[CML 006533] 二子玉川ライズ差し止め訴訟は上告へ(中)林田力

Hayariki hedomura2 at hotmail.co.jp
2010年 11月 19日 (金) 21:56:16 JST


【PJニュース 2010年11月19日】判決は個人と都市再開発事業で異なる扱いをつけた。これは平等を形式的に捉えた場合、不平等な扱いになる。一方、個人と都市再開発事業では影響力の点で全く異なる。公正とは「等しきものには等しく、等しからざるものには等しからざるものを」ということである。形式的平等に囚われると社会的弱者の権利を守ることはできない。実質的平等を追求した判決の論理構成は評価に値する。

その上で判決は「人工地盤には洪水流の侵入を防ぐ効果があり、その分だけ周囲の水深を高める結果を生ずる」と述べ、これによって高まる周囲の浸水深を最大1.5mとした。しかし、ここまで認めながらも、結論は以下のように住民の主張を否定した。

「人工地盤を設置することにより、控訴人らの一部に対する関係で、洪水被害が生じた場合に浸水深が大きく高まり、あるいは洪水被害を受けるはずがないのにこれを受けることになるとは認められない。」(判決書29頁)

判決の価値判断では浸水深1.5mは「浸水深が大きく高まり」には該当しないことになるが、疑問である。一般的に浸水深が0.5m以上になると、床上浸水の危険がある。つまり、0.5mの浸水深があれば周辺住民は洪水によって財産的被害を受ける。これは文字通り「洪水被害を受けるはずがないのにこれを受けることになる」である。
http://news.livedoor.com/article/detail/5150990/
http://www.pjnews.net/news/794/20101117_7
そして浸水深が1.5mもあれば、子どもや背の低い大人は頭を水面から出すことができない。プールでも水深1.5mは深い方である。プールでも事故は起きる。浸水深1.5mの洪水ならば住民にとって生命の危険がある。判決の事実認定に基づいて判決の結論が導き出されることは理解に苦しむ。

また、裁判所が立証責任によって住民に不利な結論を下したことも判決の特徴である。例えば、住民側は二子玉川ライズでは地下に駐車場などの広大な構造物が建設され、これが地下水位の上昇を引き起こすと主張した。これに対し、判決は「本件再開発地域内の広大な構造物により、地下水の水位が上昇することを認めるに足りる証拠はない」とした(判決書29頁)。

住民は二子玉川ライズによって交通量が増加し、二酸化窒素濃度が上昇し、大気汚染による健康被害も生じると主張した。これに対し、判決は「受忍限度を超える二酸化窒素による被害が発生することについては、控訴人らに立証責任があるところ、控訴人らの健康に被害を及ぼす蓋然性のある二酸化窒素による大気汚染が発生することを認めるに足りる証拠がない」とした(判決書30頁)。

伝統的な裁判の考え方では、黒か白か五分五分の時に裁判官が判断に迷うことはない。立証責任のある当事者の主張を退けるだけである。原則として立証責任は主張する側にある。「金を貸した」と主張するならば、主張する側は貸したことを立証しなければならない。もし、貸したか貸さなかったか判断に迷う状態ならば判決では「金を貸していない」と認定することになる。【つづく】(『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』著者 林田力)



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