[CML 004594] Re: 林田力「『美しき日本人は死なず』感動的な人間物語」

higashimoto takashi taka.h77 at basil.ocn.ne.jp
2010年 6月 18日 (金) 23:01:58 JST


林田さんの標題メールについては萩谷さんがコメントされていますが、別の観点から私もひとこと
コメントさせていただきます。

勝谷誠彦という人物の評価についてはここでは措いておきます。ケッ!とだけ言っておきます。

問題は『美しき日本人は死なず』という彼の著書です。その著書の「まえがき」には勝谷の手によ
って次のように記されています。

「本文を読んでいただければわかるように、記事の取材者は私ではなく別にいる。時に登場する
『記者』という一人称がそうだ。練達の記者の方々が実際の取材に当たり、私はそれを最後にま
とめる役割を果たす。業界の言葉で言う『アンカーマン』だ」(p2)

実際、吉永小百合をとりあげた本書の第9章は冒頭から次のように記されています。

「舞台の上のスポットライトは、その人だけに当たっている。(略)7年ぶりに吉永さんにお目にか
かり、話を聞くうちに、記者の前からその間の歳月が消えていく。それだけ、吉永さんはぶれて
いない。同じ営みを、淡々と続けている。/それこそが凄いことなのだと、記者は思う・・・・」

「舞台の上のスポットライトは、その人だけに当たっている」のを見ているのはいうまでもなく勝谷
にではなく「記者」です。「吉永さんはぶれていない」「凄いことなのだ」と思っているのも、いうまで
もなく勝谷にではなく「記者」です。このような文章は本人でなければ書けません。自分が直接見
てもいないものをどうして「スポットライトは、その人だけに当たっている」などとしらじらしく書くこ
とができるでしょう(もちろん、ウソを書くのなら別です)。

この文章は勝谷ではなく「記者」が書いたのです。そのことは明らかです。勝谷が「アンカーマン」
として仮に少しばかり原稿に手を入れたとしても、です。

だとすれば、同著書の著者は最低でも「女性自身」編集部と勝谷の共著とするべきところだろう、
と私は思います。もちろん、著作権などの問題は出版社側との話し合いでクリアしているのでし
ょうし、出版社側としては、むしろ商業主義のために進んで勝谷の著書ということにしたかった、
ということもあるのでしょう。

しかし、そういう儲け主義の話は別として、著者の倫理の問題として自分がほとんどタッチしても
いない取材、それに基づく文章を自分の文章として発表する、あるいは出版する、のは可という
べきでしょうか? 私は可とはいえないと思います。

そうした倫理観(モラル)のない「著者」が『美しき日本人は死なず』などという本を出す。まさしく
ケッ!です。笑止千万も甚だしい、といわなければならないだろうと思います。


東本高志@大分
taka.h77 at basil.ocn.ne.jp
http://blogs.yahoo.co.jp/higashimototakashi

----- Original Message ----- 
From: "Hayariki" <hedomura2 at hotmail.co.jp>
To: <cml at list.jca.apc.org>
Sent: Thursday, June 17, 2010 7:57 PM
Subject: [CML 004569] 林田力「『美しき日本人は死なず』感動的な人間物語」


> 本書(勝谷誠彦『美しき日本人は死なず』アスコム、2009年9月11日発行)は、24時間営業の小児科医やタイでHIV感染孤児施設を運営する女性など感動的な個人の物語10編を収録したノンフィクションである。雑誌「女性自身」に掲載された連載「シリーズ人間」の内容を著者が厳選して書籍化した。
>
> 本書のタイトルには「美しき日本人」とあり、表紙は旭日旗を連想させる太陽のデザインである。帯には保守派の論客・櫻井よしこ氏が顔写真入りで登場する。ここからは右寄りの印象を与える。
>
> 内容的には右に偏っている訳ではない。たとえば女優の吉永小百合氏はボランティアで原爆や沖縄戦の悲惨さを語り、「非戦非核のメッセージを発信し続けること」を使命と言う(184頁)。むしろ本書で取り上げた活動は右派・左派という政治思想を越えて共感・感動できるものばかりである。それにもかかわらず、左派から抵抗感を持たれるタイトル・装丁としたことが商業的に成功であるかは興味あるところである。
> http://www.janjanblog.com/archives/5772
> あえてタイトルを『美しき日本人は死なず』とした理由として、著者は「日本人ならでは」の物語と感じたためとする(5頁)。そこには義や志、利他の精神がある。記者は民族を超えた普遍性を有するからこそ美徳になると考えるが、本書に日本人ならではの美徳があるとすれば、どのような悪条件下にあっても目の前の問題を放っておけない性質である。
>
> もっとも、これは目の前の火を消すことだけに熱中し、火事が起きた根本原因を考えない日本人の悪癖でもある。たとえば本書では医療問題が多く取り上げられているが、現代の医療崩壊は個々人の善意と超人的な努力では解決できない構造的な欠陥を抱えている。それを個人の美徳で乗り越えたとするならば問題解決への誤ったメッセージを与えることになる。制度的な問題を個人の頑張りで乗り切ろうとする精神論は特殊日本的精神論と呼べるほど日本社会に根付いている。この意味で本書の物語は良くも悪くも日本的である。
>
> 制度の欠陥から目を背けさせる危険はあるものの、本書の物語が美談であることに変わりはない。近年の報道では人間としての最低限の倫理観も失った日本人ばかりが登場する。記者自身も利益優先の不動産会社から不利益事実を隠して新築マンションをだまし売りされる被害に遭っている(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社、2009年)。閉塞感漂う日本社会に絶望したくなる状況であるが、日本人も捨てたものではないと思わせる一冊である。
> http://www51.tok2.com/home/hayariki/
> http://astore.amazon.co.jp/hayariki-22/
> 林田力「二子玉川公金支出差止訴訟で住民側控訴(下) 」PJニュース2010年6月12日
> http://news.livedoor.com/article/detail/4823555/
> http://www.pjnews.net/news/794/20100605_9
>
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