[CML 004148] 東京スカイツリー賞賛一辺倒の貧困

Hayariki hedomura2 at hotmail.co.jp
2010年 5月 18日 (火) 20:00:36 JST


【PJニュース 2010年5月18日】東京都墨田区で建設中の東京スカイツリーの人気ぶりがメディアを賑わしている。既に高さは東京タワーを抜き、日本一となった。建設地周辺は大勢の見学者が集まり、観光スポットとなっている。しかし、社会を挙げてタワーの建設を応援するという雰囲気には日本社会の貧困さが感じられてならない。本記事では2点指摘する。
http://news.livedoor.com/article/detail/4774913/
http://www.pjnews.net/news/794/20100517_15
第1に高層タワーが景観を破壊するという批判的観点からの議論が、ほとんど取り上げられていないことである。パリの象徴になっているエッフェル塔も建設時は強烈な反対を受けていた。代表作に『女の一生』がある自然主義作家モーパッサンも反対運動家であった。パリ万国博覧会のために建設されたエッフェル塔が解体されなかった理由は、無線電波送信という軍事的価値があったためで、美観やデザインが評価された訳ではなかった。

東京スカイツリーの建設地の墨田区は低層の木造住宅が多い地域である。また、江戸情緒を感じさせる都内有数の観光地・浅草(台東区)も近い。この点を踏まえれば、もう少し景観を大切にする議論があっても良い。

確かに浅草は明治時代に日本一の高層建築・凌雲閣(浅草十二階)が建設された先進地域であった。伝統を維持するだけの街ではなく、新旧の混在が街の魅力という考え方もある。しかし、凌雲閣も経営的には苦しく、関東大震災であっけなく倒壊した後は再建されなかった。先進地域だからこそ、高層建築のデメリットを認識することができる。高い建物で地域を活性化するという時代遅れの高度経済成長期的な価値観からいち早く脱却することも可能なはずである。

第2に過去の東京タワー建設と重ね合わせて、日本が輝いていたとされる時代の「栄光」の再来を願う幼児性退行現象が感じられることである。第1の点で指摘した景観意識が乏しい点も、東京タワーが高度経済成長期の「栄光」の象徴として無批判にインプットされてしまっている面がある。

この退行現象はスカイツリーに限らず、社会の各方面に及んでいる。昭和30年代の東京を舞台とした映画『ALWAYS 三丁目の夕日』が人々の郷愁を誘い、ヒットした。また、東京の2016年夏季オリンピック招致活動がコンセンサスのないまま強引に進められた背景にも、1964年の東京五輪の「成功体験」という世代的幻想がある(林田力「東京都議会が東京五輪招致失敗検証で参考人招致」PJニュース2010年5月15日)。

確かに現在の日本は解決困難な多くの課題に直面しており、高度成長期と比べて希望は持てない時代である。しかし、今日の問題の多くは高度成長に突き進む中で生み出されたものである。日本の問題は、焼け野原から経済大国にしてしまうような前に進むことしかできない発想が随所で行き詰まりを見せた結果である。

それ故に過去の「成功体験」にあやかるという発想は問題を深刻化させるだけである。例えばワーキングプアに苦しむ就職氷河期世代に「モーレツに働けば何とかなるから頑張れ」と説教するようなもので、構造的な格差問題から遠ざける結果になる。

日本社会の閉塞観を打破するためには、高度成長期の「成功体験」が真に「成功」と呼べるものであったのか批判的に吟味しなければならない。その反省の一つが鳩山政権のキャッチフレーズ「コンクリートから人へ」である。鳩山政権の言行不一致は批判されているが、スカイツリーへの賞賛一辺倒になっている社会の側にも意識改革が求められる。【了】

林田力(『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』著者)
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