[CML 005953] 井上清の政治的立場

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2010年 10月 13日 (水) 23:38:24 JST


坂井貴司です。
転送・転載歓迎。

尖閣諸島こと釣魚諸島は中国固有の領土であったのを、明治期の日本が軍事力を
背景に強奪した、だから中国に返還すべきである、と主張した歴史学者井上清の

「尖閣」列島 ――釣魚諸島の史的解明(井上清 初版1972/再刊1996)
http://www.mahoroba.ne.jp/~tatsumi/dinoue0.html

があります。

 この尖閣諸島領有問題では、このMLの参加者の多くは井上論文を支持してい
るようです。特に占有論を否定しているところが評価されているようです。
 

 私は井上論文読んで括弧付きで、「説得力があります」と表しました。[CML:
005876]
 
 帝国主義批判の一つとしての占有論否定は、ある程度共感できます。
 
 しかし、私は井上清の政治的立場を考えると、この論文には全面的に賛成しか
ねるのです。
 
 井上清(1913年〜2001年)はご存じの通り、マルクス主義の歴史学者
でした。昭和天皇戦争責任を追求した『天皇の戦争責任』(現代評論社、岩波書
店)などの著作を多く残しました。そして日本共産党と対立しました。だから、
この論文には日本共産党を激しく攻撃している箇所があります。
 
 さて、この井上論文の日付に注目してください。1972年です。ベトナム戦
争の最中でした。沖縄はアメリカの占領下にありました。尖閣諸島もアメリカの
支配下にありました。そして、中国は文化大革命の嵐が吹き荒れていました。
 今でこそ、文革は毛沢東が若者を扇動して権力奪取を謀ったことから引き起こ
された惨事と位置づけられていますけれど、1972年当時は、文革は新しい潮
流としてもてはやされ、支持されていました。当時の日本の左翼知識人の多くは
文革を熱烈に支持しました。井上もその一人でした。
 井上は、文革を支持していました。毛沢東思想学院の講師としても活動してい
ました。と、なれば彼が尖閣諸島は中国すなわち、中華人民共和国の領土である
と主張するのは当然のことです。

 しかし、現在の中国は1972年当時とは全く違う国家です。建前は社会主義
国家でも、実態は金儲けこそすべての新自由主義国家です。井上が蛇蝎のごとく
嫌った資本主義国家に向かって突進しています。
 
 中国が尖閣諸島こと釣魚諸島を返せと言うのは、この近海に埋蔵されていると
いう天然ガス田を開発するためです。エネルギー不足に悩まされている中国のと
って、尖閣諸島近辺にあるとされている天然ガス田はなんとしても確保したいの
です。(それは日本も同じです)。
 
 この尖閣諸島問題は結局、天然ガス田の利権を巡る争いなのです。それは押さ
えておかなければなりません。
 
 私は、尖閣諸島は中国に返還すべきという論には強い抵抗感を感じます。チベ
ットやウィグル人などの少数民族に対する対するひどい抑圧が行われ、拝金主義
が蔓延し、政治的弾圧が行われている今の中国に、私は強い不信感と警戒感を持
っています。
 
 そういった点で私の考えは河内謙作さん[CML:005945]に近いものがあります。
 
 もう一つ、私が井上論文に違和感を感じるのは「七 琉球人と釣魚諸島との関
係は浅かった」と、断言しているところです。その箇所を何回読み返しても、そ
れは本当なのかという疑問はわいてきます。
 
 以上のことから、私は井上論文は全面的に支持できないことを述べます。
 
坂井貴司
福岡県
E-Mail:donko at ac.csf.ne.jp
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「郵政民営化は構造改革の本丸」(小泉純一郎前首相)
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