[CML 005464] 区画整理・再開発反対運動の脆さと方向性(上)林田力
Hayariki
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2010年 9月 1日 (水) 08:12:57 JST
【PJニュース 2010年8月31日】シンポジウム「ここが変だ! 区画整理、再開発 ―住民発意で「法改正」を考える―」第1弾(2010年8月22日)は土地区画整理・再開発の問題の深刻さを改めて印象付けた(林田力「住民発意で区画整理・再開発の法改正を考えるシンポ(上)」PJニュース2010年8月25日)。
区画整理では所有地が減歩される。減歩率25%ならば自分の土地が区画整理の対象地にあるということだけで、4分の1も減少させられてしまう。また、再開発では土地がビル床に変換されてしまう。土地は時間が経過しても変わらないが、建物は老朽化し、維持管理に負担がかかる。しかも区画整理や再開発に苦しむ人々は自発的に参加したわけではない。ある日突然、居住している地域が区画整理や再開発の対象地域に指定され、巻き込まれてしまった。
http://news.livedoor.com/article/detail/4978047/
http://www.pjnews.net/news/794/20100827_2
住民には区画整理や再開発を進めるメリットもない。東京都羽村市の羽村駅西口区画整理では住民が慣れ親しんだ路地や町並みを壊し、ありふれた碁盤の目の道路にしてしまう。広い道路で喜ぶのは住民ではない。他所から来て通り抜けするドライバーと固定資産税を値上げできる自治体、マンションが建設しやすくなる不動産業者などである。
東京都世田谷区の二子玉川東地区再開発(二子玉川ライズ)では都市計画公園予定地であった場所を含む風致地区に東急電鉄・東急不動産が営利目的で高層マンションやオフィスビルを建設する。風致地区の住環境は破壊され、儲かるのは大企業という構図である。
多くの地権者が区画整理・再開発に巻き込まれた結果、生活再建・営業再建できずに苦しんでいる。このような不合理な悲劇が全国各地で繰り広げられている。それにもかかわらず、大問題として社会に広く認知されていないことは驚きである。
狭い島国で農耕民族として暮らしてきた日本人は土地へのコダワリが強いと一般に考えられている。一生懸命という言葉も一所懸命が由来で、武士が先祖伝来の所領を命懸けで守ったことを表していた。このような点を踏まえると、自分の土地が収奪される区画整理や再開発に大きな反発が起きても不思議ではない。しかし、区画整理も再開発も相変わらず全国各地で繰り返されている。
そこには区画整理や再開発を進める側(行政や不動産業者)の巧妙な分断工作がある。地権者は区画整理や再開発自体には異を唱えず、他の地権者よりも少しでも美味しい思いをしようと個別取引に乗っかってしまう。そして自分よりも悲惨な境遇の人を下方比較することで満足する。この種のメンタリティが日本のプチ・ブルには少なくない。そこに行政や企業が付け入る隙が生まれる。
直感的には財産を持つ人が財産を奪われる場合の反発力は強大なる筈である。フランス大革命も発端は特権身分への課税への反発であった。しかし、日本のプチ・ブルには不正に直面した場合に不正そのものと戦うことよりも、不正を前提として、その中で上手く泳ごうとするメンタリティが強い。これが日本ではブルジョア革命が起こらず、焼け野原から経済大国にするような前に進むことしかできない社会となる要因である。【つづく】
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