[CML 005828] 中国のプレゼンス増大と日本(4)封じ込め論の問題

Hayariki hedomura2 at hotmail.co.jp
2010年 10月 3日 (日) 22:46:57 JST


【PJニュース 2010年9月30日】このように中国封じ込め論は支持できないが、これを細かく見ると、対米従属の封じ込め論と自由民主主義国による封じ込め論に分かれる。

前者は冷戦時代からの伝統的な政策である。具体的にはアメリカの軍事力によって中国を牽制する。日本は対米従属路線を採り、米軍基地を提供し、莫大な思いやり予算を支払う。ヤクザに守り代(みかじめ料)を支払うようなものである。

この立場にとって日中の対立激化は好都合である。「中国に対する防衛力を強化すべき」「抑止力として沖縄に米軍基地は必要である」と宣伝できるためである。沖縄の普天間基地移設問題では名護市議選で辺野古移設反対派が圧勝し、移設を進めたい政権側には痛手となった。漁船衝突問題で中国を怒らせれば、中国の脅威を喧伝できる。米軍駐留を正当化するためには実に都合の良い展開である。誰が得をしているかという視点で見れば、陰で笑っている人間が日本国内にも見えてくる。

対米従属の封じ込め論の一番の欠点は核となる米国に封じ込めの意思や力があるかという問題である(林田力「多極化を先取りした鳩山友愛外交と東アジア共同体」PJニュース2010年6月11日)。
http://news.livedoor.com/article/detail/5041933/
http://www.pjnews.net/news/794/20100929_6
後者も中国封じ込めという発想は同じで、対米従属の封じ込め論の改良版である。米国だけに依存できなくなったために自由と民主主義という共通の価値観を有する国で中国を牽制する考え方である。この文脈から2007年の「安全保障協力に関する日豪共同宣言」を捉える立場もある。これは米国以外の国では初めての防衛に関する共同宣言である。

しかし、自由民主主義国による封じ込め論は現実性に欠ける。そもそも有望な市場である中国を本気で封じ込めようという国は少ない。超大国の米国でさえ、国債購入などの弱みを抱え、中国に及び腰の状態である。

小国が本気で連合して大国を牽制することは容易ではない。これは中国の合従連衡の故事が示している。戦国時代に大国・秦に対抗するために小国が連合する合従策が採られたが、短期間で切り崩しにあって瓦解した。その後、秦が全土を統一した。中国包囲網が実現するならばソフトパワーが鍵になる。自由と民主主義という同じ価値観に立つ国々が共産党一党独裁という異質な価値観を持つ国に対抗するという枠組みである。

しかし、日本は同じ価値観を有する自由民主主義国と認められるほど人権を大切にしていない。女性の社会進出の点では中国よりも劣っている面もある。ヨーロッパでは文明国と非文明国を分けるメルクマールとして重視される死刑制度も日本は廃止していない。この点でヨーロッパにとっては、日本は中国やムスリム諸国と変わらない。

死刑制度の存否を文明国のメルクマールとすることには十分な理由がある。どこの国でも人命尊重のきれい事だけでは死刑は廃止できない。死刑を廃止しても社会が成り立つならば、社会が成熟している証拠である。

ヨーロッパでは、キリスト教会による社会活動が活発であり、犯罪被害者や家族への厚いケアがある。それが犯罪者に対する応報感情を和らげている面がある。これが根本的に欠けている日本では国民意識は死刑存続に傾く。結果として死刑廃止論は左派の主張とされがちである。それ故に日本は後進的と評価される。

また、日本社会が過去の侵略戦争を本心から反省しているかも疑問である。反対に侵略を美化する動きもある。ファシズムとの戦いの上に今日の自由民主主義国が存在する。現状では日本が本当の意味で自由民主主義国の仲間と見なすことはできない。日本が仲間になるためには日本自身が大きく変わらなければならない。【つづく】



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