[CML 006469] 最高検察庁への告発状     /大山千恵子

大山千恵子 chieko.oyama at gmail.com
2010年 11月 15日 (月) 13:20:34 JST


*告発状*

2010年11月1日

最高検察庁 御中

告発人 別紙告発人目録記載のとおり

被告発人 前田恒彦
(元大阪地方検察庁特捜部検事)

*第1 告発の趣旨*
被告発人の下記行為は、特別公務員職権濫用罪(刑法第194条)
を構成すると思われるので、刑事上の処罰を求める。
記
*告発の事実*
被告発人は、大阪地方検察庁特捜部に所属する検察官として、同庁で認知立件した刑事事件の捜査等の業務を行っていたものであるが、厚生労働省社会援護局障害保険福祉部企画課社会参加推進室社会参加社会参加推進係長であった上村勉を、自称福祉支援組織「凛の会」が内国郵便約款料金表に規定する障害者団体ではないのに、同団体であることを証明する文書を作成・行使した虚偽有印公文書作成・同行使罪の容疑により逮捕し、同人及び他の関係者の供述により、当時同企画課長の職にあった村木厚子が同上村に同文書作成を指示した同罪の共謀の容疑により同村木を逮捕することを検討するに当たり、同上村の自宅から押収されたフロッピーディスクに残された同文書の最終更新日データからは2004年6月1日午前1時過ぎが同文書作成日時と認められる一方で、関係者の供述調書及び同上村の供述調書からは、同村木から同上村への虚偽公文書作成の指示があったとすれば、その時期は6月8日以降と考えるほかなく、同時点で同庁が得ていた証拠すべてを総合すれば同村木が同上村に虚偽文書作成指示を行ったことには重大な疑問があり、同フロッピーディスクの最終更新日データの隠蔽、又は同データの書き換えなどの不正の手段を用いなければ同村木の虚偽有印公文書作成の事実について有罪判決を得ることは極めて困難な状況にあったにもかかわらず、大阪地方検察庁、大阪高等検察庁及び最高検察庁に同村木の逮捕の了承を求める報告文書に、同フロッピーディスクの最終更新日データが6月1日であることを記載せず、同村木について上記虚偽有印公文書作成の事実について有罪判決が得られる見込みである旨の事実に反する報告を行い、同村木を逮捕することについて各庁の了承を得た上、大阪地方裁判所に、上記虚偽有印公文書作成の被疑事実による同村木の逮捕状を請求し、同裁判所裁判官から同逮捕状の発付を受けた上、2009年6月14日、大阪市福島区福島1丁目10番号、大阪地方検察用庁舎内において、同庁検察官に同逮捕状を執行させて同村木を逮捕し、6月15日、上記被疑事実により大阪地方裁判所に同人の勾留を請求し、2009年7月14日、同事実につき勾留中のまま起訴するなどして、同人の勾留を11月24日まで継続させ、その間、同人を、大阪府大阪市都島区友渕町1丁目2番5号、大阪拘置所内において拘禁し続け、もって、職権を濫用して、同人を逮捕・監禁したものである。

*第2 罪名及び罰条*
特別公務員職権濫用罪 刑法194条

*第3 告発の経緯*
1
村木さん事件において、主任検事であった被告発人が重要な物的証拠であるフロッピーディスク(FD)の最終更新日を検察立証の構図に合うように改ざんしたことは、2010年9月21日の朝日新聞報道により発覚した後、検察捜査史上稀に見る不祥事犯罪であると報道され、その認識は国民共通のものとなっていると思われる。このFDの改ざん前のデータは、村木氏を有罪と判断する上で明らかに矛盾した客観証拠であり、むしろ村木氏の無実を裏付ける証拠であった。このような客観証拠があり、それまでの関係者供述等を総合すると、村木氏は無実と推認されて当然であった。「(被告発人が村木氏を)逮捕する直前に、FD内のデータが、特捜部が描いていた事件の構図と矛盾することを把握していたことが最高検の調べで分かった」との報道もある(10月1日付読売新聞)。それにもかかわらず、被告発人は、不当にも村木氏の逮捕に踏み切り、その後も勾留を継続し、村木氏の身体拘束は160日余りも及んだ。村木氏は、大阪地検の上訴権放棄によって無罪判決が確定するまでの間、職場においても起訴休職という不利益も被った。被疑者・被告人としてマスコミに報道されたことも含め、無罪判決を獲得するまでに村木氏が被った不利益は計り知れないものがある。他方、被告発人は、10月11日に証拠隠滅罪(刑法104条)で起訴されたのみである。しかし、証拠隠滅罪は、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金という軽微な犯罪であり、重大な人権侵害を引き起こした本件の本質を的確に捉えた立件とは到底言い難い。ちなみに、村木氏は特別公務員職権濫用罪での告訴をしていないようであるが、これはおそらく村木氏が内閣府政策統括官に任命されて政府の一員として復職したことを慮ってのことであると思われ、被害感情及び処罰感情がなくなったものとは考えられず、何の罪も理由もないのに突然逮捕され、長期間にわたって勾留監禁された、その被害感情及び処罰感情は察するに余りあるものがある。
2
なお、本件において特別公務員職権濫用罪が成立しうることについては、元検事で名城大学教授・弁護士の郷原信郞氏の『中央公論』2010年11月号の論考及びその後ホームページ上で公表した別添論考により明らかである。また、村木氏の主任弁護人であった弘中惇一郎弁護士も、10月19日に日本弁護士連合会の主催で行われたシンポジウム『特捜捜査の闇と取調べの可視化・証拠開示』において、「どうして特別公務員職権濫用が問題にならないのだろうか。つまり、フロッピーをいじったかどうかが問題なのではなくて、それをきちんと把握していれば逮捕するべきじゃない人を逮捕し、勾留したってことなんですよ。」と発言している。この事件において、関係証拠に直接触れ、無罪を勝ち取った同弁護士がこのような発言をした事実は極めて重い。以上に加え、FD改竄をスクープした朝日新聞の10月10日付社説も「前田検事は、検事のもつ逮捕権限を乱用して事件を捏造したのではないか。最高検はそうした疑惑についても捜査を尽くさなければならない。」として特別公務員職権濫用罪での捜査の必要性を示唆している。同罪での捜査の必要性は明らかである。
3
ところで、この特別公務員職権濫用罪は、なにも直接の被害者である村木氏だけの問題ではない。同罪は、国民から負託を受けた公務員による職権の不法な行使を処罰するというものであり、第一次的には公務の適正という国家的法益を保護するとともに、第二次的には個人的な法益を保護するものであると理解されている。この観点からしても、日本国民として、今回の問題を、村木氏と検察だけの問題にとどめておくわけにはいかない。
今回の郵便不正事件は、特別公務員である検察官の職権濫用によって、何の罪もない人が突然逮捕され、長期間にわたって勾留監禁されるということが現実に起こりうること、つまりこのようなことがいつ誰の身に降りかかってもおかしくないことが国民の前に明らかとなったものである。このような重大な人権侵害が、今後二度と繰り返されないためにも、特別公務員職権濫用罪での捜査が必要不可欠である。しかし、残念ながら、御庁がこの件について本格的な捜査を開始したという報道は未だない。
村木氏の弁護人は、最終弁論(要約)の中で、「本件で収集された物証、たとえば、被告人の手帳、被告人の業務日誌、倉沢の手帳、倉沢の保管していた多数の名刺などの中に、被告人の関与を裏付けるものは一切なく、これらを検討すれば、被告人が無実であることが当然に推認されたはずである。」と指摘し、本件において特別公務員職権濫用罪が成立しうることを示唆した。その上で、「大阪地検特捜部は、客観的証拠を軽視もしくは無視する一方で、関係者を呼び出しては、検察ストーリーに沿った調書を作成することに力を注ぎ、その結果として、冤罪を発生させたものである。このような捜査のあり方には、重大な問題があるといわざるを得ない。」と厳しく非難した。大阪地裁が弁護人の主張どおり村木氏に対して無罪を言い渡したのは当然のことである。
4
2010年10月21日、柳田法務大臣は、大林検事総長に対し、「検察の信頼は地に落ちた。組織全体で受け止めてもらいたい。国民の信頼を得るよう最大限努力してほしい。」と異例の指示をした。村木氏は結果として無罪・冤罪だったのではなく、検察は、当初から無実であることが当然に推認されたのに、職権の行使に仮託して、違法不当に村木氏を逮捕・勾留したのではないか、というのが国民の検察に対する不信の根本であり核心である。柳田法務大臣が指示したように国民の信頼を回復するためにも、村木氏のような冤罪事件を繰り返さないためにも、本件の全容の徹底解明が必要であると思料するので、告発事実について、厳正かつ適正な捜査をされたく、上記告発に至った次第である。
以上

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*解説*「救援」紙11月号の連載コラムで書いた告発状の本文です。「健全な法治国家のために声をあげる市民の会」(代表・八木啓代=歌手)による、前田元検事に対する特別公務員職権濫用罪の告発状全文。十一月一日提出、同三日に受理され、同会代表への正式な受理通知は同十一日だった。告発の意義は、最高検が前田元検事と、あたかも司法取引を結んだかのような証拠隠滅罪なる微罪立件による矮小化を防ぐことにある。検察首脳が腐敗にまみれているのは言うまでもないが、この告発は同首脳への楔となると同時に、検察組織に対する反撃の端緒となる。大手マスコミは告発を承知しながら同十三日現在報じていない。またインターネット上で一般市民へ呼びかけ、実質わずか一週間で二十名以上の面識なき告発人を集めて提出する前代未聞の形となった。複数弁護士のアドバイスで作成された告発状に、東京地検特捜部の元検察官で弁護士の郷原信郎は、「大変良くできた告発状で、これなら最高検もしっかり受け止めざるを得ない」とコメント。今後の刑事告発状の雛形として活用されたい。

関連リンク
速報:告発書が受理されました <http://nobuyoyagi.blog16.fc2.com/blog-entry-536.html>(八木啓代のひとりごと
2010-11-04 21:09)
謎が謎を呼ぶ、この展開 <http://nobuyoyagi.blog16.fc2.com/blog-entry-537.html>(八木啓代のひとりごと
2010-11-05 11:03)
「国民の皆様に開かれた検察」を目指すそうです<http://nobuyoyagi.blog16.fc2.com/blog-entry-539.html>(八木啓代のひとりごと
2010-11-12)
大変良くできた告発状ですね。これなら最高検もしっかり受け止めざるを
...<http://twitter.com/nobuogohara/status/29387855738>(Twitter
郷原信郎 8:38 AM Nov 1st)
当会より、英語・スペイン語・イタリア語での声明文を発表いたしました。ダウンロードもできます。<http://twitter.com/shiminnokai21/statuses/3971182059585536>http://bit.ly/aYtWkE
<http://bit.ly/aYtWkE>(Twitter 健全な法治国家のために声をあげる市民の会)
イタリア語のは、昨夜のうちにスペイン語版を読んだというナポリ大学の教授が作って送って下さいました。大学でも話すそうです。ありがたいことです。こうして世界に隠したい情報ほど広がっていきます。<http://twitter.com/shiminnokai21/statuses/3974875647578112>
(Twitter
健全な法治国家のために声をあげる市民の会)
あと、チリのアジェンデ派系の方たちが、拡散にご協力下さっている模様です。中南米の連帯の力をお借りいたしました。<http://twitter.com/nobuyoyagi/status/3977005389324288><http://twitter.com/shiminnokai21/statuses/3974875647578112>
(Twitter
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大山千恵子
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