[CML 004185] 臨検特措法を成立させないことを求める声明

加賀谷いそみ QZF01055 at nifty.ne.jp
2010年 5月 21日 (金) 13:27:24 JST


【転送・転載歓迎】


 衆議院における臨検特措法の可決に強く抗議し、
     参議院が同法を成立させないことを求める声明

        井上澄夫(埼玉県新座市、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック)
            加賀谷いそみ(秋田県男鹿市、男鹿の自然に学ぶ会)    
        奥田恭子(愛媛県松山市、心に刻む集会・四国)  
        廣崎リュウ(山口県下関市、下関のことばと行動をつなぐ『海』
          編集委員)
   
                         2010年5月21日 

 鳩山政権が昨年(2009年)10月30日、衆議院に提出した「国際連合安
全保障理事会決議第1874号等を踏まえ我が国が実施する貨物検査等に関する
特別措置法案」(以下、臨検特措法案と表記)が、5月19日、衆院国土交通委
員会で与党3党と公明党の賛成多数で可決され、ついで翌20日、本会議で与党
3党と公明党などの賛成多数で可決された。 
 朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮と表記)に出入りする船舶の臨検を海
上保安庁に認める同法案の成立に一貫して反対してきた私たちは、この暴挙に強
く抗議する。

 日本国憲法第9条は第1項で「戦争の放棄」を定めている。それは戦争のみな
らず戦争を誘発しかねない一切の行為を政府に固く禁じていると解すべきである。
戦争の火種となりうるすべての行為が厳禁されているのだ。
  このところ武装を強化してきた海上保安庁による臨検が戦争の挑発につながる
危険性は非常に大きく、それは明白に憲法9条に違反する行為である。

 今通常国会において臨検特措法案はずっと棚晒しになっていたが、衆議院で突
然審議が強行され、国土交通委員会でも本会議でも十分な審議がなされないまま
可決された。その背景に去る3月26日の韓国軍哨戒艦「天安」の沈没が「北朝
鮮の魚雷」によるという国際的なキャンペーンの始まりがあることは明らかであ
り、同法案の可決はその波に乗って強行された。衆院での臨検特措法の成立は韓
国政府が組織した国際軍民合同調査団が最終報告書を発表するのと同時になされ
たのだ。

 鳩山首相はただちに北朝鮮非難のコメントを発表した。これから米国政府を中
心に北朝鮮叩きの津波のようなキャンペーンが始まるに違いない。しかしどこま
でも9条の実現を求める私たちはその動きに同調しない。問題の冷静で平和的な
解決を初めから放棄して、朝鮮半島の軍事的緊張が高まることに乗じ、戦争の火
種を用意する臨検特措法を成立させるのは、火に油を注ぐことであり、まさに犯
罪的な愚行と言わざるを得ない。

 法案の審議にあたって、前原国土交通相は「一義的に仕事をするのは海上保安
庁だが、万が一、激しい抵抗にあった場合、自衛隊に海上警備行動を発令すると
いう判断は否定していない」とのべた。まるで交戦を予定しているかのような姿
勢ではないか。

 私たちは「良識の府」といわれる参議院が、衆議院が可決した臨検特措法案の
審議を拒否することを要求する。

 私たちはドサクサ紛れの火事泥的国会運営を強く非難し、9条改憲に反対する
すべての人びとが好戦的激情を煽るポピュリズムの政治から決別することを心か
ら訴える。


 【付記】 私たちは連立与党の臨検特措法案について、昨年(2009年)1
1月1日、「市民の共同声明」として見解を公表した。それを以下に改めて掲載
する。ご参照をお願いしたい。

【参考資料】
  ◆戦争を挑発する臨検特措法案に反対する市民の共同声明◆

 鳩山連立政権は10月30日、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮と略す)
に出入りする船舶の貨物を検査するためとして「国際連合安全保障理事会決議第
1874号等を踏まえ我が国が実施する貨物検査等に関する特別措置法」(以下
「臨検特措法案」と略す)を国会に提出した。
 法案は、麻生前政権が国会に提出した「北朝鮮特定貨物の検査等に関する特別
措置法案」のタイトルを変え、自衛隊の関与の条項だけを削除したもので、それ
以外は旧法案と寸分変わらない。
 私たちは、以下にのべる理由で、新たな「臨検特措法案」に強く反対する。

 「臨検特措法案」は、2000年に成立した「周辺事態に際して実施する船舶
検査活動に関する法律」(以下、周辺事態船舶検査法と略す)と比べても、極度
に強権的で敵対的な臨検を許すものである。周辺事態船舶検査法に基づく検査活
動では、海上自衛隊が対象船舶を停止させ、船長等の承諾を得て乗船し、書類や
積荷を検査できることになっているが、航路や目的港などの変更については船長
等に「要請」あるいは「説得」をおこなうことができるにすぎない。  
 ところが「臨検特措法案」では、海上保安庁が対象船舶を停止させ、「北朝鮮
特定貨物」があることを確認したときは、その貨物の「提出」を命令し「保管」
することができる。そればかりか、船長などに日本の港およびその他の場所に
「回航」することを「命ずる」ことさえできる。
 しかも船長などが「提出命令」に従わなかった場合は「2年以下の懲役又は1
00万円以下の罰金」に処せられ、「立入り、検査、収去若しくは貨物の陸揚げ
若しくは積替えを拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対し答弁をせず、若
しくは虚偽の陳述をした者」などには、「1年以下の懲役又は50万円以下の罰
金」が科せられる。
  そもそも法案は、「北朝鮮特定貨物」を「国連決議により北朝鮮への輸出、北
朝鮮からの輸入の禁止が決定された核関連、ミサイル関連その他の大量破壊兵器
関連の物資、武器その他の物資であって政令で定めるもの」としているが、「そ
の他の物資」は明確に規定されず、しかも「政令で定める」というのだから、こ
れは海上保安庁による恣意的な拡大解釈を許す規定である。法案は12条〔政令
への委任〕で「この法律に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な事項
は、政令で定める。」としているが、これは国会の審議を経ることなく政府関係
機関の独断専行を許す「政令政治」の典型である。
 法案はさらに大いに疑問とせざるを得ない条項を含んでいる。たとえば3条2
項は「海上保安庁長官は、我が国の領海又は公海にある船舶が北朝鮮特定貨物を
積載していると認めるに足りる相当な理由があるときは、海上保安官に、次に掲
げる措置をとらせることができる。」としているが、そこでいう「認めるに足り
る相当な理由」は明示されていない。 「北朝鮮特定貨物を積載している」こと
を、誰がどうやって「認める」のだろうか。それは詰まるところ、「北朝鮮特定
貨物を積載している」と、ただ疑わしいから臨検するという事態をもたらすこと
につながりかねない。

 この法案は実に危うい。国連安保理決議1874がすべての加盟国に対し「旗
国の同意を得て公海上で船舶を検査すること」を「要請する」としているのは、
臨検を義務づければ不測の事態が発生することを強く懸念しているからにほかな
らない。北朝鮮の核開発は朝鮮戦争以来続いてきた米国との軍事的緊張がもたら
したものである。ところが日本政府はその事態の解決に努力しないどころか、米
国政府とともに「北朝鮮の核の脅威」を煽り続け、東北アジアの政治的・軍事的
緊張を著しく増幅させてきた。その日本が北朝鮮に出入りする船舶を臨検するこ
とは、「船舶検査」が警察行動であるといかに強弁しようと、北朝鮮との一触即
発の軍事的衝突を誘発しかねない危険な火種になる。 
 私たちは北朝鮮との緊張は、どこまでも外交努力によって解消すべきであると
考える。いま求められているのは、何よりまず北朝鮮との国交正常化である。万
事を交渉で解決できる正常な国交をもたず、恫喝的な臨検で戦争を挑発すること
など断じてあってはならない。それは日本国憲法が掲げる絶対平和主義を正面か
ら踏みにじることだ。

 私たちは「臨検特措法案」を鳩山連立政権がただちに取り下げることを強く要
求する。


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