[CML 005478] 区画整理・再開発反対運動の脆さと方向性(下)林田力

Hayariki hedomura2 at hotmail.co.jp
2010年 9月 2日 (木) 20:15:16 JST


【PJニュース 2010年9月1日】この傾向は耐震強度偽装事件でも見られた。耐震強度偽装事件は大きな反響をもたらした事件である。インターネットなどでは耐震偽装マンションには関係した一級建築士らはスケープゴートであり、もっと大きな問題が隠されているのではないかと指摘された。例えばヒューザーの小嶋進社長(当時)が安倍晋三首相(当時)の後援会・安晋会のメンバーであったとして、両者の関係が大きく取り上げられた。

興味深いことに耐震偽装事件にまつわる疑惑を熱心に追及した人々は必ずしも分譲マンションを購入する層ではなかった。たとえば耐震強度偽装事件を追及したブログ「きっこの日記」で垣間見ることができる。作者きっこ氏の生活は、住宅ローンで分譲マンションを購入するような小市民とは対極的である。きっこ氏が実際にブログに書かれた通りの人物か否かは議論があるが、ここでは分譲マンション購入者層とは乖離した存在として自己を描いていることが重要である。
http://news.livedoor.com/article/detail/4980588/
http://www.pjnews.net/news/794/20100827_3
そして「きっこの日記」などでの事件追及の盛り上がりとは対照的に、耐震偽装マンションの購入被害者の声は目立たなかった。その後、姉歯物件以外にも耐震強度不足のマンションが次々と発覚していったが、耐震強度偽装事件はマスメディアの扱いが小さくなり、急速に風化していった。ここから権力者による隠蔽という陰謀論的な説明をしたくなるが、マンション購入被害者の怒りが見えにくかったことも一因であった。

私自身の経験でも思い当たる点がある。私は東急不動産(販売代理:東急リバブル)から新築マンションをだまし売りされ、裁判で売買代金を取り戻した(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社、2009年)。この私の行動が勇敢と評されることがある。もし私にマンション購入被害者とは異なる強さがあるとすれば、東急不動産のマンションには住んでいられないと考え、契約取消しを貫いたことである。問題だらけの東急不動産物件を資産とは考えなかった。財産を持つことよりも否定することが強さを発揮した一例である。

話を区画整理・再開発に戻す。結局のところ、区画整理・再開発が合法的な市民の財産収奪となる以上、区画整理・再開発に乗っかること自体が損であることをアピールすることは重要である。その意味でシンポジウムにおいて遠藤哲人氏が再開発を地上げと形容したことは明快である。また、土井武志氏が再開発ビル入居と転出の何れを選択しても、地権者の財産が目減りすることを明らかにしたことは意味がある。

一方で日本のプチ・ブルの脆さを踏まえるならば地権者の損得論だけに頼ることは危険である。現実問題として二子玉川ライズに対する強固な反対運動の担い手達は地権者よりも周辺住民である。ここに区画整理・再開発反対の住民運動の活路がある。

残念ながら区画整理・再開発に対する関心は低い。町が綺麗になる程度の印象しか抱かない人も多い。現に対象区域で生活している人々がどうなるのかという点への想像力は欠けている。一方でネガティブなイメージとして、バブル経済の遺物、環境破壊、税金の無駄遣いなどは比較的共感を得られる。これは歴史的な政権交代を果たした鳩山由紀夫政権の「コンクリートから人へ」のキャッチフレーズへの熱烈な支持が示している。

対象地域の内外を問わず、住民や生活者としてコンクリートではなく人が住み良い街づくりを追求する。これが住民運動の活路となる。【了】



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