってしまう危険がある。

その意味で沖縄の不幸な歴史から米軍基地集中の現実を理解することは重要である。日本社会には過去を水に流してしまう非歴史性という悪癖がある。現在の情勢から米軍駐留の必要性を導き出そうとする地政学論は、目の前の火を消すことばかりを考える愚かな日本人が欺かれがちな議論である。

沖縄県民にとって不幸な過去を直視し、尊厳を取り戻す闘いである。沖縄県民にとって米軍占領前の状態(米軍基地撤去)に戻すことがゴールである。現状から都合の良い結果を合理化する御都合主義の入る余地はない。地政学論の欺瞞に惑わされずに県内移設反対を貫く沖縄県民の意思表示は誇りである。【了】
(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』著者)



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