[CML 005955] Re: 井上清の政治的立場

吉川ひろし h-yosikawa at jcom.home.ne.jp
2010年 10月 14日 (木) 04:51:45 JST


皆様へ

私も、坂井貴司さんや河内謙作さんの意見に近いです。
そのポイントは、本MLで読んだ井上清氏の
「尖閣」列島 ――釣魚諸島の史的解明(井上清 初版1972/再刊1996)
においては、文中の 銑┐里いつかの疑問を感じた点です。
     2010年10月14日 吉川ひろし(千葉県議)
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《井上氏の論文中の記載 
○私は、いわゆる「尖閣列島」のどの一つの島も、一度も琉球領であったことはないことを確認できた。のみならず、それらの島は、元来は中国領であったらしいこともわかった。ここを日本が領有したのは、1895年、日清戦争で日本が勝利したさいのことであり、ここが日本で「尖閣列島」とよばれるようになったのは、なんと、1900年(明治三十三年)、沖縄県師範学校教諭黒岩恒の命名によるものであることを知った。

中国側は、日清講和会議のさいは、日本が釣魚諸島を領有するとの閣議決定をしていることは、日本側はおくびにも出していないし、日本側が言い出さないかぎり、清国側はそのことを知るよしもなかった。なぜなら例の「閣議決定」は公表されていないし、このときまでは釣魚島などに日本の標杭がたてられていたわけでもないし、またその他の何らかの方法で、この地を日本領に編入することが公示されてもいなかったから。したがって、清国側が講和会議で釣魚諸島のことを問題にすることは不可能であった。

《吉川の論点 

井上氏は、1895年に日本が領有したものであるということを認めている。しかし、中国側はそのことを本当に知らなかったのか?ということも調査・確認しなくてはいけない。同様に、古賀辰四郎氏が釣魚島で1885年に事業をおこなっていたことも中国側は知らなかったのであろうか?

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《井上氏の論文の記載◆
1968年以来、釣魚諸島の海底には広大な油田があると見られている。またこの近海は、カツオ・トビウオなどの豊富な漁場である。経済的にこれほど重要であるだけでない。この列島はまた、軍事的にもきわめて重要である。

そして日本政府は本年(1972年)5月15日ここがアメリカ帝国主義から日本に「返還」されるとともに、ここを防空識別圏に入れることを、すでに決定している。またこの列島の中で最大の釣魚島(日本で魚釣島)には、電波基地をつくるという。周囲やく12キロ、面積やく367へクタールで、飲料水も豊富なこの島には、ミサイル基地をつくることもできる。潜水艦基地もつくれる。

《吉川の論点◆

これは、日本だけでなく中国側にも言えること。

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 《井上氏の論文の記載》

1970年8月31日、アメリカの琉球民政府の監督下にある琉球政府立法院が行なった、「尖閣列島の領土防衛に関する要請決議」であった。それは日本領であるという根拠については「元来、尖閣列島は、八重山石垣市宇登野城の行政区域に属しており、戦前、同市在住の古賀商店が、伐木事業及び漁業を経営していた島であって、同島の領土権について疑問の余地はない」といい、これ以上に日本領有の根拠を示したものではなかった。

 《吉川の論点》

公的にその領有を主張したのは1970年に琉球政府立法院が行なった。」と述べているが、 


古賀商店は1885年に釣魚島で事業をおこなっていたので、日本政府の実効支配は、

1885年にあったということが言えるのではないか?

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《井上氏の論文の記載ぁ
これまで私は、もっぱら明朝の陳侃、郭汝霖、胡宗憲および清朝の汪楫、徐葆光、周煌、斉鯤の著書という、中国側の文献により、中国と琉球の国境が、赤尾嶼と久米島の間にあり、釣魚諸島は琉球領でないのはもとより、無主地でもなく、中国領であるということが、おそくとも十六世紀以来、中国側にははっきりしていたことを考証してきた。この結論の正しいことは、日本側の文献によって、いっそう明白になる。その文献とは、先に一言した林子平の『三国通覧図説』の「付図」である。

《吉川の論点ぁ

林子平氏の三国通覧図説の付図 ↓ ↓

http://www.library.tohoku.ac.jp/kikaku/spec1/doc/ki4-5-2.html

この付図だけを見れば、井上氏の述べていることは、地図上の色分けで

釣魚島は中国になっているという主張は理解できるが、そもそも「三国通覧図説」は

当時の蝦夷地を中心にしているものであり南の琉球諸島については正確性に欠けている。 


但し、ペリー提督との小笠原諸島領有に関するに日米交渉の際には、この林氏の地図は 


日本の領有権を示す証拠となった。・・・ということで軽視はできない地図である。

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《井上氏の論文の記載ァ
「国際法」とはどんなものか。京都大学教授田畑茂二郎の書いた、現代日本の標準的な国際法解説書である『国際法機戞瞥斐閣『法律学全集』)には、国際法の成立について、次のようにのべている。すなわち、ヨーロッパ近世の主権国家の相互の間で、「自己の勢力を維持拡大するため、激しく展開された権力闘争」において、それが余りにも無制限に激化するのを「合理的なルールに乗せ限界づけるために、国際法が問題とされるようになった」。この「合理的なルール」とは、「無主地の先占の法理」において顕著である。・・・(途中略)・・・先占(occupatio)の法理がもち出され、承認されていったのも、こうした事情であった。
「先占が実効的であるというのは、土地を現実に占有し、これを有効に支配する権力をもうけることである。明・清の中国人が、後世に残すことのできた唯一のことは、この島の位置を確認し、それに名をつけ、そこに至る航路を示し、それらのことすべてを記録しておくことだけであった。そして、「それで十分である!」しかも明朝の政府は、それ以上のこともしている。明の政府は、釣魚諸島をも海上防衛の区域に加え、倭寇防禦策を系統的にのべた書物、『籌海図編』に、その位置とその所管区を示していたのである。
                    ↓ ↓
http://record.museum.kyushu-u.ac.jp/eastasia/chukai.htm
《吉川の論点ァ

現在の国際法に照らしてみれば、この『籌海図編』は井上氏の主張に有利な材料といえるが、

それでは歴史上、大帝国を作った国々が、その当時の地図に記載した領土を以って、

自国の領有権を現在も国際法上主張できるのだろうか?

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《井上氏の論文の記載Α
朝日新聞の社説「尖閣列島と我が国の領有権」(1972年3月20日)は、もし釣魚諸島が清国領であったならば、清国はこの地の日本領有に異議を申し立てるべきであった、しかるに「当時、清国が異議を申立てなかったことも、このさい指摘しておかねばならない。中国側にその意思があったなら、日清講和交渉の場はもちろん、前大戦終了後の領土処理の段階でも、意思表示できたのではなかろうか」という。しかし、日清講和会議のさいは、日本が釣魚諸島を領有するとの閣議決定をしていることは、日本側はおくびにも出していないし、日本側が言い出さないかぎり、清国側はそのことを知るよしもなかった。なぜなら例の「閣議決定」は公表されていないし、このときまでは釣魚島などに日本の標杭がたてられていたわけでもないし、またその他の何らかの方法で、この地を日本領に編入することが公示されてもいなかったから。したがって、清国側が講和会議で釣魚諸島のことを問題にすることは不可能であった。
《吉川の論点Α

古賀辰四郎(1856〜1918)は主に魚釣島の2箇所の地点を開発しました。島の北西部と島中央南部の岬です。前者では堀割を開き、石垣塀を積上げ、塀の中には鰹節の加工場や労働者の住居等を建設、尖閣諸島開発の拠点としました。日本側からみればこのような実効支配あるいは中国側からみれば外国人の不法占拠について中国は何故、当時、異議を申立なかったのか?

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《井上氏の論文の記載А
釣魚諸島は、事実上は何年何月何日かに沖縄県管轄とせられたのであろう。あるいはそれは明治二十九年四月一日であったかもしれない。しかし、そのことが公示されたことがないかぎり、いま政府などがさかんにふりまわす帝国主義の「国際法」上の「無主地先占の法理」なるものからいっても、その領有は有効に成立していない。

《吉川の論点А

領土の「先占」とは、「誰もいない土地を発見し、領有の宣言をして占有する事をいいます。」という

ことからすれば国際法上は「公示」をしないことには、「先占」にならないのでしょうか?

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《井上氏の論文の記載─
釣魚諸島は、明・清の時代には無人島ではあったが、決して無名の島ではなかった。りっぱな中国名をもっていた。ふつう国際法上の「無主地」として「先占」の対象になる島は、無人島であるばかりでなく、無名の島である。大洋中に孤立した無人島で、かつ、それに何国語の名もついていないならば、それは無主地であるとみなすことができようが、それに、れっきとした名称がついているばあいには、その名称をつけた者の属している国の領土である可能性が多い。

《吉川の論点─

井上氏が引用している「国際法学者、東京大学名誉教授横田喜三郎の『国際法供戞瞥斐閣『法律学全集』)によれば、無主地の「最も明白なものは無人の土地である」が、「国際法の無主地は無人の土地だけにかぎるのではない。すでに人が住んでいても、その土地がどの国にも属していなければ無主の土地である。ヨーロッパ諸国によって先占される前のアフリカはそのよい例である。そこには未開の土人が住んでいたが、これらの土人は国際法上の国家を構成していなかった。その土地は無主の土地にほかならなかった」ということを了した場合、名前をつけたのが

中国であるという程度では、国際法では通じなのでは?

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吉川ひろし(千葉県議・無所属市民の会)
千葉県柏市高田754−24
電話・FAX 04−7144−0073
メール h-yosikawa at jcom.home.ne.jp
ブログ http://yoshikawahiroshi.blog61.fc2.com/

----- Original Message ----- 
From: <donko at ac.csf.ne.jp>
To: <cml at list.jca.apc.org>
Sent: Wednesday, October 13, 2010 11:38 PM
Subject: [CML 005953] 井上清の政治的立場
> 坂井貴司です。

> 転送・転載歓迎。
>
> 尖閣諸島こと釣魚諸島は中国固有の領土であったのを、明治期の日本が軍事力を
> 背景に強奪した、だから中国に返還すべきである、と主張した歴史学者井上清の
>
> 「尖閣」列島 ――釣魚諸島の史的解明(井上清 初版1972/再刊1996)
> http://www.mahoroba.ne.jp/~tatsumi/dinoue0.html
>
> があります。
>
>  この尖閣諸島領有問題では、このMLの参加者の多くは井上論文を支持してい
> るようです。特に占有論を否定しているところが評価されているようです。
>  
>
>  私は井上論文読んで括弧付きで、「説得力があります」と表しました。[CML:
> 005876]
>  
>  帝国主義批判の一つとしての占有論否定は、ある程度共感できます。
>  
>  しかし、私は井上清の政治的立場を考えると、この論文には全面的に賛成しか
> ねるのです。
>  
>  井上清(1913年〜2001年)はご存じの通り、マルクス主義の歴史学者
> でした。昭和天皇戦争責任を追求した『天皇の戦争責任』(現代評論社、岩波書
> 店)などの著作を多く残しました。そして日本共産党と対立しました。だから、
> この論文には日本共産党を激しく攻撃している箇所があります。
>  
>  さて、この井上論文の日付に注目してください。1972年です。ベトナム戦
> 争の最中でした。沖縄はアメリカの占領下にありました。尖閣諸島もアメリカの
> 支配下にありました。そして、中国は文化大革命の嵐が吹き荒れていました。
>  今でこそ、文革は毛沢東が若者を扇動して権力奪取を謀ったことから引き起こ
> された惨事と位置づけられていますけれど、1972年当時は、文革は新しい潮
> 流としてもてはやされ、支持されていました。当時の日本の左翼知識人の多くは
> 文革を熱烈に支持しました。井上もその一人でした。
>  井上は、文革を支持していました。毛沢東思想学院の講師としても活動してい
> ました。と、なれば彼が尖閣諸島は中国すなわち、中華人民共和国の領土である
> と主張するのは当然のことです。
>
>  しかし、現在の中国は1972年当時とは全く違う国家です。建前は社会主義
> 国家でも、実態は金儲けこそすべての新自由主義国家です。井上が蛇蝎のごとく
> 嫌った資本主義国家に向かって突進しています。
>  
>  中国が尖閣諸島こと釣魚諸島を返せと言うのは、この近海に埋蔵されていると
> いう天然ガス田を開発するためです。エネルギー不足に悩まされている中国のと
> って、尖閣諸島近辺にあるとされている天然ガス田はなんとしても確保したいの
> です。(それは日本も同じです)。
>  
>  この尖閣諸島問題は結局、天然ガス田の利権を巡る争いなのです。それは押さ
> えておかなければなりません。
>  
>  私は、尖閣諸島は中国に返還すべきという論には強い抵抗感を感じます。チベ
> ットやウィグル人などの少数民族に対する対するひどい抑圧が行われ、拝金主義
> が蔓延し、政治的弾圧が行われている今の中国に、私は強い不信感と警戒感を持
> っています。
>  
>  そういった点で私の考えは河内謙作さん[CML:005945]に近いものがあります。
>  
>  もう一つ、私が井上論文に違和感を感じるのは「七 琉球人と釣魚諸島との関
> 係は浅かった」と、断言しているところです。その箇所を何回読み返しても、そ
> れは本当なのかという疑問はわいてきます。
>  
>  以上のことから、私は井上論文は全面的に支持できないことを述べます。
>  
> 坂井貴司
> 福岡県
> E-Mail:donko at ac.csf.ne.jp
> ======================================
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