[CML 004073] 民主党・小沢氏の「谷亮子参院選担ぎ出し」問題について

higashimoto takashi taka.h77 at basil.ocn.ne.jp
2010年 5月 12日 (水) 23:46:45 JST


今回の「谷亮子参院選担ぎ出し」事件(あえて「事件」と言っています。間違いではありません)は、
谷亮子というスポーツ・ウーマン、もしくはタレントのアタマの中身がよくわかるとともに、それ以上
に民主党・小沢幹事長という人の貧弱な政治構想力、政治的センス、つまりはアタマの中身がよ
くわかる事件といってよいでしょう。政党がタレント候補の擁立合戦を繰りひろげることの愚かしさ
の指摘については前岩国市長の井原勝介さんの下記のコメントに尽くされていると思いますので、
私としてこれ以上のことは述べません。

■タレント候補(井原勝介ー草と風のノートー 2010年5月10日)
http://ihara-k.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/post-8eec.html

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 ヤワラちゃんこと谷亮子が、夏の参議院選挙の民主党比例候補として立候補することになり、
小沢幹事長と並んで記者会見が行われた。

 自民党から堀内恒夫、たちあがれ日本からは中畑清、いずれも元プロ野球巨人の有名選手、
その他女優の立候補もあり、各党とも、タレント候補の擁立合戦の様相を呈している。

 確かに票を取るという意味では大きな効果があることは間違いないが、果たして票を稼ぐだ
けでいいのだろうか。

 甘い公約を連発し、芸能人の知名度を利用し、お金を使い、果ては力で締め付ける、選挙に
勝つためには手段を選ばないことになる。そして選挙が終われば、また次の選挙を目指す。こ
んな政治が、国民のために働くわけがない。

 政治の目的は、選挙に勝つことではなく、理念と政策を実現し国民の幸せを図ることである。
選挙はそのための手段に過ぎない。理念や政策を掲げ堂々と戦う本物の政党の出現が待た
れる。
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ところで谷亮子の参院選出馬会見での政治と柔道の兼業宣言に、国会議員も国家公務員に
ほかならないのだから国家公務員法の兼業禁止規定に違背するのではないか、という指摘が
一部にあります。この指摘の言わんとするところはわかるのですが、必ずしも正しい指摘とは
いえないように思います。言わんとするところは正しくても「事実」を正確に踏まえた上での指摘
でないと説得力はありませんのでこの件について少し書いてみます。

たしかに国家公務員の兼業・兼職は国家公務員法第103条によって原則的に禁じられていま
す。

(私企業からの隔離)
第103条  職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業と
いう。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又
は自ら営利企業を営んではならない。(国家公務員法)

しかし、国家公務員法の規定は国会議員には適用されません。国会議員は同法第2条に規定
される国家公務員の一般職にも特別職にも該当しないからです。さらに国会議員と同法の関係
の説明としては以下に述べることは余分なことですが、国会職員や国会議員の秘書は同法に
規定される特別職に該当しますが、特別職にも同法の規定は適用されません。これも同条第5
項に「特別職に属する職には、これ(注:同法)を適用しない」ことが明文化されているからです。

国会議員の兼職禁止についての規定があるのは憲法第48条と国会法第39条だけです。

憲法第48条 何人も、同時に両議院の議員たることはできない。

国会法第39条 議員は、内閣総理大臣その他の国務大臣、内閣官房副長官、内閣総理大臣
補佐官、副大臣、大臣政務官及び別に法律で定めた場合を除いては、その任期中国または地
方公共団体の公務員と兼ねることができない。ただし、両議院一致の議決に基づき、その任期
中内閣行政各部における各種の委員、顧問、参与その他これらに準ずる職に就く場合は、この
限りでない。

上記において国会議員は衆参両議院の議員と地方公共団体の公務員の兼職が禁止されてい
るだけで、そのほかに特段の兼職禁止規定はありません。だから、たとえば国会議員と私企業
の役員を兼ねていても必ずしも法律に違背する行為ということはできません。

しかし、憲法における「公務員」については国会議員も含まれると一般的に解釈されているよう
ですし(憲法における「公務員」と国家公務員法の「公務員」とは異なります)、憲法第15条第2
項には「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」という規定もありま
す(国家公務員法第101条の職務専念義務は、憲法第15条第2項の公務員の全体の奉仕者
性にその法源が求められているようです)。そうした観点から見れば国会議員も全体の奉仕者
としての職務専念義務が国家・地方公務員と同様に課せられている、と解釈できます。そういう
意味でも国会議員の兼業・兼職は好ましいこととはいえないでしょう。

上記が国会議員の兼職・兼業の禁止の原則的な考え方というべきですが、国家公務員の兼業
・兼職を禁止している同法第103条第3項には「所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た
場合には、これを適用しない」という規定もあります。所轄庁の長は、公務の中立と職務専念義
務の履行を確保するため、申請した公務員の官職と兼務する事業などの間に特別の利害関係
がなく、またはその発生のおそれがなく、かつ、職務の遂行に支障がないと認められるときに限
りこれを許可することができる(職員の兼業の許可に関する内閣府令1条など)、というのが同規
定の趣旨のようです。

そういうことも踏まえて今回の谷亮子の政治と柔道の兼業宣言の可否を考えてみると、国会議
員は有権者によって選出された国民の代表者という側面がありますから、国民を代表して柔道
を通じて「国際社会において、名誉ある地位を占め」る(憲法前文。もちろん、文脈は異なります)
ことは国会議員の本来的な役割とそう矛盾するものではない。谷亮子の政治と柔道の兼業宣言
はそういう意味で認められるものではないか、という考え方もできなくはありません。

ですから、今回の問題は谷亮子の政治と柔道の兼業宣言が問題なのではなく、「生命、自由及
び幸福追求に対する国民の権利」(憲法第13条)を守ることを目的とする政治という理念と政策
実現の場に票集めの手段としてタレント候補を起用しようとする小沢一郎という一個の政治家を
好個の見本とする政治屋集団の政治構想力、というよりも唾棄すべきほどの精神の貧困、惰弱、
怠惰、欺瞞、つまるところアタマの中身が問題なのだというべきだろう、と私は思います。


東本高志@大分
taka.h77 at basil.ocn.ne.jp
http://blogs.yahoo.co.jp/higashimototakashi



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