[CML 006531] 新刊:藤目ゆき『女性史からみた岩国米軍基地――広島湾の軍事化と性暴力』

maeda at zokei.ac.jp maeda at zokei.ac.jp
2010年 11月 19日 (金) 12:28:05 JST


前田 朗です。
11月19日

藤目ゆきさんの新刊のご案内を転送します。

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このたび、『女性史からみた岩国米軍基地 ――広島湾の軍事化と性暴力』(ひろ
しま女性学研究所、1500円+税)という本を出版しました。

 
目次は以下のとおりです。
 
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 はじめに
  
 第1部 広島湾の軍事化と女性に対する暴力の構造化
      第1章 日本軍基地の建設       
        第2章 占領・朝鮮戦争・安保 
            第1節 占領下の岩国
              第2節 安保体制の成立と岩国基地の拡張
                   第3節 基地とパンパンの広島湾―新たな公娼制度と複合
差別  
            第3章 終わらない戦争・終わらない女性の受難 
 
 第2部 広島事件(岩国基地海兵隊員集団レイプ事件)
           第1章 集団レイプと不起訴処分                     
     
           第2章 米軍に引き渡された裁判権
                      第1節  軍法会議への訴追 
                      第2節  日米地位協定第17条     
                  第3節 米軍犯罪をめぐる日米密約
           第3章 自画自賛する米軍・米軍を評価する日本社会  
           第4章 二次性暴力としての軍法会議 
                     第1節 予備審問と軍法会議の過程で明るみに出た事件
の真相
                     第2節 セカンドレイプと不当判決      
 
  おわりに 
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 中国新聞が紹介記事を書いてくれました。
 
 「岩国米兵暴行事件焦点に出版」/中国新聞
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201011020047.html
 
 
 今日11月15日で、岩国基地所属海兵隊員による集団レイプ事件を広島地検が不
起訴にしてからちょうど3年目を迎えます。
 この事件では「軍事基地と女性」ネットで抗議行動にとりくみ、みなさんにも
御協力をいただきました。
 この事件は多くの市民からの強い抗議にもかかわらず不起訴は取り消されず、
事件は軍法会議にかけられ、強姦や誘拐が無罪・一年か一年半ほどで加害者たち
が釈放されるという不当な判決が出たことは記憶に新しいことと思います。
 私は、その後、米軍の資料や米軍法会議の記録などを手がかりにこの事件を調
べていたのですが、その結果をこの本の第二部に書きました。
 
 この本の刊行にあたり、憂慮も抗議行動も共にした皆様に対してどのようにこ
の本を紹介したらいいか迷いました。あっさり「出しました。お読みください」
とだけいえばいいのかもしれませんが、一言では言いにくいいろいろな思いがあ
ふれるというか・・・。それで、迷った末、9月4日に開かれた全国女性史交流の
集いin東京で発言したことに多少加筆修正して文章を書きました。長くてすみま
せんが、お読みいただけたらうれしいです。
 
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 『女性史からみた岩国米軍基地』の刊行によせて      藤目ゆき
 
 

  米軍基地周辺の女性史について調査を始めてから10年程になります。それ以
前の1990年代は、旧日本軍がアジアの女性たちを性奴隷化した軍隊「慰安婦」問
題の解決が重大な課題として浮上した10年間でした。私自身、日本近現代女性史
が専攻で、近代公娼制度や日本軍「慰安婦」の問題に強い関心があり、そこに関
連する仕事もしました。

 
 
 が、それらに取り組みながら一方に沸き起こってくるのは、こうした軍事的性
暴力というものが1945年8月で終わったものとして片付けられてはいけないとい
う思いでした。
 
  
 第二次世界大戦終結後も、占領と日米安保体制のもと、米軍が日本に駐留し日
本が出撃基地となって朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラク、アフガニスタンの戦争
にも加担しています。その構造の中でアジアの女性たちが傷つけられてきた事実
があります。また駐日米軍基地周辺で、日本に住む女性たちが米兵からの性被害
を受ける、また基地周辺には歓楽街が作られて行政の性病チェック、つまり形を
変えた公娼制度・米軍に安全な売春女性を提供するような社会制度が、きっちり
つくられています。
 
  
 日本軍「慰安婦」問題と同時にこれらの戦後の駐留米軍問題も追求していく必
要があるのではないか。そうしなければ、日本軍「慰安婦」にされた女性たちが
沈黙せざるをえず、「半世紀も経ってからようやく沈黙を破る」ことになったの
と同様に、戦後から現在にまでいたる軍事的性暴力被害者たちにも沈黙が強いら
れたままになるのではないか。今痛みを抱いている被害者たちのことは、今問題
にしなければ遅い。現に傷を負っている基地周辺で性暴力を受けている女性たち
の問題に取り組んでいかなければいけないのではないか。そんな思いがあったの
です。
 
  
  この10年ほどの間に、フィリピンや韓国の基地村など海外の調査もしました
が、日本の基地に関する調査でも、青森の三沢、宮城県、佐世保、そしてもちろ
ん沖縄の各基地周辺に必ず女性の被害があることが確認できました。その中でも
特に岩国に関心が強くなったのは、そこが本州の、自分の出身地から遠くない所
にあったことも理由の一つだし、自分が20歳前後だった70年代末から80年代のは
じめに毎年のように岩国基地の米兵に女性が殺害されるような事件があったとい
う事実を、女性史を調べてはじめて知ったということも大きな理由でした。「慰
安婦」問題・軍事的「性暴力」に問題意識をもって調べ初めてようやく、これほ
どにも多くの犯罪被害にあったのだという事実を知ったことはショックでもあり
ました。
 
 
   惨酷な事件が相次いで発生したのに何故その当時私は知らないでいたのか。
「知らないでいた」ことに驚いて調べてみると、大阪や東京で発行される新聞に
は、岩国で起きた事件は記事になっていない、メディアがこうした問題をとりあ
げていなかったことが分かったのです。駐留米軍による犯罪が犯罪として扱われ
ず、「痴話喧嘩」とか反社会的な人々が引き起こしたトラブルというように侮辱
的な、軽く流すような扱い方しかされていない。女性たちは殺されてもなお差別
されていたわけです。そのように根深い女性差別があることを知って岩国基地周
辺の女性史への関心が強まりました。
 
 
岩国基地周辺は事故や騒音被害もすさまじいものです。滑走路の沖合い移設のた
めの埋め立て工事が90年代から始まって、その滑走路はすでに完成したのですが、
滑走路沖合いを移設で街は静かになると市民は説得されていました。が、米軍再
編計画が進められる中で、これが基地の「移設」ではなく「拡張」にすぎないこ
とがハッキリしたのです。元の基地はそのままで、沖合いに基地が拡張されただ
けです。こうして巨大化した岩国基地が、厚木に配備されている空母の艦載機の
好都合の受け入れ先として、米軍再編計画のターゲットにされてしまっています。
艦載機受け入れだけでなく、米軍住宅を建設する計画も出ています。岩国市民は
2006年の住民投票では米軍再編計画に対してNOをはっきり表明したのですが、国
からの補助金カットといった圧力・嫌がらせもあり、市民の意識も揺れています。
そんな中でも、裁判を起こしたり、座り込みをしたり、さまざまな形で抵抗を続
けている市民たちがいらしゃいます。
 

 
 岩国基地所属の米軍関係者による犯罪は現在も続いています。2007年には海兵
隊員4人が広島市で19歳の女性を集団レイプする事件が起きましたが、地検はこ
れを不起訴とし、翌08年に開かれた米軍法会議は海兵隊員たちを強姦や誘拐につ
いて無罪としました。今年9月には岩国基地に勤務する軍属女性が愛宕山の近く
に住む男性(66歳)をはねて死亡させました。その軍属女性は現行犯逮捕された
ものの、即日釈放され、地検はこれを不起訴処分にしました。遺族の方たちは10
月29日に不起訴を不当として検察審査会に申し立てをしておられます。

 
 このたび、私が10年間の調査で知り得たことを『女性史からみた岩国米軍基地』
という一冊の本にまとめました。この本が、マスメディアがあまり伝えない岩国
の状況を多くの人々に伝える手がかりになれば幸いです。
 
 
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  問合せ・注文先は<ひろしま女性学研究所 〒730-0001  広島市中区白島北町
16-25 082-211-0266/fax082-211-1761/e-mail  kazokusha at enjoy.ne.jp>で
す。「軍事基地と女性」ネット、ヴァウネッ ト、アジア女性資料センター、ハ
ーグの会の会員で購入希望の方は私のほうにご連絡頂いてもOKです。よろしくお
願いします。
 






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