[CML 006452] 尖閣問題はビデオ流出処罰是非に論点移動:林田力

Hayariki hedomura2 at hotmail.co.jp
2010年 11月 13日 (土) 19:13:33 JST


【PJニュース 2010年11月13日】尖閣諸島沖での海上保安庁巡視船と中国漁船の衝突映像の流出事件では神戸海上保安部の巡視艇「うらなみ」の主任航海士が神戸市内の漫画喫茶から投稿したと告白した。これは2010年11月10日に明らかになった。世論はビデオ流出者を処罰することへの是非で沸騰している。政府にとっては国民の意識を外交問題から反らす好都合な展開である。

衝突事件では中国政府が批判され、あわせて菅直人政権の対応も弱腰と批判された。日本では反中デモも行われている。反中デモに参加するネット右翼らは自らの行動を愛国的と考えるだろうが、中国との緊張が継続することは日本にとって国益にならない。日本経済が多くの面で中国に依存し、今後も依存を深めていく(林田力「中国のプレゼンス増大と日本(1)中国の経済発展」PJニュース2010年9月30日)。
http://news.livedoor.com/article/detail/5041913/

また、反中デモはヘイト・スピーチやヘイト・クライムと批判されても反論できない内容が含まれている。国際的に注目されれば、この種のデモが野放しになっていることに対して、日本の印象を一層悪化させることになる。

日本にとって頼みの綱は米国である。日本政府は尖閣諸島が安保条約の適用対象であるかについて米国から言質を引き出すことに一喜一憂していた。しかし、米国の本音はアジアの安定であって、日本に味方することでも中国を封じ込めることでもない。中国が強硬姿勢をとっている時は日本の肩を持つが、日本が平和を乱す原因と判断すれば日本を批判するだろう。

例えば日本で安倍晋三政権が発足した際は、戦前を美化する歴史認識でアジア諸国との軋轢が予想された。そのタイミングで米国下院は2007年6月に従軍慰安婦問題で日本政府に謝罪を求める121号決議を採択した。「世界の警察官」という言葉は傲慢で好きにはなれないが、そのような言葉を恥ずかしげもなく使えるだけのバランス感覚が米国にはある。

結局のところ、米国は何が何でも日本の味方になるわけではない。しかも、尖閣問題では中華人民共和国だけでなく、台湾(中華民国)も敵になる。米国と中華民国は第二次世界大戦で侵略国・日本に共に戦った連合国である。太平洋戦争の開戦前であるが、チャーチルはスターリンに1941年9月21日付で以下内容の書簡を送付している。
http://news.livedoor.com/article/detail/5136907/
http://www.pjnews.net/news/794/20101111_2
「戦争の継続によって、人類全体の3分の2を構成する英国、ソ連、米国、そして中国の膨大な数の人々が、侵略者に対して手を取り合って前進していくようになるという希望を抱いている。そして彼らが歩む旅路の先に勝利があると確信している。」
ワシントンにおける台湾ロビーの力は現在でも決して侮ることはできない。従って米国の日本支持には限界がある。中国との緊張を煽るネット右翼の言動は真剣に考えれば日本の国益を損なうこと著しい。

そのような状況の中でビデオ流出事件は起きた。ビデオが多くの国民が視聴を望み、公開が要求されていたものであった。しかし、日本政府は「守秘義務違反」と迅速に反応したために犯人探しの論調が強まった。さらに犯人が現れたために、処罰の是非が議論されている。主任航海士は「国民には見る権利がある」などと確信犯的な態度をとり、彼を支持する声も強い。

ネット右翼なども反中運動から主任航海士を擁護する運動にシフトしていくと予想される。流出者の処罰是非は純粋に国内問題である。処罰の是非で世論が沸騰することは菅政権の支持率を一層低下させかねない。しかし、内政に批判の矛先を向けさせることで、対外関係の悪化を避ける苦肉の世論誘導との深読みも可能である。【了】



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