[CML 005899] 「尖閣」問題に関する彦坂諦さんからの応答

杉原浩司(Koji Sugihara) kojis at agate.plala.or.jp
2010年 10月 9日 (土) 18:31:38 JST


東京の杉原浩司です。先日の尖閣・釣魚島問題に関する私の投稿(資料紹
介)に対して、あるMLで彦坂諦さんから返信をいただきました。ぜひ皆
さんにも読んでいただきたいと思い、ご本人の承諾も得ましたのでご紹介
します。[転送・転載歓迎/重複失礼]

※なお彦坂さんが後半でふれておられる、ロシアと中国との「折半方式」
(アムール河の島の話)に関しては、10月7日の朝日新聞国際面が現状を
詳しく伝えていました。2008年の国境画定交渉で中国領になった島につい
て、ロシア政府がロシア人の元農地所有者への補償を怠ったために、住民
の損害賠償を求める動きが広がっているというものです。「そこにいま現
にくらしているひとびとの生活をおびやかさない」という「カンジンカナ
メ」(彦坂さん)のことを政府が未だ果たしていない現実です。

………………………………………………………………………………………

【彦坂諦さんからの応答】

(略)

わたし自身、声は小さかったけれど、「領土問題」にかんしては、つねに、
「国家主権」という概念(枠)を超えて解決の道を探るべきだという見解
を表明してきています。

いわゆる「北方領土」について、そのむかし仕事のうえで接することの少
なくなかったロシア人たちに、あそこはロシア(当時はソ連)という「国
家」の「領土」でも日本という「国家」の「領土」でもないんだよって言
うと、いつも怪訝そうな顔をされたものでした。

現存する国際法が、現にある国家間の利害衝突を回避したり解決したりす
るのに一定の役割をはたしていることを、むげに否定するつもりはありま
せん。しかし、そもそも「法」そのものだって歴史的産物なのです。その
ことを忘れて、これを永遠不変なものと錯覚してるひともいるようですね。
そういった考えかたからは、そろそろ、脱却したほうがよさそうです。
「先占」といった法思想だって例外ではないでしょう。

こういった問題を非暴力的に解決するのにカンジンカナメなことがひとつ
あると思います。そこにいま現にくらしているひとびとの生活をおびやか
さない、ということです。これは、「実効支配」などとはまったくことな
った現実的な考えではないかしら?

その土地や海がだれの(どの「国家」の)ものであるかを言いたてて争う
よりは、(もともと、おおむかしには、土地や海を「所有する」なんて観
念はなかったんですからね)そこにくらしていたり、あるいは、その土地
や海で生業をいとなんでいるひとたちの生活をおびやかさないように、共
同で利用することができるような方策を見つけだしていくこと、これこそ
が政治(とりわけ外交)の要諦なんじゃないかしら?

「南極条約」という知惠、ロシアと中国との「折半方式」(アムール河の
島の話ですよ)、スペインとイギリスとの「共同主権」といったやりかた、
こんなふうに、人類は、武力衝突以外のやりかたで、完全にとは言えない
にしても、「領土」あるいは「主権」に関する紛争を、あるていど現実的
に解決することができているじゃありませんか。

近代国家はあくまで近代という歴史的時期の諸特徴に刻印された近代的組
織にすぎません。その「国家」が、こういった近代的な思想を基盤として、
「国家主権」といった概念をも創り、定着させてきた。それだけのこと。
この時代に、そういった歴史的産物に固執するってのはあまりかしこいや
りかたではないでしょう。

ついつい、ながく書いてしまいました。
ごめんなさい。

彦坂 諦
−−−−−−−−−
amorfatis at nifty.com
平和省プロジェクト http://ministryofpeace.jp



> 東京の杉原浩司です。今回の中国漁船拿捕に端を発した問題。「領土」
> 「国家主権」など歴史的にも多くの対立や紛争を引き起こしてきた困難な
> テーマですが、それだけに、従来の考え方の枠組みを刷新するオルタナ
> ティブが求められていると思います。[転送・転載歓迎/重複失礼]
>
> 以下のブログ論考は私が大いに共感したものの一つです。ぜひご一読くだ
> さい。私も、天児慧さんや加々美光行さんの提案(9月25日の東京新聞に
> も掲載)に賛同します。加々美さんのふれている「南極条約」については、
> 『世界中を「南極」にしよう』(柴田鉄治、集英社新書)の第八章が参考に
> なります。
>
> ちなみに、まだ手に取ったばかりですが『北方領土問題』(岩下明裕、中公
> 新書)の終章にこんな記述を見つけました。「他国の手が及んでいない領
> 土を先に発見したり、先占したりすることでそれを自国領だと宣言しうると
> いう発想そのものを俎上にのせる必要がある。千島の先住民がアイヌ民
> 族であることは議論の余地がない」。
>
>
> ◆隔ての島から結びの島へ!「無主」「両属」としての尖閣・釣魚諸島の実現を
> (じょんのびBlog:五十嵐守さん)
> http://mamoru.fool.jp/blog/2010/10/post_101.html
>
>
> 【参考】
>
> ◆天児慧 「脱国家主権」の新発想を(9月22日、朝日)
> http://www.asahi.com/shimbun/aan/hatsu/hatsu100922.html
>
> ◆『世界中を「南極」にしよう』(柴田鉄治著、集英社新書)
> http://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/0391-d/index.html
>
> ◆10月16日(土)13:30より、加々美光行さんがゲストの「徹底討論 尖閣
>  問題で試される日本の対中理解〜日本の論理が通用しないこれだけの
>  理由」が東京・総評会館にて行われます。主催はアジア記者クラブ。
>  <詳細はこちら → http://apc.cup.com > 




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